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自治体の海上境界

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記事数=30件/更新日:2015年12月27日

Yahoo!地図で海上に強引に引かれた県境に関する記事[75884]が出た機会に、自治体の海上境界に関するこれまでの話題を集めてみました。
【追記2011/9/9】 その後、問題の地図の海上県境は、改訂されているようです。
【追記2015/12/27】 [63778][63789][89353][89356]を追加。

便宜上「海上境界」としましたが、海底境界を含みます。

陸上の自治体境界とは性格を異にするものと思われますが、1942年に 関門鉄道トンネル(現在の下り線)が 海を隔てる2県を結ぶ陸上交通路 の第1号として開通し、海底に存在する県境 が具体的な姿を現しました。
1988年には 青函トンネル海底部が 両側の自治体に編入されており、公海の下にも 自治体境界が存在する ことが明確に示されています。

【付言】
有明海の海底には三池炭坑の坑道[66799]が網の目のように張り巡らされていました。
福岡熊本県境が、そこでどのように扱われていたのかは知りません。

★推奨します★(元祖いいね)

記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[46715]2005年11月17日
ただけん
[46736]2005年11月19日
みかちゅう
[46746]2005年11月19日
小松原ラガー
[46748]2005年11月19日
88
[46750]2005年11月19日
LFB
[46757]2005年11月19日
みかちゅう
[46767]2005年11月19日
88
[46774]2005年11月20日
LFB
[63778]2008年2月21日
k-ace
[63789]2008年2月22日
林檎侍
[66012]2008年8月12日
88
[66022]2008年8月13日
グリグリ
[66032]2008年8月13日
hmt
[66054]2008年8月16日
hmt
[66057]2008年8月16日
88
[66061]2008年8月16日
hmt
[66064]2008年8月17日
88
[66510]2008年8月30日
hmt
[66732]2008年9月13日
hmt
[66738]2008年9月13日
hmt
[66802]2008年9月17日
88
[66803]2008年9月17日
88
[66853]2008年9月22日
hmt
[66856]2008年9月23日
hmt
[66863]2008年9月24日
hmt
[66871]2008年9月26日
にまん
[66873]2008年9月26日
hmt
[66877]2008年9月27日
にまん
[89353]2015年12月27日
hmt
[89356]2015年12月27日
hmt

[46715] 2005年 11月 17日(木)22:47:16ただけん さん
経県境値
久しぶりにおじゃまします。
全国いろんなところをオートバイツーリングしている関係で、いままでのみなさんより県境を越えていないところが少ないものですから、ちょっと書き込んでみます。

未踏のところは
福島~群馬(オートバイでは行けません)
埼玉~栃木
長野~富山(オートバイでは行けません)
石川~岐阜(オートバイでは行けません。スーパー林道は二輪通行止め)
鳥取~広島

なお、
[46683] デスクトップ鉄 さん のあげた県境越えで行ったことがないのは長崎~鹿児島 のみです。ただし現在航路が廃止されているはずです。
もっともこの航路が、熊本県の海域を通らず直接長崎と鹿児島をつないでいる航路だったかどうかは、わたしの手元の「日本地図帳(昭文社)」ではわかりません。

以上93+5カ所中6カ所が未踏です。

ちなみに三重~京都については、鉄道では行ったことがあるものの、オートバイでは行ったことがありません。

また、比較的短距離な航路に乗って 山口(徳山港)~大分(竹田津港)をスオーナダフェリーで渡ったことがあります。
これは手元の地図帳で確認できなかったので、確実なことは言えませんが、
なんとなく直接山口県と大分県を結んでいるような気がしますがどうなんでしょうか?

あと、乗ったことはありませんが、広島(福山港)~香川(多度津港)をせとうち物流がフェリーで結んでいます。
「昭文社ツーリングマップル6中国・四国」P58によれば、広島県の海域と香川県の海域は直接接しているのですが、フェリーは一端岡山県の海域を経ているようです。
この県境越えは、漁船にでも乗るか、泳いで渡らないと無理かもしれませんね。
貨物航路があるかもわかりませんので、これが最難関??
[46736] 2005年 11月 19日(土)01:27:44【1】みかちゅう さん
海水面の境界
[46715]ただけんさん

そもそも海水面に厳密な県境は存在するのでしょうか。香川県と広島県の海域が接しているのは、島と島の間に県境を引いたのを滑らかに結び合わせたらたまたま香川県と広島県が接してしまう図になった、というだけではないでしょうか。したがって海上の境界線は「右の島がA県、左の島はB県に属するんだよ」というのを教えたいだけで、厳密な境界線を反映しているものとは思えません。それに船は鉄道や自動車と違い、「厳密に」同じ道を通るわけではありません。「だいたい」この島とあの島の間を通るというぐらいのものです。

一方、湖沼などである1点から放射状に市町村境が書かれている例があります。たとえば印旛沼とか。漁業権や水利権の関係でいちおう区画がなされているのかもしれませんが、水面に「この範囲が××町」とロープや杭があるわけではなく、意味のあるものとは思えません。そもそも湖水面の面積は自治体単位の面積に算入されるのでしたっけ。

[46735]まかいのさん
結局のところ、県境って何本なんでしょうねぇ。
瀬戸内海や熱海~大島、福岡~対馬などの離島航路を考えると面倒なので、「陸地ないし橋・トンネルなど通路が固定されているもの」で接している境界を数えるのが無難ではないでしょうか。
[46746] 2005年 11月 19日(土)11:55:01小松原ラガー さん
そういえば・・・
たて続けにすみません。
[46745] 小松原ラガー
千葉~神奈川 ×

千葉県と神奈川県の県境って、アクアラインの何処になるのでしょうか。御存知の方、教えて下さい。
ん? それ以外にも、青函トンネル、大鳴門橋、下津井瀬戸大橋、多々羅大橋、関門(4つ)、それぞれ何処で境界線が引かれているのだろうか・・・アクアラインばっかりに気をとられていたけど、ちょっと調べてみようっと。
[46748] 2005年 11月 19日(土)12:24:53【1】88 さん
県境・「経県境」
[46736] みかちゅう さん
そもそも海水面に厳密な県境は存在するのでしょうか。
おっしゃるとおり、陸上部と違って、海水面に県境はないと思います。
もしあるのならば、「○○県の面積は、陸上部○○平方キロ、海上部○○平方キロ」と言うのがってもいいところ、それはありません。湖水面は、陸上部に含んでいますね。過去にも、十和田湖の面積をめぐって議論がありました([21572][21595][21603][21640][21645][21667]など)。
#国としての領海・経済水域はありますけどね。

話題の「経県境」ですが、これも[46736]みかちゅうさんの
瀬戸内海や熱海~大島、福岡~対馬などの離島航路を考えると面倒なので、「陸地ないし橋・トンネルなど通路が固定されているもの」で接している境界を数えるのが無難ではないでしょうか。
に賛成です。航路は、運行会社の事情その他によって新設・廃止がありえますし、海上部での「県境」は、定義がないので「感覚的」なものになるでしょうし。

[46746]小松原ラガー さん
千葉県と神奈川県の県境って、アクアラインの何処になるのでしょうか。御存知の方、教えて下さい。
ん? それ以外にも、青函トンネル、大鳴門橋、下津井瀬戸大橋、多々羅大橋、関門(4つ)、それぞれ何処で境界線が引かれているのだろうか・・・
陸上トンネルの場合は、地表の境界線をそのまま下ろした箇所が正確な県境でしょう(現地の道路標識は、「設置しやすい箇所」にある可能性もあるので、数メートルくらいは正確ではないかも)。
海峡トンネル(現在は青函トンネルと関門海峡の各種トンネル)のみ、将来は紀淡海峡トンネルも?)や橋梁は、表示(看板)は、その中央部か、前方の陸地に到達する直前にあるように思います。しかし、上記のとおり海水面の厳密な県境がないと思いますから、表示はあくまで参考でしょうね。「正式な県境はそもそも存在しない」のが正解だと思います(トンネルや橋の管理境界は、また別です)。

実は、[40541] オーナー グリグリ さんの書き込みに「「都道府県隣接数」ランキング」が、あります。このグリグリ さん 書き込みを元にすると、[40541]中の( )つきの数字が基礎になりますか? そうすると、「経県境」の分母は、( )つきの数字を総計して、2で割った92ですか? (自信なし)

・・・私自身の「経県境」も、集計中です。かなりいい線いってそうです。
[46750] 2005年 11月 19日(土)13:43:41LFB さん
海の県境
はじめまして。
[46748] 88さん

検索かけたところこのようなコラムが見つかりました。
http://www2s.biglobe.ne.jp/~kurisan/koramu/sakaime.htm

漁業法の規定により漁業権の設定(漁業免許)は都道府県知事の権限ですが、「その管轄に属する水面」に限られますので、境界線は必要なようです。

関門国道トンネルは中央部に境界表示があったと記憶しています。
青函トンネルの場合は事情が複雑で、宗谷・津軽・対馬海峡西・東水道・大隅海峡は「特定海域」として領海が3海里(通常12海里)に制されているため、真ん中が公海となっています。
http://www1.kaiho.mlit.go.jp/JODC/ryokai/tokutei/tokutei.html

しかし、固定資産税の課税のため、海底部については昭和63年2月16日の閣議決定で北海道松前郡福島町、青森県東津軽郡三厩村(当時)にそれぞれ編入されたとのことです。
(具体的な境界は当時の官報を探すしかないかと)
http://www2.kobe-u.ac.jp/~shotaro/kogi/2002gairon/11siryo.pdf
[46757] 2005年 11月 19日(土)17:12:43みかちゅう さん
海を越えるトンネル・橋の県境
[46746]小松原ラガーさん
青函トンネル、大鳴門橋、下津井瀬戸大橋、多々羅大橋、関門(4つ)、それぞれ何処で境界線が引かれているのだろうか・・・
関門人道トンネルには写真のように路面に境界線と県名が書かれているみたいですね。本当に正しい県境なんかい、という気もしますけど。

多々羅大橋は歩道併設ゆえ立ち止まって確認できるため、境界に記念写真が撮れるようなものを設置してもよいとは思いますが、何か存在したという記憶はありません。

アクアラインは海ほたるが木更津市に属するのは住所から確認しましたが(ちなみに住所は「292-0071 木更津市中島地先 海ほたる」だそうです)、県境が風の塔と海ほたるの間だろうという程度しか分かりません。トンネル内の壁面にでっかく県境を書いてあってもいいような気はしますが。


他の道路橋の境界標識は[46748]で88さんがおっしゃっているように、
その中央部か、前方の陸地に到達する直前にあるように思います。
というのが合っているかと思います。むろん「中央部」というのも正確な境界を反映しているとは限らず、「この橋は境界をまたいでいる」というのを表す程度の標識だと思います。実際、「A市」という標識と「B市」という標識が道を挟んで向かいに存在しないこともあります(むしろトンネルや橋がらみの場合は同じ位置にあるほうが珍しいかも)。

では鉄道トンネルはどうかというと…わかりません。[46750]でLFBさんが
固定資産税の課税のため、海底部については昭和63年2月16日の閣議決定で北海道松前郡福島町、青森県東津軽郡三厩村(当時)にそれぞれ編入されたとのことです
と述べているように、青函トンネルにはきちんとした境界が「ある」ということなのでしょう。他の橋やトンネルにも課税目的で帰属が決められてもいいような気はしますが、どうなのでしょう? 

