[79915] グリグリさん
[79929] 千本桜 さん
近世村と大字の件については、これまでにも私も何度も述べてきたし、スタンスは基本的は千本桜さんと同様なので、別の観点から述べます。
主として地番区域と町・字についてです。
町・字の正式なものの根拠は、地方自治法にあります。
S22.4.17法律第67号地方自治法
第260条 政令で特別の定をする場合を除く外、市町村の区域内の町若しくは字の区域をあらたに画し若しくはこれを廃止し、又は町若しくは字の区域若しくはその名称を変更しようとするときは、市町村長が当該市町村の議会の議決を経てこれを定め、都道府県知事に届け出なければならない。
2 前項の規定による届出を受理したときは、都道府県知事は、直ちにこれを告示しなければならない。
3 第一項の規定による処分は、政令で特別の定めをする場合を除くほか、前項の規定による告示によりその効力を生ずる。
つまり、正式には、上記の第260条第2項の規定による都道府県知事による告示を確認することが必要です。
例1:
H16.12.6三重県告示第932号
桑名市,桑名郡多度町,長島町の新設合併に伴う旧多度町,長島町の区域の字の名称の変更の告示(旧桑名市の区域の字の名称は変更なし)
例2:
H17.2.22香川県告示第163号
丸亀市,綾歌郡綾歌町,飯山町の新設合併に伴う旧綾歌町,飯山町の区域の字の名称の変更の告示(旧丸亀市の区域の字の名称は変更なし)
#条文のとおり地方自治法上は、「町」と「字」しかなく、いわゆる「大字」や「小字」は「字」に含まれます(S23.8.9行政実例)。
都道府県告示は都道府県の公報(注:広報ではない)に掲載されます。web上での公報は、
こちらに一覧があります。
しかし、現実には、我々一般市民が第260条第2項の規定による告示を確認することは容易ではありません。なぜならば、「第260条第1項の規定による都道府県知事への届出」「第260条第2項の規定による都道府県知事による告示」は、現在では、市町村長が処理することとなっているところが多いですからです。
これは、従前からも市町村長が処理する一部には例はありましたが、いわゆる「地方分権一括法」及びこれを受けた条例に基づき、かなりの数の市町村長が処理しています。
H11.7.16法律第87号地方分権の推進を図るための関係法律の整備等に関する法律(地方分権一括法)第1条により、地方自治法第252条の17の2以下が追加され(その後さらに一部改正)、現在は次の条文になっています。
(条例による事務処理の特例)
第252条の17の2 都道府県は、都道府県知事の権限に属する事務の一部を、条例の定めるところにより、市町村が処理することとすることができる。この場合においては、当該市町村が処理することとされた事務は、当該市町村の長が管理し及び執行するものとする。
(第2項以下略)
これを受けて、各都道府県では、条例を制定して、当該市町村の長が、事務を管理し執行している例が多々あります。この例については、別稿にて一覧を示します。
今回の長久手市の件で愛知県の告示があれば、と思って当初は、探そうとしたのですが・・・。
愛知県法規集の「第1編 総規」「第6章 行政組織一般」にある
H11.12.17条例第55号愛知県事務処理特例条例の
別表第一により、地方自治法第260条第1項及び同条第2項の件は、長久手市において事務を処理することとされています。このため、告示は、愛知県告示ではなく長久手市告示の形で行われます。
(#お断り:条例へ直接リンクをたどれないかもしれません。その際は、上記
愛知県法規集から上記のとおりたどってください。)
愛知県告示であれば、
各都道府県の公報一覧から
愛知県公報を確認すればよいのですが(例・・
H23.9.2付け愛知県告示第507号常滑市の字区域の設定 (pdfファイル))、長久手市告示は愛知県公報にはもちろん掲載されず、また、長久手市告示はweb上には見当たりません。おそらく、長久手市役所の庁舎前の掲示板に1月4日付けで張り出されたり、庁舎内で閲覧できたり、等の形での周知でしょう。内容によっては、
長久手市例規集の中に、告示であっても掲載されるものもありますが。
上述のとおり、長久手市告示を確認することはできませんでした。
一方、
登記情報提供サービスで調べてみました。
長久手市の「町名・大字選択」画面では、190の大字と思われるものが並びました。これは、今回、ご紹介のあった、長久手市HP内の
市制移行後の住所などについての
