[6405]TNさん
かなり遅いレスになってしまいました。申し訳ございません。
註:この問題ですが、合併が促進されなければならない理由の1つに、「行政の広域化への要請」があるとする議論があり、そのことに対して私が、
[6380]にて以下の3つの疑問を投げかけたことに始まっています。
(1)その広域化が要請される要因は何なのでしょうか?
(2)その要請を行っている主体はどのようなものでしょうか?
(3)その要請に答え得る唯一の手段が合併であるとその主体がする理由は何なのでしょうか?
>(1)に対して:モータリゼーションの進展による生活圏の実態と行政単位
>の乖離、その他、行政サービスや自治義務・法定受託事務を低コストで行な
>う、つまり金の節約
私がそもそも思っていたことが、モータリゼーションの進展→生活圏の広域化というのは、本当?ということなのです。確かに、自家用車の急激な普及(モータリゼーション)によって、機動的な移動が可能になりました。モータリゼーションの進展の前と後ではその機動性に格段の差があることは疑う余地はありません。とはいえ、ここで注意しなければならないのは、その車を運転するのは生身の人間であるということです。
たとえば、こどもを保育所に預けてから日中仕事をし、仕事の終了後にこどもを保育所に迎えに行って、その足で買い物も済ませる、といった行動パターンの方がいるとします。朝の忙しい時間という制約もあり、自宅~保育所~職場という移動時間がなるべくかからない立地を選択することになることが多いと思います。また仕事が終わった後も、保育所や買い物をする場所についての選択も、帰宅後の予定が詰まっている場合、やはりなるべく効率的に移動できる場所にある店を選ぶことになるかもしれません。
つまり、機械としての自動車の機能がいかに優れたものであるとはいえ、日常生活の時間の制約の中で行動する人間が運転する以上は、現在の市区町村が複数統合される程度までほどの広大な生活圏の広域化は起こっていないような気がするのです。また、自家用車の増大により、道路の渋滞は各地で慢性化しています。
ですので、生活圏の広域化の観点から、合併をすすめるべきだとする議論に対しては、私は素直には賛同できないのですね。小規模な自治体がある程度の大きさにまとまって、「行政サービスや自治義務・法定受託事務を低コストで行なう(金の節約)」ことを目指すという方向であるというのであれば、一応は納得できるのですが。
ただ、TNさんが、
>訂正その2:広域化すればコストが低減する、という考えは違いますね。ITの進化を
>割り引いても広域化によって移動のコストが増える場合もありケースバイケースなので
>すから、この書き方は誤解がありますね。
と補足されていることも、分かります。いくら規模を大きくしようとしたとしても、自治体の面積が巨大になりすぎ、移動にかなりのコストを要するようであれば、本末転倒ということもあり得ますね。
>(2)に対して:国(総務省)、将来の道州制を見越して「州ー広域化した市町村」の
>ラインをつくる、つまり県の廃止(事務権限の委譲が行なわなければ、単なる県合体に
>終わる危惧あり)
私は、合併を推進する国のほか、そのような広域化が必要と考える市町村自らの要請なのかというニュアンスで、法律の条文を読んでいました。
参考:
[6379]いなさん の書き込みより
「市町村の合併の特例に関する法律(合併特例法)」(昭和40年法律第6号)の概要
(平成17年3月31日までに行われた市町村の合併について適用)
1、 趣旨 (第1条)
市町村行政の広域化の要請に対処し、自主的な市町村の合併を推進し、あわせて合併
市町村の建設に資することを目的とする
>(3)に対して:広域行政制度(広域連合・一部事務組合)の未普及、つまり事務権限
>委任の内容がはっきりしない、「都道府県-(広域連合)-市町村」という屋上屋を首
>長が嫌うなど広域行政が手詰まりの為、合併を唯一の手段とする
そうですね。広域行政への対応の一手法として、広域連合や一部事務組合の制度がありますが、この手法の場合、つくった連合や組合ごとに議会や監査委員事務局など一般の自治体備えている機関を一通り設けなければならず、もしこれが1つの自治体に変えられるのであれば、それなの重複がなく、効率的な施設運営や制度運用が行えるかもしれませんね。
ただ、(1)でのコストの話との関連もありますが、1つの自治体としては広すぎて移動コストなどがかかってしまうが、ごみ処理施設や介護保険制度を個々の自治体が単独で建設したり運用したりするのは難しいな、といった地域にとっては、一部事務組合等は、広域行政の要請に答え得る有効な手法であるとも思えます。
以上が私の所感ですが、少なくとも生活圏の広域化とモータリゼーションの進展とをステレオタイプに結びつけて、行政の広域化の議論に進めていくことについては、私はいまいち納得できないんですよね。