後半はほとんど解答になっていませんね。これより先は詳しい方にお願いします。


[46748]88さん
湖水面は、陸上部に含んでいますね。過去にも、十和田湖の面積をめぐって議論がありました
あ、そういえばそうか。自治体面積の一覧を見ると「○○湖は境界未定地域を含むため、各自治体の面積には計上せず。ただし、全県計には○○湖の面積を含む」って書いてありましたね。裏返せば「境界が決定している湖の面積は各自治体の面積に含む」ということですね。

[46754]今川焼さん
(国道157号)温見峠は通行止めの表示にもかかわらず行けば通れると紹介されているのを発見。
あらら、地図上で国道の表示だったので通行可能か調べてませんでした。もう修正がきかないのでこのまんま、ということに。国道にも通行困難な「酷道」があるというのは知ってはいたのですが。
[46767] 2005年 11月 19日(土)22:19:3088 さん
河川の境、海の境
[46748] 88
[46757] みかちゅう さん
[46763] 小松原ラガー さん
河川(橋)の境で補足です。
もともと、河川は地番設定以前からの公共用物であるため地番が振られておらず(無番地)、不動産の登記簿もありません。法務局の地図(公図、不動産登記法14条地図(本年3月7日付の改正前の旧法では17条地図))でも、道路と同様に、地番は表示されません。この時点では、河川の中心線が、実際の県境などであることが多いと思います。
このあと、河川改修に伴って河川幅員を拡げるときは、たとえばA県側を拡げると、見かけ上は拡幅後の川の中心はA県側になります。標識はどこに設置するかはよくわかりませんが。
ちなみに、この地域が法14条地図整備済みであると、図面上は無番地の河川に隣接して有地番の国有地(河川法第5条の規定により都道府県知事が管理する二級河川であっても(県の職員が用地買収して河川工事を施工する場合であっても)、国土交通省名義で登記します)が存在するようになりますが、14条地図未整備地区の場合は、その後の国土調査などに伴って法14条地図が整備されたときに、この拡幅部分もあわせてまとめて無番地の河川であるように「14条地図上は」表されます(不動産登記簿は、拡幅部分は有地番の土地として残りますが)。
これらは、国土交通省の河川管理を担当している事務所や、都道府県の河川管理担当土木事務所にある「河川台帳(河川法第12条)」を見れば、明確にわかると思いますが、普通はなかなか見る機会はないでしょうね。

[46750] LFB さん
漁業法の規定ですが、不勉強でよくわからないのですが、全海域が都道府県知事の管轄に属するのでしょうか? 海の管理に関しては、公有水面埋立法、水産資源保護法、漁港漁場整備法、港湾法、海岸法などもあり、例えば海岸法は、河川管理部局(河口付近)、漁港管理部局、漁港以外の港湾管理部局、等に管理が分かれていると思うのですが。

青函トンネルの件、興味深く拝見しました。これによると、海の部分ではなく、トンネルの部分だけ、幅数メートルの帯状に当該市町村(ひいては北海道と青森県も)の地域が広がった、と言うことなのでしょうか? 課税上その他の便宜上のものではなく、なのでしょうか。これと同じように、公海ではないものの、瀬戸大橋などの架橋においても、同様の措置があってもよいように感じられるのですが。ご存知であれば、ご教示くだされば幸いです。
[46774] 2005年 11月 20日(日)01:06:09LFB さん
海の境
[46767] 88さん
漁業法については、魚業法84条の海区の範囲(農林水産大臣告示)が確認できればと思ったのですが、農林水産省サイトの「告示・通知」のページだけ開けないので。
漁業法11条に「都道府県知事は、その管轄に属する水面につき、」とありますが、[46750]での引用サイトの大審院判決から考えると一般的行政権の及ぶ範囲と思われます。

一方、地方自治法9条の3には公有水面にかかる市町村境界の変更関係が規定されていますが、埋め立てにより発生した土地の帰属(固定資産税の課税権)をめぐって紛争があるということは明確な境界線は必ずしも設定されていないとも考えられます。
海面、境界で検索すると隣接市との海面境界の協定書が例規集にある市もありましたが。

青函トンネルはご指摘のとおりトンネル幅だけが編入されたと考えるべきでしょう。
(トンネル部にしか主権が及ばないので。最終的には、当時の官報か町に確認するしかないでしょうが。)

自分でも書いてるうちにわからなくなってしまいました。
[63778] 2008年 2月 21日(木)00:04:41【2】k-ace さん
隣接自治体、岡山、加西
こんばんは、k-aceです。約1ヶ月ぶりの書き込みとなってしまいました…(ROMはしておりましたが)。

さて、隣接自治体を私なりにまとめている最中なのですが、よく分からない点が何点かあります。
架橋隣接、海底(水底)トンネル隣接、点隣接を含むとしているのですが、これに結構悩まされております。

(質問1)海底(水底)トンネル隣接は、坑口がある自治体同士が隣接なのでしょうか?(青函トンネルなら、上磯郡知内町と東津軽郡今別町) もしくは陸地部分の端点同士(青函トンネルなら、松前郡福島町と東津軽郡外ヶ浜町)なのでしょうか?
坑口同士ならば、「水底トンネル」コレクションで隣接自治体が分かって作業が楽なのですが。

(質問2)点隣接(グレートジャンクション)の基準がいまいち分かりません。本当は「市町村界一点交差」コレクションが完成(リリース)していたら、それを見れば問題ないのですが、それが完成(リリース)していない以上は、いまいちよく分かりません。一点交差に見えたらすべてそれは隣接と考えていいのでしょうか? 一点交差に見えるけど、隣接していないと判断できるところは(どれほど)あるのでしょうか? 境界未確定地域と一点交差が重なる場合についても、よく分かりません。 分かる方、ご教示の程お願いします。

(質問3)岡村大橋(呉市/今治市)のような、見落としやすい架橋隣接、海底トンネル隣接(こちら「水底トンネル」コレクションに全て収録されていると思うのでたぶん大丈夫たと思うのですが)って他にありますか?
#臨海トンネル(江東区/大田区)も意外でした。
また、「2県にまたがる島」コレクションの各都道府県の市町村の島版(本土では接していない同じ県同士のA市とB市がとある島で接しているケース)ってありますか?


[63774] hiroroじゃけぇ さん
一部hiroroじゃけぇ さんのブログに書いた内容と重複するのですが、[63662] はやいち@大内裏 さんご紹介の記事の中に
審議会は「公募に制限を設けるのはいかがか」との意見も出たが、市町村名や地域を特定するような地名は区名から排除し、中央区の名称も使用不可とした。方角は使用可能とした。
とあり、結構制限つきの区名公募の印象を受けました。今回の公募の制限事項、なぜここまで制限するのかよく分かりません。「地域を特定するような地名」ってどのような地名を指すのか(支所名はセーフなのか?アウトなのか?)。いまいち、何が駄目で何がOKなのかがさっぱりとしません。
各区名案は部外者なので、今回は書きませんが…。

[63775] じゃごたろ さん
四区ということで、「桃区」「猿区」「雉区」「犬区」。ほんの冗談ですが、多分こういう応募があることは考えられるでしょうね。
これにするか、方角区名にでもしろというのかと、部外者なのに冗談抜きに思ってしまいました(爆)。
でも、方角区名と「中区」、桃太郎関連以外で、かつ制限事項に引っかからず、岡山らしい区名候補ってどれだけあるのでしょうか…? 「旭東」「城東」ぐらい…?(これでも、見方によっては、地域名であり、準方角区名でもあるのですが…)
岡山らしい、良い区名になってくれることを切に望みます。

#とここまで書いて、よくよく見てみると、[63774] hiroroじゃけぇ さんご紹介の記事には
岡山市は、2009年4月の政令指定都市移行に伴い設ける4つの区の名称を29日から募集する。3月14日午後5時必着で、誰でも応募できる。
あれ、「誰でも」って、部外者の私も応募してもいいの? いつの間に変わったの?(それとも誤報?)

区の一体感を醸成するため、「西大寺」「御津」「興除」など区内の旧市町村名は使えない。ほかの区との差を感じさせる「中央」も除外する。
「地域を特定するような地名」の文字が消えている。

何か、ここ数日の間に変化があったのでしょうか?なかったのでしょうか? 詳しい方よろしくお願いします。


能代では揉めているようですが([63543] 右左府 さん)、加西では今年10月28日に三洋電機北条工場跡地にイオン加西ショッピングセンター(仮称)がオープンするとのです(兵庫県公報(平成20年1月29日)の4ページ目参照(注:PDF))。また、ヤマダ電機もここに進出するようで、和光デンキ撤退後、大型の家電量販店空白地域となっていた加西市民にとっては朗報です。
[63789] 2008年 2月 22日(金)23:53:27林檎侍[花笠カセ鳥] さん
20年前ですね
[63778] k-ace さん
(質問1)海底(水底)トンネル隣接は、坑口がある自治体同士が隣接なのでしょうか?(青函トンネルなら、上磯郡知内町と東津軽郡今別町) もしくは陸地部分の端点同士(青函トンネルなら、松前郡福島町と東津軽郡外ヶ浜町)なのでしょうか?
昭和63年の官報を調べていたら、こんな告示を見つけました。
出典 官報情報検索サービス
○ 自治省告示 第二十三号
青函ずい道に係る未所属地域を市町村の区域に編入する処分
 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第七条の二第一項の規定により、昭和六十三年三月一日から、青函ずい道のうち北緯四一度二〇分四五秒七七〇八、東経一四〇度一八分三二秒六〇九八の点から真方位五六度四五分四〇秒及び真方位二三六度四五分四〇秒に延ばした線以北の部分を北海道松前郡福島町に、以南の部分を青森県東津軽郡三#村にそれぞれ編入することとされたので、同条第三項の規定により告示する。
 昭和六十三年二月二十四日
自治大臣 梶山 静六 
この告示に従えば、青函トンネルの部分は福島町と三厩村(現外ヶ浜町)に編入されているので「福島町と外ヶ浜町が隣接」でいいと思います。

余談ですが、旧三厩村では、義経伝説にちなんだ「みんまや義経まつり」が毎年お盆に行われています。
[66012] 2008年 8月 12日(火)20:40:2188 さん
瀬戸内海
瀬戸内海に接した港町高松に生まれ育ちながら、少し内陸に居住していたため、幼少時の行動範囲では普段は海を見ることはありませんでした。数少ない海水浴を除くと、海→宇高連絡船(瀬戸内海)→旅と連想します。
20歳のころ、越前海岸や能登半島の禄剛崎に立って日本海を感じ、また、伊豆で沼津-大瀬崎のフェリーに乗って太平洋を感じました。なんか、違う・・・・。
瀬戸内海が、日本海や太平洋と大きく違う点として、主観ですが、3つほど浮かびます。
■島
瀬戸内海はずっと遠くまで海面が見えることはありません。いくらでも島が点在し(瀬戸内海で約3000)、または対岸に本州が見えます。島は「お椀を伏せたような」とも言われる、急峻な斜面のものが多いです。
■波
瀬戸内海は「シャワワ」「サーッ」「チャポン」という音です。台風時は別として、「ザッバーン」という波はありません。
■海の色
瀬戸内海は青い海のこともありますが、色は「エメラルドグリーン」の印象が強いです(特に港の中)。

愛媛県西条市出身の眞鍋かをりさんのブログの中の2008/5/12付けブログに、私の感覚と似た内容がありました。
眞鍋かをりさんが、角田光代さんの『八日目の蝉』を読んで、その舞台にもなった瀬戸内海に関して書いたものですが(私自身は同書は未読)、一部そのブログを抜粋します。
鮮やかに頭に浮かぶ瀬戸内の風景。
空の青と雲の白と海の濃い青と島の緑と穏やかな波。
ロケで全国いろいろ行ったけど、瀬戸内のような場所って他にはないと思います。
日本海、太平洋も大人になってからみたけどやっぱり私にとってはピンとこなくて
なんか違和感…と思ったら
水平線が見えるんですね、他の海って。
瀬戸内海は遠くに対岸も見えるし島だらけだし水平線て見たことなかったんですよ
だから私にとって
海とは瀬戸内海
なんです
私は「水平線」とは意識しませんでしたが、かなり似た感覚です。

――――――――――――――――――――――――――――――
海つながりでもう一つ話題を。
[40542] 88
四国島民のたわ言ですが、「東京湾アクアライン」で隣接するというのは、微妙ですね。島の住民としては、歩いてはどうしてもいけないから橋(またはトンネル)を熱望するわけで・・神奈川から千葉へは、遠回りとはいえ、歩けますからねえ。
[40555] グリグリ さん
もちろんご承知の上での書き込みだと思いますが、千葉県と神奈川県は「直接」隣接していないので、アクアラインでのみ隣接するというのは「微妙」ではないと思うのですけど...

