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海岸線〜陸と海との境界〜

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記事数=14件/更新日:2011年9月11日

地図を眺めると、さまざまな境界線があります。
海岸線のような自然の作った境界線。そして、県境のような人為的な境界線。
でも、一見明瞭なように思われる境界線も、よく考えてみると、いろいろな疑問が生まれてきます。

境界に関係する話題は、落書き帳アーカイブズでも 地域の形状飛び地の疑問飛び地合併 など、いくつも取り上げられています。
hmtマガジンでも、「テーマ:境界」を設けて、いろいろな切り口からの記事を集めるつもりです。

この特集では、主として 海上架橋の話題を発端とする「陸と海との境界」についての記事を集めましたが、境界というテーマ全体に関わる総論も対象にしました。

最初に取り上げた事例は 東京港で、この題材につき、地理的な考え方からの海岸線と、港湾・河川管理など行政的立場からの区分けとは異なることを語りました。

陸地系の「河川」と水面系の「海」に関し、88さんが 丸亀港を題材に使い、河川法・港湾法その他の法的な位置づけを 検討してくれました。もっとも、「河川」にも「港湾」(河港)は存在しますから、両者は排他的なものではない筈です。

平水時における常時水流の存在を陸上河川の要件とする見解もあります。
東京都の資料によれば、東京臨海部の運河には、河川として扱われていないものが多数あるようです。

内水面上の境界については、特集:湖沼の分割 を御覧ください。
海上・海底の境界については、特集:自治体の海上境界 を御覧ください。

その他、境界に関しては、次の特集もあります。
都道府県境
渡良瀬遊水地−4県が集まる境界地域
両白山地の三県境と大野

★推奨します★(元祖いいね)


[57062] 2007年 2月 27日(火)10:24:27【2】オーナー グリグリ
海上架橋
さて、空港歴、経港歴、島達度と流行風邪が止まるところを知らない勢いですが、交通整理は後回しにしてさらに加速してみましょうか。[57022]で書いた「海上架橋」です。Webには一覧表などは見あたりませんねぇ。隅田川の河口付近に架かる橋はどこからが海上なのか分かり難いですが(★)、海岸線の定義ははっきりしているので(Webでは海岸線データを見つけることはできませんでしたが)、海上架橋をリスト化するのはそれほど困難ではないかと思います。地名コレクションのループ橋(道)やロータリー探しのような楽しさがありそうです。例えば房総半島のこんなところやこんなところ。

隅田川河口付近に架かる橋として、永代橋、中央大橋、佃大橋、勝鬨橋、相生橋、春海橋、朝潮大橋、朝潮橋、晴月橋、黎明橋、晴海大橋などがありますが、永代橋、中央大橋、佃大橋、勝鬨橋は隅田川に架かる橋のようです。相生橋と春海橋は晴海運河、朝潮大橋、朝潮橋、晴月橋、黎明橋は朝潮運河に架かる橋、そして、晴海大橋は東京港に架かる橋のようです。さて、東京港は海上だと思いますが、運河はどうなるんでしょうか。おそらく個別に海岸線が定義されているのだと思いますが、このあたり詳しい方のフォロ~を待ちます。

 ■追記:Webで調べると相生橋も隅田川に架かる橋と紹介されていますね。[33296]でhmtさんが話題にされてました。

ということで、海上架橋はグレーなもの(海岸線付近の架橋)もあるでしょうが、それほどコレクションするのは難しくないかも知れませんね。瀬戸内海や長崎県などにはかなりの数がありそうです。また、前述した房総半島の例のように湾口に架かる橋が結構あるようで、無さそうなところでも以外と見つかりそうです。徒歩で渡る橋、例えば伊豆半島の城ヶ崎つり橋のような例や、高速道路が海上にせり出しているような、橋とは言いにくいものなどもありますが、許容範囲を少し拡げてみて注釈付けておけば、後々整理し易くなると思います。

どなたかコレクションの編集者に名乗りを上げませんか。面白そうですよ。

佐賀県さん、島達度を[47183]で話題にされていたのをすっかり忘れていました。失礼しました。島達度ナイスです♪
[57051]ニジェさん、容量問題は現在はほぼないと考えていただいて結構です。時代が変わりました。(笑
[57151] 2007年 3月 4日(日)13:19:05【1】オーナー グリグリ
海上架橋の確認方法とコレクションのまとめ方
[57062] 2007 年 2 月 27 日 (火) 10:24:27【2】 オーナー グリグリ
そして、晴海大橋は東京港に架かる橋のようです。さて、東京港は海上だと思いますが、運河はどうなるんでしょうか。おそらく個別に海岸線が定義されているのだと思いますが、このあたり詳しい方のフォロ~を待ちます。
海岸線の定義の件を持ち出しましたが、簡単に確認できることに気が付きました。MapionやYahoo!地図などでクリックした位置(中央の位置)の住所が左上に表示されますが、この表示がない場合は海上と思われます。自治体境界なども含めてかなり精度の細かいデータが入っていることから、「表示なし=海上」と考えて良いでしょう(データ誤りはあるかもしれませんが)。海上架橋については、この方法で確認して架橋が海上かどうかを確認することにしましょう。なお、河口では架橋と海岸線が一致していることが多く、地図サイトの確認では微妙な場合がありますが、このような場合は海上とはしないでよいでしょう。

この方法で確認すると、晴海大橋は海上ではないようです。晴海2丁目、晴海4丁目、豊洲6丁目の間に架かる橋となるようです。そこで、この方法で北海道だけ調べてみました。ざっと調べたため漏れや間違いがあるかもしれませんが、コレクションのまとめ方としてこのような形式で良いのではないかと思います。いかがでしょうか。

No海上架橋種別両岸の所在地1両岸の所在地2備考
1霧多布大橋道路厚岸郡浜中町暮帰別東1丁目厚岸郡浜中町霧多布西一条2丁目霧多布半島
厚岸郡浜中町新川東1丁目
2白鳥大橋道路室蘭市陣屋町1丁目室蘭市祝津町4丁目国道37号/絵鞆半島
3新島橋道路函館市大町函館市大町緑の島
4道路函館市海岸町函館市海岸町函館港
5道路松前郡福島町字豊浜松前郡福島町字豊浜国道228号
6道路松前郡松前町字松城松前郡松前町字唐津国道228号
7道路松前郡松前町字唐津松前郡松前町字博多国道228号
8大磯橋道路松前郡松前町字大磯松前郡松前町字弁天国道228号
9折石大橋道路古宇郡神恵内村大字神恵内村古宇郡神恵内村大字神恵内村国道229号
10弁財澗大橋道路古宇郡神恵内村大字神恵内村古宇郡神恵内村大字神恵内村国道229号
11大森大橋道路古宇郡神恵内村大字赤石村字大森古宇郡神恵内村大字赤石村字大森国道229号
12港栄橋道路留萌市栄町1丁目留萌市明元町6丁目留萌港
留萌市開運町2丁目
13鉄道留萌市船場町2丁目留萌市明元町6丁目留萌本線

