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YTさんの記事が20件見つかりました

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記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[81923]2012年10月8日
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[81883]2012年9月24日
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[81876]2012年9月22日
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[81875]2012年9月22日
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[81274]2012年8月8日
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[81273]2012年8月8日
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[81272]2012年8月8日
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[81271]2012年8月8日
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[81270]2012年8月8日
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[81225]2012年8月1日
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[81218]2012年7月31日
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[81192]2012年7月28日
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[81178]2012年7月24日
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[81167]2012年7月22日
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[81160]2012年7月22日
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[81125]2012年7月16日
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[81124]2012年7月16日
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[81123]2012年7月16日
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[81075]2012年7月12日
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[81068]2012年7月10日
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[81923] 2012年 10月 8日(月)15:54:45【1】YT さん
現在の境域による各回国勢調査時の市区町村別人口
[81914] 白桃 さん

はい、公開されております。と言うか、2005年国勢調査時の境域に組み替えた各国勢調査時点での自治体人口を記載した本があります。(3万円ぐらいする本でして、それを買うためにお小遣いをもらって、政府刊行物ナントカセンターに向かったのですが、どういうわけかエチルアルコールに代わってしまいました:マル秘)

自分が把握している報告書は、『昭和55年10月1日の境域による各回国勢調査時の市区町村別人口 : 大正9年~昭和55年』だけなのですが、これは最近でも毎回出ているものなのですか?

実は上の本を使ってOCRソフト経由で昭和55年以前の人口をまとめ、平成22年の国勢調査時の境域に組み替えた市区町村別人口を算出しようと数か月前に計画をたてたのですが、肝心のOCRソフトがエラー吐きまくりで、挫折しているところです。OCRソフトはワープロ組が当たり前となった最近の本であれば日本語フォントの再現も良いようですが、比較的最近の活版印刷であっても今いち反応が悪いようです。せめて数字だけでも正しく読み込んでくれたら楽なのですが・・・戦前のフォントに対してはほぼ無力なのは言うまでもありません。

9月後半になったら多少仕事が楽になると思っていたら、ここ最近は大量の仕事が舞い込んでおり、人口をまとめる作業に時間を割くことができない状況となっています。近代デジタルライブラリーなどで過去の統計表も公開されるようになっていますが、印刷の質の悪さと一部解像度の悪さもあって、例えば「8」と「3」、「5」と「6」などが同じに見えることもあり、結局個々の男女別人口をチェックしないと駄目だったりするケースが多いのがネックです。『日本帝国人口静態統計』などは、かえって縮小印刷版の方が読み易かったりします。
[81883] 2012年 9月 24日(月)03:19:58【5】YT さん
『日本帝国文部省年報』の都邑人口は途中から現住人口ベース?
[81882] 千本桜 さん

まずデータの出所は『日本帝国文部省年報. 第10(明治15年)』「根室県年表」の都邑学事統計と『日本帝国文部省年報. 第11(明治16年)』「根室県年表」の都邑学事統計です。この時代は府県の領域が揺れ動いていたため、[81875][81876]では旧国名で揃えています。また「人口及学齢就学児童増減比較表」によると、

本県管内人民ハ概シテ海産ニ依テ以テ其生計ヲ立ルモノナリ。故ニ一旦商業上景気ヲ失スルカ或ハ海産ノ不良ニ会スル時ハ惣チ四方ニ流離移転スルノ徒モ亦少シトセズ。本年ノ如キモ薄漁ノ積衰ト商業ノ不振トニ因リ昨十五年ニ比スレバ人口(北見千島両国ヲ除ク)男一千百五十二人女二百六十五人ヲ減少ス。

旧国人口明治15年度明治16年度
釧路国3,3222,118
釧路国2,1531,529
釧路国合計5,4753,647
根室国3,5233,575
根室国2,1982,557
根室国合計5,7216,132
総計6,8455,693
総計4,3514,086
総計合計11,1969,779

と、釧路国の人口は3600人~5500人で、かなり人口に変動があったことを記録しています。

これに対し内務省の『日本全国民籍戸口表. 明治15年調』、『日本全国民籍戸口表. 明治16年調』、『日本全国民籍戸口表. 明治17年調』によると明治15年1月1日調の釧路国の本籍人口は2616人、根室国の本籍人口は1092人、明治16年1月1日調の釧路国の本籍人口は2729人、根室国の本籍人口は1531人、明治17年1月1日調の釧路国の本籍人口は2821人、根室国の本籍人口は1472人です。また明治12年度の『日本帝国文部省年報』における人口の比較から、『共武政表』と同様に文部省の人口統計は、明治15年度は明治16年1月1日調、明治16年度は明治17年1月1日調の統計を採用していると推測されます。そこで1年年次をずらして文部省の人口統計と内務省の本籍人口統計を比較すると、それでも釧路国で文部省調査人口は本籍人口の1.3倍~2.0倍、根室国で文部省調査人口は本籍人口の3.9倍~4.2倍と、大分数字が異なります。このことより文部省の人口統計はおそらく「本籍人口」ではなく、「現住人口」で算出しているものと推測されます。明治13年以降の内務省による釧路国の本籍人口統計は以下の通りです(明治13年1月1日調の釧路国各郡の本籍戸数は不詳)。

M13年人口M14年戸口M14年人口M15年戸口M15年人口M16年戸口M16年人口M17年戸口M17年人口
厚岸郡532154581263585334702383699
釧路郡1,1212951,1763631,1953551,1383631,235
白糠郡38495384107399111431104431
川上郡24158242532385824758246
阿寒郡7918821882158225129
足寄郡1162711726117261291581
網尻郡9800
釧路国2,5716472,5828302,6168992,7299482,821

一方同じ内務省地理局の『地方行政区画便覧』は、戸口に関しては「明治17年1月現在」の戸口・人口を原則して載せているはずなのですが、釧路国1101戸6064人という人口は内務省調査の本籍人口の2.1倍となっており、地域別人口も異なります。明治18年以降の人口を採用している可能性もありますが、それでも内務省調査の本籍人口の1.4倍~1.7倍となっており(釧路国の明治18年1月1日調本籍人口は1101戸4270人と急増、明治19年1月1日調本籍人口は3629人と本籍人口641人の減少)、数字的には明治19年1月1日調の釧路国現住人口7715人(本籍人口の2.13倍)にむしろ近く、『地方行政区画便覧』も北海道のケースでは明治17年前後の現住人口を採用しているのかも知れません。

戸長役場ノ所在地町数村数戸数口数
厚岸郡湾月町472691,400
厚岸郡浜中村152351,437
釧路郡昆布村386472
釧路郡真砂町233281,820
阿寒郡(同上)41180
川上郡熊牛村555265
白糠郡白樺村398464
足寄郡(同上)419126
合計7341,1016,064

文部省統計における明治15年度の釧路国5475人中に占める浜中1227人、あるいは明治16年度の釧路国3647人に占める浜中891人という人口比率を、『地方行政区画便覧』の人口6064人に対して乗じると、大体1359人~1481人に相当します。これは『地方行政区画便覧』記載の浜中村外五箇町村連合の人口1437人とほぼ等しい数字です。

以上から『日本帝国文部省年報』では、浜中村に戸長役場を置く1町5村全体をそのまま浜中の都邑人口として扱ってしまったと推測できます。もちろん浜中村外五箇町村連合を構成する浜中村、霧多布村、琵琶瀬村、後静村、散布村、榊町のいずれかに、人口の大部分が集中していた可能性もありますが。

【追記】『共武政表.明治十二年』『共武政表.明治十三年』によると(明治13年1月1日調の釧路国、厚岸郡の総戸数は不詳):

輻輳地M13年始戸数M13年始人口M14年始戸数M14年始人口
奔渡村30125
湾月町2313254157
榊町2010163137
厚岸郡509106562
釧路国2,49757112,662

厚岸郡の明治14年1月1日調本籍人口106戸562人(釧路国全体では571戸2662人と、内務省の647戸2582人より若干少ない)の内、54戸157人が湾月町、63戸137人が榊町に暮らしていることになっています。人口はともかくとして、戸数は両者を足すと119戸となり、厚岸郡の総本籍戸数を上回るという奇妙な現象が見られます。これは世帯数に相当する戸数と、家の数を混用しているためかも知れません。内務省の数字である明治14年1月1日調の厚岸郡154戸581人を正しい数字と考えるなら、戸数的には明治14年年始の時点で厚岸郡の本籍戸数の1/3を榊町が占めていたことになります。明治15年度の文部省の人口統計が明治16年1月1日調現住人口(当時の北海道では本籍人口の数倍になることもあり、また厚岸郡の本籍人口は明治15年1月1日調263戸585人から明治16年1月1日調334戸702人に急増している)である可能性が高いこと、漁師の越冬地における現住人口の増減では数百人レベルで変化するのは当たり前、また明治12年から明治17年までは榊町に戸長役場が置かれていたことを考慮すると、仮に「浜中」という町場が存在したのなら、それは榊町のことということになります。

【細かい数字等を修正】
[81876] 2012年 9月 22日(土)18:33:10【1】YT さん
『日本帝国文部省年報』による明治10年~18年の都邑人口 (2)
旧国都邑明治10年明治11年明治12年明治13年明治14年明治15年明治16年明治17年明治18年
羽前米沢27,54429,35427,74128,05230,91430,40931,37433,16833,090
羽前山形24,14224,52521,58022,57123,37923,53323,88536,78523,803
羽前鶴岡25,06425,11424,82724,55622,08921,93321,82621,82621,049
羽後酒田18,83310,88517,43718,23218,23318,24718,36919,82719,827
羽後横手10,74910,69110,733
羽後秋田36,05433,32633,34630,44631,93132,20032,79830,28731,469
羽後土崎10,80510,75610,87910,64010,94111,08410,52610,694
羽後能代10,31910,02410,41610,05810,33910,32310,612
若狭小浜15,47915,52415,47215,28017,36914,84515,30115,19014,931
若狭高浜2,9912,9933,1683,3033,2403,335
越前敦賀12,65212,64112,84015,43216,03115,11815,33915,25715,706
越前武生11,11612,30711,56611,80611,26712,17012,52912,63913,023
越前鯖江4,7914,8094,7414,7234,7044,855
越前福井40,86341,56041,42141,31139,76841,59242,40043,61842,136
越前丸岡3,8573,772
越前坂井9,7269,99611,0679,4929,0969,8099,624
越前大野9,4599,4809,4599,6299,6319,6529,964
越前勝山6,8556,8746,8736,8606,8576,8936,894
加賀大聖寺9,84810,0669,9919,96810,03610,01110,05410,08710,038
加賀小松10,42110,54710,56110,69410,92511,13511,52711,51612,370
加賀金沢108,263106,897107,979108,956107,624108,546109,641107,005104,577
加賀美川5,3795,4585,3386,266
加賀松任4,9665,0394,7485,273
加賀金石9,7289,7949,7399,7769,87710,05810,02010,018
能登七尾8,4118,5718,4768,6188,7088,7978,999
能登輪島9,5299,4549,2439,95910,1189,6929,944
越中富山46,47347,96247,60848,63549,22144,25346,16648,17353,123
越中魚津10,79110,87210,64811,04310,61010,91011,02811,29211,112
越中泊町6,2144,8363,7764,916
越中滑川6,0775,0726,9354,987
越中今石動9,3179,4949,4475,038
越中井波5,4805,5975,5714,990
越中城端4,4764,4634,5584,638
越中福光4,4493,9733,8113,350
越中福野5,2605,4745,5502,038
越中高岡24,69425,22125,22426,37926,20620,85427,18123,20523,782
越中新湊19,36020,27919,48419,44618,50219,78919,86718,65421,599
越中氷見9,2468,8448,8838,713
越中東岩瀬6,6734,4975,7415,976
越後村上10,83611,21611,61511,868
越後新潟33,83237,35237,39437,07637,27237,29538,23138,68240,038
越後三条14,87315,87816,73310,64210,66818,35524,84418,90515,021
越後新発田18,06218,12917,66310,94518,44318,40517,05716,70018,000
越後長岡20,02916,14416,56020,74022,08822,07521,72221,91930,740
越後柏崎10,74411,15711,8149,08112,17311,75211,69911,69411,009
越後高田25,65124,74124,30724,41523,69323,38924,50924,26824,795
佐渡相川16,97913,03012,61912,59312,21712,54211,97812,32912,516
丹波亀岡7,2446,9366,5507,2237,0107,0577,121
丹波園部6,1566,1936,1756,6025,7124,1594,921
丹波福知山5,1494,9385,3175,3865,3665,3704,996
丹後舞鶴7,3837,4217,3307,3389,5499,4739,528
丹後宮津11,13311,06411,07211,37811,24011,43611,22111,657
因幡鳥取39,59338,54936,69735,46336,38035,49134,75934,99933,796
伯耆米子11,06810,65910,78711,41911,17611,61711,34411,44912,010
伯耆倉吉6,7836,7866,879
出雲松江38,38237,93337,48937,31437,03236,51938,60734,07228,291
播磨明石18,32716,76618,60818,51818,48020,19719,99418,50513,118
播磨姫路25,92427,44323,15824,95324,96029,32129,19923,01522,960
美作津山14,50015,20214,05714,56714,72414,75814,94114,88514,929
備前岡山32,95332,77134,56934,27034,67433,24431,97735,38733,424
備中笠岡6,9647,0537,234
備中倉敷7,3767,7897,593
備中高梁5,7285,6225,684
備後福山17,72117,64817,23717,02216,98817,09416,87416,08616,133
備後尾道16,29016,31216,04816,71516,34917,20216,24517,40117,127
安芸広島75,76078,00676,99075,98678,10473,45175,79973,73379,333
周防山口10,08510,77711,03010,84010,82410,99311,17512,09812,489
周防三田尻6,5668,0765,8585,3316,3806,9166,626
周防宮市6,3147,6235,0332,5343,3383,3703,131
周防徳山11,66811,73411,75811,79711,90012,05911,79311,82711,962
周防岩国11,29511,36611,52111,54511,55612,19312,18912,03611,331
長門30,50830,83841,88640,32543,09942,46443,63442,77141,135
長門下ノ関/赤間関19,53220,74320,22223,52823,79224,07327,47525,30425,463
長門豊浦6,1545,9885,9705,8916,3756,6256,644
紀伊和歌山62,19762,92260,49157,68257,24556,45156,88755,73454,511
紀伊田辺7,1007,16911,30811,26610,34810,33510,21311,39311,302
紀伊新宮6,8138,8879,1989,3649,1889,3749,592
紀伊木ノ本3,022
紀伊尾鷲4,943
阿波撫養10,04311,56510,65411,06529,56930,173
阿波徳島57,00349,47155,48962,01258,51857,50258,16666,12662,859
讃岐高松47,88348,17833,12933,15932,76439,76245,97045,46145,242
讃岐丸亀13,18312,14012,14112,96513,07012,98712,97615,28115,342
讃岐観音寺11,22911,147
伊予西条4,5584,5043,9384,125
伊予今治6,69212,93312,81413,44613,34013,91314,45812,48513,041
伊予松山28,29428,30627,93727,94927,82528,41629,13329,74030,075
伊予大洲3,6793,4547,1207,0436,9905,9496,282
伊予宇和島11,61612,63412,34612,23312,43412,33012,40412,42812,332
伊予吉田5,3045,3176,2984,5795,0396,0245,114
土佐高知27,01228,99637,11741,62642,42340,87842,08539,94744,207
筑前福岡22,34723,83121,74621,89022,08221,75021,07323,03220,534
筑前博多20,34021,65024,15424,38324,35824,20624,00424,07726,491
筑後久留米15,42015,48725,85225,64222,47622,25622,01622,28022,878
筑後柳川19,79119,95718,37418,43918,53317,39518,39718,29618,413
豊前小倉15,76515,7949,6019,80410,227
豊前今津11,676
豊前中津23,00012,25512,33112,25912,61212,95811,52314,85315,638
豊前宇佐1,6421,645
豊前長洲5,0745,075
豊後高田6,7465,1385,0535,062
豊後竹田5,9926,7629,0529,307
豊後杵筑6,5016,6456,3265,979
豊後日出3,9923,9844,057
豊後別府6,2506,1386,346
豊後大分7,58317,36811,32011,93513,57911,68614,44614,47814,412
豊後鶴崎5,2795,3685,485
豊後3,1092,2462,250
豊後日田/豆田8,2094,1424,0244,224
豊後1,9184,5414,659
豊後佐賀ノ関5,0565,0405,186
豊後臼杵10,12011,76311,60411,70211,94011,82012,32312,21912,212
豊後佐伯6,0275,7545,724
肥前佐賀29,51223,83725,74623,28524,07724,07721,72024,05724,688
肥前長崎46,66132,81532,87638,75639,56632,79233,07357,88547,790
肥後熊本44,77939,78043,96543,83645,89442,26142,21742,55242,511
肥後山鹿5,3204,7114,8635,2515,177
肥後八代9,4009,4939,5739,5229,504
日向延岡6,4106,0186,241
日向高鍋2,7933,8044,299
日向都城8,0617,4438,465
日向宮崎4,2364,2784,661
日向佐土原3,135
日向飫肥4,7364,6194,704
薩摩鹿児島53,94755,07155,45554,31654,47154,48254,72954,579
薩摩川内3,9533,025
琉球首里22,96024,92224,71224,49624,40924,60824,619
琉球那覇14,70613,35824,77224,28124,54838,16827,885
琉球久米村4,8836,038
琉球泊村4,3344,268
渡島函館37,75641,47143,14244,269
渡島福山13,60510,87911,94910,379
渡島江差13,43714,15114,88115,365
後志小樽11,000
石狩札幌13,08111,67815,256
釧路釧路2,4141,596
釧路厚岸1,2941,099
釧路浜中1,227891
根室根室4,6384,222
人口1万以上都邑合計3,563,7763,785,5203,871,2053,951,6994,009,0254,098,4524,286,4284,440,4274,545,793
都邑合計(非文献値)4,195,7874,585,1684,702,8374,739,4774,529,3874,641,1524,826,7004,440,4274,545,793

