来月から使われる年号の公表で賑わう平成31年度初日。
このサイトの読者として記憶しておきたいことを一つ。
それは、明治22年4月1日に「市町村」という名の「地方自治体」が誕生した記念日であることです。
130年前の 明治22年(1889)というと、2月11日(紀元節)に大日本帝国憲法発布。
地方制度については、明治4年の
廃藩置県による3府302県から間もなく、3府72県へのリセット。そして 明治9年の府県統合やその後の手直しなどの再編成を経て、明治21年までに 47都道府県の前身【3府43県と北海道庁】が出揃いました。
46「府県」は 自治体としての性格も少しは得ていたものの【明治11年地方三新法】、官選知事の下に置かれた地方官庁としての性格が強い存在でした。
立憲君主国家になってから最初の地方制度として施行されることになった
明治21年法律第1号の末尾には、参考として「市制町村制理由」が付されており、ごく一部ですが引用します。【条文の本体は 市制(2コマ)・町村制(17コマ)】
本制の旨趣は自治及分権の原則を実施せんとするに在りて…必先つ地方自治の区を造成せざる可からず…自治区は法人として財産を所有し…又其区域内は自ら独立して之を統治するものなり
【61頁3行】現今の制…区町村は稍自治の面を存すと雖も…府県は素と行政の区画にして…悉く完全なる自治体と為すを必要なりとす 即府県郡市町村を以て三階級の自治体と為さんとす【61頁5行】
現行の地方自治法を含めて法律の条文には「地方公共団体」が使われており、「自治体」という言葉を見出すことはできませんが、わざわざ付けられた市制町村制理由によって、上記のように「自治」を目指していたことが明らかであり、印象的でした。
市区町村変遷履歴情報日付順一覧を見ると、1889/4/1に 35府県の市制町村制施行が列挙されています。
明治22年度中に東京府と9県が続き、1890年2月の香川県で 45府県が出揃いました。
市制町村制施行初年度に新設された自治体数は、合計 40市721町12796村でしたが、130年を経た現在まで同名・同法人で続いている自治体は幾つあるのだろうか?
# 市制町村制が明治22年度に施行されなかった北海道、沖縄県、島嶼部
[83646]参照】は対象外です。
ふと、そんなことを考えてみました。
とりあえず 40市だけ調べました。*印は、市制施行日が5月以降になった県に所在した市です。
同じ市名で、法人格も変わらずに存続していたのは 29市でした。 【追記あり】
盛岡 仙台 秋田 山形 米沢 水戸 横浜 新潟 金沢 福井
京都 大阪 堺 神戸 和歌山 広島 高知 福岡 久留米 長崎 熊本
*岡山 *甲府 *岐阜 *名古屋 *鳥取 *徳島 *松山 *高松
【追記】
形式的には 29市ありましたが、いわゆる「三市特例法」
[53890]によって 東京市と共に 事実上骨抜き になっていた京都市と大阪市を除けば 27市です。
三市特例法廃止により、三市が市長や吏員を持つ「本来の市」の地位を獲得したのは 1898年でした
[33692]。
【追記終】
新設合併によるリセットで失格:9市
弘前 富山 高岡 静岡 津 姫路 松江 佐賀 鹿児島
改称で失格: 赤間関(下関になった後に新設合併もあり)
都制による失格: *東京
町村については調べていませんが、同名の市になってもOKとすべきか?
蛇足
目を海外に向けると、1889年は フランス大革命(1789年)の百周年で、パリ万国博覧会が開かれました。
博覧会のシンボル企画に選ばれたのが、鉄橋建設で高評価を得ていたエッフェル社による 300mの鉄塔でした。
2年2月の短い工期で契約し、万博にて間に合わせた竣工式は 1889/3/31。偶然ですが、明治22/4/1の前日でした。
工事費の大部分はエッフェルが調達し、完成後の入場料で返済したとか。