[83606] ぺとぺと さん
ところで上述の住所録上、大河原営業所の住所は「柴田郡大河原町?町」と字表記なし、角田営業所の住所は「角田市角田字?町」と字表記ありとなっていましたが、千本桜流でいうとこれらはアリでしょうか。
私の場合、「字」と言う字句を省いて大河原町町と書いたことがなく、必ず「字」を付して大河原町字町と書きます。角田市の場合も「字」を省かずに角田市角田字町と書きます。全国的に見れば町と言う小字名は珍しいようですが、宮城県では田尻字町、富谷字町など、あちこちに点在します。岩手県一関市にも千厩字町、藤沢字町、花泉字町などがあります。しかし、大河原町の字町は他と異なる点があります。他は、大字の中に小字がありますが、大河原町字町は大字がなくて自治体名の直ぐ下に町と言う名の小字があります。「字」という字句を省くと、自治体名に付く「町」と小字名の「町」がくっついて、大河原町町になります。感覚的な事でしょうが、馴染めない表記です。
大河原町字町と同じケースが、かつて徳島県にもありました。貞光町字町です。「字」という字句を省くと貞光町町になります。貞光町は平成の合併で、つるぎ町になり、現在は貞光を大字として扱い、つるぎ町貞光字町と表記するようになっています。しかし、マピオンは字町の「字」を省いて、つるぎ町貞光町と記載しています。平成の合併前に存在した自治体の貞光町と混同して紛らわしいですね。
仙南広域行政圏に属する市町の「大字」と「字」の扱い方を見てみます。仙南圏は2市7町ですが、丸森町については確信が持てない点があるので除外し、2市6町を対象とします。この地域には「字」という字句を付す区域と、付さない区域があります。「字」を付さない区域は、白石市と柴田町の住居表示実施区域および柴田町の町名地番整理区域です。
白石市大手町、
柴田町北船岡二丁目などが住居表示実施区域で、
柴田町西船迫二丁目などが住居表示を実施したかのように見える町名地番整理区域です。柴田町の場合、既成市街地には住居表示を実施し、農地などを土地区画整理して生まれた新市街地には町名地番整理を施しているように見受けました。今回のテーマは「大字」と「字」の扱い方ですから、「字」を必要としない住居表示実施区域と町名地番整理区域は除外して前に進みます。
仙南2市6町の住所のうち、「字」を表記するものは下記の4種類に分類できます。
| 旧村名 | 接頭辞 | 大字名 | 接頭辞 | 小字名 | 行政上の正式表記 | マピオンの表記 |
類型1 | 越河 | ---- | 平 | 字 | 入 | 白石市越河平字入 | 白石市越河平入 |
類型2 | ---- | 大字 | 円田 | 字 | 曲木畑 | 蔵王町大字円田字曲木畑 | 蔵王町円田曲木畑 |
類型3 | ---- | ---- | 岡 | 字 | 草刈谷地 | 角田市岡字草刈谷地 | 角田市岡草刈谷地 |
類型4 | ---- | ---- | ---- | 字 | 宮前 | 七ヶ宿町字宮前 | 七ヶ宿町宮前 |
【類型1】「旧村+大字+小字」の住所ですが、大字には接頭辞「大字」を付さず、小字には接頭辞「字」を付します。昭和の合併で消滅した旧村名を継承しているのが特徴で、2市6町では白石市特有の形式です。表記例は白石市越河平字入、白石市白川犬卒都婆字小松方尻です。マピオンのように「字」抜きで「越河平入」と書くと、4文字で1つの地名に見えますが、話言葉では3つに区切って「越河の平の入」となります。「白川犬卒都婆小松方尻」などは、区切る場所を間違えると意味が通じなくなります。なので、住民は滅多なことで接頭辞の「字」を省かないと思います。
ちなみに、類型1の住民から届いた年賀はがきは1通だけですが、行政上の正式表記で書いてあり、接頭辞の「字」も書いてありました。