海上架橋経験が盛り上がっていますが、通った記憶があいまいな方が多いと思いますし数も多くなりそうなので、どちらかというと地名コレクションの方へ誘導したいネタになってきました。何しろ、地名コレクションはほとんど全部が経県オプションにできないことはないですから(ループ経験、ロータリー経験等々)、きりがないと言えばないでしょう。

追加:
霧多布大橋が海上というのは意外でした。もしそうだとすると霧多布半島は島になっちゃいますね。まぁ、人口開削による運河ですから島の定義にはならないのかもしれませんが。島の定義と海岸線の定義は必ずしも同期していないと言うことか。[18618]などで話題になった人口運河の万関瀬戸も海上になっていますし。
[57190] 2007年 3月 7日(水)00:09:4288 さん
河と海 その1
冒頭にまず問題です。
香川県丸亀市の通称「さぬき浜街道」に、西から汐入橋京極大橋富士見大橋 があります。これらはそれぞれ、河川に架かる橋でしょうか、海に架かる橋でしょうか? 正解発表はまたあとで。

――――――――――――――――――――――――――――――
地理的な定義はよくわかりませんが、河川法、港湾法その他の法的な位置づけについてです(私は河川の方が得手なので、河川法が中心です)。
まず一言。「河川」「海」の境界を法的側面から明確にすることはできますが、非常に困難です。
[55136]拙稿で国道の起終点等についての正確な情報の確認方法をご紹介し、「確認はできるが容易ではない」と書きましたが、「河川」「海」の境界は、これよりもさらに困難です。

「川っぽいもの」「海っぽいもの」は、法的には、次のものに分かれます。

★川っぽいもの
○河川法の適用あり
 (1) 一級河川(河川法第4条)
 (2) 二級河川(河川法第5条)
 (3) 準用河川(河川法第100条)
○河川法の適用なし
 (4) (下水道法など他の法律によって指定された)水路
 (5) (1)~(3)の河川法も、(4)の他の法律も適用を受けない)(いわゆる)普通河川
(5)は法定外公共物である水路などです。「法定外公共物」は、以前は「農道・水路」として国有財産法の適用を受けていましたが、地方分権一括法により例外を除いて各市町村に譲与されました([48795]拙稿後半参照)。これにより、現在では基本的に市町村の財産になっています。地方自治法第238条を受けた、例えば丸亀市法定外公共物管理条例第2条の定義にもあるように、河川法の適用を受けない、「水路」などです。

★海っぽいもの(注:「川っぽいもの」に比べると詳細は自信なしです。)
■港っぽいもの
▲(人・貨物の)港系
 重要港湾、特定重要港湾(港湾法第2条第2項を受けて港湾法施行令で指定されたもの)
 地方港湾(港湾法第2条第2項)
 港湾区域(港湾法第2条第3項)
 臨港地区(都市計画法第8条第1項第9号港湾法第38条)
 など
▲漁港系
 第一種漁港、第二種漁港、第三種漁港、第四種漁港(漁港漁場整備法第5条)
■海岸っぽいもの
 海岸保全区域(海岸法第3条第1項)
 一般公共海岸区域(海岸法第2条第2項)
(海岸は、「農林水産省所管」「国土交通省港湾局所管」「国土交通省河川局所管」に分かれる。)
■普通の海っぽいもの
一般海域(例:香川県一般海域管理条例第2条)
この種の条例はどの都道府県にもあるようです。この「一般海域」の定義があるので、フツーの海はここにあてはまり、つまり海はすべて何らかの法律や条例の中に収まります。
――――――――――――――――――――――――――――――

さて、これらのもの(特に河川法による河川区域)が、どう告示されているか、ですが・・・・
★「メッセージ」は全角換算で3000文字(6000バイト)以内で入力してください。
とのことですので(!)、ここが区切りがいいので一休みし、続きは別投稿とします。
[57208] 2007年 3月 7日(水)23:59:5988 さん
河と海 その2
[57190]の続きです。その前に、
★「メッセージ」は全角換算で3000文字(6000バイト)以内で入力してください。
テキストリンク機能を使用した場合、外見上は見えないアドレスもこの文字数(バイト数)にカウントされるのですね。[57190]は2,800文字くらいのつもりだったのですが、書込みランキングを見ると1,200文字ほどでした。アドレスを加えた文字数は数える気は毛頭ありませんが・・・・・。

さて、河川の公示の件です。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
河川法(昭和三十九年七月十日法律第百六十七号)
(一級河川)
第四条 この法律において「一級河川」とは、国土保全上又は国民経済上特に重要な水系で政令で指定したものに係る河川(公共の水流及び水面をいう。以下同じ。)で国土交通大臣が指定したものをいう。
5 国土交通大臣は、第一項の規定により河川を指定するときは、国土交通省令で定めるところにより、水系ごとに、その名称及び区間を公示しなければならない。

河川法施行規則(昭和四十年三月十三日建設省令第七号)
(一級河川の指定の公示)
第一条の三 法第四条第五項 の公示は、次の各号の一以上により区間の起点及び終点を明示して、官報に掲載して行うものとする。
一 市町村、大字、字、小字及び地番
二 一定の地物、施設又は工作物
三 平面図
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
なお、二級河川は河川法第五条第三項を受けて河川法施行規則第一条の四により公示します。準用河川は河川法第百条第一項により二級河川の規定を準用します(だから「準用」河川)。

公示の例を一つご紹介します。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
香川県告示第六百九十八号(抄)
河川法(昭和三十九年法律第百六十七号)第五条第一項の規定により、次のとおり二級河川を指定し、又は二級河川の指定を変更する。
  昭和六十年八月一日
            香川県知事 前川忠夫
区分河川名区間上流端下流端延長
変更(略)
西汐入川左岸丸亀市金倉町字上下所923番1地先海に至る4,590m
右岸同市新田町字池東1番1地先
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
上流端は、地番があるのでその気になれば特定できますが(ちなみにここ)、下流端は「海に至る」という表現です。こうなると、河川管理者(この場合は知事)の書類を見るか、延長の距離から測るか、をすれば特定できますが、非常に困難です。このため、河川と海との境界は判別できません(他のものも同様に「海に至る」か、他の河川に合流するものは「○○川合流点に至る」との表現しか発見できませんでした)。

