母衣コレクション の正式デビュー
[83963]、おめでとうございます。
2010年末には ほぼ収集が済んでいた「母衣」
[77131]に、新たに「袰」の文字を含む地名
[77135]が加えられたというわけですね。
過去記事を振り返ると、「ホロ」が気になるという記事は 2005年から現れており
[36842]、巨大なロックフィルダム有名な御母衣湖と並んで、「母と衣を上下に重ねて一字のホロ」にした地名の存在にも言及がなされています。挙げられていたのは、その記事から間もない 2005年3月に 中里町との飛地合併によって青森県北津軽郡中泊町になった小泊村袰内(ほろない)です。
2010年末は 同じ青森県でも 津軽ではなく上北の小川原湖南岸にある 母衣平出生(ほろたいはぶ)が話題になりました。
この地は三沢市に属する米軍姉沼通信所が主体ですが、隣接する湖岸の農地だけは上北郡東北町所属です。
自治体越えの地名コレクション では 既に大字「大浦」として収録されているのですが、
[76997] まかいの さんの記事にあるように、「母衣平出生」(清濁の微差は揺らぎの範囲でしょう)という字名も市町に跨っているので、こちらも収録対象としてよいのではないでしょうか?
この地名、「象の檻」に言及した
[77001]で、“なにやら、いわれのありそうな地名”と書きました。
今回のコレクションの中から、青森県・岩手県の「ホロ(母衣・袰)地名」を抜書きし、多数を占めることを確認。
確かに
[83963] グリグリさんが言われるように、北海道に見られる「幌」地名と同様の アイヌ語由来 かもしれません。
ほろいわ 袰岩 宮古市、
大槌町【注1】
ほろがけ 母衣掛 つがる市、袰掛 五所川原市
ほろかわ 袰川 むつ市
ほろし 母衣下(山) 住田町
ほろたい 袰帯 宮古市
ほろたい 母衣平出生 三沢市・東北町、
ほろち 袰地 宮古市
ほろづき 袰月 今別町
ほろない 袰内 中泊町
ほろぬし 袰主 軽米町
ほろの 袰野 岩泉町
ほろべ 母衣部 東通村【注2】、袰部 東通村【注2】、むつ市、八幡平市【注3】
ほろむら 袰村元 今別町
ほろや 袰屋 宮古市
ほろわ 母衣輪 花巻市
ほろわた 袰綿 岩泉町
【注1】コレクション未収録であった岩手県上閉伊郡大槌町袰岩は、ウォッちずをリンクしました。
【注2】青森県下北郡東通村の「ほろべ」
コレクションには東通村野牛母衣部が収録済みです。しかし、ウォッちずで検索したところ、下北半島北東端・尻屋崎付近のこの地では、
風力発電施設 のある 下北郡東通村岩屋に
袰部 がありました。コレクションの「野牛母衣部」にリンクされているmapionを見ると、袰部川沿いの袰部より少し南を通る県道沿い(山中)で不自然な位置です。地名も位置も 袰部川沿いの「東通村岩屋袰部」(mapionにもある)の方が信用できるのではないでしょうか?
【注3】八幡平市の「ほろべ」
コレクションには、岩手県八幡平市の袰部牧場と袰部沢(牧場付近、及び源流近くの2ヶ所)とが収録されています。
八幡平市の住所表示 を見ると、2005年の合併による字名が列挙されています。その大部分は旧安代町なのですが、末尾に安代町字袰部が「八幡平市袰部」に変更されたことが記されています。
昭和合併前の安代町は2村。明治合併前に遡っても田山村・荒屋村・浅沢村の3村ですが【注4】、これらの村名を残した大字はなく、5年前の湯瀬オフ会の時に通った花輪線の 荒屋新町と田山の2つの駅名から旧村名を偲ぶだけです。
多数の字は昔の地名を残し、そのまま八幡平市の字になりましたが、住所表示からは「字」の表記が消えました。無人となっている字も多いと思います。
【注4】
明治8年の合併以前には荒屋村は荒屋村・曲田村・滝ノ又村・目名市村、浅沢村は浅沢村(中佐井村)・岩屋村・五日市村に分れていました。
このようにして「八幡平市袰部」という地名の存在は確認されましたが、その所在地はウォッちず・マピオンのいずれからも分かりません。上記「八幡平市の住所表示」の末尾に記載されていることから、旧安代町の南端、つまり
袰部沢の源流近く と推測するのみです。
【追記1】
旧版の20万分の1地勢図・弘前を見たら、当時の二戸郡安代町の領域内に「袰部」が記されていました。その後集落が消滅して、地名調書
[56419]から消されたものと推察します。
その位置は コレクション記載の「袰部沢」(の一方)と同じでした。【追記1終】
なお、
稀少地名漢字リスト に登録されている
「袰」の用例 も調べてみました。
宮古市大字重茂第8地割字袰鞍口などがあったが、地名変更で消滅したとのことです。
また、このページからたどった
昭和36年青森県告示第119号 には、昭和34/8/1供用開始の尻労袰部線の終点として、「下北郡東通村大字野牛字袰部」という地名がありました。注2を記した時には、山中の「野牛母衣部」の存在を疑ったのですが、「大字岩屋字袰部」と別の「大字野牛字袰部」が存在するようです。
【追記2】
「母衣」「袰」と類似した「ホロ」表記として「母袋」も存在するようです。
八戸市の地名 大字是川の中に 3つの「母袋子(ほろこ)」地名(小母袋子,西母袋子,東母袋子)がありました。
また、注3で記した田山村(>安代町>八幡平市)の袰部にも、かつては「母路部」「保呂部」という表記が使われたようです。(平凡社:岩手県の地名p.715)
かいと 類似の 同音異字地名コレクションが成立する には至らないにしても、何種類かの「ホロ地名」が存在するようです。