【類型2】「大字+小字」の住所で、接頭辞「大字」「字」ともに付します。蔵王町、村田町、柴田町、川崎町で見られる形式です。表記例は蔵王町大字円田字曲木畑、村田町大字村田字町、柴田町大字船岡字七作、川崎町大字前川字中町です。昭和の合併以前は、大概の自治体がこの形式で住所を表記していました。しかし、昭和の合併を境にこの形式は減ってきました。原因は、(1)昭和の合併時に角田市と大河原町が、大字名に接頭語の「大字」を付さなかった。(2)昭和の合併時に白石市と大河原町が、自治体名と同名の大字(大字白石本郷と大字大河原)を廃止した。(3)後に七ヶ宿町が大字を全廃した。(4)昭和50年代以降、柴田町と白石市で住居表示の実施が進んだ。(5)柴田町が町名地番整理区域に「字」を付さない住所形式を採択した。以上の原因で、類型2に該当する区域は狭まっています。
ちなみに、類型2の住民から届いた年賀はがきは9通。内訳は、接頭辞「大字」「字」を省かず行政上の正式表記で書いたものが6通。接頭辞「大字」「字」ともに省いたものが2通。そして、大字を省いて小字だけ書いたもの1通でした。「村田町大字村田字町」の大字村田を省いて「村田町字町」と書く人がいますね。看板などでも見かけます。この書き方だと、江戸期の村田本郷(本郷は村の意)が単独で現行村田町になったみたいで、歴史に反します。突き詰めて考えれば、他の大字に対して失礼な書き方だと思います。
【類型3】「大字+小字」の住所ですが、大字には接頭辞「大字」を付さず、小字には接頭辞「字」を付します。角田市、蔵王町、大河原町で見られる形式です。表記例は角田市岡字草刈谷地、蔵王町遠刈田温泉字本町、大河原町大谷字末広です。自治体名に係る接尾辞の「市」や「町」が区切りとなるので、「大字」という字句が無くても良い訳です。類型3は昭和の合併時に発生した形式ですが、当時から接頭辞の「大字」を不要とする考えがあったようです。でも、小字に係る「字」という字句まで省略する考えは薄かったと思います。
ちなみに、類型3の住民から届いた年賀はがきは29通。内訳は、接頭辞の「字」を省かずに行政上の正式表記で書いたものが23通。接頭辞の「字」を省いたものが2通。大字名を省いて小字を正式に書いたものが2通。そして、大字名と接頭辞の「字」を省略したものが2通でした。「大河原町大谷字○○」の大字名「大谷」と、小字の接頭辞「字」を省いて「大河原町○○」と書く人がいますね。しかも、郵便物が届くのだから、住所などこれで良いのだと確信しているようです。町内の特定の大字だけを省略すると、次にどのような地域変化が起きるのか。住所行政に携わる人には心して欲しいものです。
【類型4】大字なしで接頭辞「字」を付した「小字」だけの住所です。白石市、大河原町、七ヶ宿町で見られる形式でしたが、近年、川崎町にも同類が発生しています。表記例は白石市字延命寺北、大河原町字町、七ヶ宿町字宮前、川崎町字青根温泉です。これらは、大字を廃止して小字を剥き出しにした結果生じた住所形式です。昔からの小字は、面積が狭く人口も少ないのが一般的です。ですから、大字に比べて知名度が落ちます。七ヶ宿町役場の前で「七ヶ宿町宮前はどこですか」と尋ねても、返答できる町民は滅多にいないでしょう。類型4は、自治体名に係る「市」や「町」という字句が区切りの役目を果たすので、小字名に係る「字」という字句を省いても意味が通じます。白石市字延命寺北に住む知人からの郵便物には、「字」の字句を省いて白石市延命寺北と書いてあるのが常でした。
ちなみに、類型4の住民から届いた年賀はがきは23通。接頭辞の「字」を省かずに行政上の正式表記で書いたものが16通。接頭辞の「字」を省いたものが7通でした。