[55136]88で国道の起終点等についての特定の手法をご紹介しましたが、道路よりも河川の特定が困難なのは、その成り立ちの相違にあると思われます。
公の用に供されているものの総称として「公物」という表現がありますが、
人工公物:人工的に造成して公共のように供することの意思を示すこと(区域の指定や供用開始の告示など)によって初めて公物となる
・・・道路、公園など
自然公物:自然の状態(自然現象としてその状態になった時点)で既に公共の用に供される性格を持っている
・・・河川、海岸など
という違いがあります。このため、告示のしかたも異なるのではないか、と想像します。
よって、
 ・まず河川の告示を確認する
 ・下流が地番で特定されていればよいが、そうでない場合(これが大半だと思われる)は添付図面等で確認するしかない(個別に河川管理者に照会するしかない)
ということになります。

参考までに、黒田如水(官兵衛、孝高)の「水五則」をご紹介します。なかなか示唆に富んだ表現だと思います。
一 自ら活動して他を動かしむるは水なり
一 常に己の進路を求め止まざるは水なり
一 障害にあい激しくその勢力を百倍しうるは水なり
一 自ら潔うして他の流れを洗い清濁併せ容るるは水なり
一 洋々として大洋を充し発しては蒸気となり雲となり雨となり雪と変し霰と化し凝っては玲瓏たる鏡となり而も其の性を失わざるは水なり

またもや文字数オーバーですので、再び稿を改めます。
[57224] 2007年 3月 9日(金)06:00:0088 さん
河と海 その3(完)
[57190][57208]の続きです。

[57190]冒頭の問題の答です。
汐入橋は河川に架かっています。地図上の「西汐入川」は[57208]で香川県告示をご紹介したように河川法の二級河川であり、下流端は「海に至る」です。私はたまたま河川区域を示す図面に触れる機会があり、この橋の少し下流の左岸下流端右岸下流端までが河川区域でした。よって汐入橋は河川に架かっています。
京極大橋は、丸亀港(地方港湾)内です。よって、海に架かる橋です。
さて、実はこれが難問だったのですが、富士見大橋は、海に架かっています。地図上では「東汐入川」となっていますが、これは河川法にいう河川ではありません。また、この付近は先述の丸亀港の一部であり、この付近は河川の護岸ではなく、港湾施設である護岸(けい船岸、港湾管理者が管理)です。これは丸亀港の「港湾台帳」(港湾の区域を示す図面等)を見る機会がありましたのでその折に確認しました。よって富士見大橋は「海にかかっている橋」です。
余談ですが、この東汐入川(という名の港湾の一部)は、公有水面埋立法により(港湾法第58条第2項により、港湾区域内の埋立認可は港湾管理者が行う・・・この件はむじながいりさんのサイトの掲示板で灘の生一本さんにご教示いただきました)丸亀市が南方から順次埋め立て中です。この富士見大橋を含むさぬき浜街道は、この橋を除く前後は片側2車線で供用中ですが、この富士見大橋部分だけが現在片側1車線です。埋立工事竣工後は地続きとなり、片側2車線に拡張するべく事業中です。つまり、やがてはここは(おそらく港湾区域からもはずされますが)橋でもなくなります。
なお、河川でも、港湾でも、その中に道路を設置することは、本来の用途と異なって使用することになるため、道路管理者は河川法第24条港湾法第37条による占用許可を、河川管理者や港湾管理者から受ける必要があります。国、都道府県、市町村や公団などのお役所同士になりますが、手続きが必要です。

これに関連して「島」について。
定義はよくわかりませんが、国土地理院の島面積から逆に推測するだけしかできないのですが、
島・・・・海・湖により分離され、陸続きになっていないもの(このため、琵琶湖や中海のものは島扱い)
(河川により分断されているものは陸続き(千葉島なども)。輪中も河川による分断なので、伊勢の長島も陸続き扱い)
と想像します。これで上記の国土地理院のHPも説明できます。
・・・・・説明できないのが、香川県の小豆島の通称前島。([57103]くは さん 、[57119]hiroroじゃけぇ さん も触れていらっしゃいましたが。)
上記国土地理院HPでは小豆島としての面積は153.33平方kmなのです。地図から推測するとすぐそばの小豊島が1.09平方kmですから、通称前島は5平方kmくらいはあるはずなのですが、この153.33平方kmに含まれているように思います(前島が別立てされていないので)。
[51562]88でも少し別件で触れましたが、土庄町の大字なし地域がこの「前島」になります。
二級河川の伝法川はここらあたりまでだと思うので(河川法の公示は「海に至る」、図面は10万分の1のものしか見られなかったので詳細不明)、河川区域にはなっていないし、土渕海峡は「海峡」だし、地方港湾の土庄港の区域に入っていると思うのですが・・・・(詳細は確認できず)。海を挟んでいるにもかかわらず、「島」扱いされていない?? よくわかりません。
[57237] 2007年 3月 10日(土)23:04:13hmt さん
陸地系の「河川」と水面系の「海」
88さんの労作「河と海」 は、特に言及はされていませんが、グリグリさんの「海上架橋」[57062] [57151] に触発されたものと推察します。
 
地理的な定義はよくわかりませんが、河川法、港湾法その他の法的な位置づけについてです

[52855] Issieさんは、平野と盆地に関する話題の際に
一応きちんとした“約束”を共有する(つまり,“統一された呼称”が定められている)ことが当然に前提とされるべき“地形の専門家”の世界
と書かれていますが、河川の場合、「地理的な定義」などというものはあるのでしょうかねえ?
もっとも、河川は地形だけの世界ではなく、堤防・人工の公共水流を含めた、防災や利用などの社会的側面も強い存在なので、仮に「地形の専門家による河川の定義」があったとしても、落書き帳の世界には馴染まないかもしれません。

88さんの“法的な位置づけ”は、まさに社会的側面を重視した国土交通省河川局の立場からの視点と理解しますが、河川法第三条で“この法律において「河川」とは、一級河川及び二級河川をいい、…”と定義しながら、同第百条で“一級河川及び二級河川以外の河川で…”と、「準用河川」も河川の一種に広げてしまっているのは、矛盾ではないのかな?

