昨日投稿した
[89350]を修正した結果、要旨が変ってしまいました。前報を削除し、別記事とします。
自治省昭和63年告示23号「青函ずい道に係る未所属地域を市町村の区域に編入する処分」が
[63789]で紹介されている。このことを、
[89330] k-aceさん の記事で知りました。
私はこの告示を
[66057]で知り、hmtマガジン
自治体の海上境界 にも収録していました。
しかし、88さんの記事よりも半年前に 花笠カセ鳥さんの記事があったのですね。
この機会に マガジンに補足し、併せて青函トンネルによる隣接対象について言及のあった
[63778]も加えておきました。
2008年に告示全文の紹介があったことはさておき、この処分があったという事実について最初に触れたのは 更に前、2005年の記事でした。
[46750] LFB さん
固定資産税の課税のため、海底部については昭和63年2月16日の閣議決定で北海道松前郡福島町、青森県東津軽郡三厩村(当時)にそれぞれ編入されたとのことです。
私がここで注目したのは、「固定資産税の課税のため」という目的が記されていることでした。
この編入処分が行なわれ、「津軽海峡を隔てた自治体の隣接」が現実になったのは、その結果だったのです。
なるほど、自治体の区域
[66802]が存在するのは、本来は住民の居る陸部【付属する陸水部を含む】のはずである。
それを海の下で「隣接」させることになったのは、税収の確保という無視できない動機があったからか。
最初はそのような理解で納得しました。
この境界点。実は普通の海ではありません。津軽海峡における領海の範囲は「基線から12海里」という原則よりも狭い3海里。
トンネル内に境界点が存在する場所の真上の海面は、どこの国の船も自由に航行できる「公海」なのです。
平たく言えば「日本ではない!」。
青函トンネル開通直前。
このタイミングを利用して、公海の下にある日本領土の存在を世界に知らしめた知恵者がいたのか?
青函トンネル内の土地編入により増加した面積はどれだけだったのか?
その確認を試みたのですが、昭和63年面積調に前年との比較がなく 不成功でした。
青函が駄目ならば、1997年12月開通の東京湾アクアライン。
このルートの 海ほたる-風の塔間のトンネル内。ここに 課税区分となる自治体境界が設けられているだろう。木更津市の面積変化を調べれば、海ほたるやトンネル内の土地を編入した面積が判明するはず。
しかし、木更津人工島の
面積6haとあるが、着工した1989年以降の木更津市面積を調べても、0.06km2以上の面積増加は記録されていませんでした。
海ほたるの住所は「木更津市中島地先」です
[46757]。独立した町名が付与されていません。
どうやら、海の頃から事実上木更津市に付属する領域と認識されているようです。
正式の編入手続きのないままになっているが、人工島を木更津市扱いすることに異論をはさむ者はいない。
川崎人工島【風の塔】についても事情は同じであり、両人工島の間のトンネルの固定資産税も山分けで異論なし。
アクアラインの他にも、東京ガス【江東区-袖ケ浦市】と東京電力【川崎市-富津市】の東京湾横断海底トンネルがあります
[66799]。こちらにも、海底の自治体隣接が隠れている可能性があるのですが、木更津人工島さえも記録されていないとなると、関係自治体の面積を調べる気にもなりません。
要するに、ほとんどの問題は「地先の海」
[66853] という便利な言葉を使えば解決できる。
青函トンネルの自治体隣接事例は「公海の下の日本領土」という極めて特殊なケースの例外だったのではないか。
そこで、もう一度自治省告示S63-23
[66057]を読み返すと、「地方自治法第七条の二第一項の規定により」と書いてあります。
この条項によれば 「法定外での編入必要性があると認めて内閣が定めた場合」であり、やはり例外的な特殊ケースのようです。
固定資産税の課税境界というような一般的な目的ならば その目的で法定すればよく、この条項は異例です。
既にちょっと触れましたが、自治省告示S63-23の意味とするところは、
公海の下の部分があるが「青函トンネル内は すべて わが国の領土である」。
国内向けの姿をした告示ながら、実は世界に向けて このことを発信することが 目的だったのではないでしょうか。
青函トンネルと一見すると類似するような「海を隔てた自治体の固定構造物による隣接事例」は他にもある。
しかし、特殊ケースだからこそ 青函トンネル内地域の編入 が告示された。
一般の海底トンネルや海上架橋による隣接事例についての告示が 発見されていないのは 当然のことである。
これが 私の到達した結論でした。