[84224] みのる さん
1961(昭和36)年10月のダイヤ改正で登場した特急「白鳥」の上野編成の発着時刻と所要時間は次のとおりでした。
金沢1219 → 2035上野(8時間16分)
上野0850 → 1659金沢(8時間09分)
[84220]の欠落部を補っていただき、有難うございます。
戦後の時刻表は復刻版を全く所持しておらず、たまたま手元にある号だけに頼り、データ不足のまま記しているので、満足できる記述になっておりません。
本件以外についても、適宜コメントしていただければ幸いです。
それでは、
[84220]に続き、19世紀末以来 115年になる東京・金沢間の鉄道所要時間を、手持ちの時刻表で追います。
昭和39年10月1日、東京オリンピック開催の直前に 東海道新幹線が開業しました。
これも、開業当時のデータが不足していますが、3年後の昭和42年(1967)10月、JTB時刻表500号
[51787]があるので、新幹線・北陸方面連絡のページを調べましょう。
東京1605発のこだま131号が1917米原着。第2雷鳥に乗り継いで2147金沢着ですから、所要時間5時間42分。案内されていませんが、1630発のひかり33号から乗継できるので、最短 5時間17分になります。
東ルートはというと、ディーゼル時代の日本海縦貫特急「白鳥」が併結していた上野発着の編成
[84220][84224]【通称:信越白鳥】から分離独立した 上野発金沢行 ディーゼル特急「はくたか」(初代)が掲載されています。
上野0740発1528金沢着で、7時間48分という所要時間は、新幹線の威力を誇る西ルートに 2時間半の差をつけられており、完敗です。
この列車は信越線の難所・碓氷峠
[75646]を通ります。その筋では「横川・軽井沢間」略して「横軽」と通称された区間です。
ラックレールのアプト式は 70年使われた後 1963年に既に廃止され、1966年には急勾配ながらも 複線化が実現していました。
この区間では気動車の動力を使わず、3両の電気機関車に支えられながら、急坂を上下していたのでした。
手間と時間がかかり、編成長も7両に抑えられていた 横軽越えの「はくたか」。このハンデを克服したのは、1969年 上越線への経路変更でした。この年、直江津・糸魚川間を最後に 北陸線の全線が電化されたのです。当然、車両も長編成(11両、後に12両)の電車に変更されました。これが、
[84219]で ぐりゅん さん が紹介された2代目の「はくたか」です。
1977年3月の時刻表で確認すると、電車になった「はくたか」の上野・金沢間所要時間は 6時間27分。
もっともこの時代(1972年以降)になると、信越線碓氷峠でも横軽協調運転が実現しました。
12両編成で 所要時間【白山3号、6時間36分】も見劣りのしない電車特急 「白山」が上野・金沢間に3往復も運転され、東ルート内でも信越線がメインルートの座を回復しています。
なお、この1977年3月時刻表を見ると、西ルートに 米原停車の「ひかり」が出現しており、東京1712 ひかり181号から 米原で加越5号に乗り継ぎ、2156金沢着。所要時間は4時間44分と、遂に5時間を切っています。
東京から金沢に至る鉄道の所要時間は、明治31年 米原を経由する西ルートの 約20時間から始まりました。
大正に入って北陸線が全通すると、最初は距離の短い東ルートが優勢かと思われましたが、大幹線である東海道の実力は なかなか侮り難いものがあり、戦前を代表する 昭和9年のダイヤにおける最短は、西ルート経由でした。
そして、東海道新幹線の登場により、西ルートが決定的な優位に立ったように思われました。
東ルートが劣勢を覆す手立ては、やはり新幹線です。2015年の北陸新幹線は その本命ですが、その前に 上越新幹線や ほくほく線 などの新線を利用した 東ルートの時間短縮が行なわれました。
上越新幹線は 中山トンネルの出水など難工事で 開業が遅れましたが、1982年大宮始発で暫定開業し、東ルートの復活は、ここから動き出しました。
国鉄民営化を目前にして「JNR編集時刻表」というタイトルを付けた 弘済出版社発行 1987年4月号時刻表。
既に東西両ルート共に新幹線乗継の時代に入っており、金沢までの所要時間は僅差になっています。
西ルートが、東京1116発の ひかり261号・加越5号乗継で 1545金沢着(4時間29分)。
東ルートが、上野1610発の あさひ303号・北越8号乗継で 2045金沢着(4時間35分)。
青函トンネルと瀬戸大橋で 四大島の鉄道が 一本に繋がった 1988年3月時刻表。
東京・金沢間の所要時間については、東海道新幹線連絡「きらめき」 vs 上越新幹線連絡「かがやき」 の対決となり、東ルートが僅かに西ルートを抑えて逆転しました。
西ルートが、東京1844ひかり355号・きらめき 金沢2303で4時間19分
東ルートが、上野1916あさひ3号・かがやき4号 金沢2326で4時間10分
1997年3月22日 北越急行 ほくほく線が開業し、上越新幹線と北陸地方とを連絡する3代目「はくたか」が誕生しました。
1998年12月に ほくほく線内の最高速度が 150km/hになった後 の状況を示す 2001年10月時刻表。
西ルートが、東京1437 ひかり159号・しらさぎ11号 金沢1905で 4時間28分
東ルートが、東京2008 あさひ3号・はくたか20号 金沢2353で 3時間45分
現在の数字をざっと見ると、西ルート4時間18分、東ルート3時間51分というような値が得られ、上越新幹線・ほくほく線経由「はくたか」の東ルート優位の大勢は変わっていないようです。
「はくたか」の変遷という視点では、1965年の初代(信越線経由気動車)、1969年の2代目(上越線経由電車)、1997年の3代目(ほくほく線経由電車) に続いて、2015年の4代目(北陸新幹線)登場
[84208] ということになります。