[46981]hmt さん
明治29年になると、わざわざ「埼玉県下国界変更及び郡廃置法律」によって、武蔵と下総の国界を庄内古川から江戸川に移し、埼玉県全体は武蔵国の一部になりました。
(中略)
旧美作国吉野郡石井村・江川村が兵庫県佐用郡に移管されたのは、これと同じ明治29年です。県界変更と同時に播磨・美作の国界も変更され、県界との一致を保ったものと思われます。
に関連して。1896年(明治29年)以降、国界変更とともに全国的に郡廃置や郡界変更の法律が施行されていましたが、1982年(昭和57年)7月23日にまとめて廃止されています。その法律の廃止対象の項が丁度この手の法律の一覧になっていましたので少し長いですが、
衆議院のサイトの制定法律>昭和57年法律第69号より抜粋します。
法律第六十九号(昭五七・七・二三)
◎行政事務の簡素合理化に伴う関係法律の整理及び適用対象の消滅等による法律の廃止に関する法律
第二章 適用対象等の消滅及び行政目的達成等による法律の廃止(第三十七条―第四十九条)
(自治省関係法律の廃止)
第四十九条 次に掲げる法律は、廃止する。
一 神奈川県下郡廃置法律(明治二十九年法律第十九号)
二 長崎県下郡廃置法律(明治二十九年法律第二十号)
三 新潟県下郡界変更及び郡廃置法律(明治二十九年法律第二十一号)
四 山口県下郡廃置法律(明治二十九年法律第二十二号)
五 和歌山県下郡廃置法律(明治二十九年法律第二十三号)
六 福岡県下郡廃置法律(明治二十九年法律第二十四号)
七 佐賀県下郡廃置法律(明治二十九年法律第二十五号)
八 宮崎県下郡廃置法律(明治二十九年法律第二十六号)
九 東京府下郡廃置法律(明治二十九年法律第三十七号)
十 大阪府下郡廃置法律(明治二十九年法律第三十八号)
十一 兵庫県下郡廃置及び郡界変更法律(明治二十九年法律第三十九号)
十二 埼玉県下国界変更及び郡廃置法律(明治二十九年法律第四十号)
十三 群馬県下郡廃置及び郡界変更法律(明治二十九年法律第四十一号)
十四 千葉県下郡廃置法律(明治二十九年法律第四十二号)
十五 茨城県下郡廃置及び郡界変更法律(明治二十九年法律第四十三号)
十六 栃木県下郡廃置法律(明治二十九年法律第四十四号)
十七 奈良県下郡廃置法律(明治二十九年法律第四十五号)
十八 三重県下郡廃置法律(明治二十九年法律第四十六号)
十九 静岡県下郡廃置法律(明治二十九年法律第四十七号)
二十 滋賀県下郡界変更及び郡廃置法律(明治二十九年法律第四十八号)
二十一 福島県下郡廃置法律(明治二十九年法律第四十九号)
二十二 岩手県下郡廃置法律(明治二十九年法律第五十号)
二十三 富山県下郡分離及び廃置法律(明治二十九年法律第五十一号)
二十四 鳥取県下郡廃置法律(明治二十九年法律第五十二号)
二十五 島根県下郡廃置法律(明治二十九年法律第五十三号)
二十六 熊本県下郡廃置法律(明治二十九年法律第五十四号)
二十七 鹿児島県下国界並びに郡界変更及び郡廃置法律(明治二十九年法律第五十五号)
二十八 岐阜県下郡廃置及び郡界変更法律(明治二十九年法律第八十六号)
二十九 愛媛県下郡廃置法律(明治二十九年法律第八十七号)
三十 広島県下郡廃置法律(明治三十一年法律第八号)
三十一 愛媛県下郡界変更法律(明治三十二年法律第二十二号)
三十二 香川県下郡廃置法律(明治三十二年法律第四十一号)
三十三 大分県下郡界変更法律(明治三十二年法律第四十二号)
三十四 岡山県下郡廃置及び郡界変更法律(明治三十三年法律第二十八号)
三十五 京都府下国界並びに郡界変更法律(明治三十五年法律第十四号)
三十六 和歌山県下郡界変更法律(明治四十年法律第三十六号)
三十七 愛知県下郡廃置法律(大正二年法律第五号)
三十八 埼玉県下郡界変更に関する法律(大正十年法律第六十五号)
ここに出てこない都道府県は北海道、青森、宮城、秋田、山形、福島、石川、福井、山梨、長野、徳島、高知、沖縄です。北海道と沖縄は府県制郡制の対象外として、他の11県は郡廃置や郡界変更がなかったのでしょう。
さて本題の「国界」に言及しているのは埼玉県(12項)、鹿児島県(27項)、京都府(35項)であって、兵庫県(11項)には出てきません。
また
国立国会図書館のサイトの日本法令索引 の制定法令検索にて「国界」で検索しても検索結果はこの3府県分だけです。国界変更施行日は埼玉県と鹿児島県が明治29年3月30日、京都府は明治35年3月11日となっており、埼玉県についてはhtmさんの指摘のとおり、中葛飾郡の北葛飾郡への併合と時期が一致しています。
ここまでのおさらいしてみると、不明点は以下の3点です。
1、旧美作国吉野郡石井村・江川村が兵庫県佐用郡に移管された県界変更と同時に、本当に播磨美作の国界が変わったのか?(法令的には痕跡がない?検索単語があまいせいか?)
2、明治29年の鹿児島県での変更はどこか?(旧日向国諸県郡のうち鹿児島県に移管された南諸県郡と関係があるか?それとも旧大隅国菱刈郡が薩摩国伊佐郡に併合したことと関係があるか)
3、明治35年の京都府での変更はどこか?(見当もつきません)
ナゾが深まっています。私にはこのあたりで限界ですが、どなたかご存知の方はご教示ください。