落書き帳における活発な議論の記録、
飛び地の定義 です。
2005年までの記事の多くはアーカイブズに集録されていますが、少し補足し、2007年以降にまた盛り上がった分を付け加えました。
ビジュアル的には、平戸市によって佐世保市の本体から隔てられているように見える宇久島。
しかし、佐世保と宇久島をトポロジー的に隔てるものは、平戸市との境界線ではなく 海 です。
海 により隔てられた宇久島は、「飛び地」とは別の 離島 として扱えばよいのではという趣旨の発言をしました
[69177]。
飛地定義論から 海 を排除することについては、
[12090] ken さん の発言があります。
飛び地論は、陸上だけで完結させたいもんですが、どうなんですかね。(中略)
海を挟んで、飛び地と言われると、どうも、対象が多すぎて、飛び地の珍しさ、地図上の不思議さ、が感じられず、何より、「飛び地の魅力」という視点から見ると、海を絡めると、私には飛び地の魅力半減、です。
「飛び地」の魅力 シリーズの冒頭で、“第一に挙げたいのは「もの珍しさ」です”
[68737] と宣言した hmt としては、この主張に同調したいところなのですが、その後の議論を見ると、そうともいえないようです。
仮定の話ですが、平戸市が波佐見町を編入した場合
[67257] や、北海道と奈良県が同じ自治体だった場合
[67233] のように、一方が完全に内陸の場合には、別の島にある飛び地が成立することを認めたいと思います。
棚底湾対岸にある“天草市分体(天草上島)の飛び地”
[69038] のような実例もあり、自治体の飛び地に関する議論は、本体と地続きの地域だけで完結させるわけにはゆかないと思います。
これまでの議論から、飛び地と本域とを隔てる要素として本質的なのは、陸上境界と思われます。
ここで自分なりの飛び地の定義を書いてみると------------
飛び地とは、陸上境界により(他の自治体などを挟んで) 本域から隔離された地域である。
補足説明
本域とは、飛び地の対義語 であることを意識して 本体を拡張した概念 です。天草市の例で説明すると、天草下島の大部分を占める本体以外にも、別の陸地(天草上島)に主要な居住地域(分体)が存在します。このような地域も、それに対する「飛び地」を持つ場合があり、自治体本体(人口最大 又は 役所所在の地域)と区別できるように「本域」と呼ぶことにしましたが、多くの場合は 本域 = 本体 です。
飛び地ができるためには、本域又は飛び地が他の自治体などと陸上で接している境界の存在が不可欠です。
青森県北津軽郡中泊町の本域(旧中里町)は内陸にあり、陸上境界で囲まれています。小泊地域は、別の陸上境界と海とで囲まれた飛び地です。
小泊海岸の岩礁 は、中泊町の本体から見れば “五所川原市市浦地区との陸上境界と海とにより隔離された別の飛び地である” と言えないこともないようです。(中泊町の本体を奈良県に、岩礁を北海道に置き換えてみてください。)
しかし、常識的な判断に従えば、小泊地域を本域とする離島(島というには小さすぎますが)と考え、飛び地でないとするのが妥当でしょう。
尾道市浦崎は、尾道市の本域から海を隔てていますが、海だけでなく、陸上境界により福山市松永地域を挟んで隔てられている飛び地です。
尾道市には、向島・因島・生口島などの架橋島があります。西瀬戸自動車道の橋があっても「海で隔離された島」と解釈すれば、これら地域は本体と別の分体ですが、陸上境界による隔離地域(飛び地)ではありません。
瀬戸内しまなみ海道によって事実上の地続きになったと解釈すれば、これらの地域は尾道市本体の一部であり、いずれにせよ飛び地ではありません。
桜島は、陸上境界により、大隅半島垂水市など複数の自治体を挟んで 鹿児島市本域から隔てられた飛び地です。
葛籠尾(つづらお)半島 背骨の西浅井町との境界などにより、陸上では本域から隔離されている 滋賀県伊香郡高月町片山と 東浅井郡湖北町今西の場合。
2007年までは、本域との間の琵琶湖水面が町の領域に組み込まれていなかったので、桜島型沿海飛び地に限りなく近い存在でした。
琵琶湖水面が分割された現在は、町の領域内の湖面で結ばれているので、河川の両岸に近い立場になったともいえます。
現在は「準」飛び地扱いになっていますが、2010年1月1日の長浜市への編入で飛び地リストから完全に消えます。