前回(
[90451])、現存する「市名+市名=駅名」駅についていろいろと考察をしてまいりましたが、今回は「消滅した『市名+市名』駅についてのお話をすることにします。
過去に存在していた「市名+市名=駅名」駅も数多くありました。このような駅には、【a】路線廃止により駅自体がなくなったもの、【b】駅名改称によって該当しなくなったもの、【c】駅名に含まれていた市名(と同じ字)が、市名の消滅によって現在では「該当しない駅名」になったもの、があります。
【a】の路線廃止によって消滅した、「市名+市名=駅名」タイプになっていた駅には、最近では平成15年(2003)の可部線非電化区間(可部以北)の廃線によって消えた「安芸亀山」や、平成20年末に全線廃線(実際には災害によりその3年余り前から長期運休)となった高千穂鉄道にあった「日向八戸(やと)」(読み方違い)などがあります。もっと前、「落書き帳紀元前」まで遡ると、廃止直前時点で「該当する駅」になっていた駅には、「北見相生」(国鉄相生線・北海道、昭和60年(1985)廃線)、「加賀八幡」(北陸鉄道小松線・石川県、昭和61年廃線)、「加賀佐野」・「加賀福岡」(北陸鉄道能美線・石川県、昭和55年廃線)、「伊勢八王子」(近鉄八王子線・三重県、昭和51年部分廃線により駅廃止)、「出雲高松」(国鉄大社線・島根県、平成2年廃線)、「筑後大川」(国鉄佐賀線・福岡県、昭和62年廃線)、「筑後福島」(国鉄矢部線・福岡県、昭和60年廃線)などがありました。
【b】タイプでは、昭和61年12月の越美南線の長良川鉄道への転換と同時に改称された、「美濃関」(→「関」)と「美濃山田」(→「山田」…その後「山田市」の市名も消滅)や、同年4月の甘木線の甘木鉄道への転換と同時に現在地に移転・改称された「筑後小郡」(→「小郡」)駅は、第三セクター転換に伴う「旧国名外し」であることが共通しています。このほかには、所在地の市名に合わせて改称された山陰本線「出雲今市」(→出雲市)と近鉄「伊勢神戸(かんべ)」(読み方違い、→鈴鹿市)があります。
なお、国鉄能登線(石川県)には「珠洲飯田」という駅があり、昭和63年の「のと鉄道」への転換時に「飯田」に改称されましたが、既に11年前に廃線になっています。
廃線後の飯田駅…ここに出ている写真は最新で7年前のものなので、おそらく現在ではさらに荒廃が進んで既に朽ち果てているのでしょうか?
【c】タイプの「市名消滅によって「該当しない駅名になった」もののうち、「平成の大合併」によって市名が消滅したことによって「該当しない駅」になったものには、「山田市」が消えたことによる「宇治山田」(近鉄山田線…
[88782] hmt さん 他)・「土佐山田」(土讃線)や、「上野市」が消えたことによる「伊勢上野」(伊勢鉄道)、それに前出の「伊予北条」「和泉大宮」「水沢江刺」などがあります。「甲斐上野」駅(身延線)は、平成16年(2004)9月1日の「甲斐市」発足で「該当する駅」となりましたが、その2ヵ月後の11月1日に「上野市」が消えて「伊賀市」になったため、わずか2ヶ月間だけの「該当する駅」だったのでした。また、「飛騨古川」駅〈高山本線)は、平成16年2月1日の飛騨市発足で「該当する駅」になりましたが、その2年2ヶ月後、18年の3月末に古川市が消滅したため、「該当しない駅」になっています。
