[73963] オーナー グリグリさん
■市名に関連する半島がある市(半島コレクション登録が対象)
十番勝負に出題された機会に、「半島」についての雑談を少々。
[18426][18434] オーナー グリグリさん
#私は小さいときから半島が好きでした。能登半島の影響かな?
ところで、半島という地形名はいつ頃から始まっているのでしょうか。
[18447] Issie さん
いつからある言葉なのか,私もよく知りません。
もしかしたらこれらは欧米で発達したの地形学が日本に輸入されたときに使われ始めた用語なのではないか,とも考えています。
伊能中図(1:216,000)を見ると、例えば伊良湖崎や渥美郡という注記はあっても、渥美半島の文字は見つかりません。能登も伊豆も国名は記されてますが、○○半島という使い方はされていません。
「しま」や「みさき」は眼前の景観を直接に表す言葉です。「しま(島)」は一目で見渡せないほどの大規模な地形にも転用されましたが、「みさき」や「はな」は概ね陸地が突出した先端部付近の局所地形に限定して使われています。
日本でも「海に突き出た細長い陸地全体」を地図の上で認識し、「能登」のような固有の地名で呼んでいた。しかし、日本ではそれを一般化した観念は発達しなかった。だから、欧米の地形学輸入に際して、「半島」という和製漢語を創作することになった。こんな筋立てでしょうか。
例えば、本州の中央部で日本海に突き出た能登。隣にある真正の「島」である佐渡と形も似ており、深い富山湾で根元がくびれた姿を「半ば島」と表現した地形名は、その本質をよく当てています。
同じように深い駿河湾に隣接し、根元がくびれた姿で本州の中央部から太平洋に突き出た伊豆半島と好一対の存在です。
辞書を見ると「peninsula」の語源は、ラテン語で「paene」+「insula」つまり西洋言葉では「殆んど島」という意味だそうです。
代表的な存在は、ピレネー山脈で隔てられたイベリア半島。そして、北極圏では地続きになっているものの、事実上は大陸から海を隔てた存在であるスカンディナヴィア半島。
半島の由来はこのくらいにして、国土地理院の扱いを調べてみます。
ウオッちずで検出される「半島」は、公共施設(例:知多半島道路)や重複を含めて 29件と意外に少数です。
その多くはごく小規模な半島【例えば屈斜路湖の中の和琴半島】であり、これまでに言及した能登半島・伊豆半島・渥美半島のような有名な半島は、いずれも出てきません。
その理由は、25000分の1地形図の小規模な地形と、能登半島のような大規模な地形とでは対象がずれているからです。伊能図に○○半島がないことを確認するのに大図(1:36,000)ではなく中図を使ったのも、そのことを考慮したためです。
私の手元に、「標準地名集(自然地名)」【注】の巻末からコピーした「主要自然地域名称図」という地図があります。
実は、その一部は
[53057]で紹介した“地名の標準化について”という
論文pdf 中で 第3図として引用されており、次の記載があります。
この名称は国土地理院発行の 20万分1またはそれより小さい縮尺の地図に注記することを目的として定められた。
…
半島(peninsula):陸地における水平肢節の突出部をいう。
【注】 国土地理院, 昭和56年発行増補改訂版。なお、「主要自然地域名称図」の欄外には昭和29年地理調査所と記されており、この 1954年に地理調査所が行った検討
[18447]の成果であることがわかります。上の引用文では1960年
[67221]以降の名称である国土地理院と改められていますが、論文第3図では地理調査所のままでした。
やはり「半島」は、大規模な地形が多いため、もともと20万分1地勢図のような小縮尺図との相性がよいようです。
「主要自然地域名称図」に記された半島を拾い上げてみると、大小取り混ぜ、次の 37件でした。(便宜上、都道府県コード順に配列。)
●根室半島 ●知床半島 ●積丹半島 ●渡島半島 ○松前半島 ○亀田半島 ●津軽半島 ●下北半島 ●牡鹿半島 ●男鹿半島 ●房総半島 ●三浦半島 ●能登半島 ●伊豆半島 ●渥美半島 ●知多半島 ●志摩半島 ●丹後半島 ●紀伊半島 ●島根半島 ●児島半島 ●高縄半島 ○佐多岬半島 ○企救半島 ○若松半島 ●糸島半島 ●東松浦半島 ●北松浦半島 ●西彼杵半島 ●長崎半島 ●島原半島 ●宇土半島 ●国東半島 ●佐賀関半島 ●大隅半島 ●薩摩半島 ○野間半島
* 縮尺200万分1程度の図には●、縮尺100万分1ないし50万分1程度の図には●および○を付した地域を採用
“昭和29年地理調査所”なので沖縄は日本地図の範囲外。従って本部半島は登場しません。
グリグリさんが 2003年に集めた半島コレクション
[18426]は 69件で、もちろん上記 37件のすべてをカバーしています。
現在 は220件。小さな半島地名をこまめに拾い、格段の収録数になっています。