なお「府県学事年報要略」内の「都邑学事統計表」掲載の人口と「人口一萬以上都邑学事統計表」の人口が一致しない場合がありましたが、以下の数字を採用しました。

明治11年の名古屋の人口は「人口一萬以上都邑学事統計表」の11万1433人ではなく、「府県学事年報要略」内の11万1430人を採用。理由はこの修正により、「人口一萬以上都邑学事統計表」の人口合計と一致するため。

明治13年の足利の人口は「府県学事年報要略」内の1万1150人ではなく「人口一萬以上都邑学事統計表」の1万1077人を採用。
明治13年の宮津の人口は「人口一萬以上都邑学事統計表」の1万1373人ではなく「府県学事年報要略」内の1万1378人を採用。
明治13年の足利の人口は「府県学事年報要略」内の3万2159人ではなく「人口一萬以上都邑学事統計表」の3万3159人を採用。
理由はこれらの修正により、「人口一萬以上都邑学事統計表」の人口合計と一致するため。

明治17年の彦根の人口は「府県学事年報要略」内の2万6834人ではなく「人口一萬以上都邑学事統計表」の2万7833人を採用。
明治17年の米沢の人口は「人口一萬以上都邑学事統計表」の3万3159人ではなく「府県学事年報要略」内の3万2159人を採用。
理由はこれらの修正により、「人口一萬以上都邑学事統計表」の人口合計と一致するため。

文部省の都邑人口データは明治10年代の都市人口の情報を補うものではあるものの、内務省が提供する戸籍人口や陸軍の共武政表とは異なるため、どう評価していいのか判断に苦しみます。
[81875] 2012年 9月 22日(土)18:29:03【1】YT さん
『日本帝国文部省年報』による明治10年~18年の都邑人口 (1)
『日本帝国文部省年報』による明治10年~18年の都邑人口

[81192]でも述べましたが、以前[68674][68675]で、文部省調による明治12年と明治13年の「人口壱萬人以上ノ都邑」の人口を紹介しましたが、これの元データが『日本帝国文部省年報』の「人口壱万以上都邑学事統計表」であることが判りました。『日本帝国文部省年報』では、明治10年から明治18年まで、人口1万人以上の都邑の人口(「人口一萬以上都邑学事統計表」)と、明治10年から明治16年までの各府県の主だった都邑の人口(「府県学事年報要略」内の「都邑学事統計表」)がまとめてあり、量も多くはないので以下紹介します。

ただこの表で使われている人口は、共武政表や日本民籍戸口表の人口、あるいは明治17年1月1日調の『都府名邑戸口表』の本籍・現住人口と一致せず、色々問題のあるデータです。辛うじて明治11年の人口が、明治11年度の『共武政表』記載の明治12年1月1日調本籍人口と一致するようですが。

旧国都邑明治10年明治11年明治12年明治13年明治14年明治15年明治16年明治17年明治18年
山城京都229,810232,683231,308237,521239,425243,502248,468252,130246,238
山城伏見21,54422,01120,69620,51520,69720,84620,63920,45421,370
山城6,2226,1903,6613,5723,4403,3673,363
大和奈良22,74622,46522,69522,58223,03723,15922,58822,90922,734
大和郡山14,35114,57914,45314,44114,14513,74113,19912,22213,629
和泉40,59640,47040,84241,36743,25948,88749,09347,78946,315
和泉岸和田12,76512,765
摂津大坂284,105291,565287,984291,086293,686298,554309,180310,544324,706
摂津天王寺4,7344,89810,71112,86612,211
摂津難波15,12817,438
摂津平野6,9716,9606,877
摂津住吉5,9676,2806,383
摂津高槻4,0425,0392,831
摂津池田5,1095,1395,111
摂津尼ヶ崎14,19312,84714,10214,36014,17912,35713,88013,87413,704
摂津西宮11,17411,08811,11911,74110,64912,20211,09110,41810,592
摂津神戸11,03116,04713,29519,24820,57915,27816,07217,52418,583
摂津兵庫30,40831,63836,89639,62736,58727,21238,33040,57742,766
伊賀上野12,57613,40012,69812,58412,26612,52812,50712,47312,524
伊賀名張3,7653,8053,9143,9314,0734,1644,382
伊勢桑名15,20214,79014,87514,95715,19315,43715,42515,37713,149
伊勢長島6,8846,9496,7506,7263,4573,4353,424
伊勢神戸5,8183,6303,5782,8562,9272,9632,896
伊勢四日市11,25011,0417,9688,3728,6218,3048,48410,01010,423
伊勢菰野1,9121,9223,9514,0413,7084,1904,262
伊勢亀山6,2646,3936,4066,0676,6575,6974,650
伊勢白子3,8683,5644,1142,3682,4332,4212,328
伊勢一身田1,7571,8101,8161,9611,9381,8931,945
伊勢21,98122,31622,57624,98225,52625,35726,17923,71724,346
伊勢久居3,8593,7873,8113,8093,8063,8893,884
伊勢松坂9,96210,1749,39710,29210,27010,38711,78110,44710,951
伊勢山田18,43119,39219,89519,16919,37220,28620,89320,91620,467
伊勢宇治3,8274,4144,3175,2564,8814,4154,402
志摩鳥羽4,7804,7804,6724,6704,4894,3544,361
尾張名古屋135,715114,130112,427117,705118,450123,090124,461122,298124,542
尾張熱田15,35416,28016,76616,34616,78216,95617,46017,920
尾張亀崎5,0285,0975,0535,113
尾張稲置6,0446,3046,2946,362
尾張一宮7,7638,4589,1228,999
三河岡崎14,52415,10214,24914,94114,95415,27315,39715,71616,124
三河豊橋11,10510,79811,51511,36911,35811,73112,64612,31812,802
遠江浜松9,6598,34910,98010,60010,41212,47412,00612,00411,540
遠江掛川6,4546,4544,372
駿河静岡33,00032,02832,21232,43538,03837,79039,74734,38735,767
駿河沼津12,12512,0098,7878,97311,4318,7509,061
甲斐谷村3,2393,3633,3693,699
甲斐上野原村2,4852,5552,5672,639
甲斐甲府11,98415,01512,44915,31015,77716,19115,99417,42418,914
甲斐勝沼村2,5692,6431,1782,775
甲斐市川大門村4,3924,5614,6814,752
甲斐鰍沢村3,8183,8084,0414,068
甲斐河原部村2,5952,6101,8062,575
伊豆韮山1,4831,7831,7902,1342,1543,7292,198
相模小田原13,49513,57413,36313,69513,78614,01814,45014,61114,503
相模藤沢6,0775,9866,2314,588
相模横須賀5,3395,5755,6885,227
相模浦賀5,9575,8516,0125,894
武蔵八王子10,5528,94514,53912,87812,33812,38114,18112,06117,267
武蔵東京594,283772,230799,237839,761823,557849,231923,959937,217982,043
武蔵千住12,1809,06911,45311,65014,18914,09914,12814,28715,454
武蔵品川11,49213,29613,12212,83713,07413,01213,89913,44814,720
武蔵幸手4,4454,5104,5644,5644,693
武蔵粕壁4,7875,2495,2755,1305,373
武蔵岩槻4,1764,1764,2424,3974,416
武蔵川越13,43313,60512,32014,55114,37612,27012,56812,37313,207
武蔵熊谷4,9285,0896,9505,1807,2747,342
武蔵本庄4,7224,9464,8235,6245,442
武蔵神奈川8,2119,2019,42411,38112,44411,92112,03011,47311,463
武蔵横浜64,31350,88964,88262,22763,04863,61359,19658,91691,146
下総船橋10,672
下総佐倉5,6344,9385,4715,9615,3315,3505,055
下総佐原7,8767,8618,2068,1777,9927,8487,838
下総銚子25,13725,66926,09826,55626,87826,77727,23428,01526,770
常陸水戸17,89217,46817,24417,66717,36317,88219,03819,09418,963
近江大津19,61320,02220,71220,86618,25118,16020,10520,44519,755
近江大津19,61320,02220,71220,86618,25118,16020,10520,44519,755
近江水口4,7754,8574,9904,9405,1885,2355,287
近江八幡6,2596,3366,5316,6076,6136,6566,736
近江日野5,3866,5175,6974,9245,6935,8015,836
近江西大路2,2972,3362,3041,6942,3582,3482,379
近江彦根27,78628,18727,19127,30427,14426,80826,83326,58723,650
近江高宮4,1124,1604,2284,2884,3824,3924,471
近江長浜6,1316,3376,3476,3736,4146,5026,381
美濃高須3,4363,4123,2273,3163,3713,018
美濃島田3,8603,8653,8833,8973,9134,030
美濃三輪2,8722,8682,9152,9423,0233,061
美濃大垣10,31010,37810,40010,45210,08510,48010,43410,22215,649
美濃今尾3,8083,8383,2073,0252,7033,077
美濃竹ヶ鼻4,6514,9424,9895,2755,4355,379
美濃笠松5,0524,9144,9834,9834,9525,012
美濃岐阜12,46712,63812,90913,71613,29613,74413,87817,99314,687
美濃加納5,0465,3325,2375,4025,4037,979
美濃北方2,7762,8352,8102,8382,9222,898
美濃高富1,5581,6861,7271,7321,6781,787
美濃4,3664,4264,4744,4894,5334,610
美濃上有知3,9444,0514,0193,6513,7043,983
美濃八幡3,0106,1246,0366,0375,9945,990
美濃細目4,7334,3914,4474,4994,6584,719
美濃御嵩3,3863,4293,5023,5921,7671,809
美濃多治見2,3172,2782,4482,5832,6973,126
美濃岩村4,1454,1643,0453,0273,0353,030
美濃苗木2,8342,7882,9012,1032,8052,739
美濃中津川3,8443,8443,8253,9654,1174,366
美濃明知1,1661,1931,2291,2501,2561,289
飛騨高山13,93114,09014,25414,46114,71015,01015,22615,26915,340
飛騨古川4,0614,8254,8784,8914,9065,066
飛騨神岡村船津町組3,3833,4883,5773,6983,8293,421
信濃松本16,20616,28516,30716,52314,78216,69016,66316,92417,554
信濃福島4,1435,2444,1623,124
信濃飯田8,0538,0548,2468,4408,5108,5108,787
信濃高遠4,5944,4655,0855,022
信濃大町5,0893,2373,7523,838
信濃上諏訪8,0498,0628,0178,0898,0928,0938,329
信濃下諏訪4,0694,0834,1534,206
信濃長野8,0738,7138,6088,64113,74413,75615,01015,11315,335
信濃飯山5,9906,0256,0786,154
信濃須坂2,6012,5602,6512,737
信濃松代10,1069,1639,3408,6687,6427,8577,857
信濃上田10,0419,5819,98510,0399,76210,64610,65310,84510,342
信濃岩村田3,2863,2253,1582,995
信濃小諸5,6555,0265,8106,7686,6907,0446,893
上野高崎13,19116,11516,17316,62215,21916,09615,41415,63715,987
上野前橋10,67212,32116,86813,94512,33518,09618,08818,33320,316
下野佐野6,9176,2846,4567,3518,1656,5376,781
下野足利9,67510,15810,70211,07711,66412,64214,15011,60712,090
下野栃木5,2645,2645,1425,1965,2765,2755,460
下野日光3,198
下野鹿沼5,3705,6725,7566,2426,3696,5716,985
下野宇都宮18,84019,69119,53320,15019,25920,75320,54121,80124,547
下野真岡4,6684,7594,8704,9154,882
下野大田原3,4653,6073,5023,8103,8224,065
下野黒羽3,389
磐城白河8,1228,6509,0329,1579,3679,3289,351
磐城5,0155,0155,1685,6915,0944,9635,346
磐城三春5,1835,421
岩代若松21,44223,11322,61823,37121,30923,07024,37818,36818,257
岩代須賀川5,5815,2206,0275,8136,0156,0206,452
岩代郡山5,2535,2535,7595,4775,4545,8025,869
岩代二本松8,9238,2019,0688,2688,3028,2778,137
岩代福島6,9346,9348,0288,2448,2596,8639,23310,50510,232
陸前仙台52,07455,03555,17055,81755,90055,36954,88355,18355,195
陸前石巻10,00411,65912,0806,9757,1187,2187,70513,460
陸中磐井13,70211,8139,4037,9746,7916,8226,859
陸中水沢5,8035,1264,6594,6764,9255,1395,293
陸中岩谷堂10,5339,5497,5494,5843,5653,8102,839
陸中花巻5,8255,4455,0465,0255,1355,2745,785
陸中宮古3,7723,8723,8343,9644,6554,9344,934
陸中鍬ヶ崎2,7332,7532,9733,0483,0002,9943,141
陸中遠野5,3844,8815,0015,0645,1055,1815,296
陸中釜石4,3014,2753,6774,1404,1404,2134,360
陸中盛岡31,49931,39032,21631,30729,02130,26330,36629,86529,354
陸奥青森11,86412,38211,37612,76811,86711,90913,48713,96012,826
陸奥弘前34,77434,84432,85431,90732,29131,32532,62132,17431,194
陸奥黒石6,5958,9199,0959,1359,2238,9269,478
陸奥八戸9,8719,97410,05010,14510,25710,42310,57010,65310,756
[81274] 2012年 8月 8日(水)04:08:26【4】YT さん
府県物産表による明治7年の日本の総生産高
最後に紹介するのは明治7年の明治7年の『府県物産表』です。明治政府は農産高のみならず、農・林・水産・畜産・鉱・工業の各生産高を把握しようとして、明治6年以降『府県物産表』を作成しました。明治6年度分は一部地域で完成し、明治7年分は鹿児島県、北海道、沖縄県を除き、ほぼ日本全国の統計が揃いました。ところが西南戦争の影響で、明治8年分は未完となり、明治9年度分以降は農産高(+一部の漁業、林業関係)のみをまとめた『全国農産表』のみの発行に繋がり、工業統計が再び出てくるのはさらに10年程後となります。つまり明治7年分のみ、おおよそ各県の鉱工業生産高が判明するのです。

本当は『府県物産表』の数字を編集し、各地の農・林・水産・畜産・鉱・工業の生産高と石高の比較をしたかったのですが、『府県物産表』の数字をまとめるのが相当大変だったので、そちらは断念します。とりあえず、山口和雄氏の「「明治七年 府県物産表」の分析」(経済学研究, 1, pp. 23-58 (1951年), 原著論文へのリンク)の数字を用いると、明治7年の日本本土の総生産額は以下の通りとなります。

区分生産額(円)割合(%)
農業227,286,70161.0
 (内、米)142,799,02438.4
工業111,891,55930.1
林業14,565,4053.9
畜産業7,478,0002.0
水産業7,276,3452.0
鉱業3,808,9641.0
合計372,306,974100.0

そこで明治5年の租税額(『日本地誌提要』による)と『府県物産表』記載の明治7年の物産高(全国平均米価1石5.5379円で換算)とから、明治5年の税率を推定しました。物産高には水産業や鉱工業統計も入っているので、石高にかかる税金である正租だけでなく、土地に換算できない収入にかかる雑税を併せた租税全体に対し、税率を計算することができます。また明治7年の物産高を明治8年1月1日調の本籍人口で割ると、明治7年度の各地域の一人当たり平均生産高(ここでは石高換算で示す)が見積もれます。但しサービス業などの第三次産業の統計がないので、東京府の住人がえらく低収入となっています。参考までに明治5年石高(『郡村石高帳』によるが、長崎県・佐賀県の肥前国石高分割は『日本地誌提要』によるため、『郡村石高帳』の数字に比べて7斗のズレが生じる)も記載します。なお琉球・北海道と鹿児島県はデータが揃っていないので除きますが、鹿児島県は結局明治10年まで独立国家状態で、統計なぞ提出する気がなかったようです。