どうも河川法における河川の定義は、第四条の“河川(公共の水流及び水面をいう。以下同じ。)”の部分であるように思われます。第三条は定義ではなく、法律の適用範囲か。

「河川」「海」の境界は、これよりもさらに困難です。

河川法第四条の“公共の水流”に着目して、流れているところは「河川」、流れていないのが「海」というのが原則的な区別なんでしょうが、流れが海に入って急停止するわけではないし、潮の流れもありますからね。

ところで、以前に沖ノ鳥島を管理するのが京浜河川事務所であることにつき、EMMさんから「陸地系と水面系」 という観点を教えていただいたことがあります。
今回のテーマにも関連するところがあるように思いますので、ご参考まで。
[57385] 2007年 3月 22日(木)18:15:03【2】hmt さん
隅田川の河口
[57062]グリグリさん
海岸線の定義ははっきりしているので、海上架橋をリスト化するのはそれほど困難ではないかと思います。
さて、東京港は海上だと思いますが、運河はどうなるんでしょうか。

「京浜港」 の一部である東京港は、大部分の区域が海上だと思いますが、もちろん 陸上に設けられた港湾施設 も、多数あります。

このことからも明らかなように、港湾区域内であるか否か([57224]88さん参照)は、「陸」(日本の領土)であるか「海」(領海)であるかを区別することにはならないと思います。

河口付近の「隅田川」の文字は、ウオッちずでは勝鬨橋の上流側ですが、5万分1地形図では浜離宮付近です。
隅田川の水流は、浜離宮に続く竹芝ふ頭と月島ふ頭の間のラッパ形に開いた部分を経て、かなり広い水面に出ます。

河川とは、国土地理院 によると、陸水部(陸地内に存在する水部)のうちで、「平水時において、常時水流のある」ことを条件にしているので、上記ラッパの口が隅田川の河口と思われます。

河川法では、「公共の水流及び水面」(第四条)とされており、水流のない公共水面(湖沼や貯水池)も「河川」に含まれている点が異なります。陸水部であることは明示されていませんが、法律の趣旨からして、海面を含まないことは自明と思われ、河口の判別は、やはり水流の有無ということになります。

そして、[57151] グリグリさん
海岸線の定義の件を持ち出しましたが、簡単に確認できることに気が付きました。MapionやYahoo!地図などでクリックした位置(中央の位置)の住所が左上に表示されますが、この表示がない場合は海上と思われます。

で示された判定法を適用した結果も、竹芝ふ頭・月島ふ頭間のラッパの口 が「(住所のある)陸」と「(住所のない)海」との境界であることを示しています。

この「アルプス社方式」で、晴海と豊洲の間の水面を確認すると、「(住所のある)陸」であることがわかります。
1945年(部修)の地形図では、相生橋より下流、晴海と豊洲との間の春海橋にも「隅田川」の字がありました。([33296]よりも新しい地図)

現在の豊洲6丁目が造成された後の地形図(1969修)では、晴海との間に「隅田川」の字がありませんが、上記した隅田川の派川(現在の名は、晴海運河)の水は、(幅が500mもあるだけにかなり遅くなると思いますが)“常時流れている”筈です。
つまり 客船入港実績日本一の晴海ふ頭 は、川に面していることになります。

そして、最初の「海上架橋」に戻ると、近々開通1周年を迎える 晴海大橋 は、残念ながら(?)失格です。

上記の晴海運河から分かれ、佃水門で制御された水流が、本川との間で海に注ぐ形の朝潮運河も、隅田川の派川と思われます。
佃と言えば、佃島と月島の間の「佃川」。佃大橋工事で埋め立てられてしまいましたが、「川」を名乗っていました。月島を分断している川島川、新月島川は現存。しかし、これらの「川」(地形図には名なし)は、常時流水があるのかな?

豊洲運河から東雲運河、辰巳運河にかけても隅田川の派川か?とも思われるのですが、このあたりになると、常時流水は?
「川」と言えるのかどうかは疑問ですが、「海」ではなく、「陸」の方に属することは確かでしょう。

「PRTR届出の公共用水域(河川、湖沼、海域等)の名称について」という pdf文書 には、東京都の河川名が列挙してあります。この中に東京臨海部の運河の名があれば、「陸」であることが確実だと思ったのですが、見当たりません。
「陸と海」の件からは逸れますが、千葉県の 同様の資料 には、江戸川の支川の中に「利根運河」があります。
この場合は、「運河」は「川」の一種として扱われています。
[57405] 2007年 3月 24日(土)15:41:05hmt さん
「(広義の)海岸線」とは、地図上の「陸部」と「海部」の境
[57062]グリグリさん
海岸線の定義

陸と海とが接する「海岸」の位置は、潮の干満の影響を受け、細かく見るほどに出入りがあり、川があると、そこで途切れます。
「海岸線」というのは、このような海岸(なぎさ)の実体をふまえた、「地図上の概念」であると考えます。

「地図上の概念」ですから、縮尺に応じて細かい出入りは省略されます。また、「海岸線」が途切れている河口は、これをつないで、連続した線が陸と海の境界として想定されます。これを「(広義の)海岸線」と言ってもよいのではないかと思います。以下、これを単に「海岸線」と書く場合もあります。

今回のテーマ「海上架橋」では問題になりませんが、地図の縮尺は、「海岸線の長さ」と「海岸線で囲まれる島の面積」とにかなり影響があるはずです。
九州島の面積が、古い理科年表では、42000km2と35700km2と大幅に異なっていたことを[23575]で書きましたが、これは縮尺の異なる地図に基づいて測定した結果であると思われます。なお、現在の面積 36,737.73 km2となっています。

このように、現在は全国をカバーする「2万5千分1地形図に基づく海岸線」を考えればよいと思います。
「2万5千分1地形図の読み方・使い方」 によると、 地形図における「陸部と水部を区画する水ぎわの境」は、「水涯線等」という用語で包括され、海部では満潮時の線で表示されます。[57343] 88 さん

航海用の海図 では、海面がもっとも上った時の陸と海の境界線が「海岸線」で、これは地形図における 海部の水涯線 と同じです。
なお、海面がもっとも下った時の陸と海の境界線は「低潮線」で、これは領海の幅を測定する際の“領海の通常の基線”です。(国連海洋法条約第5条)

[57331]グリグリさん
「日本の国土面積は海岸線で定義されている」という前提

ここでいう「国土」とは、「領土」(Territory)のことと理解され、満潮時海岸線の内側、すなわち 陸地と内水からなる陸部 であるという前提でよいと思います。
# 「国土」という言葉には、「領土」の他にも、(無害通航権などの制限はあるものの)主権が及ぶ「領海」や、領土・領水上空で主権が認められている「領空」(パリ国際航空条約)も含まれているのではないかと思います。

