あけましておめでとうございます。
[79915] オーナー グリグリさん
大字や字の表記をなくした瞬間に、もはや大字であるか字であるかなどは、必要性も意味もなくなると考えるのが妥当なのでしょうか。
同じ小字起番地帯である東北地方の某町の事例からして、一般住民は、もともと大字と小字を区別することに必要性も意味も感じていないのが実状です。基本的に住所に無関心です。しかし、住所政策に携わる人は「必要性」はともかく、大字と小字の「意味」を忘れてはならないはずです。それなのに、「意味」を忘れた(あるいは、最初から意味を知らない)人たちが住所政策に携わっているから、こわいのです。
ついさっきグリグリさんの記事を拝読したばかりなので、長久手町に対する事前知識はあまり持ち合わせていませんが、即席で長久手町の住所変更の背景にあるものを推測してみました。
(ア) 大字長湫 ・・・「長湫」を表記しなくなります。
大字長湫を表記しなくなる理由を探ります。長久手町には、町村制以前の村を引き継いでだ大字長湫、大字岩作、大字前熊、大字熊張の4大字があります。このうち大字長湫の区域は、土地区画整理が進み、字名地番の変更が行われ、大字長湫を付さない字(例えば字荒田、字井堀、字杁ヶ池など)が多数出現しています。それまで長久手町大字長湫字荒田を名乗っていた土地が区画整理されて都市化すると、大字長湫を付さずに長久手町字荒田になるわけです。このような住所政策を施すと住民にどのような感情が芽生えるかが重要です。同じ字荒田の住民でも土地区画整理から外れた土地の住民は、従来通り長久手町大字長湫字荒田と書かなければなりません。なぜ我々だけが大字長湫を付して面倒な住所を書かなければならないのか、と疑問をいだくようになります。そして、大字長湫を付す土地は都市化から取り残された土地という疎外感をいだくようになります。東北地方の某町では、このことが一因となって、とんでもない住所変更が企てられましたが未遂に終わっています。いずれにしても、大字長湫を付す土地と付さない土地とが隣接する複雑さを解消するために、大字長湫の区域から「長湫」の名称を取り払うことにしたのだと推測します。
(イ) 大字岩作 ・・・「岩作」と字名を併記します。
大字岩作の区域に従前どおり「岩作」を付す理由を探ります。長湫地区と異なり、岩作地区は地域変化が少なく、すべての小字が昔どおり岩作という大字名を付してきましたから、あえて岩作を消す必要がなかったものと推測します。地域変化が少ないとはいうものの、岩作地区でも土地区画整理が行われています。しかし、対処のしかたが長湫地区とは異なっています。長湫地区では土地区画整理が行われると大字長湫を省いてしまいますが、岩作地区では土地区画整理後も大字岩作を省きません。この
大字岩作字落合・大字岩作字長筬・大字岩作字西島)の一部は、
岩作第一土地区画整理事業で新しい形状の土地になったのに、住所は大字岩作字落合・大字岩作字長筬・大字岩作字西島のままです。
(ウ) 大字前熊 ・・・「前熊」 と字名を併記します。
大字前熊は、さらに地域変化の少ない地区です。大字長湫地区とは異なり、大字名を付さない字は発生していません。地区住民は、前熊という大字名を自分たちのものとして自然に受け入れていることでしょう。住所から前熊という名称を外してくれという人はいないと思います。前熊という名称を省いたら、ここはどこなんだと、戸惑うだけです。
(エ) 大字熊張 ・・・「熊張」を表記しなくなります。
大字熊張を表記しなくなる理由を探ります。長久手町の4大字のうち、長湫、岩作、前熊は江戸期の村(もっと以前から村だったかも知れない)を引き継いだものですが、熊張は明治10年(1877)に大草村と北熊村が合併して成立した村のようです。どうも、今でも
大草、
北熊が地区名として根強く生きているようで、そのぶん熊張の影が薄いのではないかと推測します。それは、この町議の
これと
これからも読み取れます。この町議は岩作、前熊、大草、北熊を住所地名として残すように頑張ったようですが、受け入れてもらえなかったようです。同情します。この町議は「行き先を尋ねる場合、岩作、前熊、大草、北熊のどこと聞かれれば、おおよその見当がつきますが、字名だけでは数が多く見当がつきません。実生活では目次の無い本、ファイルの無いデータのようです。」と書いています。まったく同感です。
それにしても空しくなるのは、長久手町は市に移行するにあたり、住民アンケートを行っていることです。住居表示実施で新町名を決めるのならいざしらず、大字をどうするかと住民に問いかけて何になるんですか。こんなことは、行政担当者が過去、現在、未来、町域全体、他市町村の実態などを見据えて決めれば良いことです。そのためには、それなりの勉強しなければなりませんが、お給料を貰っているのですから当然のことです。岩作の住民に「岩作」という地名を残すか、熊張の住民に「熊張」という地名を残すかと個別にアンケートをとっても、町全体のバランスを考えた答など返ってきません。一般住民に、これを求めるのは酷です。
(オ) 大字の付かない地区 ・・・変更ありません。
大字の付かない地区とは、もともとは大字長湫に属していた土地で、土地区画整理によって大字長湫を付さなくなった土地です。念のために書きますが、住居表示実施で大字長湫が省かれたわけではありません。地番区域のままです。一つの考えとして、この区域に再び「長湫」という大字名を付してやれば、問題なく長久手町から長久手市に移行できた可能性もありますが、いったん省いたものは元に戻さないのが役所のやりかたなんでしょうね。
このような大字問題を考えると、胸が痛みます。国は自治体の自主性にゆだね、自治体は住民主体などと体裁のいいことをいう。これでは国全体として見た場合、ちぐはぐな住所が続出するだけです。何度も言いますが、大字の扱いをどのようにするかを住民に決めさせるのは酷です。