府県M7物産高(円)M7物産高(石)M5石高(石)M5租税(石)税率(%)M8本籍人口1人当たり物産高(石/人)税抜き後(石/人)
東京府4,251,083.498767,634.557164,856.7008837,055.641304.8855,2700.8980.854
京都府16,281,903.9382,940,086.243380,281.56447176,818.127006.0571,1925.1474.838
大阪府9,564,787.2261,727,150.550245,960.85400138,202.018708.0545,0353.1692.915
神奈川県4,324,874.960780,959.366339,082.33991102,554.2490013.1507,9281.5381.336
兵庫県3,737,882.170674,963.812170,561.08180100,948.8180015.0201,3893.3522.850
長崎県5,786,468.7771,044,885.003293,340.52247142,950.9710013.7668,9741.5621.348
新潟県13,294,558.5232,400,649.7501,133,179.88759439,486.6220018.31,388,3531.7291.413
埼玉県5,482,030.399989,911.390482,011.55819149,214.1040015.1440,4332.2481.909
足柄県3,656,089.280660,194.154262,712.2822683,116.2761012.6353,6091.8671.632
千葉県9,792,371.8931,768,246.392997,052.69833308,448.5154117.41,055,3731.6751.383
新治県6,601,847.7591,192,121.133622,601.34305182,420.3580815.3485,1192.4572.081
茨城県3,511,644.560634,111.213512,304.16611126,044.4042719.9378,2691.6761.343
熊谷県17,345,655.3113,132,171.935859,288.75101204,681.994006.5828,4203.7813.534
栃木県9,827,110.5491,774,519.285942,362.62703203,196.9740011.5648,5032.7362.423
奈良県7,671,601.4451,385,290.686503,686.23676219,528.0839415.8430,7343.2162.706
堺県5,386,166.989972,600.964469,309.36330233,857.3541124.0466,0482.0871.585
三重県6,087,211.8681,099,191.344537,323.60420223,461.8251220.3427,8312.5692.047
度会県3,918,493.058707,577.417343,303.04620148,683.2752921.0369,4791.9151.513
愛知県15,248,937.0102,753,559.4181,237,147.87620427,785.7724915.51,234,0032.2311.885
浜松県3,837,100.417692,880.034372,546.34901130,187.7637718.8420,5131.6481.338
静岡県4,116,780.010743,382.857251,954.1648693,950.6337012.6378,0761.9661.718
山梨県5,069,000.961915,329.070312,185.17685105,859.6376311.6369,2552.4792.192
滋賀県8,233,718.3551,486,794.306857,849.52528356,931.2970024.0584,7562.5431.932
岐阜県7,921,441.7251,430,405.309729,654.88365242,420.3240016.9683,0502.0941.739
筑摩県6,621,860.8551,195,734.975388,688.93788153,989.5153212.9564,3322.1191.846
長野県5,741,914.3191,036,839.633455,457.12110174,938.3553416.9481,3512.1541.791
宮城県3,911,137.534706,249.202555,285.34300187,322.1110026.5419,1351.6851.238
福島県3,417,262.855617,068.345469,471.39457201,967.8895832.7281,3022.1941.476
磐前県3,342,448.063603,558.749490,802.60437169,870.9215328.1249,5532.4191.738
若松県2,394,064.696432,305.503373,167.37034158,746.3520036.7212,0522.0391.290
水沢県4,399,118.228794,365.759439,309.25000127,049.8960016.0380,4092.0881.754
岩手県2,449,213.156442,263.874252,291.2770092,674.7810021.0323,4341.3671.081
青森県3,143,189.581567,577.876423,100.83800197,400.6580034.8484,4281.1720.764
山形県2,392,634.127432,047.180490,996.92777140,498.4267332.5309,8371.3940.941
置賜県2,225,464.068401,860.637295,671.5430070,048.2590017.4131,9353.0462.515
酒田県2,132,641.810385,099.364235,244.72071164,678.6940042.8207,9021.8521.060
秋田県5,202,585.431939,450.934514,498.04855287,746.8641030.6604,1141.5551.079
敦賀県7,407,130.4461,337,534.137782,010.67585236,475.0150017.7548,8332.4372.006
石川県6,647,458.9611,200,357.324819,318.84735395,644.3152433.0691,7351.7351.163
新川県6,925,808.7111,250,620.013877,764.10700396,982.1038631.7638,8221.9581.336
相川県709,418.243128,102.391135,206.1230056,289.4094443.9104,6301.2240.686
豊岡県5,122,209.209924,937.089467,702.49913179,746.6946419.4508,0271.8211.467
鳥取県2,997,108.753541,199.497459,264.95900201,067.0050037.2392,5891.3790.866
島根県3,428,700.904619,133.757320,709.91100172,412.2373727.8340,3981.8191.312
浜田県2,509,921.751453,226.259182,136.8985087,114.0332019.2268,4551.6881.364
飾磨県8,097,109.9811,462,126.405660,557.81626314,684.0463721.5651,0332.2461.762
北条県2,730,242.696493,010.462262,333.86400101,914.4251020.7217,3622.2681.799
岡山県3,603,546.297650,706.265418,964.53800143,675.7190022.1335,5921.9391.511
小田県5,784,167.4581,044,469.445500,988.18680200,329.9529819.2619,6471.6861.362
広島県8,301,725.8521,499,074.682500,912.65765265,092.5814017.7942,8271.5901.309
山口県15,644,120.4172,824,919.2111,010,303.70507341,925.4730012.1838,9463.3672.960
和歌山県4,918,536.547888,159.130408,230.06735224,052.7682525.2572,4361.5521.160
名東県13,577,717.0062,451,780.770756,937.20037331,293.7950013.51,349,6721.8171.571
愛媛県7,105,984.6501,283,155.078443,321.68842275,217.6148821.4791,5221.6211.273
高知県5,691,285.9771,027,697.478510,572.19470208,769.3680020.3531,8631.9321.540
福岡県5,722,089.8391,033,259.850633,404.63540302,010.9590029.2450,9652.2911.622
三潴県3,821,318.339690,030.203536,742.90265227,274.5128432.9396,9031.7391.166
小倉県3,009,317.257543,404.033366,948.08138157,555.5110029.0317,1081.7141.217
大分県4,038,448.511729,238.236459,184.41734223,341.9441030.6580,3471.2570.872
佐賀県3,388,327.440611,843.365430,449.07615313,001.0963051.2487,0081.2560.614
白川県6,958,929.2701,256,600.720851,237.05291368,443.5679129.3965,2421.3020.920
宮崎県4,297,437.722776,004.918418,142.35665154,120.8321019.9384,0712.0201.619
合計370,760,357.64166,949,628.93331,617,886.4416312,583,172.7444918.832,867,4292.0371.654

地方では税率30%を超えるところもある一方で、都市部の税率がやたら低いようです。全国平均の税率は19%と低目ですが、租税の数字は地租改正前のを用いており、地租改正前であれば表に出てこない中間搾取の事例がたくさんあるので、一概に今と比べて税率が低いとはいえません。ただ所得税というものが導入される前の時代において、土地を持っている農民への税負担に比べ、都市部の住民への課税が甘く、かなり税負担に不平等があったことは伺えます。所得税が本格的に導入され、地租からの税収を上回ったのは明治時代末期からだそうで、年貢→地租は20世紀初頭までずっと日本の税制の根幹をなしていました。

結論としては、明治5年の石高3227万石(北海道・沖縄を除く)に対し、統計上の米の生産高は明治初期の段階で2875万石でしたが、農業生産の方は4684万石もあり、さらに第一次・第二次産業を合計した総生産高は明治7年に6695万石相当(鹿児島も除く)に達していました。結局のところ「石高」というのは年貢を取り立てるための土地評価であり、実態経済と相関はあっても、新しい産業には適応できていなかったといえます。
[81273] 2012年 8月 8日(水)02:32:33【1】YT さん
明治初期の旧国別農産高(2)
それはさておき、中村哲氏の算出した旧国別農産高(単位は米換算石高)と『郡村石高帳』記載の明治5年石高を、『日本地誌提要』記載の租税(=正祖+雑税、単位は米換算石高)とともに並べると以下の通りです。ここでいう名目貢租率(%)とは明治5年正租を明治5年石高で割った値、実質貢租率とは明治5年正租を明治5年農産高で割った値で、中村哲氏が計算したのと同じ方法で算出しました。正租の対象となる石高は元々田、畑、屋敷ですが、屋敷高は多くの場合は無視できるほど少ないので、田畑からの農産高のみを実質石高として計算しているわけです。

旧国M10-M12農産高M5石高M5租税M5正租M5雑税名目貢租率実質貢租率
山城365,474222,368.70517113,985.51400100,725.0560013,260.4580045.327.6
大和718,871503,686.23676219,528.08394212,221.077867,307.0060842.129.5
河内630,166293,118.58720146,021.93591139,710.118416,311.8175047.722.2
和泉278,501176,190.7761087,835.4182080,594.997307,240.4209045.728.9
摂津914,933416,521.93580239,150.83670194,966.8667044,183.9700046.821.3
伊賀166,732110,917.9664054,845.0332053,481.876351,363.1568548.232.1
伊勢974,606714,376.41500293,382.25713277,191.9198216,190.3373138.828.4
志摩30,85919,279.203008,426.405478,100.25262326.1528542.026.2
尾張991,858764,774.16620256,675.72249241,648.0178015,027.7046931.624.4
三河804,910472,373.71000171,110.05000163,473.130007,636.9200034.620.3
遠江522,927372,546.34901130,187.76377126,836.577973,351.1858034.024.3
駿河405,683251,954.1648693,950.6337090,365.636683,584.9970235.922.3
甲斐558,535312,185.17685105,859.6376397,820.926638,038.7110031.317.5
伊豆118,11984,037.2083629,582.8171027,679.482251,903.3348532.923.4
相模503,266289,776.7319791,792.9890085,987.090005,805.8990029.717.1
武蔵2,265,6911,282,000.77090344,906.30130330,102.0018914,804.2994125.714.6
安房96,60495,641.4235028,594.6180025,044.994003,549.6240026.225.9
上総516,332427,313.77094153,247.38011133,404.6220019,842.7581131.225.8
下総949,459687,373.86055200,946.50838177,289.3286823,657.1797025.818.7
常陸1,030,781921,629.15250234,124.77127214,541.9170619,582.8542123.320.8
近江1,365,303857,849.52528356,931.29700340,541.7710016,389.5260039.724.9
美濃1,038,465729,654.88365242,420.32400235,351.862007,068.4620032.322.7
飛騨133,51357,196.0580026,913.8000024,500.353802,413.4462042.818.4
信濃1,663,416786,950.00098302,014.07066267,345.8666334,668.2040334.016.1
上野1,000,092635,851.10734144,814.82700125,407.8978019,406.9292019.712.5
下野978,385758,648.44071168,722.30400143,677.8140025,044.4900018.914.7
磐城722,412650,488.88237219,452.38613197,539.8312321,912.5549030.427.3
岩代852,925760,923.54591332,051.07398302,329.5606329,721.5133539.735.4
陸前870,890700,649.30800225,592.65000206,400.0920019,192.5580029.523.7
陸中687,770471,842.91200158,118.04100150,265.830007,852.2110031.821.8
陸奥605,865423,100.83800197,400.65800168,750.8430028,649.8150039.927.9
羽前1,010,170946,971.30568311,505.02473301,041.2437310,463.7810031.829.8
羽後1,065,878568,474.88935346,368.94510297,578.1554048,790.7897052.327.9
若狭96,92691,767.0581041,704.5960039,115.932002,588.6640042.640.4
越前442,087690,243.61775194,770.41900183,465.0910011,305.3280026.641.5
加賀511,236511,716.01839241,542.76421229,803.3896111,739.3746044.945.0
能登271,355307,602.82896154,101.55103145,814.345058,287.2059847.453.7
越中976,103877,764.10700396,982.10386382,041.2792714,940.8245943.539.1
越後1,825,4111,150,567.52359447,002.69600404,299.3030042,703.3930035.122.1
佐渡108,620135,206.1230056,289.4094449,826.921446,462.4880036.945.9
丹波510,056329,465.47386141,440.63932135,557.799325,882.8400041.126.6
丹後191,702148,002.1303054,247.5762749,080.131185,167.4450933.225.6
但馬250,596148,147.7542746,891.0920540,442.418726,448.6733327.316.1
因幡208,383195,632.6450087,845.0670082,916.712004,928.3550042.439.8
伯耆365,996251,069.40700110,686.77900104,358.285006,328.4940041.628.5
出雲509,146320,709.91100172,412.23737156,849.6453715,562.5920048.930.8
石見272,296182,136.8985087,114.0332083,082.242704,031.7905045.630.5
隠岐16,47912,562.907002,535.159002,181.29700353.8620017.413.2
播磨1,114,614660,557.81626314,684.04637292,656.6528322,027.3935444.326.3
美作302,835262,333.86400101,914.4251099,468.420002,446.0051037.932.8
備前583,012418,964.53800143,675.71900138,528.075005,147.6440033.123.8
備中613,380371,355.17580136,319.16808135,591.82585727.3422336.522.1
備後528,361315,876.18155155,999.23490151,236.025404,763.2095047.928.6
安芸692,191314,669.48710173,104.13140164,405.226808,698.9046052.223.8
周防510,556552,160.21518165,548.11700158,738.537006,809.5800028.731.1
長門387,567458,143.48989176,377.35600170,541.138005,836.2180037.244.0
紀伊755,387444,283.13335239,544.17286229,606.981319,937.1915551.730.4
淡路253,724136,637.9818357,850.2340057,538.16500312.0690042.122.7
阿波635,766310,484.46474137,645.15300137,627.0660018.0870044.321.6
讃岐920,667309,814.75380135,798.40800135,798.4080043.814.8
伊予856,592443,321.68842275,217.61488257,459.2991317,758.3157558.130.1
土佐582,940510,572.19470208,769.36800192,817.1600015,952.2080037.833.1
筑前742,511633,404.63540302,010.95900281,873.4600020,137.4990044.538.0
筑後674,442536,742.90265227,274.51284211,461.1848415,813.3280039.431.4
豊前477,297366,948.08138157,555.51100149,489.291008,066.2200040.731.3
豊後816,402459,184.41734223,341.94410199,789.4698023,552.4743043.524.5
肥前1,369,052685,116.89762437,237.98330398,991.8189038,246.1644058.229.1
肥後1,445,934851,237.05291368,443.56791357,671.2824210,772.2854942.024.7
日向423,041418,142.35665154,120.83210149,896.724104,224.1080035.835.4
大隅234,079276,219.4783090,157.7607790,065.2080292.5527532.638.5
奄美52,793.3920214,287.5429514,287.5429527.1
薩摩446,977323,483.49953119,233.81405117,880.021131,353.7929236.426.4
壱岐49,34632,853.8850013,630.1380012,604.553001,025.5850038.425.5
対馬28,4785,818.116005,083.946002,686.383002,397.5630046.29.4
琉球94,230.7009431,752.0000031,752.0000033.7
合計46,840,93432,364,612.8124212,838,603.8622611,971,213.72338867,390.1388837.025.5

実質貢租率の高い地域として旧加賀藩、長州藩の地域、あるいは佐渡が挙がってますが、これは正租の内の「金納」の課税対象が農産物由来以外(海産物や塩田、林業など)を含むこともありえるので、単純には比較できません。

例えば寛永2年(1625年)の長州藩の石高は以下の通りで、屋敷高が高く設定され、また田・畑・屋敷以外にも石高が設定されています。つまり漁業関係や鉱山にも石高を設定することで、通常なら雑税扱いのところからも正租を設定して年貢を取り立てています。
旧国百姓屋敷市・町・湯田屋敷浦屋敷小物成浦浮役塩浜湯坪役総石高
周防285,697.4355242,108.7055016,398.972441,532.20420861.666022,150.545341,140.8503,145.248005.255373,040.882
長門164,877.1029821,640.674139,626.83610650.22500415.78521,687.679282,036.7551,199.55231112.620202,247.230
合計450,574.5385063,749.3796326,025.808542,182.429201,277.451223,838.224623,177.6054,344.80031117.875575,288.112
[81272] 2012年 8月 8日(水)02:31:32【2】YT さん
明治初期の旧国別農産高(1)
さて、このような数字を探し出すきっかけになったのは、中村哲著『明治維新の基礎構造』(1968年)に出会ったからです。速水融を始め、色々な学者の江戸時代の農業生産力の発展の計算で引用されているのが、以下の中村哲氏の試算です。

年号西暦石高(石)実収高(石)田(町歩)畑・宅地(町歩)計(町歩)備考
慶長3年1508年18,505,00019,731,000石高
正保2年1645年23,133,00023,133,000石高
元禄10年1697年25,796,00030,630,000石高
享保6年1721年1,643,0001,317,0002,961,000石高
天保元年1830年30,426,00039,757,000石高
明治5年1872年32,220,0003,587,000石高、旧反別
1870年代44,250,0002,601,0002,015,0004,616,000収穫米、新反別
明治10-12年1877-1879年46,812,0002,629,0002,181,0004,810,000農産物米換額、反別は1882年

ここでいう実収高とは、
 (1)一八七七―七九年平均「農産表」農産額の米換算額を幕藩体制解体の最終時点の農産物収量とする。(2)近世の石高のうち元禄以降のものは、すでに幕藩体制の余剰余労働の搾取が不可能となった段階のものであり、実収量をそのまま反映するものではない。また慶長石高も太閤検地段階のものであり、まだ幕藩体制が確立せず、したがって領主は農業生産を完全に把握するにはいたっていないであろう。さいきんの研究によれば、幕藩体制が確立し、形成されてきた小農民経営を体制的に把握し、それから全剰余労働搾取をほぼ実現しえたのは一七世紀三〇―五〇年代と考えられる。したがって、一六四五(正保二)年の石高の石高が実収量を示すものとする。