3年以上前の記事ですが、この機会に拙稿[40542]の趣旨について触れておきます。
例えば、都道府県などが「隣接する」というのは、次の3種類あると思います。
(1)陸上部で隣接する(河川架橋による隣接を含む)
(2)陸上部では隣接しないが、海上部の海上架橋でのみ隣接する
(3)陸上部でも海上架橋でも隣接しないが、海上部のみで隣接する
アクアラインはまさしく(2)になるのですが、私の感覚では、(2)は(3)と限りなく近いと感じています。つまり、海上架橋というのは○×でいうと「隣接していない」という感覚です。岡山県と香川県は、瀬戸大橋(正確には下津井瀬戸大橋[40542])という海上架橋だけで隣接しており、陸上部が隣接していない両県は「隣接していない」という感覚です。同様に、西瀬戸自動車道(しまなみ海道、計画時は「瀬戸内海大橋」とも呼ばれていた)(正確には多々羅大橋)という海上架橋のみ隣接している広島県と愛媛県も、「隣接していない」感覚です。つまり、四国は本州とは「隣接していない」ということです。(大槌島井島(石島)瓢箪島で県境がある例は稀有な例なので省きます)
瀬戸大橋により本州と「陸続きになった」という効果を享受する一方、日常生活面・文化民俗面などでの違いや、強風時などの交通遮断(四国が「孤島」になる)を鑑みると、やはり「四国は島だ」「本州とは陸続きではない」と感じることが多い、瀬戸大橋開通前と開通後の両方を経験している者の感情(感傷)でした。

もちろん、十番勝負などクイズや雑学としての「隣接」は別のものとして差し障りはないのですが、「海上架橋による隣接を含む」との語句を見るたびに違和感を禁じえなかったので、海の話題が出たこともあり、本記事を投稿することとしました。
[66022] 2008年 8月 13日(水)01:07:44【2】オーナー グリグリ
隣接定義
[66012] 2008 年 8 月 12 日 (火) 20:40:21 88 さん
例えば、都道府県などが「隣接する」というのは、次の3種類あると思います。
(1) 陸上部で隣接する(河川架橋による隣接を含む)
(2) 陸上部では隣接しないが、海上部の海上架橋でのみ隣接する
(3) 陸上部でも海上架橋でも隣接しないが、海上部のみで隣接する

アクアラインはまさしく(2)になるのですが、私の感覚では、(2)は(3)と限りなく近いと感じています。つまり、海上架橋というのは○×でいうと「隣接していない」という感覚です。
(1)と(2)の差が(2)と(3)の差よりも大きいという感覚はよく分かりますし、私も単純に「隣接しているかしていないか」と言われたら(1)で判断するのが真っ当だと考えてしまいます。

そういう議論とは別に、今回の88さんの書き込みを見て思ったのが表題にある「隣接定義」です。


■その一
(3)にある「海上部のみで隣接する」と言うのはどの範囲を言うのでしょうか。例えば、長崎県と熊本県、愛媛県と大分県、兵庫県(淡路島)と和歌山県、鹿児島県と沖縄県などは感覚として隣接していると思えるのですが、山口県と愛媛県や大分県、和歌山県と徳島県などは微妙ですし、新潟県(佐渡島)と石川県となると隣接感覚からは程遠くなる気がします。フェリーなどによる交通手段があれば生活圏としての隣接感が生まれるのでしょうが、そうなると北海道と茨城県(大洗港)などフェリー航路つながりなどによる隣接感覚との違いがあいまいになります。加えて航空路まで含めてしまうと何でもありになってきそうです。それとも内水面の自治体境界に相当する海域の自治体境界が存在するのでしょうか。

■その二
隣接定義を都道府県ではなく自治体までに広げた場合、(1)の定義もあいまいになってきます。琵琶湖に面する滋賀県の自治体の面積が確定したのはつい最近のことですが、内水面である琵琶湖に自治体境界線が明確に引かれました。これによると、高島市は彦根市や長浜市や近江八幡市とは内水面を介して隣接していますが、米原市や東近江市とは隣接していません。しかしながら、隣接感覚的にはこの両者にほとんど差異はないのではないでしょうか。もうひとつの例として、大津市は内水面で守山市と野洲市と隣接していますが、守山市は琵琶湖大橋でも隣接しています。この場合、隣接感覚としては守山市との隣接感が野洲市よりも相当大きいのではないでしょうか。

内水面の境界が確定していない霞ヶ浦に面する自治体の場合はあいまいさがより大きくなります。行方市はかすみがうら市とは霞ヶ浦大橋で隣接していますが内水面で直接隣接しているかどうかは不明です。行方市と石岡市や稲敷市との内水面隣接も不明のままです。行方市に隣接する市は?という問いに対して、内水面だけを見た場合にはかすみがうら市と石岡市や稲敷市との違いはありませんが、架橋を考慮するとかすみがうら市は隣接が明確になります。北浦大橋で隣接する鹿嶋市も同じです。


結局、(1)は内水面境界が明確であるという前提に立っての分類かと思います。都道府県に限定した議論の場合にはよいのですが、議論を自治体にまで広げた場合には、(3)の海上部隣接と似たようなあいまいさが浮かび上がってくると思います。このあたり、十番勝負においてもなんとなくあいまいにしてきたところです。
[66032] 2008年 8月 13日(水)23:08:35hmt さん
「海を挟んで近接する」都道府県
[66022] オーナー グリグリさん
[66012]88さんの) (3)にある「海上部のみで隣接する」と言うのはどの範囲を言うのでしょうか。例えば、長崎県と熊本県、愛媛県と大分県、兵庫県(淡路島)と和歌山県、鹿児島県と沖縄県などは感覚として隣接していると思えるのですが、山口県と愛媛県や大分県、和歌山県と徳島県などは微妙ですし、新潟県(佐渡島)と石川県となると隣接感覚からは程遠くなる気がします。

「隣接」ではなく「至近距離」いう言葉なのですが、海洋法に関する国際連合条約 の第七条において、“海岸に沿って至近距離に一連の島がある場所”に「直線基線」を設定することが認められています。

この条約に基づいて定められた 「領海及び接続水域に関する法律施行令」 で採用された直線基線の 一覧図 をご覧ください。(既に[57494]でリンク)
佐渡と舳倉島との間にも直線基線が引かれ、新潟県(佐渡)と石川県(能登)とは「至近距離」と認められています。

このように、いささか“隣接感覚からは程遠い”ところも含めた「直線基線」が設定されている箇所を含めた「甘い基準」を採用することにより、[40541] オーナーグリグリ さんの「都道府県隣接数」ランキングに追加することができる「近接都県」(一応、隣接と区別)を集めてみました。

「直線基線」が関係する箇所については、政令別表第一に示された区域番号と点の記号を付しました。
一覧図の中で該当箇所の矢印をクリックすると、詳細図が示されます。例示(四国南岸)

東京都(伊豆大島=三ロ) と 静岡県(神子元島=三ハ)
静岡県(浜名港=四イ) と 三重県(大王埼=四ロ)
兵庫県(淡路島) と 和歌山県(友ヶ島)
和歌山県(瀬戸埼=五イ) と 徳島県(大島=五ロ)
山口県(情島) と 愛媛県(津和地島)
愛媛県(佐多岬半島) と 大分県(佐賀関半島)
高知県(沖ノ島=五ヌ) と 宮崎県(飛島=五ル)
長崎県(島原半島) と 熊本県(天草下島)
長崎県(壱岐島=九ツ) と 福岡県(沖ノ島=九ネ)
石川県(舳倉島=十二ハ) と 新潟県(佐渡=十二ニ)

その結果、佐賀県のみと隣接していた長崎県が熊本県(これは順当)・福岡県(だいぶ無理した感じ)とも近接することになり、3県に躍進。
和歌山県も三重・大阪・奈良に加えて紀伊水道がらみで兵庫・徳島を加え3→5府県。
愛媛県も四国3県プラス瓢箪島・鳶小島で隣接する広島県に加え、豊予海峡(大分)・防予諸島(山口)という地名でも縁のある2県との近接を加えて4→6県。
静岡県は神奈川・山梨・長野・愛知4県に加えて東京都(大島は元々伊豆)と三重県(かなりの無理筋)を加え、同じく4→6県。

その他、上記近接箇所に列挙された三重(6→7)・新潟・兵庫(以上5→6)・東京・熊本・徳島・福岡(以上4→5)・石川・大分・宮崎・山口(以上3→4)・高知(2→3)は1県増加。(架橋・海底トンネルを含む値)

鹿児島県(与論島)と沖縄県との間は、上記近接箇所に含まれませんが、全体としてこれだけ甘い基準になってくると「近接」に含めたくなります。
[66054] 2008年 8月 16日(土)11:13:03hmt さん
「海を挟んで近接する」都道府県(続編) 海上国道
隣接とまでは言わないが、「海を挟んで近接する」可能性のある都道府県 10組を[66032]で挙げました。
それには、領海12海里 のベースとなる「直線基線」が引かれる「至近距離」の島の存在を利用しました。

前報の末尾で、甘い基準ならば、鹿児島県と沖縄県も「近接」に含めたくなることを記しました。
今回は、そのようなケースにおける「近接」の根拠として、海を越える国道に着目してみます。

国道58号(鹿児島市-那覇市)の経由地の中には、“鹿児島県大島郡瀬戸内町、沖縄県国頭郡国頭村”が記されています。
国道という視点からすると、奄美大島と沖縄本島とは国道として連続していることになります。
だからといって、鹿児島県と沖縄県とが「隣接」しているというのは無理な気がするので、「近接」にしておきます。
実際に鹿児島県内で沖縄県に最も近いのは、もちろん与論島ですが、国道からは無視されています。

同様な視点からすると、国道436号(姫路市-高松市)の経由地には“香川県小豆郡内海町”があり、兵庫県(姫路)と香川県(小豆島)も国道により「近接」していることになります。

ここまではよいのですが、国道499号(長崎市-阿久根市)となると、いささか問題があります。
この国道の経由地として 一般国道の路線を指定する政令 に記された地点は、長崎半島の先端に近い“長崎県西彼杵郡野母崎町”(現・長崎市脇岬町)です。現実には野母崎(脇岬港)と阿久根との間の航路はなく、国道としての指定は有名無実と思いますが、名目的には長崎県と鹿児島県とが国道により「近接」?

上記の政令を見て“情報が不正確”([66029] 日本人さん、[66031] makiさん)などと指摘しないでください。
政令の改正により 野母崎町が長崎市に編入された 2005年の合併結果が反映されるまでは、この表記のままで「読み替え」た法令が適用されているのです。
法令に限らず、民間のHPその他の資料も、原則として発表された時点での情報と考えてください。ウエブ情報の場合、日付が不明な場合も多いのですが、市町村合併の結果を忠実にフォローして修正することなど不可能というのが現実でしょう。

脇道に入りましたが、海上を経由して指定された国道に戻ります。
長崎県と熊本県の間が最も近接している早崎瀬戸には国道389号が設定されています。
この国道は、起点の大牟田から少し南下した後で、熊本県の長洲から長崎県の島原半島に渡り、口之津から早崎瀬戸を越えて熊本県の天草へ、更に牛深から長島海峡を鹿児島県へと渡り、最後に海上架橋の黒之瀬戸大橋で四度目の海を越えて阿久根に至るルートです。

長崎県島原半島は、この389号 口之津ルートだけでなく、その東側(島原三角間)には 57号、西側の橘湾口(長崎天草間)には 324号と、合計3本もの国道で熊本県と結ばれています。
長崎・熊本の両県は、陸上での「隣接」こそないものの、極めて密な「近接」関係にあるものと判断されます。

山口県・愛媛県の間は、防予諸島の南を通る岩国松山航路が国道437号に指定されました。
愛媛県・大分県の間の豊予海峡(速吸瀬戸)には 197号があります。
長崎県・熊本県を含むこれら3組は、既に[66032]で近接県に算入しています。

橋/トンネルによる接続ある県の間には、もちろん海を越える国道が存在しています。
列挙すると、山口県・福岡県の国道2号(関門海峡、県境の表示)、千葉県・神奈川県の間は 409号東京湾アクアラインのほかに、16号(富津走水)も存在します。兵庫県・徳島県は大鳴門橋の 28号。岡山県・香川県は下津井瀬戸大橋の 30号。広島県・愛媛県は多々羅大橋の 317号。
北海道と青森県の間には、函館と下北半島大間を結ぶ国道 279号(338号)。青函トンネルに近いのは福島三厩間の 280号。