市制施行後の住所一覧 (pdfファイル)と同じです。
この大字が地番区域ではなく、下位区分の小字が地番区域である場合は、この大字をクリックしてさらに下位層へ進む必要がありますが、そのようなことはありませんでした。つまり、この190の大字が、現在では地番区域となっています。
[79915] グリグリさん ご紹介の、長久手市HPの
市制移行後の住所などについてによると、
大字長湫にある「荒田」「菖蒲池」「段ノ上」「平池」「仏ケ根」は、大字の付かない地区にも同じ名称が隣接して存在しますが、これらの地区では地番の重複がないため、市制施行後は大字の付かない地区と同じ名称とし、区域も一つに統合します。
です。具体的には、
旧 | | 新 |
愛知郡長久手町 | 大字長湫字荒田 | 長久手市 | 荒田 |
愛知郡長久手町 | 字荒田 | 長久手市 | 荒田 |
愛知郡長久手町 | 大字長湫字菖蒲池 | 長久手市 | 菖蒲池 |
愛知郡長久手町 | 字菖蒲池 | 長久手市 | 菖蒲池 |
愛知郡長久手町 | 大字長湫字段ノ上 | 長久手市 | 段の上 |
愛知郡長久手町 | 字段ノ上 | 長久手市 | 段の上 |
愛知郡長久手町 | 大字長湫字平池 | 長久手市 | 平池 |
愛知郡長久手町 | 大字長湫字平池 | 長久手市 | 平池 |
愛知郡長久手町 | 大字長湫字仏ヶ根 | 長久手市 | 仏が根 |
愛知郡長久手町 | 大字長湫字仏ヶ根 | 長久手市 | 仏が根 |
となる、ということです。
[79929] 千本桜 さん も検証されているように、大字長湫は土地区画整理事業が進行しています。
土地区画整理事業に伴う住所変更についてのページを見ると、H22.10.9から長湫中部土地区画整理事業の換地処分により住所が一部変更となった、とあります。
住所変更の実施区域についてはこちら (pdfファイル)を見ると、この時に、例えば「愛知郡長久手町大字長湫字荒田」の一部が区画整理事業の換地処分にあわせて、既に「愛知郡長久手町荒田」となっており、また、当該地に隣接した土地区画整理事業が行われなかった地域は、そのまま「愛知郡長久手町大字長湫字荒田」として残存していたことがわかります。「段の上」「仏が根」も同様です。
試しに、
字名地番の旧新対照表はこちら (pdfファイル)から、このH22.10.9から新大字名「荒田」となった区域を抜粋すると、次のとおりです(変更後の地番順に並び替え、「番」を補足)。
該当大字名 | 該当字名 | 地番 | → | 新大字名 | 新字名 | 地番 |
大字長湫 | 字荒田 | 39番9 | → | 荒田 | | 101番 |
大字長湫 | 字荒田 | 40番19 | → | 荒田 | | 102番 |
大字長湫 | 字荒田 | 39番3 | → | 荒田 | | 103番 |
大字長湫 | 字荒田 | 39番3 | → | 荒田 | | 104番 |
大字長湫 | 字荒田 | 40番15 | → | 荒田 | | 105番 |
大字長湫 | 字荒田 | 40番1 | → | 荒田 | | 106番 |
大字長湫 | 字荒田 | 39番1 | → | 荒田 | | 107番 |
大字長湫 | 字荒田 | 41番11 | → | 荒田 | | 108番 |
大字長湫 | 字荒田 | 41番12 | → | 荒田 | | 109番 |
大字長湫 | 字荒田 | 40番2 | → | 荒田 | | 110番 |
大字長湫 | 字荒田 | 41番13 | → | 荒田 | | 111番 |
大字長湫 | 字荒田 | 41番14 | → | 荒田 | | 112番 |
大字長湫 | 字荒田 | 40番11 | → | 荒田 | | 113番 |
大字長湫 | 字荒田 | 39番6 | → | 荒田 | | 114番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 49番 | → | 荒田 | | 202番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 43番3 | → | 荒田 | | 203番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 43番3 | → | 荒田 | | 204番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 43番4 | → | 荒田 | | 