国土地理院の 「全国都道府県市区町村別面積調」 では、次のように記しています。
市区町村の面積は、国土地理院発行「2万5千分1地形図」に表示されている海岸線と行政界で囲まれた地域を対象に計測したものです。
なお、海岸線は満潮時の水涯線を表し、河川及び湖沼は陸域に含めています。

ここでは、「海岸線」という言葉も使われています。そして、
(狭義の)海岸線と行政界が接合しない(注:つまり囲まれていない)河口周辺は、海岸線の自然な形状に従って河口両岸の先端を直線で結んで陸海の境としました。

[57385] で例示した 隅田川河口 を見ると、首都高に覆われた古川を、浜崎橋JCT下流に僅かに姿を見せている河口部から自然に延長した線が、豊洲・晴海から月島まで一直線に伸びる埋立地の南西縁と交わるまでの間を“陸海の境”としたことがわかります。

この隅田川の本川河口は、港区と中央区との境界であるにもかかわらず行政界の線が書いてありませんが、晴海と豊洲の間、昨年 晴海大橋が開通した「川」(Yahoo!地図に見える 晴海運河 という名は、地形図にはありません)には、中央区・江東区の境界線が見えます。
「地形図に 行政境界線 がある」ということは、ここ晴海ふ頭が海部でなくて陸部に属している証拠になっていると思います。
[57407] 2007年 3月 24日(土)15:53:59hmt さん
「アルプス社方式」は概ね正しいと思われるが、たしかに疑問の箇所もある
[57151]グリグリさん
MapionやYahoo!地図などでクリックした位置(中央の位置)の住所が左上に表示されますが、この表示がない場合は海上と思われます。自治体境界なども含めてかなり精度の細かいデータが入っていることから、「表示なし=海上」と考えて良いでしょう(データ誤りはあるかもしれませんが)。
[57331]グリグリさん
今川焼さんのご指摘の通り、Mapion、Yahoo!地図のどちらも阿蘇海と久美浜湾は住所表示がでないですね。しかしながら、どちらも日本の国土であるのは間違いありませんので、地図サイトにデータが設定されていないだけかと思います。

国土地理院の 京都府面積調 には、
阿蘇海は、水面が境界未定のため、宮津市及び与謝郡与謝野町の面積には含まれません。
と記され、京都府の面積に入っている「内水」(本来なら市町村の面積にも含まれるべきもの)であることが明らかですね。
久美浜湾については、このような注記はありませんが、京都府及び京丹後市の面積に含まれているのでしょう。

ご指摘があった箇所の他にも、地図サイトのデータ設定が、正しくない場合があると思われます。
例えば、東京都面積調 によると、中央防波堤内側埋立地(中潮橋北側)と中央防波堤外側廃棄物処理場(中潮橋南側) とは「所属未定」ですが、「アルプス社方式」を適用すると、「江東区」になっています。

潟湖(海跡湖)に戻ると、水面の面積が縮小した現在の八郎潟調整池(潟上市・大潟村他多数)やサロマ湖(佐呂間町・湧別町・北見市)には住所がありますが、松川浦(相馬市)の住所はYahoo!地図に入力されていません。

類似の例は、「掘り込み港湾」でも見ることができます。
金沢新港([57370]EMMさん)、富山新港は住所があります。もともと住所のあった場所を掘ったのだから、住所がある「陸部」であると考えるのがが当然のように思われます。
ところが、田子の浦港・鹿島港・石巻港・苫小牧港の水面には、いずれも住所が入力されていません。

ついでに、日本最初の掘り込み港湾は、「手結港」 だそうです。承応元年(1652)に野中兼山が築港したというから、河口港だった石巻港が土砂堆積で機能を失い、1960年に新たな工業港の掘り込み工事に着手するよりも300年以上前のことです。
これは、明治政府が住所の制度を作る前から「海港」になっていたわけですから、住所がないのも当然かもしれません。

最後に、河口についてもう一つ。
日本の国土地理院
河口周辺は、海岸線の自然な形状に従って河口両岸の先端を直線で結んで陸海の境としました。
なんて言ってましたが、
セントローレンス川の河口付近 のような地形だったら、どのように扱うのでしょうか?
テムズ川の河口付近 も、結構拡がっていましたね。
[57433] 2007年 3月 26日(月)19:20:08hmt さん
摩周湖は、「大きな水たまり」
はじめに、[57405]で「用語の誤用」をしたことに気がついたので訂正を。

国土地理院の 地図記号の説明 の中の「河川、湖沼および海」によると、「水部」には、「陸地」内に存在する「陸水部」と「海部」があり、「陸部」と「水部」の境界が「水涯線」とされます。

結局、地形図の対象となる地球の表面は、「陸地」と「海」からなり、
「陸地」には、文字通りの「陸」と「陸水」との2つの部分(「陸部」と「陸水部」)があり、
「陸水部」は、「河川」(常時水流あり)と「湖沼」(河川の流入または流出あり)が主なものであるが、その他の陸水(「かれ川」と「地下の水路」が例示されている)もある。
そして、海岸線・河岸線・湖岸線などを総称して「水涯線」という。
ということだと思います。

上記の用語からすると、海岸線がとぎれている河口部をつないで想定した「(広義の)海岸線」の内側を、[57405]で「陸部」と書いたのは正しくなく、「陸地」と表記すべきだったようです。

それはさておき、気になるのが、河川でも湖沼でもない陸水。
例えば、常時水流のない運河、流入・流出河川のない貯水池・水たまりなどが考えられます。

東京臨海部の豊洲運河、東雲運河、辰巳運河、月島を分断する川島川、新月島川など[57385]、埋立地の間の水路は、常時水流のない運河であろうと思われます。大井ふ頭の手前にある京浜運河、羽田空港の手前の海老取川も同様。ちなみに、これらはすべて、アルプス社方式で住所が入力されている「陸地」扱いです。

名前が「運河」だったり「川」だったりしますが、呼び名は慣習の影響を受けるもので、本質的な区別ではないでしょう。
海老取川は、明治14年の地形図を見ると、多摩川が河口で分岐しながらデルタを形成する派川の一つとして認められる「天然もの」由来ですが、現状は、とても河川とはいえない状態でしょう。