陸上でも隣接している愛知・三重県の間の国道は伊良湖水道 42号(259号)。そして佐賀・長崎県の壱岐水道 382号。

海上部分の両側が同一県内にある国道は、260号 英虞湾、269号(448号) 鹿児島湾口、350号 佐渡、384号 五島列島、390号 沖縄県、485号 隠岐、487号 江田島。
[66057] 2008年 8月 16日(土)15:08:01【1】88 さん
海上における地方公共団体の境界等について
海上の都道府県境を巡る議論は、3年ほど前の話題でした。私も投稿していながら失念していました。
まず、余談からですが、
[46750] LFB さん
青函トンネルの場合は事情が複雑で、・・・(引用者中略)・・・「特定海域」として領海が3海里(通常12海里)に制されているため、真ん中が公海となっています。・・・しかし、固定資産税の課税のため、海底部については昭和63年2月16日の閣議決定で北海道松前郡福島町、青森県東津軽郡三厩村(当時)にそれぞれ編入されたとのことです。
この閣議決定を受けた自治省告示を官報情報検索サービスによりご紹介します。 
○ 自治省告示 第二十三号
青函ずい道に係る未所属地域を市町村の区域に編入する処分
 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第七条の二第一項の規定により、昭和六十三年三月一日から、青函ずい道のうち北緯四一度二〇分四五秒七七〇八、東経一四〇度一八分三二秒六〇九八の点から真方位五六度四五分四〇秒及び真方位二三六度四五分四〇秒に延ばした線以北の部分を北海道松前郡福島町に、以南の部分を青森県東津軽郡三#村にそれぞれ編入することとされたので、同条第三項の規定により告示する。
 昭和六十三年二月二十四日
自治大臣 梶山 静六
「三#村」の「#」は、「厩」の異体字です。
地方自治法第7条の2は、次のとおりです。
法律で別に定めるものを除く外、従来地方公共団体の区域に属しなかつた地域を都道府県又は市町村の区域に編入する必要があると認めるときは、内閣がこれを定める。(後略)
ウォッちずでこの緯度・経度を確認するとこの地点になり、ここで北海道松前郡福島町と青森県東津軽郡三厩村が接しています(海底ですが)。
――――――――――――――――――――――――――――――
さて、本題です。[66022] グリグリ さん
隣接定義
これに関して、「海と川をめぐる法律問題」(1996年3月30日初版発行、編著:成田頼明・西谷剛、発行:財団法人河中自治振興財団、発売元:良書普及会)と、海上保安庁HP内の管轄海域情報管理~日本の領海~を主たる資料として述べます。
[66032] hmt さん と少し重複しますが、既に原稿を執筆中でしたし、補足する部分も多々あるのでご容赦を。

●海の種類
H8.7.12条約第6号「海洋法に関する国際連合条約」(国連海洋法条約)により、国際法との関係で国際的視野の下で定まるべきものとなっています。
種別説明所有権説明
内水領海の基線の陸地側の水域沿岸国の主権が及ぶ
領海領海の基線からその外側12海里(約22km)の線までの海域沿岸国の主権が及ぶ
接続水域領海の基線からその外側24海里(約44km)の線までの海域(領海を除く)(*1)
排他的経済水域領海の基線からその外側200海里(約370km)の線までの海域(領海を除く)並びにその海底及びその下(*2)
公海その他
(*1)沿岸国が,領土・領海の通関上,財政上,出入国管理上(密輸入や密入国),衛生上(伝染病等)の法令違反の防止及び違反処罰のために必要な規制をすることが認められた水域
(*2)(1)天然資源の開発等に係る主権的権利(2)人工島,設備,構築物の設置及び利用に係る管轄権(3)海洋の科学的調査に係る管轄権(4)海洋環境の保護及び保全に係る管轄権、が認められた水域
上述の海上保安庁HP内の管轄海域情報管理~日本の領海~にこれらの違いが図入りで紹介されています。
「海洋法に関する国際連合条約」については、健論会東京大学東洋文化研究所田中明彦研究室もご参照ください。

主権が及ぶのは、領海まで、つまり、基線から12海里までです。
ただし、「特定海域」(宗谷海峡、津軽海峡、対馬海峡東水道、対馬海峡西水道及び大隅海峡(これらの海域にそれぞれ隣接し、かつ、船舶が通常航行する経路からみてこれらの海域とそれぞれ一体をなすと認められる海域を含む。))は、領海は、12海里ではなく、それぞれ、基線からその外側3海里の線及びこれと接続して引かれる線までの海域です。つまり、これらの箇所では「公海」を挟んでいます。

●領海の所有権・利用権
上記でも少し述べましたが、海は国の所有であるというのが戦前から現在に至るまでの学説・判例の一致した見方です。
海は古来より自然の状態のままで一般公衆の共同利用に供されてきた公共用物であって、国の直接的支配管理に服し、特定人の排他的支配の許されたもの
としています(最高裁昭和61年12月16日判決(民集40巻7号1236頁)。所有権が国に属する「国有」とは言っていませんが、「民法上の所有権の対象でない」ということで、国有の根拠は特に問う必要がない、ということです。

●領海と地方公共団体の区域について
これが今回のポイントになりますので、前述文献をそのまま引用します(p.6~7、体裁は一部引用者が変更)。
○学説・判例の動向について
古くは見解に対立があったが、今日では、学説・判例ともに、地方公共団体の区域には接続海面も含まれるというのが通説と見てよい。(能代簡裁昭和48年4月3日判決(刑裁月報5巻4号545頁―青森・秋田の海面境界にかかる刑事事件)
○領海法による領海の拡大と地方公共団体の区域の変更について
領海法の制定によって、地方公共団体の区域は自動的に拡大したと見るべきで、特別にこれをいずれかの地方公共団体に編入する手続きは要しないと見るべきである。しかし、現実には、まだ区域として明示されていないし、その実益もこれまでにはあまりなかったが、これからはその必要性が生ずるものと思われる。管轄権の問題だけに止めておくのか、地方公共団体の区域にとりこむのかという問題もある。海上は無人地帯なので、居住者がいることを前提とした対人規制はいまのところないが、今後、海上構築物、海底ハウス等に人が居住する可能性がないわけではない。課税権、機関委任されている各種の行政事務の執行権、計画権等の面でその必要性が生じてくるかもしれない。
○地方公共団体による管轄権行使の態様と限界
国法が存在しない場合に、地方公共団体が条例を制定して立法管轄権を行使しうるかどうかという問題がある。海上保安庁が一元的な執行機関としてすべてにあたるのか、地方公共団体が権限行使のための行政体制をもっているのかどうか。現在では、離島でさえ救急業務等はお手上げの状態である。広域連合という形で広域対処する可能性はある。

●海に対する適用法規について
それぞれ区域に指定されている箇所により、海岸法港湾法漁港漁場整備法などの諸法により管理されています。個別法により区域指定されていない箇所は、いわゆる「法定外公共物」であり、国有財産法により、現在では海は都道府県の法定受託事務として管理されています。

●地方自治法第9条の3の「公有水面のみに係る市町村の境界変更」について
地方自治法第9条の3 公有水面のみに係る市町村の境界変更は、第七条第一項の規定にかかわらず、関係市町村の同意を得て都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め、直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない。
「逐条 地方自治法 第4次改訂版」(松本英昭著、平成20年2月25日第4次改訂版3刷、学陽書房)によると、この条文に言う「公有水面」は、次のとおり定義されております。
河、海、湖沼の外、用排水路、池、沢、運河等公共の用に供する水面又は水流で、その地盤が国の所有に属するもの(後略)
また、同書によると、次のような解説があります。ここもポイントになるので、長文ですがそのまま引用します(p.114~115)。
「公有水面のみに係る市町村の境界変更」とは、公有水面のみに係る市町村の境界が古図、判決その他の記録によってすでに明らかである場合は、これを変更することは可能であるとしたものであるが、他に公有水面のみに係る市町村の境界を変更する必要が生ずるのは、当該公有水面の埋立てが行われ、埋立地が二以上の市町村の境界によって分断され、不合理な形で二以上の市町村に分属することとなるような場合である。それは水域において従来の境界がたとえ合理的な根拠を有していても、これを埋め立て、利用することとなるとそこに新しく作られるべき地域社会の一体性の保持、その他行政上社会上の必要に基づいて、また、公有水面である場合とは異なった観点に基づいて、別個の境界が定められるべき場合が少なくないと思われる。このような場合には公有水面である間に、従来の境界を変更することができるものとされたものである。
これは、例えば関西国際空港の埋立てに際し、従来海のときには対岸の本州側の大阪府泉佐野市・泉南郡忠岡町・泉南市の陸上部の境界線をそのまま海上に伸ばした線が「海における3市町の境界」であったものを、その所属のまま埋め立てたのでは、泉北郡忠岡町・泉南市の埋立て部分が泉佐野市で接続している連絡橋を介してしか従前の陸上部の市町域と接続できないことから、埋立て前に本条の規定により、関西国際空港の区域をすべて泉佐野市の所属とした後に埋立てを行うようなことを想定している規定です。実際には、このようなことは起こらず、従前の海の所属どおり(図面化されたものはないが、陸上部の境界をそのまま海岸線に垂直方向に伸ばした線を海上における境界とみなした)、そのまま埋め立てて関西国際空港となり、3市町に属しているのはないでしょうか。もっとも、町名だけは「泉佐野市泉州空港北」「泉南郡田尻町泉州空港中」「泉南市泉州空港南」と、一体化できるよう、調整した模様ですが。(参考地図過去記事集)

なお、上述の地方自治法第9条の3にあるように「都道府県知事が当該都道府県の議会の議決を経てこれを定め」「直ちにその旨を総務大臣に届け出なければならない」ですから、決定するのは都道府県知事です。
陸上部の境界変更は、地方自治法第7条、特に第8項により、「総務大臣の告示によりその効力を生ずる」ですから(拙稿[][54044][55225])、この第9条の3による海上部の境界変更の規定は、陸上部の規定より簡易な方式であると言えます。
―――――――――――――――――――――――――
以上の整理です。
・領海の所有権は、国が所有している。
・領海の外の接続水域・排他的経済水域・公海は、所有権は国は持っていない。
・領海は、領海法(現「領海及び接続水域に関する法律」)の制定により、接続海面も地方公共団体に含まれる。このため、海上部で各地方公共団体同士は「接している」。しかし、現実には、まだ区域として明示されていないため、どの地方公共団体同士が接しているかを確認する手段がない。
・公海を挟む箇所では、公海が領海の外であるため、国の所有ではもちろんなく、地方公共団体の区域にも含まれない。つまり、接していない。津軽海峡のような「特定海域」に関連する箇所でも、公海を挟むため、接していない。
 例えば、「北海道と青森県」「対馬市と壱岐市」「鹿児島県本土と屋久島」「鹿児島県本土と種子島」などの例では、隣接してそうでありながら、その間に「日本でないところ」があるため、隣接していない。
 また、鹿児島県や沖縄県では同一県内でありながら、東京都小笠原村などでは同一村内でありながら国の主権が及ばないところ(排他的経済水域や公海)をはさんでいるため、「飛地」のようになっている。
 北海道と青森県では、冒頭のとおり海底では接しているものの、海上部では接していない。
――――――――――――――――――――――――――――――
参考法令等
海上保安庁HP管轄海域情報の管理~日本の領海~
領海及び接続水域に関する法律(S52.5.2法律第30号)
排他的経済水域及び大陸棚に関する法律H8.6.14法律第74号)
[66061] 2008年 8月 16日(土)23:50:59hmt さん
海上・海底の自治体境界線
[66057] 88 さん
領海は、領海法(現「領海及び接続水域に関する法律」)の制定により、接続海面も地方公共団体に含まれる。このため、海上部で各地方公共団体同士は「接している」。

これは意外。十分に理解できていませんが、いろいろな議論に発展しそうです。

青函トンネルの境界点
北緯四一度二〇分四五秒七七〇八、東経一四〇度一八分三二秒六〇九八の点

念のために付言すると、1988年の自治省告示なので、日本測地系による経緯度と理解します。
[66064] 2008年 8月 17日(日)03:26:0188 さん
青函トンネルの境界点について
[66061] hmt さん
念のために付言すると、1988年の自治省告示なので、日本測地系による経緯度と理解します。
失礼しました。
海上保安庁海洋情報部の経緯度変換プログラムにより変換すると、
日本測地系世界測地系
北緯41度20分45秒7708北緯41度20分55秒143
東経140度18分32秒610東経140度18分19秒962
ですので、再度ウォッちずでこの緯度・経度を確認するとこの地点になり、青函トンネルと位置が合いました。ここで、北海道松前郡福島町と青森県東津軽郡三厩村が接しています。

#「日本測地系」「世界測地系」について知りたい方は、例えば国土地理院HP内の世界測地系移行の概要をご参照ください。
[66510] 2008年 8月 30日(土)18:25:46hmt さん
境界線について(3) 境界線には「目的」がある
陸と海の境のような自然の境界線。そして、県境のような人為的な境界線。
前2回[66487][66488]は東京港などを題材にして、地理的な考え方からの海岸線と、港湾・河川管理など行政的立場からの区分けとは異なることを語りました。

代表的な行政境界線である県境(都道府県境)の話題に移ります。
2005年11月に「県境越え」が話題になりました。実はその半年前に [40541]オーナー グリグリ さんが発表した「都道府県隣接数」ランキングがあり、それに関連して、最近も海の県境や隣接に関する議論がありました。