[81123][81124]で示したように、そもそも2313万石というのは正保郷帳として低く、実際には2457万石、欠けている郷帳分を考えれば2500万石程度には実高はあったと思われ、50年経った今になってもこの辺の再計算をせずに中村哲氏の仕事を専門家が引用し続けているのは問題があると思われます。それはともかくとして中村哲氏は、明治10年から明治12年の『全国農産表』を用いて明治初期の農産高を計算しています。

(1) 農産物「農産表」の一八七七―七九年の三ヵ年分を使用し、国単位に三ヵ年平均額を算出した。農業では豊凶により生産額はかなり大きく毎年変動し、その変動も地域により農産物によって異なるので一ヵ年のみをとることは危険である。またとくに明治初年の統計の不備から生ずる数値の誤りのうちあまりに甚しいものについては数年間にわたる数値を比較することによって発見することが可能である。その場合、郡単位に検討することによって修正を比較的正確に(郡単位に集計し直すことによって誤りを正すことができる場合もあるが、多くの場合は国単位での課題ないし過小と思われる数値については、郡単位に検討し、その誤りが特定の郡の誤りの反映であることが発見出来る。郡単位での修正の方が国単位での修正より精度が高いことは確実である)行ないうるから「農産表」に郡別記載のある年次(一八七六―七九年)をとり、そのうち一八七六年は脱落や誤りがとくに多いので除き、一八七七―七九年をとったのである。そのようにしてかなり推測をまじえつつ、適当と思われる修正を行なった。そうしてもなおかなりの誤りは修正されていないとおもわれるし、根本的には「農産表」の統計的な正確度がどの程度のものであるかという問題が残る。その点については正確な推定をすることは不可能であるが、実際よりかなり過小であったことは間違いない。また「農産表」に載っていない農作物もかなりある。しかし、明治前期については数年以上にわたる全国的な農産物統計は他に存在しないから、この点を考慮しつつ使用するより仕方ない。そのように生産数量を修正したうえで生産価格を算出する場合には一八七七年の全国平均価格を使用した。そうすることによって各地域における農産物価格の差違を無視することになるが、「農産表」に記載された価格がどのような性質のもんであるか明らかでないこと、明らかに誤りであると思われる場合がかなり多いこと、生産力水準を測定するためには価格差を消去することが必要であることなどの理由による。また一八七七年をとったのは、七九年の「農産表」には価格表示はないく、七九年はインフレーションの影響がすでに強いことによる。

そこで中村哲氏の試算が正しいのかどうか、実際に総ての国で再計算しようとしましたが、予想外に大変で断念しました。とりあえず一番簡単な壱岐の例で検証してみましたたが、中村哲氏の計算した農産高4万9346石と一致しません。おそらく計算に含めているのは農産物(自分の試算では4万9781石)だけで、海産物関係(含めると5万3093石)は除いているようですが。

単位M10数量M11数量M12数量M10価格(円)M11価格(円)M12価格(円)平均価格(円)単価(円)
10,514.58013,799.92315,878.83043,612.31557,239.24265,862.12155,571.2264.147794
糯米1,329.5403,029.3852,350.8005,806.58213,230.42010,266.7949,767.9324.367362
大麦3,666.4003,634.7105,192.6606,711.8346,653.8219,505.8567,623.8371.830633
小麦1,277.4001,770.8002,720.0903,912.6785,423.9638,331.6405,889.4273.063002
裸麦11,375.30012,802.40020,680.31029,795.92433,534.00354,169.02839,166.3182.619353
2,469.7002,596.0004,632.2005,072.5175,331.9259,514.0766,639.5062.053900
16.00010.80053.47032.74022.100109.41354.7512.046259
87.10060.750383.76089.17962.200392.922181.4341.023874
大豆6,227.2006,625.15017,927.46023,596.48325,104.41967,931.81538,877.5723.789260
蕎麦460.200869.0001,029.9406,223.92311,752.69313,929.30810,635.30813.524388
蜀黍122.86053.600180.740222.07296.883326.691215.2151.807517
玉蜀黍100.0001.2000.4000.012000
甘藷3,918,772.0007,527,380.0009,201,450.00013,400.88225,741.10831,465.86523,535.9520.003420
真綿1,110.0001,200.0001,474.00081.17187.752107.78992.2370.073127
生糸8.00012.0005.00033.28449.92620.80334.6714.160534
草煙葉420.000400.0002,000.00020.62019.63898.19046.1490.049095
菜種847.100840.0002,778.5254,637.2814,598.41315,210.4838,148.7265.474301
1,488.000750.0006,762.00058.70329.588266.767118.3530.039451
乾鮑4,900.0006,500.000116.6351,116.7991,481.46826.583874.9500.227918
47,700.00045,000.00016,892.03915,935.88610,942.6410.354131
鱶鰭1,680.0001,535.000677.319618.860432.0590.403166
海参1,220.0001,350.000286.450316.973201.1410.234795
石花栄500.00020.1176.7060.040233
乾鰛59,500.00021,000.0006,500.0002,382.697840.952260.2951,161.3140.040045
農産物合計143,250.686188,948.506287,242.794206,480.662
米石換算34,536.59345,553.97269,251.93749,780.834
農産・海産物合計164,684.808208,172.232287,796.439220,217.826
米石換算39,704.18850,188.65869,385.41753,092.754

同様に陸奥国で計算しましたが、中村哲氏の計算した農産高60万5865石に対し、私の計算では農産物合計66万1669石、農産・海産物合計66万4884石と、全然一致しません。どうやら明治12年度の米収穫高を過剰と判断し、数値を削らない限り、中村哲氏の値には近づきません。

このように中村哲氏の計算した農産高は様々なところで多重に引用されていますが、再計算が必要と思われます。
[81271] 2012年 8月 8日(水)02:23:58【2】YT さん
明治初期の旧国別米収穫量実数(2)
[81270]の数字の説明

註1. M5石高は原則として東京大学史料編纂所所蔵の『郡村石高帳』記載のものを用いたが、薩摩、大隅の石高は『明治八年 共武政表』による修正を加え、奄美群島(大島郡)の石高は大隅に加算([81068]参照)。

註2. 日向・薩摩・大隅は西南戦争の影響で明治9年と明治10年の農産高を欠く。また明治11年の日向は那珂郡、大隅は馭謨郡、薩摩は甑島郡の農産高をそれぞれ欠き、明治12年の大隅は熊毛・大島郡の農産高を欠き、明治14年の大隅は熊毛・馭謨・大島郡の農産高を欠く。よって日向・薩摩・大隅は明治11年から明治15年までの5年間のデータで平均収穫高を算出し、必要に応じて単年の郡別(粳)米・糯米収穫高で補間した(明治12年日向国那珂郡:4万9265石6斗1升7合、明治11年大隅国熊毛郡:8410石、明治12年大隅国馭謨郡:178石3斗5升、明治11年大隅国大島郡:8215石3斗3升、明治12年薩摩国甑島郡:1386石6斗8升5合)。なお明治15年の筑前・筑後・豊前三国の福岡県分の農産高は元文献において明治14年の数字で補填されている。

註3. 明治9年の三河の糯米収穫高を5291石8斗1升1合から郡別収穫高合計の5291石8斗8升1合に修正。この修正により明治9年の糯米収穫高の総計と国別合計が一致する。

註4. 明治9年の出雲の(粳)米収穫高72万9992石2斗2升6合は明らかな誤記であり、27万9992石2斗2升6合に修正。この修正により明治9年の(粳)米収穫高の総計と国別合計の不一致45万石が解消される。

註5. 明治10年の三河の(粳)米収穫高を34万8381石8斗4升6合から郡別収穫高合計の34万8375石8斗4升6合に修正。また遠江の(粳)米収穫高を26万8168石0斗4升から郡別収穫高合計の26万8177石0斗4升に修正。また羽前の(粳)米収穫高を71万4444石7斗7升3合から郡別収穫高合計の89万4444石7斗7升3合に修正(羽前国秋田郡の(粳)米収穫高20万1168石5斗0升1合を2万1168石5斗0升1合として国別収穫高に集計した結果か)。これらの修正により明治10年の(粳)米収穫高の総計と国別合計の不一致18万0003石が解消される。

註6. 明治12年の武蔵の(粳)米収穫高を92万4009石7斗7升1合から郡別収穫高合計87万2547石0斗9升4合に、糯米収穫高を14万2142石7斗5升8合から郡別収穫高合計13万3389石9斗2升6合に修正(武蔵国多摩三郡の農産高が誤って二重加算されている)。また越後の粳)米収穫高を153万4912石9斗8升8合から郡別収穫高合計154万3405石5斗2升6合に、糯米収穫高を11万8845石5斗5升から郡別収穫高合計12万0290石8斗5升7合に修正(越後国東蒲原郡の農産高が誤って加算されていない)。これらの修正により、明治12年の(粳)米・糯収穫高の総計と国別合計が一致していたものが、逆に不一致となる。

明治5年石高で115万石と評価されていた越後の米収穫高が明治9~明治15年の時点で年平均154万石に達していたこともさることながら、57万石と評価されていた羽後の米収穫高が100万石を越えていたことも驚きかも知れません。米の収穫高が明治5年評価の内高を越えているところは近畿周辺と日本海側に多いようです。あと当時の人口3646万人(明治12年1月1日調推定人口)に対し、米の収穫高は年平均2875万石程度。国民全員が毎食米を食べるには足りなかったようです。もっとも『農産表』の数字は過小評価という研究も存在します。明治10~12年の『農産表』から算定した米の全国平均反収は1.128石/反ですが、農家が地租改正の改正時に低く評価されることを期待して、実際よりも低い収穫高を申告しており、実際には1.4~1.5石/反程度の収穫があったはず(明治18年(1885年)に地租の据え置きが宣言された以降は1.4石余/反の水準が保たれる)だから、25%~30%程度過少の数字になっているというものです。データの揃っている明治13年調の作付面積から反収1.4~1.5石/反で計算すると、実際の米の収穫高は3590万~3847万石となり、1人1石以上の米の収穫高があることになります。もっとも当時は流通のロスも凄まじく、明治10年代後半から神力などの品種改良種の広がりにより収穫量が大幅に増えるという技術革新が起こっており、この反収の仮定が正しいのか、私には判断できません。また明治13年は豊作の年であり、不作の年は確実に全員に米は行き渡らないでしょう。

作付反別(町歩)収穫高(石)反収(石/反)推定収穫高(1.4石/反)推定収穫高(1.45石/反)推定収穫高(1.5石/反)
(粳)米2,326,369.590828,698,368.3291.23432,569,174.29733,732,359.09434,895,543.890
陸米10,958.472469,360.5960.63376,709.34679,448.96682,188.585
糯米232,782.44082,666,011.1581.1453,258,954.1973,375,345.4193,491,736.640
米合計2,570,110.511031,433,740.0831.22335,904,837.84137,187,153.47838,469,469.115

註1. 作付反別の「2,570,110.5110」は、257万0110町5段1畝10歩を意味するが、1町=10段=100畝=3000歩であり、単純な10進数ではない。

註2. 推定収穫高はそれぞれ反収を1石4斗、1石4斗5升、1石5斗で計算しているが、陸米の収穫高は水田の半分と仮定し、それぞれ反収を7斗、7斗2升5合、7斗5升として計算した。
[81270] 2012年 8月 8日(水)02:20:43【1】YT さん
明治初期の旧国別米収穫量実数(1)
[81125]で予告したように、実際の米の収穫量と石高の違い、農産高との比較をまとめます。

自分もかつて[67156]の記事を書いていたころは、石高は米の収穫量を表すもの程度に思っていましたが、その後自分でも色々地租改正や検地についての専門書を読み、石高が単純に米の生産性から算出したものではないことが分かりました。[72052]でのニジェガロージェッツ さんの解説や[74271]でのhmt さんの解説にあるように、実際には田・畑・宅地などの土地について生産性を評価し(石盛)、米換算の石高に置き換えて評価したのが石高です。明治以降は「地租」、そして戦後は地方税の「固定資産税」と名前を変え、今となっては所得税よりもウェイトが下がったとはいえ、未だに地方自治体では住民税よりも重要な税源です。

江戸時代の実際の米の収穫高については、各藩や江戸幕府などが年貢米を通じて調査したものが色々残っていますが、全国一律に調べたものはありません。しかしながら明治時代になると、『全国農産表』というものが作成され、各地の米の収穫高が国郡別に集計されます。明治9年から15年度の『全国農産表』は明治14年分を除き、近代デジタルライブラリーで閲覧できます(明治14年度に関しては、[『明治初期生産統計集成』]収録のものを閲覧するしかありません)。これら明治初期の農産高は幕末の農産高と大きな違いはないでしょう。そこで明治9年から明治15年までの7年間の『全国農産表』に集計されている水・陸の粳米・糯米の生産高(単位:石、合の桁まで示す)を、以下にまとめてみました。参考までに明治9年~明治15年の7ヶ年平均米収穫高(斗の桁で四捨五入)と『郡村石高帳』記載の明治5年石高(単位:石、才の桁まで示す)を並べてまとめます。