205番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 43番4 | → | 荒田 | | 206番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 50番4 | → | 荒田 | | 207番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 50番4 | → | 荒田 | | 208番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 50番4 | → | 荒田 | | 209番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 50番1 | → | 荒田 | | 210番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 49番 | → | 荒田 | | 211番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 50番1 | → | 荒田 | | 302番 |
大字長湫 | 字下鴨田 | 50番1 | → | 荒田 | | 303番 |
つまり、新しく大字「荒田」となった区域の地番は、101番以降、303番までを設定しています。
今回、長久手市となり、残余の大字長湫字荒田の区域も、すべて、大字を「荒田」とする、とのことですが、先述の
登記情報提供サービスにより、この大字「荒田」の地番を抽出してみました。
1番1 | 10番2 | 15番3 | 17番2 | 20番3 | 22番4 | 25番2 | 26番5 | 37番2 | 102番 | 112番 | 208番 |
1番2 | 10番3 | 15番4 | 17番3 | 21番1 | 23番1 | 25番3 | 26番6 | 37番6 | 103番 | 113番 | 209番 |
1番3 | 11番1 | 15番5 | 18番1 | 21番2 | 23番2 | 25番4 | 26番7 | 38番2 | 104番 | 114番 | 210番 |
1番16 | 11番3 | 16番1 | 18番2 | 21番3 | 23番3 | 25番5 | 28番1 | 38番7 | 105番 | 201番 | 211番1 |
1番21 | 12番1 | 16番2 | 18番3 | 21番4 | 23番4 | 25番6 | 28番2 | 38番8 | 106番 | 202番 | 211番2 |
1番22 | 12番4 | 16番3 | 18番4 | 21番5 | 23番5 | 25番7 | 29番1 | 44番 | 107番 | 203番 | 211番3 |
1番23 | 13番4 | 16番4 | 19番1 | 21番6 | 24番1 | 26番1 | 29番2 | 45番 | 108番 | 204番 | 301番 |
9番1 | 14番4 | 16番5 | 19番2 | 22番1 | 24番2 | 26番2 | 33番4 | 46番 | 109番 | 205番 | 302番 |
9番2 | 15番1 | 16番7 | 19番3 | 22番2 | 24番3 | 26番3 | 36番2 | 48番 | 110番 | 206番 | 303番 |
10番1 | 15番2 | 17番1 | 20番2 | 22番3 | 24番4 | 26番4 | 36番5 | 101番 | 111番 | 207番 |
前述の、土地区画整理事業によるH22.10.9からの大字「荒田」は101番以降ですが、H24.1.4の長久手市市制施行と同時に従前の「大字長湫字荒田」から大字「荒田」となった区域は、48番までであり、地番が重複しないことがわかります。ということは、H22.10.9の土地区画整理による換地処分時の地番設定の時に、今回の「大字長湫字荒田」を大字「荒田」にすることも、既に織り込んでいたと推測します。
おそらく、「段の上」「仏が根」「菖蒲池」「平池」も、同様のことがあったのだと推測します。
#実は、上記の調査を実施するのにあたり、費用はかかっていません。同サービスを利用するのには、事前にクレジットカード等の情報を含めて登録することが必要ですが、今回の調査に際しては、費用がかかるより前の段階(無料でできる範囲。もう1クリックして詳細な情報を得ようとすれば費用がかかるところ)で止めました。費用をかければキリがありませんので。
続きます。