既に「海上の都道府県境」という記事集[66057]がありますが、陸上の情報も補った 都道府県境 の記事を改めてリンクしておきます。

最初に言っておきたいことは、行政境界線や、それによって囲まれた区域というような「概念」ないしは「用語」は、その区域を管理する目的で境界線を引いた者(多くの場合行政機関)が、その目的に合わせて定めたものであるということです。

その典型的な実例が青函トンネルの編入に伴ない設定された北海道・青森県境でしょう。[66057] 88 さん
津軽海峡は特別に領海3海里で、その中央部にあたるこの地点の海上は公海です。しかし、海底トンネルの中は日本の主権が及ぶ新たな領土として、1988年に日本に編入されたのですね。

[46746] 小松原ラガー さん
千葉県と神奈川県の県境って、アクアラインの何処になるのでしょうか。

東京湾は幅12海里を持つ領海の基線の内側にある「内水」域なので、日本の主権が及ぶことに問題はないのですが、都道府県はもともと陸上の行政区画として生まれたもので、海上には明確な都県境が引かれていません。
しかし、東京湾アクアラインという神奈川県と千葉県との間を結ぶ固定連絡施設ができると、警察や課税を含めた行政権の行使のために、従来は隣接していなかった両県の間に「県境」が必要になります。

人工島である関西国際空港が、沿岸2市1町の従来の区域を沖合いに延長した形で分属するのと同じような考え方で、「海ほたる」は木更津市、「風の塔」は川崎市となり、その間の「どこか」に境界点を作ったのでしょうね。おそらく、川の真ん中を境界にするのと同じような感覚で、2つの人工島の真ん中に。

船舶が通行するだけならば、海がどちらの都県に所属するかを問う実益はなさそうです。
東京港は東京都、川崎港・横浜港・横須賀港は神奈川県、千葉港・木更津港は千葉県に属するとしても、その中間にはいずれの都県に属するとも決められていない水域があるようです。
文献(東京湾埋立地の歴史pdf) の16頁に適当な図面が合ったのでリンクしておきます。

漁業のような経済活動を営む場合には、漁場がどちらの県に属するものなのかが問題になります。
[46750] LFB さんが引用した水産雑学コラム( 本になり、リンクは切れた)によると、これは「慣行」に従うものとされます。以下引用文

“県の漁業調整規則は、知事の管轄権の及ぶ範囲の海面の漁業を規制しますが、神奈川県と千葉県との間には明確な境界線の慣行がなく、両方の県から出漁した船が入会で操業しているようです。裏を返せば、相手方の漁業権区域沖合線の手前までは、双方が自分とこの海という感覚でも、大きな問題がないのでしょう。”

船舶の航行に関しては県境を決める必要がなく、魚を追って移動する漁業に関しては「入会い」で処理してきた。
しかし、固定施設である東京湾アクアラインについては、「境界」を作ることになった。(青函トンネルの場合のような資料はみつかりませんが…)

重複があり得ない県境に関しても、海上での公式の取り扱いは、「目的に応じて違う」という実例だと思います。

陸と海の境界に関しては、既に河川法と港湾法とで規定した河川区域と港湾区域とが重複している現実を見ました。
陸と海との境界は、地形図の世界でも海図の世界でも満潮時の海水面で決めています。(海図の水深は低潮面基準)
農耕用地、建築用地等として利用される土地は、通常の場合、満潮時にも水没しないことが条件ですから、陸上の論理では満潮時の海水面で水陸の境界を決めるのは自然なことです。
# 海中に社殿を造った厳島神社のような例外的存在もあります。

ところが、満潮時には川のかなり上流(水産雑学コラムによると、相模川では河口から6.6km付近)まで海水が上がるのだそうです。海水魚が川を上がるとなれば、海の漁師も陸地である川で魚を取る。ここでは海区漁業と内水面漁場との境界問題が生じるという仕組み。
境界問題は、なかなか一筋縄ではゆきません。
[66732] 2008年 9月 13日(土)13:54:19hmt さん
境界線について(7) 地方自治体は(潜在的にせよ)海上部で「接している」のか?
中海、印旛沼、琵琶湖などの湖沼では、水面に確定した境界で地方自治体が接しており[66716]、これまで境界未定だった十和田湖についても、2008/8/29の分割合意[66509] により境界線が引かれることになりました。

では、海上部における地方自治体の隣接関係やその境界線は?

[46715] ただけん さん
「昭文社ツーリングマップル6中国・四国」P58によれば、広島県の海域と香川県の海域は直接接しているのですが
[46736] みかちゅう さん
そもそも海水面に厳密な県境は存在するのでしょうか。香川県と広島県の海域が接しているのは、島と島の間に県境を引いたのを滑らかに結び合わせたらたまたま香川県と広島県が接してしまう図になった、というだけではないでしょうか。
[46748] 88 さん
おっしゃるとおり、陸上部と違って、海水面に県境はないと思います。
という応答に見られるように、私も海水面には県境はないと思っていました。

但し橋や海底トンネルなどの固定連絡施設については、警察権や課税権を行使するため実質的な県境を設ける必要があることを、青函トンネルや東京湾アクアラインの例を引いて述べました[66510]

ところが、88 さん から新たに次のようなご意見[66057](いわば潜在的海上隣接説)がありました。
領海は、領海法(現「領海及び接続水域に関する法律」)の制定により、接続海面も地方公共団体に含まれる。このため、海上部で各地方公共団体同士は「接している」。しかし、現実には、まだ区域として明示されていないため、どの地方公共団体同士が接しているかを確認する手段がない。

このご意見は、オーナー グリグリさんの「都道府県隣接数」ランキング[40541]や 隣接定義[66022]にもかかわる問題であり、検討してみました。

このご意見も関して、「日本の領海」に関する海上保安庁のサイトと共に、「海と川をめぐる法律問題」(1996)という書物、特にそのp.6~7が 重要な論拠として引用されています。
それによると、まず“今日では、学説・判例ともに、地方公共団体の区域には接続海面も含まれるというのが通説と見てよい。”として、青森・秋田の海面境界にかかる刑事事件の能代簡裁判決が参照されています。

参照判決の事件詳細は不明ですが、おそらく事件現場(海上)の捜査や裁判の管轄が争われたのではないかと推測します。このように、陸地に近い海上にまで行政や司法の管轄が及ぶことはあるわけです。

しかし、この事件に関して秋田県という“地方公共団体の区域”を管轄する裁判所が“含まれる”と判断した“接続海面”が、「領海及び接続水域に関する法律」でいう“接続水域”を意味するものでないことは、1973年という判決日から明白です。
この法律は、1977年に「領海法」として制定され、“接続水域”という概念は1996年改正(表題も変更)の際に導入されたものだからです。

“接続海面”が地方公共団体の区域に含まれるという“通説”の根拠は、上記判決の他にもあると思われますが、それはともかくとして、この言葉は、例えば海水浴場のような「陸地に接続した海面」の意味でしょう。
そのように認識は“領海法の制定”よりも前からのものであると思われます。
著者が“領海法の制定によって、地方公共団体の区域は自動的に拡大したと見るべき”という見解を示している対象は、(陸地側の)“接続海面”のことではなく、【3海里から12海里に拡大した】領海内のことと理解されます。

この見解は通説ではなく、著者の考えを示したものと理解されます。
言うまでもなく、現在でも地方自治法第5条では“普通地方公共団体の区域は、従来の区域による”となっており、海上に及ぶ可能性については全く触れておりません。

著者自身も、
管轄権の問題だけに止めておくのか、地方公共団体の区域にとりこむのかという問題もある。
と記しており、著者が“自動的に拡大したと見る”のは、例えば漁業権設定の際に行使される都道府県の管轄権(漁業法10条、11条参照)のようなものであり、地方自治法を含めて一般的な概念として理解されている「区域」とは異質のものであろうと考えられます。

なお、漁業法136条は、“漁場が二以上の都道府県知事の管轄に属し、又は漁場の管轄が明確でない”ケースが存在することを示しています。
これは、海上における都道府県知事の管轄権というものが、重複があり得ない「都道府県の区域」とは明確に異なるものである何よりの証拠でしょう。

更に言えば、都道府県知事は 少なくとも漁業権の設定に関して海上の管轄権を持つようですが、市町村については、そもそもどのような行政事務に関して海上に管轄権があるのでしょうか?
海水浴場に関しては県の条例だけでなく市町村条例を定めた例もあるでしょう。
陸地にごく近接した海上レジャー施設などについて市町村の管轄権がある可能性は否定しませんが、市町村が領海全域に及ぶ管轄権、ましてや「地方公共団体の区域」を持つ情況にあるとは思われません。

以上の理由から、
海上部で各地方公共団体同士は「接している」。
すなわち、
(明示こそされていないが)海上の「境界線」で接した「地方公共団体の区域」が潜在的には存在する
という説を、にわかに信じることはできないのです。
[66738] 2008年 9月 13日(土)21:10:48【1】hmt さん
境界線について(8) 県境の交通路
「信越トレイル」全通 の記事を今日の夕刊で見ました。
長野、新潟県境の関田山脈を走る全長約80キロを山歩きできるトレッキングルート「信越トレイル」が13日、全線開通した。

山歩きの世界には暗いので、県境を80kmにも亘って歩ける尾根道が整備されていたことは全く知りませんでした。
ルート の南西側50kmは既に2005年に開通しており、今回は北東側の30kmが開通とか。

今年の2月にまとめられた[63720]futsunoおじ さんの労作 「県境の交通路」コレクション は、“県を越える”道路・鉄道と峠のコレクションなので、「信越トレイル」のような県境伝いのルートは対象外でしょうが、タイトルの「県境の交通路」そのものなので、参考情報として付け加えておいていただいたらどうかと考えます。

それはさておき
「都道府県」という区域は、もともと陸上の住民や土地を管理する目的で設けられたものです。
このコレクションも、本来の「都道府県境」である陸上の道路・鉄道を主体とするものですが、これに加えて「陸上交通」の手段として使われる固定連絡施設(海上架橋と海底トンネル)が加えられています。
対象は「交通路」ですが、離島の県境 のうち5箇所は、交通路がなくても特別に集録されています。

陸上・海上架橋・海底トンネルの他にも、飛行機や船による連絡路があります。
遠く離れた地点を結ぶ飛行機や長距離フェリーは「県境」の対象としてふさわしくないとしても、「対岸の県との間を直結する航路」は、いわば「動く架け橋」であり、海上架橋と同様に県境を結ぶ交通路と見ることもできます。

また、海上を通る経路で設定された国道のうち 20路線には 海上県境があります。
陸上・海上架橋・海底トンネルのいずれかにより既に隣接都道府県に算入されている12路線を除外すると、8路線です。
[66054]を書いた時は気がつかなかったのですが、兵庫県と香川県とを結ぶ国道436号以外の7路線は、ずっと前に[46683]デスクトップ鉄さん が挙げておられました。

これらの国道がどのような経緯で設定されたものかは知りませんが、現在のところ航路で結ばれ県境の海上国道として機能している路線は5路線と思われます。
兵庫県姫路-香川県福田(小豆島)間 国道436号
山口県伊保田(周防大島)-愛媛県三津浜間 国道437号
愛媛県三崎(佐多岬半島)-大分県佐賀関間 国道197号
長崎県口之津(島原半島)-熊本県鬼池(天草下島)間 国道389号
長崎県茂木(長崎半島)-熊本県富岡(天草下島)間 国道324号

国道57号の三角島原フェリーは2006年に 運行が廃止されました

鹿児島・沖縄航路 は、国道58号と同じように鹿児島県奄美大島と沖縄本島との間を結びますが、国道経由地の沖縄県国頭村は通らず、国道経過地でない与論島から那覇港に直行します。

長崎・鹿児島両県の間は、国道499号が設定されていますが、航路で結ばれていません。
[46715] ただけんさん は、“ただし現在航路が廃止されているはずです。”と書いていますが、航路が廃止されたのでなく、最初から実体のない国道だったのではないかと推測します。
野母崎の脇岬港と阿久根との間には熊本県の牛深港があるのに、これが国道の経由地になっていないのも不自然です。
要するに、この国道が長崎・鹿児島両県を直結しているようには到底思われないこと、ただけんさん同意見です。

瀬戸内海 は、直線基線設定(1996)よりも前から内水とされていた特別の海域で、向き合っている地域の間には、特別の交流・利害関係が存在していると思われます。

本土では隣接していないが、海上架橋・海底トンネルで結ばれている組み合わせ:兵庫県と徳島県、岡山県と香川県(離島では隣接)、広島県と愛媛県(離島では隣接)、山口県と福岡県。