旧国M9米石M10米石M11米石M12米石M13米石M14米石M15米石平均米石M5石高
山城176,922.603246,179.991197,301.563262,173.220251,355.609232,955.585211,620.405225,501222,368.70517
大和353,141.139510,892.833430,452.255547,759.050373,796.915454,110.595471,427.878448,797503,686.23676
河内284,668.181346,125.400307,539.598384,230.854319,368.820327,738.526349,884.145331,365293,118.58720
和泉120,157.384160,663.837125,438.677155,560.808152,421.415132,554.774177,190.259146,284176,190.77610
摂津321,416.785613,906.729483,777.202574,257.599513,080.826564,270.128563,090.003519,114416,521.93580
伊賀122,310.408130,147.262112,305.980137,700.567129,725.453122,020.800121,698.572125,130110,917.96640
伊勢648,799.767688,104.927563,180.746761,310.554666,223.996603,279.156586,558.670645,351714,376.41500
志摩20,315.87019,161.75915,158.65225,121.27516,967.16411,882.46420,784.61218,48519,279.20300
尾張474,894.851552,882.788560,342.426654,872.325627,848.292594,729.129613,889.849582,780764,774.16620
三河316,989.250382,972.398366,363.903389,584.248375,208.804360,213.651348,507.666362,834472,373.71000
遠江277,432.440288,983.860262,919.056354,560.741290,929.284293,045.995305,386.555296,180372,546.34901
駿河231,615.830203,608.990192,505.173291,768.244289,984.472262,941.631283,706.473250,876251,954.16486
甲斐211,484.510238,162.477215,042.769254,118.060230,721.722230,544.461219,580.311228,522312,185.17685
伊豆72,052.75074,927.32064,117.58283,834.66492,788.78875,069.08984,378.80078,16784,037.20836
相模175,406.076178,884.842185,107.759216,727.563202,658.121178,438.698185,268.511188,927289,776.73197
武蔵800,174.749781,390.010802,207.8561,005,937.0201,193,077.5281,183,149.6201,270,747.2651,005,2411,282,000.77090
安房58,510.30557,118.02864,063.65473,464.98375,535.08183,715.32283,931.66270,90695,641.42350
上総298,206.152296,575.528346,166.281429,443.319373,701.026368,514.447398,424.369358,719427,313.77094
下総499,857.363466,061.074477,842.369620,616.424628,264.163543,872.863579,158.664545,096687,373.86055
常陸530,309.880492,302.164511,085.212778,241.355790,720.406644,732.023772,984.097645,768921,629.15250
近江785,932.143954,706.459789,754.2971,128,868.4641,078,842.1831,064,819.4671,019,315.145974,605857,849.52528
美濃638,811.987619,718.853463,801.113664,730.032642,757.439579,449.387519,346.070589,802729,654.88365
飛騨65,087.87860,343.99854,906.33660,375.93761,856.96261,784.135160,154.67974,93057,196.05800
信濃887,527.094728,463.458726,508.480732,374.991784,306.216766,965.899726,122.701764,610786,950.00098
上野309,596.719211,219.219243,544.551356,509.905319,157.777312,761.967282,465.170290,751635,851.10734
下野384,220.110435,103.973442,506.412486,514.379559,634.906525,264.769528,777.729480,289758,648.44071
磐城535,345.392518,780.384486,108.696522,815.264511,892.860509,306.733490,429.894510,668650,488.88237
岩代514,469.529533,166.272454,715.056518,044.549608,508.311505,957.166562,371.224528,176760,923.54591
陸前703,027.055680,666.097590,483.565666,023.519796,735.637721,098.251762,267.055702,900700,649.30800
陸中357,571.882406,388.187401,876.628442,037.134487,159.913399,752.825388,020.146411,830471,842.91200
陸奥467,118.842442,478.743395,765.895604,186.571549,245.630544,264.337573,285.691510,907423,100.83800
羽前854,076.294760,050.773664,181.220786,809.896893,619.648705,023.765864,724.240789,784946,971.30568
羽後941,379.313961,971.842863,302.8461,134,993.4341,250,344.812946,561.2861,162,563.3981,037,302568,474.88935
若狭60,226.08173,913.71057,532.76192,087.27587,521.19577,438.22579,378.05275,44291,767.05810
越前276,257.744303,248.227304,969.414349,330.790528,369.762374,315.380400,776.484362,467690,243.61775
加賀386,043.978408,781.977316,022.525404,325.176455,440.529380,378.538466,349.086402,477511,716.01839
能登259,023.553223,752.074202,215.095243,797.324260,300.878243,388.560247,641.196240,017307,602.82896
越中867,987.823883,473.450800,202.171866,804.2321,122,397.016874,643.281957,954.604910,495877,764.10700
越後1,223,661.8241,389,458.9111,342,000.7101,663,696.3831,979,005.1071,659,974.4781,775,916.0231,576,2451,150,567.52359
佐渡89,684.76570,511.52083,647.918133,267.200133,789.63086,816.19182,819.43097,220135,206.12300
丹波247,165.893338,537.043340,485.178386,245.103355,752.780353,229.877347,269.037338,384329,465.47386
丹後75,853.010144,987.437105,981.806139,898.949141,242.202130,703.889134,765.104124,776148,002.13030
但馬103,100.000142,746.276147,475.134156,118.148163,774.093160,097.577153,594.101146,701148,147.75427
因幡159,420.077160,439.970135,158.996202,179.167182,072.294184,180.629174,363.547171,116195,632.64500
伯耆154,191.323253,602.675183,303.046253,774.198231,210.607246,081.807224,793.595220,994251,069.40700
出雲280,059.586380,921.861328,717.675447,229.990407,587.111400,971.325377,718.901374,744320,709.91100
石見150,871.782177,750.155152,263.180215,563.216173,082.553173,303.289176,253.855174,155182,136.89850
隠岐5,809.02210,916.1135,327.59713,626.19812,921.7378,709.1967,922.3659,31912,562.90700
播磨467,216.000593,162.949895,618.770869,582.139834,657.781844,378.544771,366.375753,712660,557.81626
美作151,973.073216,468.335203,930.685230,419.012211,557.257217,300.542188,769.429202,917262,333.86400
備前303,052.597388,061.137362,222.105442,476.337373,283.540421,671.314362,739.683379,072418,964.53800
備中207,843.421305,412.461302,724.941338,360.681317,099.808328,821.263308,115.211301,197371,355.17580
備後210,871.929246,993.655235,256.677329,481.054317,436.112327,385.359327,320.197284,964315,876.18155
安芸242,650.104348,070.853338,644.212451,537.303457,603.023436,118.587445,424.355388,578314,669.48710
周防288,361.501300,726.966374,676.599366,050.873363,916.169373,002.856392,716.592351,350552,160.21518
長門250,697.685298,109.574273,749.050329,534.714316,187.555341,386.049346,927.116308,085458,143.48989
紀伊426,690.852459,289.814413,868.901597,046.229446,727.121477,205.514462,755.184469,083444,283.13335
淡路108,954.000181,800.000186,091.603193,954.000204,380.625167,511.028185,551.655175,463136,637.98183
阿波238,714.031204,916.132196,855.697272,723.470263,441.686268,897.462221,009.242238,080310,484.46474
讃岐306,786.912344,439.500354,957.156469,816.096446,909.224457,425.570462,111.687406,064309,814.75380
伊予361,384.018378,756.420412,376.634490,194.317440,596.833486,957.258443,189.766430,494443,321.68842
土佐358,003.510321,081.786298,586.092376,060.900342,563.090377,288.000347,766.314345,907510,572.19470
筑前522,237.000589,332.154458,122.195633,518.484560,571.871541,626.115541,626.115549,576633,404.63540
筑後393,093.000425,920.491324,948.184445,559.126340,936.860439,374.725439,374.725401,315536,742.90265
豊前294,893.280333,532.978267,902.031438,951.549362,614.845369,340.607358,758.253346,571366,948.08138
豊後312,007.347354,829.814324,195.465460,182.289378,133.068420,230.268340,874.146370,065459,184.41734
肥前692,413.031664,212.298690,175.740900,679.283822,342.188807,306.928882,422.216779,936685,116.89762
肥後820,385.878625,310.633564,963.199791,357.050713,092.507843,277.007673,106.739718,785851,237.05291
日向173,403.633238,496.624267,840.242365,014.377311,136.240281,031418,142.35665
大隅・奄美96,600.149117,399.64198,232.512139,022.454142,276.376125,428329,012.87032
薩摩147,662.658148,313.477162,709.535181,914.334178,696.443164,137323,483.49953
壱岐5,342.75011,844.12016,829.30818,229.63014,100.82912,095.80517,051.45313,64232,853.88500
対馬2,032.4241,753.3112,500.8584,576.7103,898.1292,455.8835,557.3293,2545,818.11600
合計24,743,791.33526,599,177.25525,282,539.55631,628,011.28531,433,740.08329,912,029.03530,452,220.12928,753,85132,270,382.11148
不一致-0.0094.0190.10050,277.6640.0000.0020.000
総計24,743,791.32626,599,181.27425,282,539.65631,678,288.94931,433,740.08329,912,029.03730,452,220.129
[81225] 2012年 8月 1日(水)18:55:45【1】YT さん
桐山
[81224] 皿 さん

すべては昭和31年と昭和42年に後に当時の東頸城郡松代町と中魚沼郡川西町との間で境界線を変更していたからです。

郡域レベルの変更は、平凡社の『日本歴史地名体系』の新潟県の「旧区郡域・現郡市区町村域 対照図」(各巻の巻頭に収録されています)を見れば大雑把に分かります。確かに現十日町市桐山~室島乙で、山中に微妙な郡域の変更があったことが見てとれますが、正確な領域の変更をここに書き下すことはできません。

それよりも、そのような微妙な領域の変更を問題にするのなら、それこそ図書館へ行って古い地図を調べ、自分の目で確かめないと話にならないし、そっちの方がはるかに早いと思いますが。少なくとも近代デジタルライブラリー収録の地図は山中の郡境が不正確です。どの縮尺の地図で作業しようとしているのかは知りませんが、古い地図が入手できなのなら、『日本歴史地名体系』収録の地図を見るのが早いと思います。
[81218] 2012年 7月 31日(火)17:16:03【3】YT さん
矢吹町
[81198] 皿さん
私は、福島県矢吹町の現行町名と江戸時代にのちの現在の矢吹町にあった村の位置が全然わかりません。
とりあえず、近代デジタルライブラリーの『ポケツト大日本分県地図 : 最新調査. 福島県之部』 (1925年)を見ると、当時の三町村(矢吹町、中畑村、三神村)の境界と、それぞれの村内の地名の凡その位置が載っています。

一方、『旧高旧領帳』を調べると、大和久村、須乗村、須乗新田、七軒新田が白河県の幕府領、松倉村、三城目村、三城目新田が白河県の白河藩領分、矢吹村、矢吹新田、中畑村、中畑新田、大畑村、堤村、神田村、松崎村、中野目村、明岡村、明岡新田が磐前県の白河藩領分となっています。

近世村等旧領府県(M9迄)郡(M8迄)町村制施行時(M22)備考
矢吹村白河藩領分磐前県石川郡矢吹村
(矢吹新田村)白河藩領分磐前県石川郡矢吹村M9矢吹村に合併
中畑新田村白河藩領分磐前県石川郡矢吹村
大和久村幕府領白河県白河郡矢吹村
中畑村白河藩領分磐前県石川郡中畑村
松倉村白河藩領分白河県白河郡中畑村
(七軒新田村)幕府領白河県白河郡中畑村M9松倉村に合併
大畑村白河藩領分磐前県石川郡中畑村
須乗村幕府領白河県白河郡三神村
(須乗新田村)幕府領白河県白河郡三神村M9須乗村に合併
三城目村白河藩領分白河県白河郡三神村
(三城目新田村)白河藩領分白河県白河郡三神村M9三城目村に合併
神田村白河藩領分磐前県石川郡三神村
中野目村白河藩領分磐前県石川郡三神村
堤村白河藩領分磐前県石川郡三神村
明新村白河藩領分磐前県石川郡三神村M19明岡村と明岡新田村が合併して成立
(明岡村)白河藩領分磐前県石川郡三神村M19明岡新田村と合併し明新村
(明岡新田村)白河藩領分磐前県石川郡三神村M19明岡村と合併し明新村
柿ノ内村白河藩領分白河県岩瀬郡広戸村K2(1866)以降幕府領

現地名への対応は、平凡社の『日本歴史地名大系』に載っています。また西岡虎之助, 服部之総監修『日本歴史地図』 (1956年)の244-245頁に、福島県の廃藩置県前の幕府領・各藩領や、明治8年に白河郡となった石川郡の領域(明治8年までは、その中に三城目村、三城目新田、須乗村、須乗新田村などの白河郡の飛び地があったことになる)が載っていますので、『ポケツト大日本分県地図』と比較すれば、江戸時代の村の領域がある程度は把握できると思います。

なお東大の史料編纂所には、私製の『1:25,000地形図』があります。
国土地理院発行, 昭和29-54年刊) を各地域毎に私家製本したもの
ですので、その気になれば昭和55年の大字変更前の地名の位置を探ることができるでしょう。

【追記】天保国絵図を見ると、矢吹村や中畑村が石川郡所属となっていて、三城目村、三城目新田、須乗村、須乗新田村がループの白河郡所属となっていますが、『日本歴史地図』ではこれらの地域が「白河郡飛び地」と明記され、その周りを明治8年まで石川郡所属(『日本歴史地図』では石川「県」と書かれていますが、多分誤植)の矢吹村・中畑村等が取り囲んでいます。『旧高旧領帳』ではこれらの石川郡所属の村も白河郡(後の西白河郡)所属扱いとなっていますが、正確にはこれらの地域は天保郷帳の描かれた江戸時代後半から明治初期まで石川郡所属です。

【追記2】というか、2万5000分の1の地図はそもそも国立国会図書館で閲覧可能でしたね。ゼンリンの住宅地図の方は、国立国会図書館では1984年版が最も古いようですが。
[81192] 2012年 7月 28日(土)05:09:06【1】YT さん
文部省年報、磐井
[81186] 白桃 さん

ただ、下小田井(後の西枇杷島町→清須市)は、「戸数1,089、人口553人」とな
っており、思わず唸ってしまいました。

以前私が[67796]に書いたのと同じ問題に直面しているようですね。

地名明治12年1月1日調明治13年1月1日調
地名戸数人口戸数人口
下之一色村1,0794,5351,0624,381
下小田井村1,0864,2421,089553

明治12年1月1日調の方は男2125人+女2117人、明治13年1月1日調の方は男276人
+女277人となっており、おそらく後者が2076+2077人の間違いで、たぶん正し
い人口は4153人だろうという予測はつきますが、確証はありません。しかもこの
時代は戸数と言った場合、後の世帯数に相当する戸数と家数の混同が起こってい
たりします。

ところで以前、[68674][68675]で、文部省調による明治12年と明治13年の「人口壱萬人以上ノ都邑」の人口を紹介しましたが、これの元データが『日本帝国文部省年報』の「人口壱万以上都邑学事統計表」であることが判りました。『日本帝国文部省年報』では、明治10年から明治18年まで、人口1万人以上の都邑の人口と、明治10年から明治16年までの各府県の主だった都邑の人口がまとめてあり、これについては量も多くないのでいずれまとめようと思います(というか、「人口壱万以上都邑」に登場する138都邑の9年間(明治10年~明治18年)の人口については既にまとめ済みです)。

ただこの表で使われている人口は、共武政表や日本民籍戸口表の人口とほとんど一致しません。文部省が独自に人口調査をしているとは思えないので、内務省や警察署の戸籍調査を使っていると推測されるのですが、これらが本籍人口なのか、現住人口なのか、あるいは年始/年末調のいずれかなのか、等々、色々データに問題があるので、公式の人口データとみなしていいのか微妙な状況です。せめて一言どこかに人口データの典拠や方法論についての言及があればいいのすが・・・

[81048] 千本桜さん
共武政表の岩手県西磐井郡に「磐井」と言う名の輻輳地が記載されていますが、

明治10年には磐井は人口1万3702人(明治11年1月1日調?)の大都市という扱いになっています。明治11年には人口1万1813人(明治12年1月1日調?)、明治12年には9403人(明治13年1月1日調?)、明治13年には7974人(明治14年1月1日調?)、明治14年には6791人(明治15年1月1日調?)に減っており、都市域の範囲がいい加減であることが伺えます。明治15年の磐井の人口は6822人と少し増え、明治16年には6859人となっています。残念ながら明治17年~明治18年は「人口壱萬人以上ノ都邑」しか掲載されていませんので対象外ですが、『文部省年報』の記述を信じるのなら少なくとも明治10年から16年頃までは、「一関」ではなく「磐井」の方が正式な呼称として採用されていたようにみえます。
[81178] 2012年 7月 24日(火)18:40:40YT さん
十勝国河東郡、河西郡は各々「川筋東岸、川筋西岸」の村々を以て一郡と仕度候
[81170] Issie さん
いや,もっと単純に,北海道に国郡が設置された1869(明治2)年の段階では十勝平野の内陸まで実測が行われてはいないでしょうから方位の測量も完全ではなく,やっぱりサックリと“十勝川の西と東”ということなのかもしれませんが。

[81174] にまん さん
私はサックリ説に一票。

北の住人さんが[46207]で挙げられていますが、北海道の旧国名、制定の経緯に纏められているように、北海道の名称や国郡名は、開拓判官の松浦武四郎が明治2年旧暦7月17日(1869年8月24日)に上申した意見書を元に、明治2年旧暦8月15日(1869年9月20日)に太政官布告で決定されたものです(明治2年8月15日太政官布達第734)。

幸いに松浦武四郎による上申書の中身は、北海道大学北方関係資料総合目録の方に、『北海道々国郡名撰定上書』として収録されていますので、該当部分を読みますと:

河東郡 川筋東岸「ヲトフケ」「シカリヘツ」の村々を以て一郡と仕候、様奉在候

河西郡 川筋西岸「サツナイ」「ヤロマツ」「ヒハイロ」「メモロ」等を以て一郡に仕度候

「トカチ」川の東西村々を二郡に相分け中候、河東河西と仕度候、則阿波国に名東郡、名西郡、又筑前の上座、下座其餘葛上、葛下、添上、添下、皆あげてかぞへがたし、依て可然奉存候、

ヲトフケ=音更
シカリヘツ=然別(音更町内)
サツナイ=札内(幕別町内)
ヤロマツ=?
ヒハイロ=ピパイロ、美生(芽室町内)
メモロ=芽室

つまり十勝川の川筋西岸=十勝川の右岸、川筋東岸=十勝川の左岸としており、河口での川岸の東西で決めたようで、上流での地理云々は関係ないわけですね。まあ天保の国絵図を見る限り内陸の方位はいい加減ですし、伊能大図も海岸線しか調べていませんし、明治2年の段階では内陸の地形の詳細は不明だったでしょうけども。

なお、松浦武四郎本人はこれらの土地を実際に歩き、『蝦夷日誌』等に書き記しているようです。その辺の詳しいことは地徳力さんのホームページに掲載されています。

上を調べるきっかけになったのは、[81063]に示したように、『郡村石高帳』に釧路国善報郡という郡名が記載されていたからです。法令全書太政官日誌を見る限りそのような郡は設置された事実はなく、あくまでも松浦武四郎の原案にしか登場しないようです。どうやら明治6年に租税寮で『郡村石高帳』をまとめた人には北海道の国郡はどうでもよくて(村数、石高は全て空欄)、松浦武四郎の原案を横にして帳簿をまとめてしまったようです。
[81167] 2012年 7月 22日(日)17:47:25【1】YT さん
寛永国絵図の美作国の石高の訂正
[81123]の1598年~1872年の旧国別石高の変遷の内、寛永十年巡見使国絵図の美作国の石高に誤りがあったので訂正します。[81123]では22万7115石としましたが、改めて川村博忠編『寛永十年巡見使国絵図日本六十余州図』, 柏書房 (2002年)をチェックし、22万7715石の間違いであることを確認しました。それに伴い総石高も、2242万6237石9斗から、600石多い2242万6837石9斗へ修正されます。まあ、島原松平文庫『御当地雑記』一「日本国知行高之覚」記載の江戸初期高と比較すると、どちらかが「壱」と「七」を混同して書き記した可能性が高いようにみえますが。

なお寛永十年巡見使国絵図では、端数切り捨てを意味する「余」という言葉が幾つかの地図に挿入されています。同様に島原松平文庫『御当地雑記』一「日本国知行高之覚」でも三河国に限り「余」が挿入されています。以下、大野瑞男「国絵図・郷帳の国郡石高」 (『白山史学 』, (23), pp. 1-50 (1987年))記載の江戸初期高とともに寛永国絵図石高を再録します。