こちらもさらに遡ると、昭和63年の仙台市との合併により消滅した「泉市」が存在していた時期には、南海電鉄の「泉大津」と「泉佐野」が該当していました。この両駅は、「泉市」が存在していた時期にはいずれも前述した「伊予三島」と同じく、「市名+市名=所在地市名&駅名」というタイプの駅名であったのでした。かつてこれらの駅と同じタイプだった、現存している駅には、このほかに「高田市」があった頃の「大和高田」(近鉄大阪線)、「河内市」があった頃の「河内長野」(南海高野線・近鉄長野線)があり、また「宇治山田」駅は、「山田市」が市制施行した昭和29年4月1日から、「宇治山田市」の市名が消滅して「伊勢市」になった翌年の元日までの9ヶ月間だけ、このタイプの駅名になっていたのでした。
「市名=駅名」ではありませんが、このほかに「市名消滅によって該当しなくなった」現存する駅には、「河内松原」(近鉄南大阪線)、「大和西大寺」(近鉄奈良線)、「伊勢若松」(近鉄名古屋線)、「美濃高田」(養老鉄道…「該当していた」当時は近鉄養老線)、「磐城石川」「磐城守山」(水郡線…両方とも消滅市名の組み合わせ。「守山市」は愛知県にあった「初代」)などがあります。
「八幡」が絡む駅は、「初代」の消滅から「2代目」の誕生までの14年余りの「空白」が微妙な「綾」となって、複雑になっています。「加賀八幡」駅は、現役の「伊那八幡」と同様、「初代消滅でいったん非該当に→2代目誕生で再度該当」という経緯をたどっていたのでした。
このタイプで(私が知る範囲では)唯一現存しない、国鉄士幌線にあった「黒石平」駅は、平市の消滅で非該当駅名となった後、国鉄民営化の直前に士幌線が廃線となって駅自体も消滅しています。蛇足になりますが、この「黒石平」駅、全国版の時刻表では「上り・下り列車とも停車」することになっていたのですが、実際には駅の前後の勾配の関係などで、上り列車はすべて通過し、近くにできた「電力所前」という「仮乗降場」(
現役時代の写真)に停車しており、道内版の時刻表ではこのような実際の運行通りに記載されていました。
これらの「消滅した『市名+市名』駅名」について、上記以外のものも含めて、グループ別にそれぞれまとめた表を掲げておきます。なお、駅名の配列は順不同になっており、駅の所在地は便宜上現在の自治体名としています。
【a】路線または駅の廃止により消滅した「市名+市名」駅
駅名 | 路線名 | 所在地 | 該当となった日 | 理由 | 廃止日 | 備考 |
安芸亀山 | 可部線 | 広島市安佐北区 | 1954.10.1 | 亀山市誕生 | 2003.12.1 | 可部以北が廃止 |
日向八戸 | 高千穂鉄道 | 宮崎県日之影町 | 1954.11.15 | 日向市誕生 | 2008.12.28 | 2005.9.6より災害で運休。開業時は国鉄日ノ影線。読み方違い(…やと) |
伊勢八王子 | 近鉄八王子線 | 三重県四日市市 | 1955.1.1 | 宇治山田市が伊勢市に | 1976.4.1 | 西日野以西が廃止(1974.7.25より水害で運休)。八王子線の残部は現「四日市あすなろう鉄道」に |
出雲高松 | 大社線 | 島根県出雲市 | 1941.11.3 | 出雲市誕生 | 1990.4.1 |
加賀八幡 | 北陸鉄道小松線 | 石川県小松市 | 1977.11.1 | 八幡市(京都府)誕生 | 1986.6.1 | (注1) |
加賀佐野 | 北陸鉄道能美線 | 石川県能美市 | 1958.1.1 | 加賀市誕生 | 1980.9.14 | 参考HP |
加賀福岡 | 同上 | 同上 | 同上 | 同上 | 同上 | 同上 |
筑後大川 | 佐賀線 | 福岡県大川市 | 1954.4.1 | 筑後市・大川市誕生 | 1987.3.28 |
筑後福島 | 矢部線 | 福岡県八女市 | 1954.4.1 | 筑後市誕生 | 1985.4.1 |
郡山八幡 | 山野線 | 鹿児島県伊佐市 | 1977.11.1 | 八幡市(京都府)誕生 | 1988.2.1 | 読み方違い(…はちまん)。駅開業は福岡県八幡市消滅後 |