対岸と航路で結ばれている組み合わせ:兵庫県と香川県(国道436)は既出。
周防灘を隔て向き合う山口県と大分県。徳山-竹田津(国東半島)航路[46715]があります。
紀伊水道を隔て向き合う和歌山県と徳島県。和歌山-徳島航路あり。

和歌山県と兵庫県(淡路島)との間は、紀淡連絡道路計画があるほど地理的には近接していますが、航路はありません。かつては和歌山に近い深日港(大阪府)から洲本への航路がありましたが、明石海峡大橋開通の影響を受けて廃止。

備後灘を隔てた広島県と香川県とは、直接向き合っている近接関係でしょうか?
たしかに福山-多度津間の航路は、岡山県笠岡諸島の間を通り抜けるらしく、直結というには疑わしい点があります。[46715] ただけん さん
しかし、漁場としての管轄はともかく、航路については岡山県に属する海域という定めはなく、広島県と香川県とは航路で直結していると言ってもよさそうです。
【追記】
[66740] hiroroじゃけぇ さんから、8月31日をもって、福山~多度津間のフェリー廃止とのことをお知らせいただきました。
せとうち物流 によると、燃料費上昇・瀬戸中央自動車道との競合・船舶老朽化が理由。

瀬戸内海から外に出ると、高知県宿毛と大分県佐伯の間(豊後水道)、長崎県壱岐と福岡県博多の間(玄界灘)にも航路あり。
東京都大島と静岡県伊東との間も航路で結ばれた近接関係です。
[66802] 2008年 9月 17日(水)23:21:4088 さん
海上の地方公共団体の境界について 1/2
[66732] hmt さん
今から述べる、さまざまな資料に先に気がついておけば、[66057] の投稿はもっとうまく整理して述べることができたのに、と、私自身悔いております。
[66732] hmt さんの記事の、地方自治法第五条への観点を読んでから、文献を再確認し、また、追加発見しているのですから、私自身調査が不十分・手戻りです。
――――――――――――――――――――――――――――――
■その1
参考文献:「逐条 地方自治法 第4次改訂版」(松本英昭著、平成20年2月25日第4次改訂版3刷、学陽書房)
同書は、当初は長野士郎氏(自治事務次官を経て後の岡山県知事)が興し、歴代の自治事務次官が引き継ぐ形で著者となっており、松本英昭氏も同様です。自治省・総務省が協力したとありますから(監修ではない)、地方自治法の公的解説の決定版といってよいでしょう。

まず、導入部として。地方自治法第1条の3で地方公共団体の種類が述べられていますが、一般に、地方公共団体が成り立つためには、三つの要素がなくてはなりません。
(1)地域的・空間的構想要素(場所的構成要素)一定の地域を画した区域を有すること
(2)人的構成要素その一定の区域内に住所を有するすべての者をもって、その住民すなわち、団体の構成員とすること
(3)法制度的構成要素その地域の範囲内において、その住民によって構成される団体に対して国法に基づいて法人格が与えられ、事務を処理する権能(自治権)が認められること
(2)が規定されているのが第10条(住民の意義及び権利義務)であり、(3)が規定されているのが第2条(地方公共団体の法人格とその事務)でしょう。
ちなみに、(1)(2)のみであれば、国内の一定の地域を単位とする集団は、各国においても、また歴史的にも、数多く見られるところです。

さて、本題に戻って、(1)地域的・空間的構想要素(場所的構成要素)とされているのが、地方公共団体の区域です。
(区域)
第五条 普通地方公共団体の区域は、従来の区域による。
ポイントになりますので、長文ですが、前掲書の同条の解説を引用します(体裁のみ引用者が適宜修正)
「従来の区域」とは、本法施行当時の従前の都道府県及び市町村を、そのまま地方自治法上も都道府県及び市町村として存続させることとされたので、地方公共団体の名称(第3条第1項)と同じく、その区域についても本法施行当時の従来の区域によることとしたという意である。
市町村の区域は、その地域内の河川湖沼の水面はいうまでもなく、その地域に接続する領海及び上空、地下に及ぶと解されている。その限度は自治権の及び得る範囲である(行判昭12.5.20)。
[運用]本条に関しては別に運用の問題はないが、市町村の地先の水域等は、やはりその区域に含まれるものとして取り扱うことが適当である。いずれの市町村の区域であるか判然としないときは本法第9条の2及び第9条の3の規定を活用すべきである。
ちなみに第9条の2は「市町村の境界の決定」、第9条の3[66057] 拙稿でもご紹介した、「公有水面のみに係る市町村の境界の決定等」に関する規定です。

「行判昭12.5.20」を具体的に確認できていないのですが(web上で現在発見できず)、領海法(現在は領海及び接続水域に関する法律)の制定はS52年である一方、判例はS12年ですが当時の「領海」の考え方が不明です。しかし、現在の第五条の区域の考えを何らかの観点から補足説明する判例であろうと推測します。なぜならば、前述の図書は改訂を重ねながらも、この項目は現在も紹介されているわけですから。

■その2
「沿岸域と条例~法律と条例の接合による沿岸域の総合管理」(pdfファイル)
8/74ページ(論文のページではp.5)
これは千葉県庁職員が、千葉大学大学院(社会科学研究科法学専攻)へ研修に行っての論文の一つです(参考:千葉県職員能力開発センター 政策研究『ふさの風』)。
長文ですが、これもよくまとまっているので、引用します。
(4)国と地方公共団体の区域
 国及び地方公共団体の区域に海域は含まれるのか。また、その区域はどこまで及ぶのか。
 国際法上は、領海、接続水域、排他的経済水域、公海といった区別があるが、領海以外の接続水域等は、限定された特別の管轄権を行使できるに過ぎない。よって、国の一般的な管轄が及ぶ範囲は、領海までである。そして国の主権が及ぶことから、「領海は、国内法上、領土の一部として国の立法、司法、行政の三権が当然に及ぶと解してよい」とされており、国の行政権は領海まで及ぶ。
 一方、地方公共団体の区域に海域は含むのであろうか。
 地方自治法5条は「普通地方公共団体の区域は、従来の区域による」と定めており、「従来の区域」が明らかではないのでわかりにくい。ただ、「昭和36年の地方自治法の改正によって、公有水面と埋立地と市町村の区域に新たに生じた土地について、境界変更や所属の確認をなす規定(地方自治法9条の3、9条の4、9条の5)が設けられ、現在では、海域が地方公共団体の区域に属することは、立法的に明白になったと一般的には理解されて」いる。よって地方公共団体の区域に海域は含まれる。
 なおこの規定は、必要に応じて線引きをなしうる制度があることを意味するに止まり、全ての海について具体的に地方公共団体の区域が定められているわけではない(例えば東京湾について、東京都と千葉県との区域境界は決まっていない)。必要に応じて区域を定めればそれで足りるからである。
27/74ページ(論文のページではp.24)に、各参考文献が記載されております。ここで紹介されている文献のうち、来生新「海の管理」雄川一郎ほか編『現代行政法体系9 公務員・公物』に、詳細な解説があると思われます。図書館へ行くまでの時間が不足し、確認できていませんが。
また、同ページで、境界の決定方法として、最も一般的な原則として「等距離線主義」を含む7つの方法がある、と紹介されております。これは、海上に限らず、陸上部の湖沼等での境界についても同様な方法のようです。この7つの方法については、本投稿でもすぐ後に出てきます。
同じく、同ページでは私が[66057] の投稿時に参考とした「海と川をめぐる法律問題」も紹介されています。

■その3
S56.1.10公害等調整委員会公示第1号長崎県知事がした砂利採取認可処分の取消裁定申請事件
海域の砂利採取区域が、「佐賀県の行政区域か長崎県の行政区域か」について、長崎県の主張は、次のとおりです。
本件砂利採取区域は長崎県の行政区域に属する。すなわち,
ア 公有水面上における地方公共団体の境界の定め方には,陸上境界延長主義,垂線主義,見通し線主義,みお・浅瀬・タールヴェーグ主義,平行線主義,中点連結主義及び等距離線主義があるが,これらの中で等距離線主義が最も一般的な原則であるとされている。
イ 長崎県は,佐賀県宛の文書の中で再三にわたり,「本件砂利採取区域は長崎県の行政区域と判断される。」旨述べたのに対し,佐賀県から何ら異議が出されていない。
以上のことから,処分庁は,本件砂利採取区域を長崎県の行政区域と判断し,本件処分をしたものである。
この争点は、この事件の裁定としては決着はしませんでした(他の理由で裁定却下のため)。ですので、この件はあくまで参考です。

次稿に続きます。
[66803] 2008年 9月 17日(水)23:21:40【2】88 さん
海上の地方公共団体の境界について 2/2
[66801]の続きです。

[66732] hmt さんにご指摘をいただきましたが、領海法(現在は領海及び接続水域に関する法律)の制定年との齟齬(同法はS52年に制定、H8年に改正して「接続水域」を追加した)から、「接続水域」の定義としては、そのまま能代簡裁昭和48年4月3日判決に当てはめられるものではないことは、ご指摘のとおりです([66057]を投稿するときにネットではひととおり探したのですが、情報がありませんでした。)。

私自身、この点については判例の「接続海面」と領海及び接続水域に関する法律の「接続水域」を混同して記述していました。失礼しました。
改めて前回資料と今回資料を含めて検討しなおしてみますと、能代簡裁昭和48年4月3日判決は、領海法制定前かつ海洋法に関する国際連合条約批准前ですが、「地方公共団体の区域には接続海面も含まれる」というのは後にいう概ね内水までか、または領海まであたりでしょうか。

―――――
[66732] hmt さん
現在でも地方自治法第5条では“普通地方公共団体の区域は、従来の区域による”となっており、海上に及ぶ可能性については全く触れておりません。
とありますが、「海上に及ぶ可能性については全く触れておりません」であるから「海上に及ばない」ではないと思います。一般的に、法の趣旨として、「書いていない」は、「書いていない」に過ぎず、その域を出るものではありません。それを超えたことは、必要であれば各政省令等を含め他の箇所に書いているか、「判例」によって固まるものであるかと思います。

区域に関しては、「逐条解説地方自治法」では、「その限度は自治権の及び得る範囲である」とありますが、例えば地下は大深度は除く、という趣旨でしょう。地下に埋設する場合、土地の所有権等を取得して行う必要があるのか、大深度でそこまでは必要が無いのか、により「範囲」が固まると思います。

―――――
[66732] hmt さん
なお、漁業法136条は、“漁場が二以上の都道府県知事の管轄に属し、又は漁場の管轄が明確でない”ケースが存在することを示しています。
これは、海上における都道府県知事の管轄権というものが、重複があり得ない「都道府県の区域」とは明確に異なるものである何よりの証拠でしょう。
これは、漁業法第136条では、
(管轄の特例)
第百三十六条 漁場が二以上の都道府県知事の管轄に属し、又は漁場の管轄が明確でないときは、農林水産大臣は、これを管轄する都道府県知事を指定し、又は自ら都道府県知事の権限を行うことができる。
であり、「漁場」は、そもそも一の都道府県や一の市町村の範囲に完結するとは限りません(2県にまたがる漁場もあり得る)。また、漁業権は港湾の中に設定されているほど、陸地に接近したところもあります。
例えば、2県にまたがる1の漁場であれば、本来管轄は2知事の「共管」になるところ、申請者からするとその都度2知事に申請して許可を得るのは不便極まりなく、また、漁場が一体である以上、許可する側もA知事が許可してB知事が不許可にする、ということは不自然で、このため、農林水産大臣がそのうちの一人を指定したりするのではないでしょうか。
都道府県の「区域」の重複云々とは別の話だと思います。

―――――
[66732] hmt さん
更に言えば、都道府県知事は 少なくとも漁業権の設定に関して海上の管轄権を持つようですが、市町村については、そもそもどのような行政事務に関して海上に管轄権があるのでしょうか?
また、確かに、管轄権は自治体の区域とはまったく関係がありません。自治体の区域であっても、その長が管轄権があるとは限りません。漁港漁場整備法や港湾法(他にも諸法あり)の適用範囲であればそれぞれの規定によりそれぞれの管理者が管理しますが、その他のいわゆる普通の海、正確に言うと「一般海域」であれば、都道府県知事が管理しています。
大阪府の条例を参考に述べます(他府県のものよりも、根拠が条例中で明確であったので例とするだけで、他県でも同様の条例があります)。
まず、海(海域)は国有財産である、というのは[66057] 拙稿でも述べたとおりです。

