[75155]ぐりゅんさん
緊急時への対応といってもさほど役に立たない
長大トンネルで列車火災が発生した場合はそのまま坑外まで走り抜けることになりますが、坑口の近くに駅があれば列車火災時の消火作業場所として有効に機能しますし、乗客の避難も山中に下ろされるよりはるかにスムーズになりますから、安心料としては高くないはずです。ちなみに新幹線駅乗降客数ワーストに数えられる上毛高原や安中榛名も長大トンネル連続区間の付近にあるという点で役割は同じですね。
ここで、鉄道長大トンネル10傑の前後にある駅をリストアップしてみました(延長ランキングは日本トンネル技術協会の
長大トンネルリスト(PDF)より引用)。
# | トンネル名 | 延長(km) | 起点方の駅 | 終点方の駅 | 備考 |
1 | 青函 | 53.85 | 津軽今別(奥津軽(仮称)) | 知内(湯の里信号場/木古内) | カッコ内は新幹線開業後 |
2 | 八甲田 | 26.455 | 七戸十和田 | 新青森 | 未開業 |
3 | 岩手一戸 | 25.81 | いわて沼宮内 | 二戸 |
4 | 飯山 | 22.225 | 飯山 | 上越(仮称(現・脇野田)) | 未開業 |
5 | 大清水 | 22.221 | 上毛高原 | 越後湯沢 |
6 | 新関門 | 18.713 | 新下関 | 小倉 |
7 | 六甲 | 16.22 | 新神戸 | 西明石 |
8 | 榛名 | 15.35 | 高崎 | 上毛高原 |
9 | 五里ヶ峯 | 15.175 | 安中榛名 | 軽井沢 |
10 | 中山 | 14.857 | 高崎 | 上毛高原 |
このうち、(A)人口規模の小さい「町」に設置される駅、(B)在来線と接続しない新幹線単独駅、(C)特急がその市町村に停車しないかもともと運行されていない区間にある駅、のいずれかに該当するのは津軽今別(A)、知内(A)、七戸十和田(A,B)、いわて沼宮内(A,C)、飯山(C)、上越(仮称)(C)、上毛高原(A,B)、越後湯沢(A)、安中榛名(B)、軽井沢(A)と10駅あります。このような駅は特急停車駅に併設するような駅と異なり、利用客数は必然的に少なくなります(ただし(A)に分類される越後湯沢と軽井沢はもともと特急停車駅であり、行楽地の最寄駅でもあるので事情が異なることから除くべきかも知れません)。そのような駅が上記データに多数出てくるということは、それだけ長大トンネルの前後は運転保安上重要視しているということの裏付けではないでしょうか。
さて、ここからは落書き帳の趣旨とは外れるので大変恐縮ですが、
[75154]ペーロケさんの書き込みを拝見して整備新幹線建設について一部認識不足の点があるように感じましたので、ちょっと説明させて下さい。ペーロケさんに限らず、正しく理解されている方はおそらくあまり多くないと思いますので……。
整備新幹線着工に必要な前提条件の1つとして、国が整備新幹線の営業主体であるJR旅客鉄道会社から収支改善効果に相当する貸付料(30年間固定)を取れる見込みがなければなりません。また、対するJR側は採算が合わないと判断したら営業主体になることを拒否できます(完全民営化済の本州3社だけでなく、特殊会社である三島会社も同様です)。いずれが欠けても着工は認められません。
また、最近の公共事業では予測と実態の乖離がよく問題になりますが、整備新幹線の場合は事情が異なります。需要予測を過大に見積もれば収支改善効果が上がり、その分JRが国に支払う貸付料も増大し国にとっては好都合ですが、営業決定権を持つJRからすれば貸付料は安ければ安いほどいいわけですから、過大な需要予測により見積もられた高額な貸付料支払いに同意するはずがありません。一方でB/C(費用対便益)が1を下回る場合はJRの同意以前に公共事業として成立しませんので、需要を過少評価し過ぎるのも逆にダメということになり、かなりシビアな予測を要求されます。
このほか並行在来線経営分離の際は沿線自治体の同意を要するなど、整備新幹線は他の公共事業と比べて新規着工へのハードルは極めて高いものです。また、国からの支出においては公共事業関係費約7兆円のうちほぼ1%に相当するおよそ700億円で、これは国家予算全体から見れば0.1%にも満たず、他の交通インフラ(道路・空港・港湾)と比べても少ない予算しか配分されていません(
平成22年度国土交通省予算のポイント(PDF))。従って、新幹線が国家財政破綻の元凶であるかのような言い回し
新幹線を作ってました。だから返せなくなりました。
というのは的外れな書き方であると私は考えます。
ちなみに、いわて沼宮内駅の利用実績は約240人/日(乗車人数119人/日を2倍)に対し予測は300人/日ですから、当たらずといえども遠からずといったところでしょうか。なお、駅の利用客数予測は駅設備の規模(通路の幅や昇降設備・出改札設備の数など)を算定するためだけに用いるもので、新規着工区間の検討には駅の利用客数ではなく、区間全体の需要予測のみを使用します。このことからも駅設置位置は利用客数だけで決めているわけではないことがわかります。