北見相生 | 相生線 | 北海道津別町 | 1942.10.1 | 相生市誕生 | 1985.4.1 |
美濃福岡 | 北恵那鉄道 | 岐阜県中津川市 | 1954.4.1 | 美濃市誕生 | 1978.9.18 |
(注1)1958.1.1加賀市誕生によりいったん該当、1963.2.10福岡県八幡市消滅により非該当に(この間読み方違い)。京都府八幡市の誕生で再該当に
【b】駅名改称によって「市名+市名」駅に該当しなくなった駅名
駅名 | 路線名 | 所在地 | 該当となった日 | 理由 | 該当しなくなった日 | 理由 | 備考 |
美濃関 | 越美南線 | 岐阜県関市 | 1954.4.1 | 美濃市誕生 | 1986.12.11 | 現駅名「関」に改称 | 長良川鉄道への転換と同時 |
美濃山田 | 同上 | 岐阜県郡上市 | 1954.4.1 | 美濃市・山田市誕生 | 同上 | 現駅名「山田」に改称 | 同上。その後山田市も消滅 |
筑後小郡 | 甘木線 | 福岡県小郡市 | 1972.4.1 | 小郡市誕生 | 1986.4.1 | 現在地に移転、同時に現駅名「小郡」に改称 | 甘木鉄道への転換と同時 |
伊勢神戸 | 近鉄神戸線 | 三重県鈴鹿市 | 1955.1.1 | 宇治山田市が伊勢市に | 1963.4.8 | 現駅名「鈴鹿市」に改称 | 読み方違い(…かんべ)。神戸線も同日に「鈴鹿線」に改称。 |
出雲今市 | 山陰本線 | 島根県出雲市 | 1954.3.31 | 今市市誕生 | 1957.4.1 | 現駅名「出雲市」に改称 | その後今市市も消滅 |
珠洲飯田 | 能登線 | 石川県珠洲市 | 1964.9.21 | 駅開業 | 1988.3.25 | 「飯田」に改称 | のと鉄道への転換と同時。能登線も2005.4.1に廃線 |
【c】駅名の一部になっていた市名の消滅によって「市名+市名」駅に該当しなくなった駅名
駅名 | 路線名 | 所在地 | 該当となった日 | 理由 | 該当しなくなった日 | 理由 | 備考 |
宇治山田 | 近鉄山田線 | 三重県伊勢市 | 1954.4.1 | 山田市誕生 | 2006.3.27 | 山田市消滅 | 宇治山田市消滅(1955.1.1)以前は「市名+市名=駅名&所在地市名」 |
土佐山田 | 土讃線 | 高知県香美市 | 1959.1.1 | 土佐市誕生 | 同上 | 同上 |
伊勢上野 | 伊勢鉄道 | 三重県津市 | 1987.3.27 | 駅開業 | 2004.11.1 | 上野市消滅 |
伊予北条 | 予讃線 | 愛媛県松山市 | 1958.11.1 | 北条市誕生 | 2005.1.1 | 北条市消滅 |
和泉大宮 | 南海本線 | 大阪府岸和田市 | 1956.9.1 | 和泉市誕生 | 2001.5.1 | 大宮市消滅 |
泉大津 | 同上 | 大阪府泉大津市 | 1971.11.1 | 泉市誕生 | 1988.3.1 | 泉市消滅 | 「市名+市名=駅名&所在地市名」 |
泉佐野 | 同上 | 大阪府泉佐野市 | 同上 | 同上 | 同上 | 同上 | 「市名+市名=駅名&所在地市名」 |
水沢江刺 | 東北新幹線 | 岩手県奥州市 | 1985.3.14 | 駅開業 | 2006.2.20 | 水沢市・江刺市消滅 |
甲斐上野 | 身延線 | 山梨県市川三郷町 | 2004.9.1 | 甲斐市誕生 | 2004.11.1 | 上野市消滅 |
飛騨古川 | 高山本線 | 岐阜県飛騨市 | 2004.2.1 | 飛騨市誕生 | 2006.3.31 | 古川市消滅 |