旧国江戸初期高(余)寛永国絵図高(余)
山城国216,070.700216,070.0
大和国444,134.000444,134.0
河内国308,857.620308,857.0
和泉国138,797.090138,797.0
摂津国290,902.100299,902.0
伊賀国95,594.10095,594.0
伊勢国572,786.900572,786.0
志摩国17,849.30017,849.0
尾張国480,841.700
三河国336,000.000350,000.0
遠江国268,800.000268,800.0
駿河国170,000.000170,000.0
甲斐国250,000.000250,000.0
伊豆国79,353.00079,353.0
相模国191,524.000191,920.0
武蔵国840,000.000840,000.0
安房国91,779.12091,779.0
上総国285,300.000285,300.0
下総国250,131.000250,140.0
常陸国753,600.000752,600.0
近江国832,122.600832,120.0
美濃国581,523.000581,523.0
飛騨国38,764.40038,764.0
信濃国547,360.000547,360.0
上野国468,000.000468,000.0
下野国464,000.000464,000.0
陸奥国1,729,000.0001,822,000.0
出羽国870,000.000870,000.0
若狭国85,099.60085,099.0
越前国682,654.000682,654.0
加賀国442,507.400442,507.0
能登国216,891.300216,891.0
越中国530,637.300536,037.0
越後国450,060.900606,370.0
佐渡国20,599.00020,599.0
丹波国280,570.200280,570.0
丹後国123,170.200123,170.0
但馬国123,960.000123,960.0
因幡国131,649.600131,649.0
伯耆国175,032.000175,032.0
出雲国223,477.100223,477.0
石見国137,370.000137,370.0
隠岐国11,802.90011,802.0
播磨国521,300.000
美作国227,115.500227,715.0
備前国286,200.000286,200.0
備中国227,894.800227,894.0
備後国238,838.000238,138.0
安芸国259,384.900259,384.0
周防国164,420.200164,420.0
長門国134,059.900134,050.0
紀伊国395,247.700395,247.0
淡路国63,621.10063,621.0
阿波国186,753.500186,753.0
讃岐国171,815.000171,815.0
小豆島3,186.700
伊予国381,640.800381,640.0
土佐国202,626.500202,626.0
筑前国522,512.400522,515.0
筑後国302,085.500302,085.5
豊前国330,744.644300,740.0
豊後国378,592.400378,592.0
肥前国561,437.400561,437.0
肥後国572,989.000572,989.0
日向国288,589.500288,589.0
大隅国170,828.100170,828.0
薩摩国315,251.700315,251.0
壱岐国15,982.30015,982.0
対馬国0.0008,163.0
合計22,171,689.67422,426,837.9

なお、川村博忠編『寛永十年巡見使国絵図日本六十余州図』に収録されている国絵図は、主に岡山大学附属図書館所蔵の池田家文庫で、尾張国と播磨国の国絵図は、秋田県公文書館所蔵の日本六十余州国々切絵図によります。現在寛永国絵図が全国68ヶ国完全に揃っているのは秋田公文書館と山口県文書館で、岡山大学附属図書館所蔵は尾張と播磨を欠き、その他名古屋市蓬左文庫に過半数、東京大学総合図書館(南葵文庫)、熊本大学附属図書館(永青文庫)に十数ヶ国分が現存しますが、この内描法・彩色・書写がもっとも丁寧なのが池田本です。以下本書の解説からの引用です。

 以上の考察の結果から、伝存する余州国諸本は寛永10年(1633)に全国に派遣された諸国巡見の国廻りを通じて幕府へ収納された国絵図の写本であることが明らかとなった。そのうち本書に図版で収録した岡山大学附属図書館(池田家文庫)蔵の池田本は、秋田県公文書蔵の佐竹本、山口県文書館蔵毛利本とともに全国分ほぼ揃って存在する「日本六十余州図」のひとつである。
 寛永10年の巡見使国廻りが全国を6区に分けて実施されたことからすると、本来巡見使上納国絵図は分担区ごとに絵図様式に違いが生じていたはずである。ところで「日本六十余州図」は、村々記載の精粗、郡区分の有無、国境越え道筋での表記の違いなど巡見使の分担区ごとに内容に明らかな差異があるにもかかわらず、絵図様式は全国すべて一様である。このことは「日本六十余州図」が巡見使国絵図を原拠とする写本ではあるものの、その後に様式の統一をはかって全国をいっせに描き直した二次的写本であることを推測させる。
(中略)
 ところで、この二次的写本とみられる「日本六十余州図」の成立時期については、寛文11年(1671)頃ではないかと考えられる。池田本をはじめいくつかの余州図の付箋に記される城主の揃う時期が寛文11年であることは、この年に古くなった全国の一次的写本がいっせに描き直されて、居城に付箋がつけられたと想定できよう。
(中略)
 「日本六十余州図」が寛永10年巡見使国絵図の二次的作品であるとはいえ、慶長国絵図が全国揃って残されていない現在では、この写本は全国を網羅して現存するもっとも古い江戸幕府の国絵図である。絵図面が比較的扱いやすい手頃な大きさであることから、地理的情報がとぼしかった江戸前期ないし中期において全国を知る地図資料として有力大名家間にてこれが模写・転写されたものと考えられる。
[81160] 2012年 7月 22日(日)02:22:55YT さん
北海道庁現行布令便覧 ほか
[81135] むっくんさん

M31.7.31現在の連合戸長役場であるならば北海道庁現行布令便覧(明治三十一年)(上巻)(編・発行:北海道庁、M32.2.10)に載っています。

『北海道庁現行布令便覧』のご紹介ありがとうございます。さらに明治19年から明治27年までは、『北海道庁布令全書』というのが発行されているようですが、近代デジタルライブラリーをみる限り、各年の戸長役場の所在地まではまとめてはないようですね。

[81149] オーナー グリグリさん
川西村(町)が圧倒しています。これだけの差があると何か要因があるように考えられます。

とりあえず、川東、川南が少ない理由は、日本語の音韻論で説明できると思います。川東や川南と書いた場合、ほぼ訓読みで「かわひがし」や「かわみなみ」なると思いますが、日本語であれば音韻(モーラ)数が4や3の省略を好む傾向があり、5モーラの「かわひがし」や「かわみなみ」よりも4モーラの「こうとう」「こうなん」や3モーラの「かとう」「かなん」が口にしやすいのはないでしょうか?

もっとも兵庫県や福島県の河東、石川県の河南は「かわひがし」「かわみなみ」ですし、「かわきた」が少ないことの説明にはなりませんので、彼岸や西方浄土などの仏教思想の影響があるのかも知れません。
[81125] 2012年 7月 16日(月)17:33:11【1】YT さん
正保郷帳の石高に関する混乱
[81123]の正保郷帳の石高については説明が必要なので稿を改めます。

正保郷帳を調べる過程で、和泉清司著 『近世前期郷村高と領主の基礎的研究 : 正保の郷帳・国絵図の分析を中心に』, 岩田書院 (2008年)と出会い、郷帳への認識を改める必要があるように感じました。
元禄郷帳や天保郷帳は村高が列挙されているだけですが、正保郷帳は各村毎に村高、田方、畑方が記載され、最後集計に本高、寺社領、新田高、小物成等がまとめられています。一方、正保国絵図の方には、新田高は原則として記入されてないようです。このため、正保石高は二系統の数字が存在することになります。おそらく東京大学史料編纂所の『正保・元禄・天保・明治村高比較表』の石高は、種々の寛永国絵図、正保国絵図に記載されていた石高をまとめたもので、実際に郷帳に書かれた数字との乖離があるのでしょう。参考までに陸奥国津軽領分の正保郷帳の石高をまとめると以下の通りで、郷帳の数字を足すと津軽領分の村数は336、石高は10万2468石8斗ですが、国絵図に書かかれる数字は村数134表高4万5000石です。

区分村数村高合計田方畠方不一致
平賀郡本村分4219,265.06017,479.5201,573.020212.520
平賀郡新田分3315,633.940
平賀郡合計75.00034,899.000
田舎郡本村分3811,376.57010,260.4201,116.350-0.200
田舎郡新田分12018,401.700
田舎郡合計15829,778.270
鼻和郡本村分5414,358.37013,209.6301,147.7401.000
鼻和郡新田分497,972.890
鼻和郡合計10322,331.260
津軽領分本高13445,000.00041,160.4403,839.5600.000
津軽領分本高不一致00.000210.8702.450
津軽領分新田高(本村分)15,460.260
津軽領分新田高(新田分)202.00042,008.530
津軽領分新田高合計57,468.800
津軽領分新田高不一致0.010
津軽領分総計336102,468.800

ただ現時点で自分は正保国絵図の原本を見る機会はありません。また郷帳のまとめ方も地域によって揺れがあり、ある郷帳では本高で集計した後、寺社領高、小物成、新田高を別に記していますが、一方では、寺社領を本高に加えたり、あるいは新田高も本高に加えて集計している郷帳も存在します。そこで以下、とりあえず郷帳の総計として取り上げられているものを「草高」、新田高など全てを合計したものを「内高」として集計しました。なお斗以下の数字の方は『近世前期郷村高と領主の基礎的研究 : 正保の郷帳・国絵図の分析を中心に』に収録されているCD-ROMの方に入っています。村数もCD-ROMの収録分を参考にし、「新田村」「枝村」の数字が分かっている分に関しては村数に加算しました。また貫高等、石高以外のものは石高の計算に含めませんでしたが、陸奥国仙台領分については例外として1貫高=10石の換算を実施しました。参考までに菊地利夫『新田開発』と東京大学史料編纂所所蔵『正保・元禄・天保・明治村高比較表』収録の正保郷帳石高も列挙します。

旧国正保草高正保内高村数典拠菊地利夫村高比較表
山城国215,985.62170411郷帳215,982215,986.34817
大和国469,380.624601,220村高比較表459,380469,380.62460
河内国264,952.34320265,518.42520459郷帳264,952264,952.34100
和泉国159,117.72700159,628.55800279郷帳159,326159,326.77100
摂津国375,496.75500380,875.39700742郷帳375,478375,478.86000
伊賀国100,538.00000145国絵図100,540100,540.00000
伊勢国596,334.68500658,896.319001,089郷帳585,065585,065.16400
志摩国19,290.3260055国絵図20,06120,061.00000
尾張国526,493.51000919郷帳483,432
三河国350,880.05800359,991.680001,181寛永16年郷村帳350,888
遠江国280,733.49000301,404.18624930郷帳280,696280,696.00500
駿河国191,315.69100732郷帳191,315191,315.69100
甲斐国234,327.38100730国絵図245,298245,298.70600
伊豆国79,653.20800265国絵図79,65379,653.20800
相模国206,812.01700605寛文年中郷村帳220,617220,617.70000
武蔵国982,337.96580989,725.333802,415郷帳982,327982,337.96580
安房国92,641.68000245郷帳92,64192,641.68000
上総国351,731.00000971国絵図378,892
下総国444,829.84200928村高比較表444,829444,829.84200
常陸国840,801.828901,546村高比較表840,048840,801.82890
近江国830,594.42600833,636.883001,441郷帳832,122832,122.00000
美濃国627,966.11200628,912.852001,254郷帳609,718609,718.92800
飛騨国38,764.40000215慶長郷帳38,76438,764.40000
信濃国544,770.33800578,406.405001,346郷帳548,600
上野国515,221.29926520,963.875261,133寛文8年郷村帳515,214515,215.00000
下野国565,975.62000618,592.330001,118郷帳568,733568,733.91000
陸奥国1,702,588.351403,8381,672,8061,829,000.00000
[会津領分]257,029.00000770文禄3年郷村帳
[白河三春二本松領分]315,169.00000528国絵図
[磐城棚倉相馬領分]205,026.59540254,279.16440548郷帳
[米沢領分]121,186.92500148国絵図
[仙台領分]654,110.88000745,293.38000970郷帳
[南部領分]105,065.95100538郷帳
[津軽領分]45,000.00000102,468.80000336郷帳45,00045,000.00000
[磐城国]438,137.67540489,715.07440895
[岩代国]533,876.925001,089
[陸前国]434,938.85000506,025.74000692434,860434,938.85000
[陸中国]218,681.81400236,452.59400545
[陸奥国]72,437.29900129,906.09900503
出羽国951,523.476001,124,394.893002,113郷帳965,674951,523.47700
[米沢領分]180,000.00000196,994.58400348186,990186,990.00000
[山形領分]337,610.45900340,883.68800388337,610337,610.45900
[新庄領分]36,158.7420042,715.513005436,15836,158.74200
[庄内領分]195,373.04800268,128.71500690149,117195,373.04800
[秋田領分]200,251.33900273,542.50500626255,799202,381.22700
[羽前国]649,480.35200722,672.698001,071656,458656,470.35200
[羽後国]299,913.23600399,592.307001,035309,216302,043.12400
若狭国85,460.08890209郷帳85,09985,099.67000
越前国680,293.308001,393郷帳682,182622,182.00000
加賀国422,958.60000440,399.15000751郷帳422,957422,957.61000
能登国225,006.15000255,555.71000564郷帳225,006225,006.10000
越中国592,415.66000660,718.380001,117郷帳592,415592,415.00000
越後国611,960.427002,682国絵図611,960
佐渡国24,812.01200251国絵図24,81224,812.01200
丹波国289,829.14600777郷帳289,829289,829.14700
丹後国123,175.01000292国絵図123,175123,175.00000
但馬国129,069.75700607国絵図129,069129,069.75700
因幡国149,742.50000515寛永15年郷村帳149,539149,539.00000
伯耆国170,257.50000704寛永15年郷村帳170,254170,254.00000
出雲国253,596.79200500国絵図253,597253,597.64760
石見国139,242.99100413国絵図139,401139,401.53700
隠岐国11,601.3930061国絵図11,60111,601.39300
播磨国542,130.12700554,629.787001,570郷帳562,291562,291.44700
美作国186,500.00000237,630.30000594郷帳186,500186,500.00000
備前国280,200.00000296,402.00000897郷帳280,200280,200.03000
備中国236,491.825001,221郷帳236,691236,691.82500
備後国248,015.28700457元和5年郷村帳248,606248,606.91000
安芸国266,862.55600267,851.97100433元和5年郷村帳265,071265,071.18600
周防国202,787.60000152郷帳202,787202,787.60000
長門国166,623.40000152郷帳166,623166,623.40000
紀伊国398,395.453001,258国絵図398,395398,395.45300
淡路国70,186.50000220国絵図70,18670,186.50000
阿波国186,753.58300451国絵図186,753186,753.58300
讃岐国238,028.33100321寛永17年郷村帳173,554173,554.22700
伊予国400,271.87300402,538.14200939郷帳400,271400,271.87300
土佐国248,328.12000254,378.12000463寛文4年郷村帳202,626202,626.00000
筑前国522,512.60130617,948.27590741郷帳522,512522,512.60130
筑後国331,490.00000707国絵図302,089302,089.00000
豊前国231,680.00000602国絵図231,680321,680.00000
豊後国357,300.51500364,364.521171,418郷帳378,592378,592.00000
肥前国565,655.359601,505国絵図561,437561,437.00000
肥後国579,711.78700617,803.077001,112郷帳572,980572,980.00000
日向国290,180.97300375国絵図288,589288,589.00000
大隅国170,833.45100230寛文4年郷村帳170,82817,828.00000
薩摩国315,005.60012256国絵図283,482315,251.00000
壱岐国17,568.0300041国絵図15,98215,982.00000
対馬国6,269.71500121郷帳
琉球国123,711.8134869国絵図
[大島]32,828.7000017
[本琉球]90,883.1134852
合計23,653,973.6122624,572,941.7682755,46623,342,672

典拠のうち、郷帳、国絵図はそれぞれ正保郷帳、正保国絵図とされるもので、郷帳や国絵図が存在しない地域は、近い年次の郷村帳によります。なお、大和国、常陸国、下総国に関しては東京大学史料編纂所所蔵『正保・元禄・天保・明治村高比較表』の数字を使いました。下総国は和泉清司本に数字がなく、また常陸国に関しては寛永年中郷村帳(54万1967石0斗6升4合)、大和国に関しては寛永16年郷村帳(44万4056石9斗2升、外屋敷高450石8斗6升1合)の数字があるものの、『正保・元禄・天保・明治村高比較表』の数字の方は郡別石高があり、何らかの国絵図から数字を採用し、さらに寛永年中の石高よりも数字が更新されていると推測されたため、これらに関しては『正保・元禄・天保・明治村高比較表』の数字を使いました。文禄3年の蒲生領高の数字を採用している陸奥国会津領分、慶長郷帳の飛騨国、寛永の数字を使っている三河国、因幡国、伯耆国、讃岐国に関しては、『正保・元禄・天保・明治村高比較表』の方でより良い数字が見当たらないので(ほぼ同じ数字、あるいはより古い数字が採用されている)、和泉清司本の数字を採用しました。村数の内、相模国、下総国、常陸国などは菊地利夫本からの採用です。

また陸奥国内の旧国別人口の合計、出羽国内の旧国別人口の合計がそれぞれの草高、内高と一致しませんが、これは陸奥国南部領分と出羽国の郡別石高の合計と総計が一致しておらず、一部郡別の内訳が記されていない小物成高や新田高等が草高や新田高に加えられているせいです。村数についても一致しない箇所がありあすが、例えば出羽国の場合、個々の郡別本村数・新田村数と合計が一致しませんが、新田村の名前が記載されていない郡もあるため、正確な数字を検証できないためです。

