[74412] 牛山牛太郎 さん
お久しぶりです。
3月8日には石巻市の市役所が移転を開始し、22日に完了しました。
移転した石巻市役所は雰囲気が良さそうですね。某町の町役場のように、外壁の色が暗くて いかにも役所らしい造りだと訪庁するのも気が重くなります。その点、元デパートの建物を利用した石巻市役所は外観がピンク系、1階がスーパー、6階まで全階エスカレーターあり、映画館だったスペースが議場という変わりものですが、気軽に立寄れそうで好感が持てそうです。ただ、気になったのは駐車場の料金です。大河原駅前ビルの駐車場は60分未満が無料で以降1時間ごとに100円ですが、石巻駅前の市役所駐車場は60分未満が無料で以降30分ごとに150円です。30分ごとに150円は大河原の3倍、仙台市役所の二日町駐車場の1.5倍です。石巻の地価の安さを思えば少し料金が高すぎるように感じます。ちなみに
石巻市役所前の路線価は、高知県いの町の
中心街から離れた山の際を走る町道と同額の1平米50,000円です。いの町の路線価が高すぎるのか、それとも石巻の路線価が低すぎるのか・・・どっちもみたいですね。そんな訳でまたまた懲りもせずに路線価の話に入ります。路線価は都市の規模を評価したものではないことを承知の上で、都市規模と路線価を照合しながら そのギャップを楽しんでいるわけですから、地価関係者の皆さんは気になさらないでください。
[74322]では釧路・石巻・滝川と徳島県諸都市の路線価を比較しましたが、今回は石巻に焦点を絞ってみます。石巻の中心街を歩いていると岩手県の一関や水沢とそれほど変わらない規模に見えたりしますが、実際の規模は見た目より もっと大きな都市だと思います。そこで、石巻と同じような規模の市を選出し、それらの市との比較を通じて石巻の路線価を考えてみることにします。石巻は都市圏人口221,282人、市域人口161,192人、DID人口97,637人で、市域人口は減少しています。それを踏まえて下記の条件に当てはまる市を類似規模の市とします。
条件1・都市圏人口が15万から25万人(2005年都市雇用圏)
条件2・市域人口が10万から20万人(2009年10月1日推計)
条件3・DID人口が5万から15万人(2005年国勢調査)
条件4・人口増加率がマイナス数値(2005年国勢調査と2009年10月1日推計の市域人口比)
以上の4条件をクリアした市を「類似規模の市」とします。これに該当するのは、
鳥取、
会津若松、
宇部、
都城、
米子、
大牟田、
三条、
石巻、
伊勢、
桐生、
今治、
酒田、
岩国、
鶴岡、
八代の15市です。ただし、特例として次の市を加えたいと思います。条件1の「都市圏人口」が規定の15万人に満たないものの、条件2、条件3および条件4をクリアした
延岡、
北見、
新居浜。条件3の「DID人口」が規定の5万人に満たないものの、条件1、条件2および条件4をクリアした
飯塚、
上田の5市です。これで類似規模の市は20市になりました。以上の20市については、最高路線価の位置をセンターにして航空写真をリンクしています。最高路線価は各市とも概ね中心街に位置していますが、伊勢と三条だけは異色です。伊勢の最高路線価は中心街の伊勢市駅周辺ではなく、町並みの どん詰まり伊勢神宮内宮の入口付近。三条の最高路線価は中心街の本町ではなく、新興の燕三条駅前にあります。また、心情的には苫小牧、室蘭、小山、足利、太田、上越、松阪、尾道、山口も類似規模の市とみなしたいのですが、条件に合致しない点があるので外します。では、類似規模20市の都市圏人口(2005年都市雇用圏)、市域人口(2009年10月1日推計)、DID人口(2005年国勢調査)、人口増加率(2005年国勢調査に対する2009年10月1日推計市域人口)、製造品出荷額(2006年)、|卸売販売額(2007年)、小売販売額(2007年)、人口比小売額(小売販売額を市域人口で除した数値)を表形式にまとめてみます。表作成の都合で会津若松を「若松」と表記します。