河川でない「貯水池」(ため池)の代表例は、村山貯水池(多摩湖)や山口貯水池(狭山湖)。当然のことながら水の出入り口はあるのですが、幻の滑走路[22152]の下や横田トンネル[56950]を通っている水道管は「河川」に非ず。
同じく水道用でも、川を直接にダムで堰き止めた小河内貯水池(奥多摩湖)は、流入・流出河川があるので、「人工の湖」。
もっとも、このような区別が、どんなところに影響するのかはよく知りません。

「流入・流出河川のない水たまり」の中で、新聞報道のタネになったのが「摩周湖」です。
朝日新聞2001年12月26日
摩周湖、登記消え「大きな水たまり」
要旨:弟子屈町内の旧御料地処理につき、関係者が協議した結果、所管する省庁がない摩周湖は、土地登記を抹消し、「大きな水たまり」として無登記のまま国が管理することになった。
流出河川がない摩周湖は、河川の水源としての国土交通省の名義による登記ができない。湖の中の小島(カムイシュ島)は、樹木があるので農水省名義で土地登記するが、約20km2の水面は、法律的には「大きな水たまり」。

もっと小規模ですが、茨城県の 通称「ふじみ湖」 も、テレビで話題になったことのある「水たまり」です。採石場跡に湧き出て溜まった水の透明度が大だったとか。既に消滅しているのではないでしょうか。
[66487] 2008年 8月 29日(金)17:12:39hmt さん
境界線について(1) 東京港の海岸線再論
地図を眺めると、さまざまな境界線があります。
陸と海の境のような自然の境界線。そして、県境のような人為的な境界線。
でも、一見明瞭なように思われる境界線も、よく考えてみると、疑問が生まれてきます。

2007年3月に、海岸線に関する話題があり、日本の国土・領土へと発展しました。海岸線・国土

その発端は「海上架橋」に関する オーナー グリグリさんの記事[57062]で、事例は隅田川河口に関するものでした。
隅田川の河口付近に架かる橋はどこからが海上なのか分かり難いですが(★)、海岸線の定義ははっきりしているので

“海岸線の定義”として第一に考えられるものは、国土地理院の 「2万5千分1地形図の読み方・使い方」 にある「水涯線等」でしょう[57343]

海上か陸上かを判断するには、面積調のページ における次の記載が役に立ちます[57405]
海岸線は満潮時の水涯線を表し、河川及び湖沼は陸域に含めています。海岸線と行政界が接合しない河口周辺は、海岸線の自然な形状に従って河口両岸の先端を直線で結んで陸海の境としました。

[57385]では「常時水流」に着目して竹芝桟橋と豊海町との間でラッパ形に開いた口先を「隅田川の河口」と判断し、これがアルプス地図方式による判定とも合致するすることを記しました。
同じ理由で晴海と豊洲の間の水面も、(かなり遅くなるが)水流があり、住所も入っている「陸」としました。

海岸線の自然な形状に従って河口両岸を直線で結ぶという「面積調の手法」に従った判定でも、豊洲・晴海・月島・竹芝の先端を結ぶ海岸線を想定して、「地理的な」海と陸の境界とすることは妥当であると思われました[57405]

しかし海と陸の境界については、「地理的な」見方が唯一のものでないことが、既に[57190]88さん によって示されています。
地理的な定義はよくわかりませんが、河川法、港湾法その他の法的な位置づけについてです。
まず一言。「河川」「海」の境界を法的側面から明確にすることはできますが、非常に困難です。

言及された法令の錯綜とも関係しますが、河川区域と港湾区域との重複問題があります。
港湾法4条5項を見ると、港湾区域を認可する国土交通大臣又は都道府県知事は、“河川区域について、認可しようとするときは、河川管理者に協議しなければならない。”と規定しています。
これは、港湾区域と河川区域とは重複があり得ることを前提とした規定であり、例えば「東京港港湾区域における水域占用許可基準」に“東京港港湾区域(河川区域との重複区域を除く。以下同じ)”と記されているように、重複が実在します。

丸亀港 については、港湾区域を示すと思われる図がありました。「湾境界線」の内側として図示されている水域が港湾区域と考えられます。
問題の富士見大橋[57224]が架けられている港町と富士見町との間の直線部の水域はこの図に描かれており、確かに港湾区域に属します。埋め立てずに残された場所だから「海面」なのでしょうか。
この「海面」の続きのような形で、斜め東に100m余り(ウオッ地図はもっと)が残っている東汐入川は、港湾区域の図に描かれていません。

西汐入川の場合は、リンク図面の範囲が港湾区域とすると、下流端[57224]から汐入橋までの間の僅かな区間だけが含まれており、ここは河川区域と重複するようです。

丸亀港はさておき、隅田川の「河川区域」と東京港の「港湾区域」とを示す図をネットで探したのですが、なかなか見つかりません。
これは、実務上では最初に立ちはだかる困難な理由かもしれません。以下次報。
[66488] 2008年 8月 29日(金)17:22:08hmt さん
境界線について(2) 東京港付近の河川と港湾
海と陸の境界である海岸線。隅田川河口付近についてのグリグリさんの問いかけに対する 地理的な見方でのレス
これに対して、河川や港を管理する自治体の立場からの境界・区域もあるはずとネットを探しました。

パンフレットPort of Tokyo 2008 によると、東京港は荒川河口から多摩川河口に至る範囲で、港湾区域面積(水域)5292ha、臨港地区面積(陸域)1033haとあります。

東京都入港料条例第二条には次のように記されており、「東京港の港湾区域」は港湾局で縦覧可能と思われます。
“入港料は、東京港(法第三十三条第二項において準用する法第九条第一項の規定により公告された東京港港湾区域をいう。)に入港する船舶から徴収する。”
しかしネットでは見つかりません。

東京港便覧 にはかなり詳細な地図が掲載されているのですが、これを見ても港湾区域の陸側の境界線はわかりません。また、海と陸の境界線も示されていません。

東京都建設局の管理する河川についても、全体像 を知ることはできたのですが、臨海部の詳細は不明でした。
ようやく探し出したのが 隅田川流域河川整備計画 というpdf文書。その24/38頁に隅田川の範囲を明示した記載がありました。
要部のみを抜粋。
隅田川 備考:荒川からの分派点・岩渕水門から東京湾まで
 下流端 左岸:中央区勝どき三丁目地先、右岸:中央区築地五丁目地先
隅田川派川
 下流端 左岸:江東区越中島二丁目地先、右岸:中央区佃三丁目地先