津軽領分の事例を見れば分かるように、これらの石高は米の生産力だけを表したものではなく、麦や大豆、塩、あるいは屋敷や林など、面積で表せるものは米の生産力に換算した石高を設置して、租税を徴収していたわけです。また米で納められないものは物納や金納となり、面積で表せないものは小物成として別個記載されました。

一応石高はおおよそ第一次産業の生産高を米の収穫高に換算した数字で、実際に取れる米の収穫量は、これらの石高を下回るはずです。それでは実際の米の収穫高はどの程度だったのでしょうか?それについて次回まとめたいと思います。
[81124] 2012年 7月 16日(月)17:26:58【5】YT さん
1598年~1872年の旧国別石高の変遷 それぞれの史料について
以下[81123]の表の解説です。

【(1) 慶長3年】 『大日本租税志』「慶長三年検地目録」
[72089]でも紹介しましたが、慶長3年(1598年)の石高は『大日本租税志』収録の『慶長三年検地目録』によります。太閤検地の結果として色々な書物に引用されていますが、検地が十分実施されなかったところは石高が低目に出ています。

【(2) 江戸初期】 島原松平文庫 『御当地雑記』一「日本国知行高之覚」
ここに引用する数字は、大野瑞男「国絵図・郷帳の国郡石高」 (『白山史学 』, (23), pp. 1-50 (1987年))記載のものです。なお原本では下総国の石高は空欄ですが、総石高2217万1689石6斗7升4合から他国の石高を引くことにより25万0131石と求まり、これは寛永10年の国絵図の下総国石高25万0140石とほぼ同じです。また出羽国石高石高には上杉弾正分10万石を含み、讃岐国石高には小豆島3186石7斗を含みます。

この江戸初期高で重要な点は、おそらく慶長10年(1605年)に徳川幕府によって提出を求められた慶長郷帳や慶長国絵図の石高だろうと考えられることです。大野瑞男による解説によると

江戸初期高は島原松平文庫「御当家雑記」一にある「日本国知行高之覚」による。このうち江戸初期の高とするものは、同書に「御統家ニ相定所也」とあり、これは慶長十年の国絵図・郷帳高と思われる。しかし国によって若干の違いがある。
 「鉄醤塵蓋抄」によれば、周防・長門の指出高八九万二千四〇〇石余、内一二万石が毛利秀元領、長府領五万石弟就清領、周防徳山領三六万九四〇〇石余、新田二九万三〇〇〇石余、合計六六万二四〇〇石秀就台所入となっている。「国主城主記」には、伊賀八万一〇〇〇石余(筒井伊賀守定次慶長十年指出高)、出雲・隠岐二十三万五〇〇〇石(堀尾出雲守忠氏慶長十年指出高)、美作一八万六〇〇〇石余(森美作守忠政慶長八年高)、二二万七〇〇〇石(慶長十年指出高)、備前三一万五〇〇〇石(池田三左衛門輝政慶長二年高)、二八万六〇〇〇石余(慶長十年指出高)、安芸・備後四九万八〇〇〇石余(福嶋左衛門大夫正則慶長五年指出高・十年指出高)、紀伊三七万四〇〇〇石(浅野紀伊守幸長慶長五年高・十年指出高)、阿波一八万六〇〇〇石余(蜂須賀彦右衛門家政天正十三年高・慶長十年指出高)となっており、このほか肥前・豊前・日向の石高記載もあるが、城地別の記載のみであって、総国高は知ることができない。
 「鉄醤塵蓋抄」の記載はともかく、「国主城主記」の記載の慶長十年高と「御当家雑記」の石高の千石以下の端数を除いたものであることが判明する。
 次に現在知られている国絵図・郷帳の石高と比較すると、摂津国絵図の高頭目録高二九万〇〇六八石六斗に対し、「御当家雑記」の石高は二九万〇九〇二石一斗で、八三三石五斗の差がある。外小物成分は六六八石一斗六升であるからこれとも一致しない。越前国絵図には総高六八万〇三二七石一斗二升とあり、「御当家雑記」の石高の六八万二四五四石とは差がある。周防・長門国絵図には周防六郡高辻一六万四四二〇石二斗一升二合、長門八郡高辻一三万四〇五九石九斗九升一合とあって「御当家雑記」の石高とは全く一致する。また福原家文書「慶長九年御両国物成御下書上ゲ」では、周防・長門両国高は二九万八四八〇石で「御当家雑記」の両国石高合計と一致する。慶長十年八月山内一豊が幕府に録上した土佐国総目録には、高二〇万二六二六石五斗とあり一致する。筑前国絵図の絵図目録記載五〇万二四一六石三斗一合三勺と比較すると、五二万二五一二石四斗と二万石以上の差違がある。慶長十年十月十五日の小豆島絵図の高頭目録の高都合は三一八六石七斗で、「御当家雑記」の石高とこれも一致する。
 以上のように国によっては相違はあるものの、「御当家雑記」の「日本国知行高之覚」の江戸初期高は、ほぼ慶長十年国絵図・郷帳高とみてよいであろう。

現在慶長郷帳は3点しか残っていませんが、活字化された慶長10年の飛騨国の郷帳は『岐阜県史 史料編 近世一』収録の「金森素玄領飛騨国石高帳」で読むことができます。最後の部分を引用すると

三郡之高
 惣都合三万八千七百六拾四石四斗
 内 田方弐万五千四百七拾五石三斗弐升七合
   畑方壱万三千弐百八拾九石七斗三合
 此物成都合壱万弐千百拾五石八斗三升余
               但三ツ一分弐朱八リンニ当ル
慶長拾乙巳季九月日 金森兵部卿法印素玄

ただ村高を並べているだけの元禄郷帳や天保郷帳に比べ、慶長郷帳は各村毎の石高と、田方、畑方の石高、物成(実際の租税収入)を列挙しており、はるかに情報量が多くなっています。さらに上の飛騨国の場合は田方、畑方、物成の記載のみですが、必要に応じて小物成(貨幣納による租税)、寺社領なども記載されました。これらの数字は現存する国絵図にも記載されているそうです(この辺については黒田日出男「江戸幕府国絵図・郷帳管見-1-慶長国絵図・郷帳について」 (『歴史地理』 93(2), pp. 71-94 (1977年))、現存慶長・正保・元禄国絵図の特徴について : 江戸幕府国絵図・郷帳管見(二) (『東京大学史料編纂所報』 15, pp. 1-21 (1980年))等に詳しい説明があります)。

それはともかくとして、慶長3年からわずか7年の慶長10年の段階で、日本全国の石高が1851万石から2217万石と、366万石も増えています。これは新田開発だけでは説明がつかず、検地が徹底したことが最大の原因と言えます。よってこの2217万石を、1600年頃の実際の石高だと考える人も多くいます。

【(3) 寛永国絵図】 「寛永十年巡見使国絵図」
寛永10年(1633年)、江戸幕府が諸国へ巡見使を派遣し徴収した国絵図で、石高は川村博忠編『寛永十年巡見使国絵図日本六十余州図』, 柏書房 (2002年)を私が実際に読んで、書き集めました。尾張国と播磨国に関しては石高が書かれていないので、江戸時代初期高の数字を使って総石高を計算しました。また讃岐国の石高17万1815石に小豆島の石高3186石7斗を加算すると、讃岐国の江戸初期17万5001石7斗と等しくなり、合計の方では小豆島の石高も加算しました。

実際のところ寛永国絵図の石高は江戸時代初期高とほぼ同じで、三河、陸奥、越後、対馬で石高に改訂が見られるほか、誤記か改訂か微妙なもの(摂津、相模、常陸、越中、備後、豊前)が並んでいます。

【(4) 正保郷帳】
これについては後で詳しく説明しますが、用いた資料は

● 和泉清司 『近世前期郷村高と領主の基礎的研究 : 正保の郷帳・国絵図の分析を中心に』, 岩田書院 (2008年)
東京大学史料編纂所所蔵の内務省令写『正保・元禄・天保・明治村高比較表』

の二点です。

一般に江戸時代の過去の石高として引用されているのは、菊地利夫著『新田開発』ですが、この内旧国別石高・村数、あるいは郡国別石高・村数の記述があるのは以下の2つの版で、他の同じ著者による『新田開発』には石高が載っていません。
● 菊地利夫著『新田開発』, 至文堂 (1963年):旧国別石高が掲載されている
● 菊地利夫著『新田開発 - 続 事例編』, 古今書院 (1986年):郡国別石高が掲載されている
両者で一部石高、村数に変更があります。

【(5) 元禄郷帳】
石高は大野瑞男「国絵図・郷帳の国郡石高」(『白山史学 』, (23), pp. 1-50 (1987年))によります。但し磐城国白川郡の石高修正に伴い、磐城棚倉相馬領分と磐城国の石高に修正を加えてます([80368]参照;なお[80368]で「該当する郡は磐城国白河郡」と書いてしまいましたが、「磐城国白川郡」の間違いです)。郡別石高については[80366][80367][80368][80369][80370][80371][80377]参照。なお元禄郷帳の石高は原則として「表高」です。

【(6) 天保郷帳】
石高は木村礎校訂『旧高旧領取調帳』, 近藤出版社 (1969年~1979年)、近世繪圖地圖資料研究会編『天保郷帳 : 天保五年甲午十二月石高帳 解読篇』, 科学書院 (2009年~2010年)、大野瑞男「国絵図・郷帳の国郡石高」(『白山史学 』, (23), pp. 1-50 (1987年))などによりますが、原本の実物を国立項公文書館で見ることができます。郡別石高については[76916][76917][76918][76919][76920][76921][76922]参照。なお天保郷帳の石高は「内高」が原則となっているはずなのですが、主だった藩が適当な報告をしていることが様々な研究により分かっています。例えば長州藩の「郷村高帳草案」によると、支藩を含む天保の周防・長門両国の内高は97万0941石8斗1升5合5勺1才と集計していますが、実際に幕府へ報告した内高は、各村毎に一律石高を減じ、寛政4年(1792年)の検地高である89万4282石1斗を報告しています。徳島藩では把握した石高を一割ほどカットし、新田村を無視し、既に消滅した村を含めて適当に村高を分配し、合計がカットした数字と一致するように報告しています(宇山孝人「阿波藩における幕府への報告石高の内実 - 天保郷帳を中心として」 (『徳島県文書館研究紀要』 (3), pp. 14-26 (2002年))参照)。加賀藩も新しい村の報告を怠っていることは、元禄郷帳と旧高旧領取調帳との比較から明らかで、薩摩藩はそもそも正保郷帳の時代から一貫して同じ石高を報告し続け、表高をもって内高であるという建前を貫いています。

【(7) 郡村石高帳】
石高は東京大学史料編纂所所蔵の『郡村石高帳』によりますが、薩摩国・大隅国の石高は『明治八年 共武政表』による修正を加えました([81068]参照)。明治5年(1872年)の石高であることは、[80384][80385]で考察した通りで、郡別石高については[81059][81060][81061][81062][81063][81064][81065][81066][81067][81068]参照。

表にはまとめられませんでしたが、『旧領旧高取調帳』の石高([76816][76817][76818][76819][76820][76821][76822])は、明治3年(1870年)頃の石高の状況を示していると考えられます。

飛騨国の慶長郷帳ついでに『岐阜県史 史料編』を読んだところ、美濃国・飛騨国に関する『旧領旧高取調帳』の原書と思われるものが「明治元年同四年美濃国郡村旧高及所轄沿革取調帳」、「明治元年明治四年飛騨国大野益田吉城郡村々旧高及所轄沿革取調帳」という表書きで岐阜県立図書館に所蔵されているそうで、岐阜県の『旧領旧高取調帳』は、廃藩置県の行われた明治4年(1871年)に前年度の明治3年(1870年)段階での地租の状況をまとめたか、あるいは明治4年(1871年)度までの府藩県三治制下での地租の状況を、明治5年(1872年)以降にまとめたかということになります。
[81123] 2012年 7月 16日(月)17:21:50【1】YT さん
1598年~1872年の旧国別石高の変遷
[81081] オーナーグリグリさん
落書き帳への大量の連続書き込みであり、気になる方もいらっしゃるかと思います。

すみません。郡別データに関しては、[81068]で打ち切りです。

江戸時代の石高のデータとしては、あと慶長郷帳と正保郷帳が残っていますが、現存する慶長郷帳は3ヶ国分、現存する正保郷帳が33ヶ国分36点だけであることから、完全な再現はほぼ不可能です。江戸時代に作成された郷帳・国絵図に関する詳しい説明に関しては、和泉清司「近世初期一国郷帳の研究 - 正保郷帳を中心に」(pdf) (『地域政策研究』, 8(2), pp.1-19 (2005年))に載っています。

とりあえず、1598年から1872年までの旧国別石高については、以下の通りです。旧国別石高については、菊地利夫著『新田開発』, 至文堂 (1963年)、および菊地利夫著『新田開発 - 続 事例編』, 古今書院 (1986年)がよく引用されていますが、正保と明治の数字はかなり不正確です。以下に示す石高は、現時点でもっとも記録された石高に近いものを列挙できたものと思います。

