[96994]グリグリさんへのコメントを追加したため長文にて失礼します、拙稿
[96993]の続きです。
【宝塚市の「塚」、なぜ「ヽ」があるの?】2015年11月28日朝日新聞デジタルより(以下、複数引用箇所の出典同じ)
市長印など公印のほか、市が発行する住民票などの証明書、市の広報誌を含め、公文書はすべて正式名
とのこと、調べてみると自治体例規集には公印や公文書に関する規則などがあり、公印については画像で
多数見られるので、いくつかリンクを示しておきます。(画像はおおむねページ真ん中より下の方)
葛城市公印規則・
葛飾区公印規則・
塩竈市公印規則・
四條畷市公印規則・
龍ケ崎市公印規則
袖ケ浦市公印規則・
茅ヶ崎市例規集(五十音の「こ」から茅ヶ崎市公印規則)・
蓮田市公印規則・
五條市公印規程
[96969]スカンデルベクの鷲さんより
飛騨市例規集(第3編執行機関/第1章市長部局/第3節文書・公印→飛騨市公印規程)・
逗子市公印規則・
蓬田村公印規程
[96972]右左府さんより
須恵町公印規程
以上より、公印使用の字体はおおむね予想の範囲内ですが、※飛騨市は「驒」を使っているとか、蓬田村は
1点しんにょう(JIS X 0213:2004における例示字形の変更非対応アプリで作成?)など少々変わり種もあるようです。
(宝塚市・梼原町は未確認、他にも面白いものがあるかもしれませんが未調査)
※
合併協定書も「驒」(3コマ、告示本文は未確認、22コマに合併した町村長の公印と思われるものあり)
なお上記リンク先画像の大半は恐らくどのような字体を用いて公印が作成されているかを参考程度に示したもの
(広義のひな型)であると思われます。(実物そのものだと字体がわかりにくいとか、偽造などを防止するため?)
実物は※
曾爾村公印規程で示された画像のようなものと推測(こちらは実際の印影をスキャン作成?)
※例規集は曾爾村ですが正式名は曽爾村、公印の大きさによっては曽尓村長(画像14番)など
「尓」という「爾」の
異体字を使用することもある模様、役場印(画像4番)は奈良「県」ではなく「縣」(かなり古くに作られたもの?)
また
法務局の場合、不動産や商業・法人の登記には、正式名を記載する決まりです。
神戸地方法務局によると、提出書類の中には、宝塚市の塚の字に「ヽ」がない表記が多く見られるそうです。この場合、局側で「ヽ」のある字に置き換えて登記している
上記より住民票の住所表記や土地の不動産登記などに記される自治体名(市区町村までの部分)は
(当然ながら)同一字体に統一されているのが原則(好ましい)と思われます。
【参考】
住所・本籍・土地・建物の所在の表し方(横浜市)
しかしながらやはり例外もあるらしく、
[96982]グリグリさんによると※梼原町は現状住民票・戸籍は
「梼」であるのに対し、村を町とした告示や例規集の
檮原町文書規程で示された
(町長署名欄がある)原本と思われる書式文例には「檮」が使用されています。
※
高知地方法務局でも檮原町とあり、不動産登記などは現状どちらの字体で行われているのでしょう??
最後に
市は国や県、他市町に対し、「ヽ」のつく正式な市名の使用を求めていません。このため他自治体が発行し、市に届く公文書は、常用漢字で「宝塚市」と表記されています。
上記のような運用・見解にしておくと、自治体成立時の法的根拠である国や都道府県の告示などが
仮に「塚」とあっても旧字の「塚」であると主張したい場合などに都合が良いような?気もするので
[96985]グリグリさんにある
正字体、旧字体、異字体、略字などの字体の揺らぎについては必ずしも明文化されないまま慣用的(暗黙的)に定着しているケースが多い
恐らく上記が(公印などの字体も表記揺れが見られますので)現状の実態をうまく表現していると思われます。
【少し長い補足】
【A】国の(自治体成立時)告示(いわゆる法的根拠)と【B】(地方自治法第三条3項に基づく)自治体の条例の違い
上記について
妙高市例規類集より、具体例(と思われるもの)を以下に示すと
【A】
市の名称変更(平成16年10月26日総務省告示第818号)
【B】
市の名称変更に関する条例(平成16年7月1日条例第27号)
以上を踏まえ、
[96994]グリグリさんで示された残りの例規集記載内容を分類すると・・・
【A】会津若松市・習志野市・みよし市(みよし町)【B】蓮田市・南幌町・日之影町・鳴門市
(何を典拠としているかは、国の告示か自治体の条例とおおむね本文他に書かれているので容易に判別できる)
※
[83614]むっくんさんにもある通り、法的根拠が国の告示になってからは【B】に対応する【A】が存在する。
(地方自治法第三条7項による)
例・日之影町(S31総理府告示第800号)、南幌町(S43自治省告示第34号)、蓮田市(H23総務省告示第1号)
上記の他、都道府県の告示【A´】も別途存在しているケースがある、
地方自治法の改正前は一部の廃置分合はこちらが法的根拠だった。
(鳴南市から鳴門市へ改称の場合も新設ではないので恐らく法的根拠は徳島県告示)
例規集では【A】【A´】【B】などをどの程度の範囲で掲載するかは自治体によって様々である。
(
檮原町例規集のように何も掲載しないもの、
蓮田市例規集などのように【A】を掲載しないものもあるが、
その場合でも当然唯一の法的根拠【A】または【A´】が別途存在する)
自治体において正式名の典拠を示す場合、(【A】【A´】とほとんど似たような条例の内容であっても)
【B】ではなく法的根拠【A】【A´】を示すことが主流であるように思われる。
(ただし【A】【A´】で自治体の主張する正式名と相違があるものが示されている場合は典拠として
【B】の原本などを示す可能性もある)
以上、少々長くなりましたが補足とします。