これは意外。「河川」を管理する東京都(建設局)の見方によれば、浜離宮と勝どき五丁目の間は隅田川の下流端よりも先の「東京湾」でした。
同様に隅田川派川は豊洲貯木場の手前で終り、その先二手に分かれる晴海運河(上記文書4/38では春海運河)と豊洲運河は「河川」の対象外のようです。

江東内部河川についても整備計画があり、その対象として旧中川、大横川、大島川西支川、大横川南支川、北十間川、横十間川、仙台堀川、平久川、小名木川、竪川、越中島川と、おおよそ越中島-須崎の線よりも北にある河川が挙げられています。
言い換えればそれよりも南、汐浜運河・豊洲運河など「○○運河」いう名の水路は建設局の「河川」ではなく、「海」を扱う港湾局の管轄区域であることになります。

東京都の基準によれば、臨海部の「○○運河」は海ということになります。
これは普通の地理的感覚とはかなり違いますが、この基準ならば、「海上架橋」は大幅に増えます。
グリグリさんが[57062]で挙げた11橋のうち隅田川(本川)の4橋と隅田川派川の相生橋を除けば、春海橋・朝潮運河の4橋・晴海大橋の6橋は海上の橋。
見落としてしまいそうなのが、明治28年に完成した月島の先、昭和になっての新造成部分とを隔てる通称「新月島川」。これは月島川と違って河川に入っていませんから、新島橋と浜前橋も海上架橋。

江東区内の豊洲橋・朝凪橋・東雲橋から辰巳橋を渡り、北に向かえば七枝橋・八枝橋・汐枝橋・汐浜橋。東の方にも新砂橋・砂潮橋・夢の島大橋。湾岸道路にも曙橋・新辰巳橋と枚挙に暇ありません。
有明には、一部は港区台場に属している13号地との間の「海」があり、mapionも海扱いです。この海には何本かの橋が架けられている他、有明ふ頭橋もあります。芝浦との間のレインボーブリッジを筆頭に海上架橋の宝庫地帯。
そして中央防波堤内側と外側を結ぶ中潮橋と中防大橋も、もちろん海上架橋。

東京湾の西側にも京浜運河や埋立地の間の海に架けられた橋が多数。

ついでに、東京臨海部の運河に関する資料を見ました。
東京都港湾局の「運河ルネッサンス推進方針」という pdf資料 の3頁には、対象となりうる運河等水域が図示されています。
これによると、晴海運河を通る隅田川の分流は、相生橋の下流から晴海ふ頭の手前までが対象。

国土交通省のヒアリングに東京都が使った 東京港のめざす環境づくり というpdf資料の4頁にも東京港の運河を示す図がありました。
これによると築地と月島の間の「隅田川」が含まれ、その分流(晴海運河)は春海橋まで。

このように、同じ東京都の資料でも、それぞれ微妙に相違します。
[66510] 2008年 8月 30日(土)18:25:46hmt さん
境界線について(3) 境界線には「目的」がある
陸と海の境のような自然の境界線。そして、県境のような人為的な境界線。
前2回[66487][66488]は東京港などを題材にして、地理的な考え方からの海岸線と、港湾・河川管理など行政的立場からの区分けとは異なることを語りました。

代表的な行政境界線である県境(都道府県境)の話題に移ります。
2005年11月に「県境越え」が話題になりました。実はその半年前に [40541]オーナー グリグリ さんが発表した「都道府県隣接数」ランキングがあり、それに関連して、最近も海の県境や隣接に関する議論がありました。

既に「海上の都道府県境」という記事集[66057]がありますが、陸上の情報も補った 都道府県境 の記事を改めてリンクしておきます。

最初に言っておきたいことは、行政境界線や、それによって囲まれた区域というような「概念」ないしは「用語」は、その区域を管理する目的で境界線を引いた者(多くの場合行政機関)が、その目的に合わせて定めたものであるということです。

その典型的な実例が青函トンネルの編入に伴ない設定された北海道・青森県境でしょう。[66057] 88 さん
津軽海峡は特別に領海3海里で、その中央部にあたるこの地点の海上は公海です。しかし、海底トンネルの中は日本の主権が及ぶ新たな領土として、1988年に日本に編入されたのですね。

[46746] 小松原ラガー さん
千葉県と神奈川県の県境って、アクアラインの何処になるのでしょうか。

東京湾は幅12海里を持つ領海の基線の内側にある「内水」域なので、日本の主権が及ぶことに問題はないのですが、都道府県はもともと陸上の行政区画として生まれたもので、海上には明確な都県境が引かれていません。
しかし、東京湾アクアラインという神奈川県と千葉県との間を結ぶ固定連絡施設ができると、警察や課税を含めた行政権の行使のために、従来は隣接していなかった両県の間に「県境」が必要になります。

人工島である関西国際空港が、沿岸2市1町の従来の区域を沖合いに延長した形で分属するのと同じような考え方で、「海ほたる」は木更津市、「風の塔」は川崎市となり、その間の「どこか」に境界点を作ったのでしょうね。おそらく、川の真ん中を境界にするのと同じような感覚で、2つの人工島の真ん中に。

船舶が通行するだけならば、海がどちらの都県に所属するかを問う実益はなさそうです。
東京港は東京都、川崎港・横浜港・横須賀港は神奈川県、千葉港・木更津港は千葉県に属するとしても、その中間にはいずれの都県に属するとも決められていない水域があるようです。
文献(東京湾埋立地の歴史pdf) の16頁に適当な図面が合ったのでリンクしておきます。

漁業のような経済活動を営む場合には、漁場がどちらの県に属するものなのかが問題になります。
[46750] LFB さんが引用した水産雑学コラム( 本になり、リンクは切れた)によると、これは「慣行」に従うものとされます。以下引用文

“県の漁業調整規則は、知事の管轄権の及ぶ範囲の海面の漁業を規制しますが、神奈川県と千葉県との間には明確な境界線の慣行がなく、両方の県から出漁した船が入会で操業しているようです。裏を返せば、相手方の漁業権区域沖合線の手前までは、双方が自分とこの海という感覚でも、大きな問題がないのでしょう。”

船舶の航行に関しては県境を決める必要がなく、魚を追って移動する漁業に関しては「入会い」で処理してきた。
しかし、固定施設である東京湾アクアラインについては、「境界」を作ることになった。(青函トンネルの場合のような資料はみつかりませんが…)

