[114706] しまなみ さん
随分前に素数人口を出してネタ切れしていましたが、
「そう言えばこれがあるじゃん」と言うものを思いつきました。
題名の通り、フィボナッチ数です。
ここ最近は全く見なくなりましたが、自動車レースのF1では、1位が10ポイント、2位が6ポイント、3位が4ポイント、4位が3ポイント、5位が2ポイント、6位が1ポイントで、それ以下は完走してもポイント無しでした。1991年度当時高校生だった私は、これだと下位のレーサーの相対的な能力を比較できないと考え、ポイント制にフィボナッチ数列を見出し、強引に黄金比の逆数の等比級数で7位以下を含めてドライバーのポイントを計算し直し、誰それは高評価で、誰それは実際はもっと評価されるべきなどと閲に入っていました。
ところで人口の順位と人口に法則性を探るとなると、地理学には「
順位・規模法則」または「ランクサイズルール/rank-size rule」というのがあります。多分過去にこの落書き帳でも誰か話題に出していると思って検索しましたが・・・誰も話題に出してないですね?
つまりある地域の都市の人口を、人口順に並べた際、順位の対数と人口の対数に相関がみられるという法則です。「対数」は高校以上で習う概念ですが、ある数(x)の別の数(a)を底とする対数(y = log_a (x))とは、ある数(x)が底となる数字(b)の指数(y)として表現可能な場合(x = b^y)の、指数(y)のことです。"_a"は下付き、"^y"は上付きで記述されるものです。まあ分かりやすく説明すると、
0.01は10の-2乗
0.1は10の-1乗
1は10の0乗
10は10の1乗
100は10の2乗
というふうに、指数で表現できます。さらに
√10 = 3.1622776...は10の0.5乗
10√10 = 31.622776...は10の1.5乗
というふうに、指数部分も整数以外に拡張できます。この時10を底とする対数である常用対数(log_10)を用いると、それぞれの数字の対数は以下のようになります。
log_10 (0.01) = -2
log_10 (0.1) = -1
log_10 (1) = 0
log_10 (√10)= 0.5
log_10 (10) = 1
log_10 (10√10)= 1.5
log_10 (100) = 2
身近なところでは、対数は地震のマグニチュード、星の等級なんかでも使われています。人間はものの大きさを感じる際、大きすぎたり小さすぎたりする場合には、対数に近い感覚になると言われており、実際には1等星は6等星の100倍明るいのですが、その間の明るさの違いは対数的に感知するというのです。
なお、数学の世界では、底の数字を省略して「log」 と書いてしまうと、ネイピア数を底とする自然対数に限定されてしまうのですが、物理や化学の世界では、ネイピア数を底とする自然対数を「ln」、底を10とする常用対数を「log」と表記するなど、自然科学の分野でも専門用語の「方言」が異なります。
さて、順位の対数を横軸、人口の対数を縦軸にプロットして、それが直線に乗る!という話を大学1年の時に私は一般教養の地理の講義で聞いて感動しましたが、実際に手元の日本や海外の都市人口の数字を使って、手書きでグラフにプロットしてみましたが、必ずしも直線には乗りません。なんというか、平成の大合併前であっても、人口が少ない方の自治体で末広がりになり、最小規模の方で再び急に下がります。当然ながら東京のように一局集中しているような都市が例外となるのは分かるのですが、直線に乗ったと断言できるような部分は一部を切り取った場合のみでした。高校生の時に人口集中地区を独自ルールで合算した数字が手元にあったので、これでプロットした場合、むしろ相関は悪くなりました。とはいえどうやっても相関係数はまあまあ良好で、概ね直線に乗るねと納得していました。
しかしながら身近にいた物理学の専門の人にこのルールを説明した時、
「両対数でプロットするの?そんなの相関が良くなって当たり前じゃん?」
と秒で指摘され、はっとしました。そうです、既に順位順に並べている時点で、人口の方も順位に対する縛りがあり、上下方向にずれるはずがないのです。しかも両対数グラフにプロットしている時点で、ある程度の直線性が保証されているのです。このランクサイズルールは、それでいて直線に乗らなかった場合の説明の方が重要だったのです。
順位と人口の対数をプロットして直線に乗る・・・と書きましたが、これは即ち、一番人口の多い都市に対し、2番目以降がその人口の半分、1/3、1/4、1/5・・・1/nと、順位nの逆数に比例する人口として記述できる状態を指します。で、1位~10位の上位の方で直線からずれるのは、一極集中だとか色々説明ができるのですが、人口が非常に少ない方でも直線からずれる理由としては、結局のところ「人口」というのは連続数ではないことを考慮するべきなのでしょう。人が0.5人存在する状態はありませんし、文化的には夫婦、家族や集落など、行政とは違うレベルで人口は縮退しています。ランクサイズルールの単純化したモデルではこの辺を無視しています。ランクサイズルールが適用できる範囲は相当に限定的といえるでしょう。とはいえこの話に量子化モデルを導入したとしても、まあ意味のあるモデル式ができるとも思えませんが。
とはいえ、統計データがないような過去の
歴史上の都市の推定人口を算出する際なんかでは、このランクサイズルールを使っている事例がたくさんあるんですよね。その意味で過去の都市人口のデータはそのまま信用してはいけません(リンク先の数字をまとめたのは自分ですが)。
ところで、都市人口の順位がフィボナッチ数列に従った場合ですが、これは即ち等比数列なわけですので、横軸に順位、縦軸に人口の対数をプロットした「片対数」であれば見事に直線に乗りますが、両対数プロットしてしまうと、当然ながら順位が増えるほど落ち込んでいくグラフになってしまいます。とはいえ、例えば21位~100位と切り取ってくると、相関係数は0.96を超え、切り取り次第では直線に近づきます。
【リンク修正】