国有財産法(昭和二十三年六月三十日法律第七十三号)
(事務の分掌及び地方公共団体の行う事務)
第九条
3 国有財産に関する事務の一部は、政令で定めるところにより、都道府県又は市町村が行うこととすることができる。
国有財産法施行令(昭和二十三年八月二十日政令第二百四十六号)
(事務の分掌及び地方公共団体の行う事務)
第六条 各省各庁の長は、法第九条第一項 の規定により国有財産に関する事務の一部を部局等の長に分掌させようとするときは、あらかじめ、事由を付し、取り扱わせる事務の範囲及び取り扱わせる者を財務大臣に通知しなければならない。
2  法第九条第三項 の規定により都道府県が行うこととする事務は、次に掲げるものとする。
一  次に掲げる国有財産の取得、維持、保存、運用及び処分。ただし、次項各号に掲げる事務を除く。
カ ニ、ホ及びトからワまでに掲げるもののほか、国土交通大臣の所管に属する国有財産(法令の規定により国土交通大臣が自ら取得、維持、保存、運用及び処分することとされているものを除く。)
「イ」に漁港漁場整備法、「ニ」に港湾法の規定があり、この「カ」は一般海域に関する規定です。
大阪府一般海域管理条例(平成十二年三月三十一日大阪府条例第二十五号)
(趣旨)
第一条 この条例は、国有財産法(昭和二十三年法律第七十三号。以下「法」という。)第九条第三項及び国有財産法施行令(昭和二十三年政令第二百四十六号)第六条第二項第一号カの規定により維持、保存及び運用(以下「管理」という。)を行う一般海域の占用等の許可等に関し必要な事項を定めるものとする。
海域のうち、漁港は漁港漁場整備法第25条により漁港管理者(市町村、都道府県)が、港湾は港湾法第2条第4条第33条により港湾管理者が、一般海域は先ほどの大阪府の例と同様に都道府県知事が管理者です。

―――――――――――――――――――――――――
一つ、観点として大きなポイントを述べておきたいことがあります。
「国土地理院」は、「陸上部」という観点が中心です。海上保安庁は「海上部」という観点が中心です。
例えば、[66064]拙稿でも使用した、日本測地系に基づく経緯度を世界測地系に変換するツール。国土地理院が提供する陸域ツールと、海上保安庁が提供する海域ツールとで、分かれて推奨されています。
陸上部の面積を国土地理院が公表しているように、海上部の面積はもし公表しているのであれば海上保安庁であると考えられます。いろいろとweb上で調べた限りではやはり見つかりませんでした。
宇高連絡船に約10年乗務したという人(航海士とかではない)から、「海図には海上部の県境が載っているのでは?」という示唆をいただき、地図を入手してみたのですが、やはり一般の国土地理院の地形図と同様の記載しかありませんでした。
――――――――――――――――――――――――――――――

これら一連のことから鑑み、結論として次のとおりであると考えます。
・内水及び領海は、各都道府県、各市町村の区域に含まれる。
・具体的には境界を決める必要性がないので、現実には、各地方公共団体で協議して決定した一部の箇所以外は、ほとんど各地とも「境界未定」の状況にあると思われる。
・現実の管理面としては、諸法令により管理権者が管理している。

余談ですが、瀬戸大橋の一部である下津井瀬戸大橋は、岡山県と香川県に架かっていますが、所有者である本州四国連絡橋公団(現在は所有者は独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構)が、橋梁の一般海域の占用許可(香川県一般海域管理条例に基づく)を、香川県に対しては下津井瀬戸大橋の中央部までの申請をし許可があることを、とある資料で確認しました。おそらく、岡山県側にも同様の申請を行っているものと思われます。
[66853] 2008年 9月 22日(月)23:12:26hmt さん
自治体の海上境界問題(1) 陸地の延長の「地先の海」
[66802] [66803] 88 さん
“海上部で各地方公共団体同士は「接している」”というご意見[66057]に対して、[66732]で疑問を投げかけたところ、参考文献や国有財産法などを引いて詳細な解説をしていただき、ありがとうございます。
領海の外側である接続水域は対象外ということになりましたが、“内水及び領海は、各都道府県、各市町村の区域に含まれる”という結論は変らないご意見でした。

これまでの対話から、海上に地方自治体の区域はあるか?という問題について、私は「地先の海」と「海洋」とを区別してみたらと考えるようになりました。
ここで「海洋」とは、“海洋(「地先の海」を除く)”という意味で、便宜上括弧を付けて表示しました。
いわば「陸の視点」と「海の視点」により、取り扱いが区別されるという考えです。

実は[66057] 88さん の問題提起は、領海・接続水域といった「海の視点」からの制度を根拠とするものでした。
これに対する[66732]hmtも、同じく海の視点での疑問を呈したつもりでしたが、文中に地方自治法第5条という「陸の視点」からの発言が混ざっていました。
そこから88さん の得意分野に移ってしまい、[66802]で「陸の視点」の代表的な見解を示されたわけです。

地方自治法には、地方自治体の区域が海上に及ぶか否かについては明記されておりません。
しかし、「陸の視点」からして、地方自治体の区域が内水及び領海に及ぶ「場合がある」ことについては私も否定しません。
例えば[66732]で及した海水浴場。このような「陸地に接続した海面」は、地理的には 満潮時水涯線より先の「海」ですが、社会的には 「いわば陸地の付属物」です。

そのようなわけで、「逐条 地方自治法」の下記の記載は、特に違和感なく受け入れることができます。
市町村の地先の水域等は、やはりその区域に含まれるものとして取り扱うことが適当である。

落書き帳の過去記事で「地先」を検索すると、“住所未確定の場所を表す”とありました[19985]
多数の具体的な事例中には、「木更津市中島地先海ほたる」[46757]という、○○地先△△形式もありました。
香川県宇多津町にあるという「海底の私有地」という記事([19987]太白さん)も、興味深い事例でした。

「地先」という言葉は、このように土地の延長・付属物の性格をもち、土地の表示に「地先」という言葉を加えて、「その付近」であることを示しています。参考
地先漁=海岸から見える程度の沖での漁(大辞林)という用法もあります。

最初に示していただいた、地方公共団体成立の三要素のうち、場所的構成要素と人的構成要素とは、“その一定の区域内に住所を有する者”というように、相互に関連した存在です。
さて、「海」はそこに“住所を有する者”(定住者、住民)が現れる可能性のある地域でしょうか?

浅い海中には、厳島神社の例が示すように建築が可能です。このような海ならば、定住者が出る可能性があります。
例えば沖ノ鳥島環礁内には、人工地盤上に3階建ての建物を含む 気象観測基地 があります[26266]。但しこれは無人。
外国ならば、海上集落の例があります。大東亜戦争の激戦地ホーランディア、現在は ジャヤプラ(西イリアン) は 湾口の砂嘴の先端にあります。その他にも、よく似た水上集落がいくつかリンクされています。

埋立てによる土地造成(地方自治法第九条の四)が可能性な海面も、住民が現れる可能性があります。

このように、自治体を構成する人 の定住地ないしは定住的社会活動の場となり得る「地先の海」については、「地理的」には海であっても「社会的」には陸に準じた扱いをして、自治体の区域と認めることは妥当と思われます。

「逐条 地方自治法」に示された見解によると、
市町村の区域は、(中略)その地域に接続する領海及び上空、地下に及ぶと解されている。その限度は自治権の及び得る範囲である(行判昭12.5.20)。
とのことです。
限度として示されている“自治権の及び得る範囲”とは、海上の場合、例えば自治体構成住民による定住的活動の及ぶ範囲、平たく言えば“地先漁”という言葉に示された海岸から見える程度の沖、少し広く解釈しても 住所から日帰り仕事のできる「地先の海」 という程度の範囲の海と解することができるのではないでしょうか。

昨年制定された 海洋基本法 の第二十五条では、陸域の活動に起因する沿岸の海域の諸問題に注目し、沿岸域の総合的管理につき規定しています。[66716]で言及した閉鎖性海域は、そのような陸地の影響の大きい海の一例でしょう。
「地先の海」は、このような総合的管理の面からも、陸上の地方自治体との関係を明らかにしておく必要が生じてくることでしょう。
[66856] 2008年 9月 23日(火)15:00:59【1】hmt さん
自治体の海上境界問題(2) 陸地の延長ではない「海洋」
区域や境界を考える対象である地方公共団体にとり、住民(地方自治法第十条)は不可欠な構成要素です。
住民は市町村の区域内に住所を持ち、定住しています。地方自治体の住民は定住的活動をしており、他の地方自治体や「地先の海」で仕事をしても大部分は帰宅してきます。
「日本全国引き回し」とまで言われた出張や、時には終電乗り過ごしにより帰宅できないこともあるようですが…

なお、民法には“各人の生活の本拠をその者の住所とする”(22条)とあります。
船員のように船の上を事実上の生活の拠点としている人たちもいますが、普通は陸上を住所として登録しており、船舶は勤務場所として扱われているようです。
もっとも、最近のニュース によると、遠洋漁船は住所だから、納税義務のない「国内に住所を有しない者」との推定を受けられるはず という趣旨の訴えを起こした人たちもいます。

このように、住民が住所を置き定住的活動をするのは陸地であり、陸地こそは地方自治体の本来的な区域です。
「地先の海」[66853]は、海の中でも例外的に陸地に準じた取扱ができる区域ですが、それは海の ほんの一部です。

さて、「海洋」(括弧付きは前報同様に「地先の海」を除く意味です)は、地方自治体>住民>住所>陸地>その延長である「地先の海」から一線を画した存在です。
陸と海との断面を示した hypsographic curve で明らかなように、「地先の海」が含まれる水深約200m以下の海(大陸棚)は、固体地球の表面という観点からすれば、本質的には陸地の延長部です。過去の氷河時代には陸地であり、現在は温暖化で水没しているだけの土地とも言えます。

「内水及び領海」の範囲は、このような海底地形とは無関係に設定されているので、内水の範囲内でさえ、駿河湾や富山湾のような深い海があります。

このような本当の「海洋」では、埋立や海上プラットフォーム建設は技術的に不可能であり、陸上活動の延長的な性格は希薄になります。
陸地に引かれた地方自治体境界線を ここまで延長する理由はなさそうです。

「海洋」に関しては、本質的に市町村区域設定範囲ではないため「境界自体がない」のだと思われます。
たとえそれが「内水及び領海」であっても、潜在的境界の存在を前提とした「境界未定」ではありません。

昨年 海洋基本法 が制定され、祝日法改正前は海の日だった7月20日から施行されました。
海洋政策担当大臣の任命、総合海洋政策本部令の公布が行なわれ、2008/3/18には 海洋基本計画pdf が決定されています。

この法律に関係する海洋政策は多岐にわたり、その所管官庁も多数に及んでいます。水産・海底資源・海洋環境保全・海運・海上の安全・治安・防災・海洋調査や海洋科学技術・海洋産業・離島の保全等々。

前報で触れた沿岸域の総合的管理のように、「地先の海」に関係する施策もあるわけですが、従来はともすれば「陸の視点」に偏りがちだった世の中を、「海の視点」からも見直す契機になるものと思われます。

海洋基本法によると、海洋に関する施策の策定・実施は国の責務(8条)ですが、地方公共団体の責務(9条)も規定されています。
国との適切な役割分担を踏まえて、その地方公共団体の区域の自然的社会的条件に応じた施策を策定・実施する
自治体境界のない 「海洋」と 地方公共団体の「地先の海」という区別 をわきまえれば、前者については 国の仕事だが、後者については 地方公共団体が分担するもの と理解することができます。
[66863] 2008年 9月 24日(水)22:35:21hmt さん
自治体の海上境界問題(3) 海域の占有許可
[66803]で示していただいた 国有財産法 を手がかりに、海上の自治体境界を考えてみます。
海域は、特に根拠を問うまでもなく国有であり[66057]、国有財産法第三条2項の行政財産として、その管理義務は 本来的には それを所管する各省各庁の長にあります(第五条)。

しかし、国が本来果たすべき国有財産管理の一部は、第一号法定受託事務(地方自治法第二条9項)として、都道府県又は市町村が行うことができます(第九条3項)。

その一例として示されたのが一般海域の占用許可です。[66803] 88さんが、とある資料で確認したように、下津井瀬戸大橋の香川県側一般海域占用許可申請(本州四国連絡橋公団)を受けてこれを許可したのは、国ではなく香川県でした。

これは手続的には香川県一般海域管理条例によるものとしても、香川県に管理権がある実体的根拠は、国有財産法施行令 第六条2項一号です。
都道府県が行うこととする事務は…次(イ~カ)に掲げる国有財産の取得、維持、保存、運用及び処分。