大和高田 | 近鉄大阪線 | 奈良県大和高田市 | 1959.2.1 | 大和市誕生 | 1971.4.29 | 高田市消滅 | 「市名+市名=駅名&所在地市名」 |
大和西大寺 | 近鉄奈良線 | 奈良県奈良市 | 同上 | 同上 | 1969.2.18 | 西大寺市消滅 |
河内長野 | 南海高野線・近鉄長野線 | 大阪府河内長野市 | 1955.1.15 | 河内市誕生 | 1967.2.1 | 河内市消滅 | 「市名+市名=駅名&所在地市名」 |
河内松原 | 近鉄南大阪線 | 大阪府松原市 | 1955.2.1 | 松原市誕生 | 同上 | 同上 |
河内国分 | 近鉄大阪線 | 大阪府柏原市 | 1955.2.1 | 国分市誕生 | 同上 | 同上 | その後国分市も消滅 |
八幡平 | 花輪線 | 秋田県鹿角市 | 1957.4.1 | 「小豆沢」駅を改称 | 1963.2.10. | 八幡市(福岡県)消滅 | 読み方違い(はちまんたい)。その後平市も消滅。京都府八幡市誕生は平市消滅後 |
大川平 | 津軽線 | 青森県今別町 | 1958.10.21 | 駅開業 | 1966.10.1 | 平市消滅 | 読み方違い(…だい) |
磐城石川 | 水郡線 | 福島県石川町 | 1954.3.31 | 磐城市誕生 | 1966.10.1 | 磐城市消滅 | その後石川市も消滅 |
磐城太田 | 常磐線 | 福島県南相馬市 | 1954.3.31 | 同上 | 同上 | 同上 |
磐城守山 | 水郡線 | 福島県郡山市 | 1954.6.1 | 守山市(愛知県)誕生 | 1963.2.15 | 守山市(愛知県)消滅 | その後磐城市も消滅。滋賀県守山市の誕生は磐城市消滅後 |
美濃高田 | 近鉄養老線 | 岐阜県養老町 | 1954.4.1 | 美濃市誕生 | 1971.4.29 | 高田市消滅 | 近鉄養老線は現・養老鉄道 |
伊勢若松 | 近鉄名古屋線 | 三重県鈴鹿市 | 1955.1.1 | 宇治山田市が伊勢市に | 1963.2.10 | 若松市(福岡県)消滅 | 福島県若松市の消滅は伊勢市誕生と同日 |
黒石平 | 士幌線 | 北海道上士幌町 | 1956.12.25 | 駅開業 | 1966.10.1 | 平市消滅 | 士幌線は1987.3.23廃線。読み方違い(…だいら) |
やはり、「過去の該当駅」も、現役のと同様、「旧国名市絡み」が圧倒的に多い傾向は同じようです。
…まだまだほかにもありそうな気がしますが、調べきっていないので、ご存知の型は遠慮なくどうぞ。
♯消滅市が絡む「石川」「清水」「中村」関係など、見つかりそうで案外なかったようでした。「平」絡みなども、1文字だけに検索が面倒で、うまく行きません…。
お題でNGとされた「函館市/北斗市」のペアは、「新函館北斗」の駅名の頭にある「新」が「余分」になっているからで、これに類する駅名としては、「大阪狭山市」(←これは本当に惜しい!!…南海高野線)、「中野富士見町」(東京メトロ丸の内線(方南町支線))、「和泉多摩川」(小田急)、「伊豆急下田」(伊豆急)などがあります。
現在、あるいは過去のある時点で「市名+市名」となっているような組み合わせになっていても、駅(駅名)が存在していた時期と、市が共に存在していた時期がずれていて、駅名が「市名+市名」になっているような時期が存在していなかった、といったケースも、調べているうちに結構見つかりました。駅の所在地である上野市が新設合併で伊賀市になったため「ほんの一瞬のすれ違い」になった「伊賀上野」(関西本線)のような例もありました。