[33940](ふじなが26号さん)
和泉(いずみ)について これは2文字で「いずみ」と読むはずだと思います。日本語には、読まない文字はありません。(英語だったら多数見られますが)その為、熟字訓であると思われます。
本からの受け売りの知識で、ネット上にもソースを発見することができなかったので参考程度に聞いてほしいのですが、もともとは「和泉」は「にぎいずみ」と読んでいました。「和」を「にぎ(にき)」と読むソースは見つかっていて(
和銅と和同)、「純度の高い」という意味であったようです。
いつの間にか「和」のほうを読まなくなって、「泉」の読みである「いずみ」を「和泉」の読みにも使うようになったのですが、それが和泉国の表記が確立したときより前なのか後なのかはちょっとわかりません。
これを「熟字訓」と考えるか、それとも「読まない文字」と考えるかですが、日本語には「単独の文字で、なおかつ読まない文字」はありませんので(漢文など、特殊なものは除く)、「熟字訓」と考えるのが妥当なような気がします。なお、英語にも「単独の文字で、なおかつ読まない文字」はありませんが、英語は綴りと発音との乖離が激しいので、言ってみれば全部が「熟字訓」です。
さて、福井県に遠敷郡という郡があります。これは「おにゅう」郡と読みます。振り仮名を振るときは「遠」に「お」、「敷」に「にゅう」と振る慣例になっていますが、「遠」の音読みは「エン」「オン」、「敷」は「フ」で、何かおかしいです(訓読みは全然違いますね)。素直に読めば「遠敷」を「おんぷ」と読むことはあっても、「おにゅう」にはならないような気がしませんか。
これはあたかも熟字訓のように見えますが、実は、「おにゅう」は旧仮名遣いで「をにふ」と表記し(
国郡沿革表・北陸地方)、「遠」が「をに」、「敷」が「ふ」に当たるとするとぴったりと合うのです。
で、問題は「遠」が「をに」になるかどうかなのですが、漢字音が日本語化されるに当たって、n以外の母音を伴わない子音はiかuを伴って発音されたのですが(駅(ek-i)とか発(hat-u)など。ngは少々異なりますが、省略します)、nにもiが伴って「に」となることがあったのです。その証拠として、花の紫苑(しおん)が旧仮名遣いで「
しをに」と表記されていたこともあるのを挙げたいと思います。
もっとも、「遠敷」は当て字と推定されますから、先に「をにふ」という言葉があり、それに「遠敷」という文字を当てたと考えるのが妥当だと思われます。そうでなければ、「遠敷」は「おんぷ」だろうが「とおしき」だろうがどう読んでもいいことになってしまいます。
※「遠敷」は「
おにぶ」と読まれることもありました。「をにふ」の音が変化したものと推察されます。
【訂正履歴】
(1)「国郡沿革表・北陸地方」へのリンクを加えたほか、文章を一部変更。
(2)「和銅と和同」へのリンクを加えたほか、文章をさらに一部変更。
(3)ngについての注釈を追加。