旧国慶長3年江戸初期寛永国絵図正保郷帳元禄郷帳天保郷帳郡村石高帳
山城国225,262.00216,070.700216,070.0215,985.62170224,257.78816230,131.760865222,368.70517
大和国448,945.50444,134.000444,134.0469,380.62460500,497.30868501,361.691560503,686.23676
河内国242,105.80308,857.620308,857.0265,518.42520276,329.82954293,786.634500293,118.58720
和泉国141,512.70138,797.090138,797.0159,628.55800161,692.12640172,847.986000176,190.77610
摂津国356,069.10290,902.100299,902.0380,875.39700392,707.69987417,399.127000416,521.93580
伊賀国100,000.0095,594.10095,594.0100,538.00000100,540.00200110,096.536000110,917.96640
伊勢国567,105.14572,786.900572,786.0658,896.31900621,027.44200716,451.492700714,376.41500
志摩国17,854.9117,849.30017,849.019,290.3260020,061.6410021,470.39800019,279.20300
尾張国571,737.40480,841.700526,493.51000521,480.51800545,875.793000764,774.16620
三河国290,715.00336,000.000350,000.0359,991.68000383,413.44230466,080.746800472,373.71000
遠江国255,160.00268,800.000268,800.0301,404.18624328,651.43658369,552.575180372,546.34901
駿河国150,000.00170,000.000170,000.0191,315.69100237,937.40728250,538.753090251,954.16486
甲斐国227,616.00250,000.000250,000.0234,327.38100253,023.27103312,159.329490312,185.17685
伊豆国69,832.0079,353.00079,353.079,653.2080083,791.2823584,171.29362084,037.20836
相模国194,304.00191,524.000191,920.0206,812.01700258,216.58202286,719.756890289,776.73197
武蔵国667,126.00840,000.000840,000.0989,725.333801,167,862.983391,281,431.0688201,282,000.77090
安房国45,045.0091,779.12091,779.092,641.6800093,886.2102395,736.23907095,641.42350
上総国378,892.00285,300.000285,300.0351,731.00000391,113.95411425,080.453410427,313.77094
下総国393,255.00250,131.000250,140.0444,829.84200568,331.11374681,062.631660687,373.86055
常陸国530,008.00753,600.000752,600.0840,801.82890903,778.458001,005,707.489030921,629.15250
近江国775,379.00832,122.600832,120.0833,636.88300836,829.72078853,095.305590857,849.52528
美濃国540,000.00581,523.000581,523.0628,912.85200645,101.50300699,764.321660729,654.88365
飛騨国38,000.0038,764.40038,764.038,764.4000044,469.2190056,602.30900057,196.05800
信濃国408,358.00547,360.000547,360.0578,406.40500615,818.73754767,788.077600786,950.00098
上野国496,377.00468,000.000468,000.0520,963.87526591,834.44887637,331.633100635,851.10734
下野国374,083.80464,000.000464,000.0618,592.33000681,702.80146769,905.027038758,648.44071
陸奥国1,672,806.001,729,000.0001,822,000.01,900,492.220401,921,934.887452,874,239.0598803,007,005.48628
[会津領分]257,029.00000272,011.81600337,218.127500343,656.44250
[白河三春二本松領分]315,169.00000341,022.55885434,581.248070439,753.20706
[磐城棚倉相馬領分]254,279.16440277,935.46360300,419.556810328,427.89967
[米沢/福島領分]121,186.92500199,867.89900203,825.844500204,216.18405
[仙台領分]745,293.38000600,000.00000992,057.260000994,594.59300
[南部領分]105,065.95100128,000.00000288,874.793000355,370.11100
[津軽領分]102,468.80000103,097.15000317,262.230000340,987.04900
[磐城国]438,137.67540517,082.53095613,924.675660650,488.88237
[岩代国]533,876.92500641,269.51650755,703.961220760,923.54591
[陸前国]506,025.74000398,958.83000697,838.180000700,649.30800
[陸中国]236,452.59400228,520.61400423,134.490000471,842.91200
[陸奥国]129,906.09900136,103.39600383,637.753000423,100.83800
出羽国318,095.00870,000.000870,000.01,124,394.893001,126,248.834401,295,323.5214401,515,446.19503
[米沢領分]196,994.58400193,993.53420216,161.220230337,240.91500
[山形領分]340,883.68800352,513.70720366,147.135970365,370.03946
[新庄領分]42,715.5130051,072.3418062,387.45380084,057.51631
[庄内領分]268,128.71500198,618.39220234,302.356140235,244.72071
[秋田領分]273,542.50500330,050.85900416,325.355300493,533.00355
[羽前国]722,672.69800733,879.23040804,569.693740946,971.30568
[羽後国]399,592.30700392,369.60400490,753.827700568,474.88935
若狭国85,000.0085,099.60085,099.085,460.0889088,281.5224091,018.82220091,767.05810
越前国499,411.00682,654.000682,654.0680,293.30800684,271.80960689,304.819870690,243.61775
加賀国355,570.00442,507.400442,507.0440,399.15000438,281.77000483,665.848700511,716.01839
能登国210,000.00216,891.300216,891.0255,555.71000239,208.79540275,369.990210307,602.82896
越中国380,298.28530,637.300536,037.0660,718.38000611,000.10000808,008.461820899,831.93900
越後国390,770.00450,060.900606,370.0611,960.42700816,775.730771,142,555.5358501,150,567.52359
佐渡国17,030.0020,599.00020,599.024,812.01200130,373.91100132,565.491000135,206.12300
丹波263,887.00280,570.200280,570.0289,829.14600293,445.54740324,136.268670329,465.47386
丹後国110,784.00123,170.200123,170.0123,175.01000145,821.18200147,614.804460148,002.13030
但馬国114,235.00123,960.000123,960.0129,069.75700130,673.23500144,313.084030148,147.75427
因幡国88,500.00131,649.600131,649.0149,742.50000170,728.28900177,844.624000195,632.64500
伯耆国100,947.00175,032.000175,032.0170,257.50000194,416.56700217,990.822280251,069.40700
出雲国186,650.00223,477.100223,477.0253,596.79200282,489.73900302,627.465000320,709.91100
石見国111,770.00137,370.000137,370.0139,242.99100142,499.23500172,209.768320182,136.89850
隠岐国4,980.0011,802.90011,802.011,601.3930012,165.2030012,559.60000012,562.90700
播磨国358,534.00521,300.000554,629.78700568,517.57900651,964.813500660,557.81626
美作国186,018.70227,115.500227,115.0237,630.30000259,353.70100262,099.098000262,333.86400
備前国223,762.00286,200.000286,200.0296,402.00000289,224.71000416,581.854000418,964.53800
備中国176,929.00227,894.800227,894.0236,491.82500324,455.62300363,915.614210371,355.17580
備後国186,150.00238,838.000238,138.0248,015.28700295,678.88800312,054.932000315,876.18155
安芸国194,150.00259,384.900259,384.0267,851.97100269,478.31000310,648.489000314,669.48710
周防国167,820.00164,420.200164,420.0202,787.60000202,787.67000489,428.677000552,160.21518
長門国130,660.00134,059.900134,050.0166,623.40000166,623.64500404,853.333000458,143.48989
紀伊国243,550.00395,247.700395,247.0398,395.45300397,668.01900440,858.377710444,283.13335
淡路国62,104.0063,621.10063,621.070,186.5000070,428.1000097,164.784000136,637.98183
阿波国183,500.00186,753.500186,753.0186,753.58300193,862.28500268,894.329000310,484.46474
讃岐国126,200.00175,001.700171,815.0238,028.33100186,394.04100291,320.256400309,814.75380
伊予国366,200.00381,640.800381,640.0402,538.14200429,163.25854460,997.639340443,321.68842
土佐国98,200.00202,626.500202,626.0254,378.12000268,484.97400330,026.520000510,572.19470
筑前国335,695.00522,512.400522,515.0617,948.27590606,981.42000651,782.278440633,404.63540
筑後国265,998.00302,085.500302,085.5331,490.00000331,497.76900375,588.897800536,742.90265
豊前国140,000.00330,744.644300,740.0231,680.00000273,801.84830368,913.640500366,948.08138
豊後国418,313.00378,592.400378,592.0364,364.52117369,546.79160417,514.227150459,184.41734
肥前国309,935.00561,437.400561,437.0565,655.35960572,284.12310706,470.723196685,116.89762
肥後国341,220.00572,989.000572,989.0617,803.07700563,857.17800611,920.291100851,237.05291
日向国120,088.44288,589.500288,589.0290,180.97300309,954.52817340,128.861790418,142.35665
大隅国175,057.23170,828.100170,828.0170,833.45100170,833.45100170,833.451000263,363.29063
薩摩国283,482.74315,251.700315,251.0315,005.60012315,005.60012315,005.600120323,483.49953
壱岐国0.0015,982.30015,982.017,568.0300018,072.8060032,742.92100032,853.88500
対馬国0.000.0008,163.06,269.715000.000000.0000005,818.11600
琉球国123,711.81348123,711.81348123,711.813480147,024.09296
[大島]32,828.7000032,828.7000032,828.70000052,793.39202
[本琉球]90,883.1134890,883.1134890,883.11348094,230.70094
合計18,509,043.7422,171,689.67422,426,237.924,572,941.7682725,910,641.4180630,558,917.84113932,373,824.45675
[81075] 2012年 7月 12日(木)18:09:14【2】YT さん
人口・町数など
[81073] 白桃さん
1.「市街名邑及び町村二百戸以上戸口表」に記載されている人口の出典元はどこなのか・・・「共武政表」に続く「徴発物件一覧表」なのでしょうか?

明治20年版の『徴発物件一覧表』には名邑毎の人口は掲載されてなく、戸長役場の管轄毎の人口が載っています。『共武政表』を含め、これらの人口の出典元は、内務省が把握しているはずの戸籍人口でしょうが、オリジナルの統計が残っていないために、『共武政表』の方に詳しい情報が残ったというのが実情でしょう。ただ残念なことに『明治八年版の共武政表』は明治5年~明治7年の本籍・現住人口が適当に採用されています。また『徴発物件一覧表』の方は明治16年度から始まりますが、

明治16年度版:明治16年1月1日調の国郡別人口を掲載
明治17年度版:明治17年1月1日調の国郡別人口を掲載
明治18年度版:明治18年1月1日調の国郡別人口を掲載
明治19年度版:明治19年1月1日調の国郡別人口を掲載
明治20年度版:明治19年12月31日調の、戸長役場所在地別人口を掲載

明治16年~明治19年に関しては、町村レベルでの人口は掲載されていません。また掲載されている人口は現住人口のようなのですが、内務省統計局の戸口表と数字がずれています。明治20年版の徴発物件一覧表は、戸長役場の管轄区毎の人口という点で、内務省の統計である『日本帝国民籍戸口表. 明治19年12月31日調』よりも情報が多いはずなのですが、数字がずれています。詳しい比較を行っていませんが、『地方行政区画便覧』と同じで、まとめた人間はそれほど人口の定点観測には注意を払っておらず、明治20年年末の数字が入手できたらそれで置き換えてしまっていたりしているのでしょう([69010]参照)。

2.「日本地誌提要」には町村数が載っていますが、市町村制度が発足する以前に、どこが町で、どこが村かという規準と町村の一覧表というのがあったのでしょうか。

町村数に関しては、過去にokiさんが[58109]でまとめられています。例えば陸中国磐井郡は、『天保郷帳』では86村、『日本地誌提要』では86村1町となっていますが、内務省地理局編纂物刊行会編『内務省地理局編纂善本叢書:明治前期地誌資料』収録の『明治前期全国村名小字調査書』 (1986-1987年)(むっくんさんの紹介[54378] )収録の「水沢県管下各区並村名調」では全て「村」と称し、西磐井郡(第八大区)、東磐井郡(第九大区)合わせて合計87村となっています。

大区小区村数
第八大区一小区7
第八大区二小区7
第八大区三小区5
第八大区四小区8
第八大区五小区5
第八大区六小区9
第八大区小計41
第九大区一小区8
第九大区二小区3
第九大区三小区11
第九大区四小区6
第九大区五小区2
第九大区六小区4
第九大区七小区5
第九大区六小区3
第九大区九小区4
第九大区小計46
第九大区合計87

このうち第八大区四小区八ヶ村の内訳は、鬼死骸村、一関村、二関村、三関村、下黒沢村、上黒沢村、山目村、赤荻村で、これらは明治7年5月中の状況を記しています。

一、本書は、明治七年五月二十七日、内務省地誌課が各府県に村名の調査を命じ、これを受けて各府県から提出された「各府県村名調査報告」と、明治十四年十一月二十六日、内務省地理局が各県へ宛てて町村の字小名を照合した「各町村字小名取調調」「各町村字名称調」等のうち現存するものを収録するものである。

一、明治七年の達によって提出された調査書は同年五月三十日までの期提出期限を定められたが、二十三県については五月中に提出され、あとはおおむね同年十二月迄に提出を終えている。但し、栃木、三重、宮城の各県は翌年一月、浜田県は翌年二月になって提出している。

ところで町村数を調べていくうち、確か『明治前期全国村名小字調査書』の解説の中で引用されていた亀掛川浩『明治地方自治制度の成立過程』(1955年)を読んだところ、以下の表を見つけました。

(一) 町村編制の変化 大村文書中にある「明治七年―十九年町村合併分離調」によれば、左表に示すごとく、明治八年頃から斬減してきた全国町村数は、十一年頃からほぼ安定していたのが、十九年にいたって多少の減少を示している。

表は左から年次、合併の旧町村数/新町村数/差引減町村数、分離の旧町村数/新町村数/差引増町村数、新設の増町村数、合併・分離・新設を合計した差引増減町村数、年末現在での町村数です。

年次旧町村数新町村数差引減町村数旧町村数新町村数差引増町村数増町村数差引増減年末現在数
明治7年20571134121-13378,280
明治8年3,3479822,3651735189-2,33875,942
明治9年4,2161,5342,6821335225-2,65573,287
明治10年1,9267261,2002257358-1,15772,130
明治11年754270484228765-41971,711
明治12年5272113167533025514-4771,664
明治13年13457774116712625171,715
明治14年27499175106333227146671,781
明治15年152638995337242716071,941
明治16年304882166720714020-5671,885
明治17年5325281542274371,888
明治18年24791156267145111071,888
明治19年1,0291588712469455-82171,067
合計13,1684,3758,7935241,7721,248199-7,346

計算上は、明治6年年末の時点で7万8413の町村が存在したことになります。

残念ながら、大森文書の肝心の原本には目を通せていない状況ですが、明治初期の町村数の変遷を知る上で参考になるでしょうか。

【追記】大森文書について、図書館の検索を中心に以前調べましたが、先ほど
改めてgoogleで検索したところ、

梅村 又次 『松方財政と殖産興業政策』 (1983年)

ところで,明治初期の町村分合に関する全国的統計としては「明治七年――十九年町村合併分離調」(大森文書)が著名だが,「大森文書」による1874(明治7)年の町村合併による町村数の減少134カ町村は井戸の調査による旧筑摩県の243カ町村よりもはるかに少ないことからみてこれは信頼しがたい31).

31) 井戸庄三「明治初期町村分合に関する二,三の問題―長野・山梨両県を中心として」,『人文地理』18巻4号,1966年,28ページ.

井戸庄三, 『明治地方自治制の成立過程と町村合併』(pdf), 人文地理, 21(5), pp. 29-53 (1969年)
その数値にやや疑問があるが,『大森文書』の「明治七年~十九年町村合併分離調」によれば,全国の町村数は明治7年に78,280町村であったのが,明治10年には72,130町村になり,6,150町村の減となっている。

ということで、上の数字は信頼が低いもののようです。
[81068] 2012年 7月 10日(火)00:59:34【2】YT さん
明治5年国郡別石高と人口・町村数 (10)
旧国郡/島間切数村数郡村石高帳間切数村数町数日本地誌提要共武政表人口
薩摩国鹿児島郡2525130,085.91174089,374
薩摩国谿山(谷山)郡88112,691.71797021,087
薩摩国給黎郡8129,653.00647021,554
薩摩国頴娃郡71411,060.16994015,676
薩摩国河辺(川辺)郡3538231,056.12876071,277
薩摩国阿多郡202318,390.70511025,207
薩摩国日置郡535546,930.25687069,013
薩摩国薩摩郡2831141,426.71124033,052
薩摩国伊佐郡5046148,225.79866031,720
薩摩国出水郡3939244,959.84667042,735
薩摩国高城郡1011112,866.19167016,912
薩摩国甑島郡14143,580.39394015,172
薩摩国揖宿郡1217212,556.66049023,562
薩摩国十三郡309323,483.00000033311323,483.502510323,483.499530476,341
薩摩国大島1312917,200.065980713417,200.065980
薩摩国喜界島63010,836.61282063010,836.612820
薩摩国徳ノ島(徳之島)64215,820.83065034415,820.830650
薩摩国与論島262,413.485950262,413.485950
薩摩国沖永良(沖永良部)島3386,522.3966203386,522.396620
薩摩国属島(州南諸島)3024552,793.3920202125252,793.392020
薩摩国合計30554376,276.3920202158511376,276.894530323,483.499530476,341
薩摩国不一致000.0000000000.000000-12,856.187670101
薩摩国総計30554376,276.3920202158511376,276.894530310,627.311860476,442
※明治5年~明治8年当時、州南諸島(奄美群島)は薩摩国扱いであった。『共武政表』は州南諸島の統計を欠く。
※『郡村石高帳』の薩摩国十三郡の郡別石高は不明だが、『郡村石高帳』の薩摩国石高総数は概数であり、『共武政表』の薩摩国十三郡郡別石高合計32万3483石4斗9升9合5勺3才とほぼ等しく、郡別石高に関しては『共武武表』の郡別石高で補間可能である。
※『共武政表』の薩摩国十三郡石高総計・人口総計は、郡別石高合計・郡別人口と異なるが、その差は『共武政表』の大隅国の郡別石高合計・郡別人口合計と石高総計・人口総計の差に等しく、集計上の問題と推測される。
※『日本地誌提要』の薩摩国十三郡石高総計は『地理局雑報』の石高と一致するが、『地理局雑報』の奄美群島の石高3万2828石7斗とは異なる。
※『共武政表』の薩摩国人口総計は明治6年1月1日調本籍人口58万6324人から州南諸島本籍人口10万8426人を減じた薩摩国十三群本籍人口47万7898人とほぼ等しい。

旧国村数郡村石高帳村数町数日本地誌提要共武政表人口
壱岐国壱岐郡67117,796.38900017,614
壱岐国石田郡59115,057.49600015,315
壱岐国合計126232,853.88500032,929
壱岐国不一致000.0000000
壱岐国総計2232,853.885000126232,853.88500032,853.88500032,929
※『郡村石高帳』の壱岐国の郡別村数、郡別石高は不明だが、『郡村石高帳』の壱岐国石高総数は『共武政表』、『日本地誌提要』、『地理局雑報』の石高と一致し、郡別石高に関しては『共武武表』の郡別石高で補間可能である。
※『共武政表』の壱岐国石高総計は『郡村石高帳』、『日本地誌提要』、『地理局雑報』の石高と一致する。
※『共武政表』の壱岐国人口総計は明治6年1月1日調本籍人口と一致する。

旧国村数郡村石高帳村数町数日本地誌提要共武政表人口
対馬国上県郡529,670
対馬国下県郡62120,080
対馬国合計114129,750
対馬国不一致000
対馬国総計1105,818.116000114129,750
※『郡村石高帳』の対馬国石高総計は麦高。
※『地理局雑報』の対馬国石高総計は空欄で、『日本地誌提要』の石高は不詳とある。
※『共武政表』の対馬国人口総計は明治6年1月1日調本籍人口2万9740人とほぼ等しい。

※『共武政表』は琉球国の記載が無い。以下『天保郷帳』の石高を記載する。
旧国郡/島村数郡村石高帳間切数村数町数日本地誌提要天保郷帳
琉球国沖縄島62,199.000000
琉球国沖縄島 中頭11189
琉球国沖縄島 島尻15162
琉球国沖縄島 国頭9134
琉球国恵原屋(恵平屋)島541.600000
琉球国伊是那島750.200000
琉球国伊恵島3,643.000000
琉球国計羅摩(慶良間)島29203.000000
琉球国戸無島45.100000
琉球国粟島727.400000
琉球国久米島2193,677.700000
琉球国先島1087
琉球国宮古島12,458.792420
琉球国八重山島6,637.321060
琉球国合計4960094,230.700940
琉球国不一致000.000000
琉球国総計94,230.7009404960094,230.70094094,230.700940
※『郡村石高帳』の琉球国の島別村数、島別石高は不明だが、『郡村石高帳』の琉球国石高総数は『日本地誌提要』、『天保郷帳』の石高と一致し、島別石高に関しては『天保郷帳』の島別石高で補間可能である。
※『地理局雑報』の琉球国石高総計9万4230石7斗1合。
※琉球国の明治6年2月1日調本籍人口は16万6789人。

これらの石高の実態について、明治7年の『府県物産表』における米の収穫高、農林水産業・鉱工業生産高や明治9年~15年の『全国農産表』における米の収穫高・農産高との比較を次回まとめようと思います。


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