申請書の海域占有目的に、坂出市櫃石地先海域の道路鉄道併用橋というように記載されていたと推測すると
国道30号に指定されている岡山市と高松市とを結ぶ道路のための橋梁ですから、申請海域は、前記政令「チ」の“一般国道の用に供する国有財産”に該当します。海域占有とは海底の土地に構造物を作ることだけでなく、橋桁部分などの空間占有も含んでいます。そして、占有する場所が「坂出市櫃石地先海域」だから、その“国有財産の運用”にあたる占有許可は香川県が行う事務となります。

要するに、先ず具体的な占有目的(橋梁架設)と場所とが示され、それに応じて海域の管理者がきまるという構図が見えます。
香川県が「坂出市櫃石地先海域」に、岡山県が「倉敷市下津井田之浦一丁目地先海域」について それぞれ占有許可を出した結果として、両県が隣接することになった。

これが「海上の隣接問題」に対する公式の答えではないでしょうか。

もっとも、本来は国が行なう事務を県が委託されただけなのに、「県の区域」になったと言えるのかという疑問は残ります。
[66803] 88さん の次の発言も、自治体の区域と管轄権との違いを指摘しています。
管轄権は自治体の区域とはまったく関係がありません。

たしかに、自治体の区域は県と市町村とで重複していますが、両者の管理権の重複は一般的にはないことからも、管轄権の所在と自治体区域とが「同一でない」ことは明らかです。
しかし、「まったく関係なし」ではなく、「自治体の管轄権の及ぶ区域は自治体区域内である」(逆は真ならず)ということは言えるのではないでしょうか。
つまり、県の区域だからといって知事の管轄になるとは限らないのですが、香川県の区域でない海域における国有財産管理事務を香川県が受託することはあり得ないと思われます

香川県と岡山県とが隣接した理由が、隣接海域にある国有財産占有許可を両県が出したからということになると、法定受託事務に無関係だった坂出市と倉敷市とは、どのような理由で隣接しているのか?
県が許可した海域が、それぞれの市の「地先」だったからでしょうか。
その結果、橋の固定資産税がそれぞれの市に入ることになりました。
湖の「地先水域」を分割して編入するのとは少し事情が異なりますが、「地先の海」も自治体の財源になります。

市町村が登場した機会に、[66732]で呈した疑問
市町村については、そもそもどのような行政事務に関して海上に管轄権があるのでしょうか?
の解決を求めて、国有財産法で市町村が受託することができるとされる事務は何か調べてみた結果、それは政令第六条7項に規定された文化財保護法関係の事務だけのようです。従って、前記坂出市と倉敷市のように県の隣接に付随する場合は別として、市町村独自の理由で国有財産管理区域が海上に及ぶ可能性はないと思われます。

香川県と岡山県との間には、瀬戸大橋より前から多くの航路が存在していました。港湾関係で前記政令に該当するものがあるとしても、2つの県の地先が隣接する状態に該当する箇所はありません。もちろん、広島県と香川県との関係[66732]についても同様。
[66871] 2008年 9月 26日(金)00:28:07にまん さん
国有財産法と法定受託事務
[66863] hmt さん

何か、因縁をつけているようで、心苦しいのですが、せっかくここまで考察されているので、より良いものにしてほしいと思い、あえて書かせていただきます。

海域を国有と考えることには違和感はないのですが、海域に国有財産法の適用は本当にあるのでしょうか?

国有財産法第2条には
第二条  この法律において国有財産とは、国の負担において国有となつた財産又は法令の規定により、若しくは寄附により国有となつた財産であつて次に掲げるものをいう。
一  不動産
二  船舶、浮標、浮桟橋及び浮ドック並びに航空機
三  前二号に掲げる不動産及び動産の従物
四  地上権、地役権、鉱業権その他これらに準ずる権利
五  特許権、著作権、商標権、実用新案権その他これらに準ずる権利
六  株式、新株予約権、社債(特別の法律により法人の発行する債券に表示されるべき権利を含み、短期社債等を除く。)、地方債、信託の受益権及びこれらに準ずるもの並びに出資による権利(国が資金又は積立金の運用及びこれに準ずる目的のために臨時に所有するものを除く。)
とあり、民法では
(不動産及び動産)
第八十六条  土地及びその定着物は、不動産とする。
2  不動産以外の物は、すべて動産とする。
とあります。これらを素直に考えると、不動産に海域が含まれるとは考えにくく、国有財産法の対象に海域が含まれているとするには疑問があります。

また、法定受託事務は平成11年の地方自治法改正でできた概念ですので、それ以前の下津井瀬戸大橋の香川県側一般海域占用許可申請を検証する場合は、その当時の旧法を用いる必要があると思います。
ただ、旧法の規定は持ち合わせていませんが、おそらくは機関委任事務として、現在と同様の規定があったとは想像できます。
[66873] 2008年 9月 26日(金)14:04:54hmt さん
「地先の海」に限れば、海底の土地にも国有財産法が適用されるのでは?
[66871] にまん さん
海域に国有財産法の適用は本当にあるのでしょうか?
不動産に海域が含まれるとは考えにくく、国有財産法の対象に海域が含まれているとするには疑問があります。

ごもっともな疑問ですが、例えば 和歌山県海底の土地使用料徴収条例 では、「海底の土地」を国有財産法の対象として扱っています。

このように扱うのが適切なのは「地先の海」に限られ、「海洋」については、国有財産法の対象になりにくいだろうと考えます。
[66877] 2008年 9月 27日(土)01:03:27にまん さん
海底の境界
[66873] hmt さん

なるほど、海底の「土地」であれば、納得できるような気がします。

お示しいただいた和歌山県海底の土地使用料徴収条例の別表に「管類、線類」とあるのを見て思いついたんですが、通信ケーブル、送水管といった海底の「管類、線類」で連結されている市町村、都道府県は、意外と数があるような気がするのですが、その場合も、橋と同様に、連結時に境界が決められることになるのでしょうか???
固定資産税の計算などでまともに影響が出そうな気がします。
[89353] 2015年 12月 27日(日)16:20:26【1】hmt さん
海を隔てた自治体の隣接 固定資産課税の境界点かと思ったが…
昨日投稿した[89350]を修正した結果、要旨が変ってしまいました。前報を削除し、別記事とします。

自治省昭和63年告示23号「青函ずい道に係る未所属地域を市町村の区域に編入する処分」が[63789]で紹介されている。このことを、[89330] k-aceさん の記事で知りました。
私はこの告示を [66057]で知り、hmtマガジン 自治体の海上境界 にも収録していました。
しかし、88さんの記事よりも半年前に 花笠カセ鳥さんの記事があったのですね。
この機会に マガジンに補足し、併せて青函トンネルによる隣接対象について言及のあった[63778]も加えておきました。

2008年に告示全文の紹介があったことはさておき、この処分があったという事実について最初に触れたのは 更に前、2005年の記事でした。
[46750] LFB さん
固定資産税の課税のため、海底部については昭和63年2月16日の閣議決定で北海道松前郡福島町、青森県東津軽郡三厩村(当時)にそれぞれ編入されたとのことです。

私がここで注目したのは、「固定資産税の課税のため」という目的が記されていることでした。
この編入処分が行なわれ、「津軽海峡を隔てた自治体の隣接」が現実になったのは、その結果だったのです。

なるほど、自治体の区域[66802]が存在するのは、本来は住民の居る陸部【付属する陸水部を含む】のはずである。
それを海の下で「隣接」させることになったのは、税収の確保という無視できない動機があったからか。
最初はそのような理解で納得しました。

この境界点。実は普通の海ではありません。津軽海峡における領海の範囲は「基線から12海里」という原則よりも狭い3海里。
トンネル内に境界点が存在する場所の真上の海面は、どこの国の船も自由に航行できる「公海」なのです。
平たく言えば「日本ではない!」。
青函トンネル開通直前。
このタイミングを利用して、公海の下にある日本領土の存在を世界に知らしめた知恵者がいたのか?

青函トンネル内の土地編入により増加した面積はどれだけだったのか?
その確認を試みたのですが、昭和63年面積調に前年との比較がなく 不成功でした。
青函が駄目ならば、1997年12月開通の東京湾アクアライン。
このルートの 海ほたる-風の塔間のトンネル内。ここに 課税区分となる自治体境界が設けられているだろう。木更津市の面積変化を調べれば、海ほたるやトンネル内の土地を編入した面積が判明するはず。

しかし、木更津人工島の面積6haとあるが、着工した1989年以降の木更津市面積を調べても、0.06km2以上の面積増加は記録されていませんでした。

海ほたるの住所は「木更津市中島地先」です[46757]。独立した町名が付与されていません。
どうやら、海の頃から事実上木更津市に付属する領域と認識されているようです。
正式の編入手続きのないままになっているが、人工島を木更津市扱いすることに異論をはさむ者はいない。
川崎人工島【風の塔】についても事情は同じであり、両人工島の間のトンネルの固定資産税も山分けで異論なし。
アクアラインの他にも、東京ガス【江東区-袖ケ浦市】と東京電力【川崎市-富津市】の東京湾横断海底トンネルがあります[66799]。こちらにも、海底の自治体隣接が隠れている可能性があるのですが、木更津人工島さえも記録されていないとなると、関係自治体の面積を調べる気にもなりません。

要するに、ほとんどの問題は「地先の海」[66853] という便利な言葉を使えば解決できる。
青函トンネルの自治体隣接事例は「公海の下の日本領土」という極めて特殊なケースの例外だったのではないか。

そこで、もう一度自治省告示S63-23[66057]を読み返すと、「地方自治法第七条の二第一項の規定により」と書いてあります。
この条項によれば 「法定外での編入必要性があると認めて内閣が定めた場合」であり、やはり例外的な特殊ケースのようです。
固定資産税の課税境界というような一般的な目的ならば その目的で法定すればよく、この条項は異例です。

既にちょっと触れましたが、自治省告示S63-23の意味とするところは、
公海の下の部分があるが「青函トンネル内は すべて わが国の領土である」。
国内向けの姿をした告示ながら、実は世界に向けて このことを発信することが 目的だったのではないでしょうか。

青函トンネルと一見すると類似するような「海を隔てた自治体の固定構造物による隣接事例」は他にもある。
しかし、特殊ケースだからこそ 青函トンネル内地域の編入 が告示された。
一般の海底トンネルや海上架橋による隣接事例についての告示が 発見されていないのは 当然のことである。
これが 私の到達した結論でした。
[89356] 2015年 12月 27日(日)23:29:15hmt さん
海を隔てた自治体の隣接? 橋梁隣接と送電線隣接
削除した[89350]で筆が及んでいた 橋梁隣接と送電線隣接を [89353]から分割しました。

橋梁による隣接事例は、海底トンネルより数多く存在します。
固定資産税の課税区分という観点ならば、海底トンネルと同じように考えてよさそうですが、青函トンネルの事例で使われた「◯◯に係る未所属地域」と同様に「地域」と言えるかどうか。
橋は「大地」と離れて架けられているので、そもそも地方自治法第七条の二の対象外という気がします。

[66799]を見ていたら、海を隔てた自治体を隣接させる可能性のある固定構造物は、海底トンネル・橋梁以外にもまだまだありそうだと思われました。

その一例として、送電線による隣接の可能性を挙げておきます。
香川県に属していながら 中国電力からの送電を受ける 小豆島[63537]
地理院地図で送電線をたどると、島伝いの海底ケーブルにより本州から送電されている模様です。
送電線が県境を越える箇所は石島/井島です。これは、もちろん 市町村隣接関係一覧に離島隣接として収録済みです。
その先は、直島町井島と土庄町豊島(てしま)との間が海底ケーブル送電線により隣接しているようです。
送電ケーブルが着地している「海底」は、固定資産税の課税境界となる「地域」と言えるかもしれません。

香川郡直島町 の電力も、中国電力から供給されています。
玉野市と直島町とを隔てる海面に設けられているのは 架空送電線のようです。
これは橋梁にも増して「地についていない」存在ですから、「未所属地域」を編入して隣接する対象にはなり得ないでしょう。

瀬戸内海をずっと西に行くと燧灘にある四阪島[83592]。ここは元々5つの無人島の総称で、別子銅山で産出された銅鉱石を原料とする製錬所で知られていました。
所属する自治体は 2005年に越智郡宮窪町から今治市になりました。
新居浜-四阪島間 約20kmの海底送電線は1922年に敷設され、製錬所の動力が電化されたとのことです。出典
銅精錬所は1976年に閉鎖されましたが、無人島ながら 現在も亜鉛回収工場が稼働しており、住友共同電力の海底送電線は使われていると思われます。
従って、新居浜市と今治市とが この送電線が着地している海底で隣接する可能性があります。

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