[82880] ペーロケ さん
私は愛媛、山口、広島の居住経験がありますが、「屋代島」と呼んでいるのを一度も聞いたことがありません。
私は 大野瀬戸の沿岸に約4年間 住んでいました。対岸は「厳島」です。
眼前に臨むのは緑濃い原生林に包まれた島の南部で、島の北部にある厳島神社の朱塗りの鳥居や社殿は見えなかったのですが、「宮島」と呼んでいました。
「屋代島」からは 30km以上離れていましたが、ここでも お説のとおり「大島」と呼んでいたと思います。
地元としての実感は 付近の島々との比較において 「大島」(面積128km2)であり、それだけで十分に通じます。
これは、2004年に
周防大島町 が発足する前の実感ですが、「周防大島」の呼び名は、あまり聞かなかったように記憶します。
わざわざ国名を付けた新自治体名は、合併した4町の1つ大島郡大島町と同名になるのを回避するのが最大の理由でしょう。
もちろん、もともと相対的な言葉である“大島”は、小さな無人島に至るまで日本中に数多く存在します。
参照:
「大島」コレクション、
アーカイブズ「大島」
最大の奄美大島(712km2)の他に、伊豆諸島の大島【伊豆大島】(91km2)も有名です。この3大島以外にも 1000人以上の人口がありそうな大島として、しまなみ海道の大島【伊予大島、(郡名から)越智大島】、炭鉱から造船への産業転換を果した西海市の大島【(これも大島町時代の郡名から)
西彼大島】、宮城県の大島【気仙沼大島
[15299] 】、遣明船の寄港地であった的山大島(あずちおおしま)
[75121](2005年まで長崎県最後の村であった大島村)、♪ここは串本 向いは大島の【紀伊大島】などがあります。
日本最大の無人島も「大島」【渡島大島、松前大島】です
[33529]。
大島の名称について。
国土地理院の
地名集日本や
島面積によると、奄美大島や的山大島のように冠称付きの大島は例外的存在で、大部分は単なる「大島」です。大島は、本来的にはローカルで通用すべく生れた冠称を必要としない地名であったのでしょう。
上記括弧内で示した【○○大島】は、本来はローカル地名であった「大島」の一部が、伊豆大島のように全国に知られる存在になり、他の地域の大島と区別する必要から生じた別名である と思われます。
本州、北海道を始めとして、「大きすぎる島」は大島とは呼ばれないようです。沖縄本島も「本島」。
近くの島と相対的に見比べた結果が「大島」なのでしょう。奄美には徳之島があり、屋代島も防予諸島の中で山口県の平郡島や長島、愛媛県の中島などと比べることができるから「(相対的な)大島」と呼ばれたのでしょう。
世界最大の大島は、面積約1万km2の Big Island(ハワイ島)?
地名には自然の地物(例えば島)に付けられた「自然地名」と、人々が社会生活を営む場所(例えば集落)に付けられた「居住地名」とがあるようです。
[56419]参照
思うに、厳島・屋代島は「自然地名」なのですが、地元の人々が普通に会話に使っているのは、より身近な「居住地名」である宮島・大島なのだと思います。
厳島で居住者がいるのは北部だけですが、2005年に廿日市市と合併するまで 全島が広島県佐伯郡宮島町でした。日本三景「安芸の宮島」で知られる「宮島」の名が、自然地名の厳島に代って日常会話の島名として使われることに違和感はありません。
屋代島は 2004年の合併で周防大島町になる前は、山口県大島郡の4町でした。郡名そのものが島名「大島」の存在を示唆しており、これが屋代島に代り使われるのも自然なことと思われます。
このように理解しながらも、
[82870]で敢えて「屋代島」と記した理由を書きます。
1つは、地元での会話と違う 落書き帳の記事では、全国的視野に立って、数多くある大島の中に埋もれやすい名称でなく、独自の識別性を発揮する島名 を記すのが好ましい と考えたからです。
更に重要な理由は、今回のテーマ「海と島」を、自然地名に関する記事として捉えたからです。
「屋代島」は、国土地理院が その各種出版物、すなわち『地勢図(松山図幅)』、前記の『地名集日本』(94/97コマ)、『島面積』(4/10コマ)などで使っている唯一の島名です。
ウオッちず でも自然地名としての注記に使っています。但し、居住地名の周防大島町に比べてずっと小さな文字です。
山口県当局も、自然地名としては「屋代島」を使っています。
海岸保全区域
確かに地図では大島(屋代島)と注記がありますが
上記のように、地勢図などでは「屋代島」単独で使われていました。『日本の島全図 Shima:zu』
[82777]も同様です。市販アトラスでは平凡社が「屋代島(周防大島)」、帝国書院が「屋代島(大島)」となっていました。
「大島(屋代島)」は発見できませんでした。
屋代島・大島に関する議論から離れます。
実は、この付近の島の自然地名で最も気になるのは、2004年の4町合併で全島が「江田島市」になった島です。
『島面積』(3/10コマ)には“江田島・能美島 えたじま・のうみじま 91.54km2 江田島市”と記されていました。
古い地勢図(手元の1970年版)は、3箇所に江田島・西能美島・東能美島と書き分けていました。
しかし、『日本の島全図 Shima:zu』や平凡社のアトラスが“江田島・能美島”なっていることから、最近は能美島の東西は区別されていないのかもしれません(未確認)。
ウオッちずも江田島と能美島と書き分けていますが、居住地名の江田島市に比べて小さな文字であることは、屋代島の場合と同様でした。
大きな島なのに、『地名集日本』には収録されていません。国土地理院も割り切れずに苦慮している?のかもしれません。
外野席からの勝手な推測を記せば、居住地名が江田島市に統一されたので、時が経過すれば 自然地名も「江田島」に統一されてくる のではないか?
そんなことを考えながら過去記事を検索したら、さすがに 地元出身の ゆうさん が発言していました。
[30880] ゆう さん 島の名前と自治体の名前 ~江田島市官報告示に寄せて を御覧ください。