[52948] BEAN さん
トヨタ自動車を「名古屋の企業」と呼ぶのは間違いか
私,「ご出身はどちら?」と聞かれたら,最近は「千葉の幕張の隣り」と答えています(全くの蛇足ですが,“地元民のこだわり”として,「幕張」を“マ-”だけを低く,“-クハリ”を高く発音する“NHK公認”の平板型アクセントではなく,「正しいアクセント」で“ク”だけを高く発音しています。私にとって,NHKの(…だけではないが)あの平板型アクセントは甚だ耳障りな「正しくない」発音です。NHKともあろうものが,あのような「誤用」をするとは「情けない」限りです …ナーンチャッテ)。
昔,甲子園で習志野高校が活躍した頃は「習志野(市)」と言っていたんですがね。
でも,もっと昔,習志野高校が全く無名で,「習志野」と言えば陸軍の騎兵旅団とか騎兵聯隊が連想されていた頃であるなら,「津田沼」と言ったでしょうね。もっとも,その時代には私の“出身地”の埋立地は存在しなかったし,私自身が生まれていなかったから,これは全く無意味な仮定ですが。
要するに,今であれば「津田沼」や「習志野」よりも「幕張」の方がより多くの人に理解してもらえそうだからですね。きっと,「千葉市幕張」がどこにあるか,多くの人は正確には知っちゃぁいないでしょうが。ま,それがここに集うような「地理おたく」ではない“普通の人”の当然の感覚だと思います。嘆かわしいことなど,一かけらもない。
そんな戯言はともかく…
[52902] k-ace さん
帝国書院が発行する地図帳では、「奈良盆地」と書かれています。
したがって、社会や地理、地理学では、「奈良盆地」は正解で「大和盆地」は不正解ということになります。
職業柄(…でも,今,私は学校にはいません),これは気になったので一言。
「是非,このような感覚は捨ててください。」
文部科学省(文部省)の「検定済教科書」は,決して“絶対的規範”ではあり得ません(小学校から高等学校の 社会科 ないし 地理歴史科 の授業で使用される地図帳は,他の教科書と同様,文部科学省の検定をパスした「教科書(教科用図書)」です)。
教科書検定の際に基準とされているのは,あくまでも現実に行われているさまざまな「約束」のうちの1つの過ぎません。
たとえ「事実」や「真理」が“1つ”であっても,その表現のしかたは1つとは限りません。“厳密な約束”の上に“初めて”成り立つ“いわゆる「理系」の世界”ではなかなかそのようなことはないでしょうが,視点や立場が違えば“見え方”も“約束”も違ってくる世界では,“1つのもの”に“複数の名前”があるのは珍しいことではありません。教科書検定で採用される基準は,そのような多くの「約束」のうちのあくまでも“1つ”です。
いや,「理系」の世界でも,算数の教科書で 円周率 を「およそ3」とするように「約束」が変わったとき,大騒ぎになりましたよね。本当のところ大切なのは「“円周率”とはどのような数(概念)」なのかを学ぶことであって,「およそ3」であろうが「3.14」であろうが本質的には何の違いもないのですが,誰が煽り立てたのか,異常で“的外れ”な騒ぎとなりました。検定教科書ではこのように「約束」が大幅に変更されることはままあります。しかも,しばしば,“教育上”の配慮というよりは,優れて“政治的”な立場から。
「検定済教科書」たる教科用地図帳は,ある意味,他の教科書以上に極めて「政治的」な出版物です。
・台湾島と近傍の島々を「領域」とし,その領域内の「住民」による「公正な選挙」によって選ばれた大統領(総統)と議会とが,その領域において“最高”かつ領域外から“独立”した「主権」を現に行使し,それが機能している「中華民国」という“国家”が存在します。しかし,1970年代後半以降の我が国の「検定済地図帳」に「中華民国」の記載はありません。
・アラビア半島とイランとの間にはさまれた海について,多くの検定済教科書は「ペルシャ湾」と「アラビア湾」という“2つの呼称”が併記されています。それぞれの側でそれぞれの呼称がそれぞれに行われていること,さらに国際社会でも両者が行われていることを慮ってのことだと思います。そしてそれを文部科学省も追認している。しかし,日本列島と朝鮮半島および沿海州に囲まれた海については「日本海」とのみ記載し,“半島”で現に行われている「東海」との併記は行わない。最近,ますます“依怙地”の度を深めている我が政府の態度からして,両者が併記されることは(すくなくともここ当分)まずないでしょう。“半島”でこの海を「東海」と読んでいる事実は知っておくに足る重要な「現実」なのですが。
・我が国の教科用地図帳には,樺太島(サハリン)について,宗谷海峡と北緯50度線とに国境線が入っています。また,千島列島について,択捉海峡と占守海峡とに国境線が入っています。しかし,「現実の国境」として機能しているのは宗谷海峡だけであり,択捉海峡でも占守海峡でもない 根室海峡 です。
もちろん,これらが「現実」を反映していないから「正しくない」というのではありません。
たとえば「北方」の国境線について,日本政府の立場からは「当然」の措置であり,“決して譲ってはならない”線であって,“日本国民”として政府のこのような措置を支持することに吝かであろうはずがありません。あるいは「中華民国」の扱いについても,「中華人民共和国」との関係からそのような措置をとらざるを得ないものでしょう。
それにしても,一方で,それはあくまでも「日本政府の主張」あるいは「立場」であって,「現実」をその通りに映しているものであるかというと,やはり留保しなければならない部分は多分にあるような気がします。
そこにあるのはやっぱり「政治」であり,政府の機関たる文部科学省のコントロールから離れることのできない「検定教科書」には多かれ少なかれ「政治のバイアス」がかかっているであろうことを認識しておいた方が良い。
いや,もちろん検定基準は基本的に,それぞれの「専門家の世界」で最低限できあがっている「共通理解」を下敷きにしたものであって,決して文部科学省の担当官の恣意で行っているわけではない(はず)です。あくまでも,その立場から“純粋に”「正しい」か否かをチェックする,というのが検定の本来的立場です。
それでも,繰り返しですが,“厳密かつ確固たる決まり”の上に成り立っている分野であればともかく,それぞれの“世界”でまちまちに「約束」が行われているときに,文部科学省が採用できるのは(基本的に)そのうちの1つだけであって,だからと言って「選外」となったそれ以外の「約束」が「間違い」であろうはずがない。
「教科書に書いていないから“不正解”」とは,決して言って欲しくない,と私は強く思うのです。
[53018] 千本桜 さん
新潟平野VS越後平野
ちなみに,「検定済教科書」たる教科用地図帳では,以下のような変遷が見られます。
1:越後平野 ---1950年検定済 「中学校社会科地図帳」 帝国書院編集部編 (教科書番号:46[帝国] 中社718)
2:新潟平野 ---1971年検定済 「中学校社会科地図 最新版」 帝国書院編集部編 (46[帝国] 地図-701)
3:越後平野 ---1998年検定済 「基本高等地図」 二宮書店編集部 (130[二宮] 地図 638)
3つめだけが二宮書店の高等学校用なのは,たまたま手許にあったからで,他意はありません。中学校か高等学校か,あるいは帝国書院か二宮書店であるかが,「新潟平野」であるか「越後平野」であるかに反映しているとは思いません。最近の地図帳ではたぶん,帝国書院の中学校用でも「越後平野」であると思います。
私,「越後平野」の方が好きですけどね。
同じく,「長野盆地」よりも「善光寺平」の方が好きですが,この2つの間には“微妙な違い”があるかも知れません。