国立公園・国定公園のシリーズが一段落しました。
直接の関係はないのですが、ここで海外の地理に目を向け、鳥などの生き物にも関係した記事を記します。
その対象が、タイトルに記した「サウスジョージア島」です。
サウスジョージア島? どこだ?
「ジョージア」だけならば、落書き帳全記事を検索すると何件もあります。
ソ連時代からの「グルジア」を英語式に変更したコーカサスの国名。
缶コーヒー。そしてアメリカ合衆国のジョージア州。
その中に埋もれていましたが、ありました。
[10526] 太白さんの「海外領土」。
英国領 South Georgia and the South Sandwich Islands 南ジョージア・南サンドイッチ諸島
南緯 54度30分 西経 37度00分 南アメリカ
日本とは地球の反対側にあって馴染みのない場所ですが、南米大陸の先端・フェゴ島から東に進むと、フォークランド諸島、サウスジョージア島、その先のサウスサンドイッチ諸島で南に向きを変え、西のサウスオークニー諸島を経て南極半島の先端につながるという弧状列島の一員です。
地図で見るように、2005年の落書き帳で話題になった ブーベ島や トリスタン・ダ・クーニャ島と同様の 南大西洋の島々に属する島です。
もう一つの地図は、Wikipediaの「帝国南極横断探検隊」で使われている地図です。
上方【南大西洋】に伸びている青線の先Grytviken【スゥエーデン語の油壺】という捕鯨基地が設けられていた島がサウスジョージア島です。
シャクルトン南極探検隊のことは
[74153]で触れましたが、この捕鯨基地があったおかげで生還することができたのでした。
サウスジョージア島の面積は 3756km2もあり、択捉島よりも大きな島です。1775年キャプテン・クックにより発見され、20世紀にはノルウェーの会社などによる捕鯨基地が建設されたが、1966年以降は研究者以外の定住者はないようです。
この島の自然に関するタネ本は 半年ほど前のNewton(2016-9)に掲載された記事で、「生物の楽園」と言われるように、数十万羽のキングペンギンを始めとする動物たちが海岸を埋め尽くす姿は壮観です。
島の動物たちや南極海のクジラを頂点とする生態系を支えているのは ナンキョクオキアミという小さな甲殻類。
この島がある南緯55度付近。そこは「大陸が存在しない緯度」です。見た目には、偏西風で西から東へと流れる海流が、大陸とぶつからずに南極大陸の周りを一周できそうです。正確には、同じ海水のまま一周しているわけではなく、大西洋などとの入れ替えがあるようですが…
世界で最も荒れる海として、航海者たちが「吠える50度、怒れる60度」という言葉で恐れた海域でした。
その中でも極め付きの海域。それは南米南端と南極半島との間のドレーク海峡を駆け抜けた海流が、前記 弧状に並ぶ島々や海嶺【スコシア弧】に衝突するスコシア海です。
Google Earth
サウスジョージア島は、緯度こそフォークランド諸島とあまり変わらないものの、その付近の海は冷たい南極表層水(1~2度)で覆われ、北からくる大西洋の水の海水温(夏ならばフェゴ島周辺で6~7度)とは大きく異なります。
両者の間に形成されるのが「南極前線」。南極前線の北のフォークランド諸島では牧草地が広がりますが、サウスジョージア島は氷河で覆われ、時には南極大陸からの氷山も流れ着く場所です。
このように陸上の気候条件は厳しい地ですが、サウスジョージア島の海では 豊富な栄養を含む深層海水が湧昇流として水面近くにもたらされます。ここは ナンキョクオキアミが最も高密度に群れる海域となり、この豊富な餌により育てられた動物群が繁栄することになりました。
人が生活するには厳しい南極気候の地でありながら、意外にも「生物の楽園」が形成された「奇跡の島」。
それは、このような仕組みによるもののようです。
キングペンギンなど各種ペンギンやミズナギドリ、ウミツバメなどの鳥類、ミナミゾウアザラシ、カニクイアザラシ、ナンキョクオットセイ、掃除屋のオオフルマカモメ、そして大型のヒゲクジラ類。
それだけでなく、人間によって持ち込まれた外来動物も増えてしまいました。侵入者の代表はネズミでした。
捕鯨業者が食料として持ち込んだレインディア(カリブー)も数千頭に増殖し、問題になっていたが、2015年に駆除成功と伝えられます。