重複があり得ない県境に関しても、海上での公式の取り扱いは、「目的に応じて違う」という実例だと思います。

陸と海の境界に関しては、既に河川法と港湾法とで規定した河川区域と港湾区域とが重複している現実を見ました。
陸と海との境界は、地形図の世界でも海図の世界でも満潮時の海水面で決めています。(海図の水深は低潮面基準)
農耕用地、建築用地等として利用される土地は、通常の場合、満潮時にも水没しないことが条件ですから、陸上の論理では満潮時の海水面で水陸の境界を決めるのは自然なことです。
# 海中に社殿を造った厳島神社のような例外的存在もあります。

ところが、満潮時には川のかなり上流(水産雑学コラムによると、相模川では河口から6.6km付近)まで海水が上がるのだそうです。海水魚が川を上がるとなれば、海の漁師も陸地である川で魚を取る。ここでは海区漁業と内水面漁場との境界問題が生じるという仕組み。
境界問題は、なかなか一筋縄ではゆきません。
[66539] 2008年 8月 31日(日)14:15:33【1】hmt さん
境界線について(4) 公式に定められた境界でも「目的外」に利用する際は注意が必要
県境などの行政境界線や区域を公式に定めるのは、何かを管理する「目的」に応じたものだということを記しました[66510]

このような境界線を、自己責任で「目的外」に利用することは、もちろん差し支えありませんが、不都合が生じるかもしれないことは心得ておくべきでしょう。

わかりやすくするために、実際にはあり得ないような極端な「目的外利用」の例を挙げます。
土地は、1筆毎に境界線で囲まれ、「地積」があります。この地積を積算すれば、市区町村の面積、ひいては「日本の面積」が算出できるだろう…と思うのは、誤った考えなのですね。
個々の地積の不正確さもさることながら、「登記のない土地」(「無番地」)が存在するわけです。[48795] 88 さん

もともと、不動産登記法は“国民の権利(財産権)の保全”を目的とした法律ですから、「公共用」である国有財産は対象外というのが建前です(土地台帳法44条)。このような法律の趣旨を無視して、「目的外」である日本の面積の算出法に使おうとすることが、本質的な誤りなのです。

市区町村の面積、ひいては日本の面積に関する公式資料としては、国土地理院が地形図からの計測に基づいた 「面積調」 を毎年発表していることはご承知の通りです。
しかし、これは毎年10月1日現在の面積を翌年2月1日に発表するわけですから、例えば新潟市に新設された区の面積を即日知るわけにゆかず、グリグリさんが苦戦することになります[57516]

なお、市区町村面積の増減については、“官報または県公報等により告示された境界変更や埋立による異動面積値について関係都道府県に照会し、確認された値をとりまとめたもの”とされており、国土地理院でも、一部は地形図計測データでなく、他の行政データを転用するケースがあります。
[57480]で例示した関空2期の場合は、不動産登記法36条により申請する「新たに生じた土地」の地積を「目的外」に利用したものであろうと思われます。

一方、摩周湖の場合[57433]は、宮内庁によって減失登記[57441]がなされても、無登記の公有水面として国の管理下にあるので、弟子屈町の面積には影響がないはずです。
掘り込み港湾の場合、[57441]88 さんは、
「掘り込み工事→土地の滅失登記→土地でなくなる→住所がなくなる(面積から除かれる)」
とお考えですが、国の管理下の公有水面(陸水部)ならば、土地登記・住所の消失が、国土面積からの除外に直結することはないと思います。

事例が適切だったかどうかわかりませんが、法律というのは、その目的に応じた適用対象を持つということで、法律の定義を「目的外」の他分野に使って、適切な結論が得られるとは限らないことに注目したかったわけです。

このシリーズで最初[66487]で言及した東京港における「港湾区域」とか「河川区域」とかいうのも、それぞれの法律の目的とする港湾管理、河川管理の必要に応じた区分です。
なお、港湾と河川とが重複することは、たしかに「河港」([66499] にまんさん)の存在を考えれば自明でした。

海岸法も含め、法律的な区別を落書き帳のような「法律の目的外」の話題に適用すべきかどうかは、ケースバイケースです。
[66488]でも書いたように、東京臨海部の運河地帯が「河川」の対象になっていないのは、普通の地理的感覚と相違します。
江東内部河川…の対象として…おおよそ越中島-須崎の線よりも北にある河川が挙げられています。
言い換えればそれよりも南、汐浜運河・豊洲運河など「○○運河」いう名の水路は建設局の「河川」ではなく、「海」を扱う港湾局の管轄区域であることになります。

東京都の基準によれば、臨海部の「○○運河」は海ということになります。
これは普通の地理的感覚とはかなり違いますが、この基準ならば、「海上架橋」は大幅に増えます。

東京都は「○○運河」を積極的に「海」だと言っているわけではないので、これは少し言いすぎだったかもしらませんが、「河川」として管理しない運河は「海扱い」なのかと思った次第です。

なお、この文中「須崎」は「洲崎」の誤記です。
1969年に地下鉄駅ができて知名度抜群の存在となっている「東陽町」の方がわかりやすかったのですが、いかにも海岸であることを示している「洲崎」という地名を使ったら、誤変換を見逃してしまいました。

「洲崎」で検索すると、館山の地名と共に東京の地名に関する 記事 も登場。現在の「東陽町」と同様に交通の要衝で、その関係が多いですが、1958年まで存在した遊郭にも言及されているところはさすが落書き帳。

江戸時代のごみ埋立により現在の永代通りまで南下していた海岸線は、近代になってからも南下を続けます。
洲崎の湿地(現在の東陽一丁目)が埋め立てられて遊郭になったのは大正時代。
初期のプロ野球に使われた洲崎球場は、水浸しコールドゲームという珍記録もあったとか。

東京港の黎明期には現在の汐浜運河が海岸線だったことを考慮すれば、[66488]のように海上架橋に 汐浜橋 が含まれるのも一応の裏付けがあるわけです。
しかし、完全に埋立地の内部になった現在では、“陸でなければ海”という単純な図式でなく、「運河地帯」というの境界領域の存在を考えるべきなのかもしれません。

河川関係以外にも、「目的外使用」のために地理的感覚と合わない結果を出した事例が過去にありました。
国連海洋法条約の「至近距離」という言葉に釣られた、直線基線に基づく近接候補の提示[66032]が、その例です。
公海と区別された領海の起算を目的とする直線基線を、国内の都道府県の近接判断に使うのは、まさに「目的外」。
静岡・三重、高知・宮崎、石川・新潟の3組は、直線基線で結ばれていても相互を結ぶ航路もなく、これを県の近接と言うのは、いささか無理な感じがします。

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