[60844]拙稿で、第十六回十番勝負問二に関しての検証を兼ねて、市制施行時に従来の町村の名称を変更する例についてご紹介しました。これに関して、一つ追加すべき内容(あわせて
市区町村変遷情報の修正)がありましたので述べます。
静岡県天竜市(現在は浜松市に編入)の件です。
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● 総理府告示 第三百九十一号
町の名称変更
地方自治法第三条第四項の規定により、昭和三十三年九月十三日から、静岡県磐田郡二俣町の名称を天竜町に変更することを許可した旨、静岡県知事から報告があつた。
昭和三十三年十月二十九日
内閣総理大臣 岸 信介
● 総理府告示 第三百九十二号
町を市とする処分
地方自治法第八条第三項の規定により、静岡県磐田郡天竜町を天竜市とする旨、静岡県知事から届出があつた。
右の処分は、昭和三十三年十一月三日からその効力を生ずるものとする。
昭和三十三年十月二十九日
内閣総理大臣 岸 信介
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町の名称変更に関しては、拙稿
[54044][55225][60844]で述べたように、本来は効力が発生するのは「当該自治体の条例」であり、「総務省(総理府)告示は周知に過ぎない」です。条例を確認するのはなかなか困難なので、現実には各種文献や総理府告示を元に整理・入力しています。
今回の件で、二俣町→天竜町の名称変更の施行日は、
S33(1958).9.13 | 官報情報検索サービス、「総覧」、「便覧」 |
S33(1958).11.3 | 「辞典」、「消えた辞典」、「幕末以降総覧」 |
でした。
なんといっても「総理府告示」でS33.9.13施行が明白であるので、改称施行日と市制施行日が異なる(天竜町の期間が約2箇月ある)と判断していました。
ところが、
むじながいりさんのHP(つかんぼやと)の掲示板の議論で、
二俣町→天竜町の名称変更の条例の施行日が「S33.11.3」で、市制施行日と同日であるとの情報提供があり、確認すると次のとおりでした。
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二俣町の名称を変更する条例
昭和33年9月10日
条例第15号
第1条 二俣町の名称を天竜町に改める。
附 則
この条例は、昭和33年11月3日から施行する。
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これだけでも、前述のとおり名称変更の根拠は総理府告示ではなく条例なので、この二つに相違があっても「条例」を根拠として処理しようとしました。
さらに、総理府告示の正誤表を確認していると、上記総理府告示の施行日の正誤表を次のとおり発見しました(抜粋、体裁は引用者が適宜修正)。
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昭和 33年12月4日木曜日 官報 第9587号
正誤
昭和三十三年十月二十九日総理府告示第三百九十一号町の名称変更中
総理府官報報告主任
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つまり、二俣町の条例と総理府告示は、同一の内容であることが判明したわけです。このため、これら判明したことに沿い、
S33.11.3 | 磐田郡二俣町を天竜町に名称変更する |
S33.11.3 | 磐田郡天竜町を天竜市とする(市制施行) |
と、「磐田郡天竜町は瞬間だけ存在した」となるように、
市区町村変遷情報を
変更しました。
さて、これに伴い、
[60844]で検証した、第十六回十番勝負問二の検証の表に、次のものを追加いたします。
番号 | A町(A村) | A市 | B町 | B市 | 市制施行日 | 種別 |
A | 磐田郡二俣町 | _ | 磐田郡天竜町 | 天竜市 | S33.11.3 | 改称/市制 |
たまたま、今回は既に天竜市が消滅していたため、問二の想定解数が増えることにはなりませんでした。
今回の件に関し、
むじながいりさんのHP(つかんぼやと)の掲示板において、灘の生一本さん、右左府さん、きっかけを作っていただいた桜トンネルさん、そして管理人のむじながいりさん(ご自身のHPではエイちゃさん)に大変お世話になりました。ここにご紹介してお礼を述べさせていただきます。ありがとうございました。