順位 | 都市圏人口 | 市域人口 | DID人口 | 人口増加率 | 製造品出荷額 | 卸売販売額 | 小売販売額 | 人口比小売額 |
| (万人) | (万人) | (万人) | (%) | (百億円) | (百億円) | (百億円) | (万円) |
1位 | 鳥取 25 | 鳥取 20 | 大牟田 10 | 米子 -1.0 | 今治 73 | 北見 38 | 鳥取 22 | 北見 136 |
2位 | 若松 25 | 宇部 17 | 石巻 10 | 新居浜 -1.0 | 新居浜 69 | 三条 34 | 米子 19 | 米子 129 |
3位 | 宇部 25 | 今治 17 | 若松 9 | 都城 -1.4 | 上田 59 | 今治 32 | 都城 19 | 若松 127 |
4位 | 都城 24 | 都城 17 | 延岡 9 | 飯塚 -1.6 | 鳥取 57 | 宇部 29 | 石巻 18 | 伊勢 121 |
5位 | 米子 24 | 石巻 16 | 北見 9 | 鳥取 -1.7 | 宇部 54 | 鳥取 29 | 上田 18 | 上田 115 |
6位 | 大牟田 23 | 上田 16 | 鳥取 8 | 伊勢 -2.0 | 石巻 35 | 上田 28 | 宇部 17 | 石巻 115 |
7位 | 三条 23 | 米子 15 | 桐生 8 | 上田 -2.3 | 伊勢 34 | 米子 25 | 北見 17 | 飯塚 114 |
8位 | 上田 22 | 岩国 14 | 新居浜 8 | 三条 -2.5 | 若松 33 | 酒田 20 | 若松 16 | 都城 113 |
9位 | 石巻 22 | 鶴岡 14 | 宇部 8 | 北見 -2.5 | 三条 31 | 都城 20 | 今治 16 | 鳥取 113 |
10位 | 飯塚 20 | 八代 13 | 米子 7 | 宇部 -2.6 | 岩国 31 | 石巻 20 | 伊勢 16 | 酒田 111 |
11位 | 伊勢 18 | 伊勢 13 | 都城 6 | 若松 -2.8 | 延岡 29 | 新居浜 17 | 飯塚 15 | 新居浜 102 |
12位 | 桐生 18 | 飯塚 13 | 今治 6 | 今治 -3.0 | 都城 29 | 岩国 16 | 岩国 14 | 三条 101 |
13位 | 今治 17 | 延岡 13 | 岩国 6 | 八代 -3.1 | 大牟田 28 | 若松 15 | 鶴岡 14 | 宇部 100 |
14位 | 酒田 16 | 若松 13 | 八代 6 | 鶴岡 -3.2 | 鶴岡 28 | 伊勢 15 | 酒田 13 | 岩国 99 |
15位 | 岩国 15 | 北見 13 | 鶴岡 6 | 延岡 -3.3 | 桐生 27 | 飯塚 13 | 新居浜 12 | 鶴岡 99 |
16位 | 鶴岡 15 | 大牟田 12 | 酒田 6 | 岩国 -3.4 | 米子 26 | 八代 13 | 大牟田 12 | 大牟田 97 |
17位 | 八代 15 | 新居浜 12 | 伊勢 5 | 石巻 -3.7 | 八代 24 | 延岡 11 | 八代 12 | 今治 95 |
18位 | 延岡 14 | 桐生 12 | 三条 5 | 酒田 -4.1 | 酒田 23 | 大牟田 10 | 延岡 12 | 八代 91 |
19位 | 北見 13 | 酒田 11 | 飯塚 5 | 桐生 -4.5 | 飯塚 18 | 鶴岡 8 | 桐生 10 | 延岡 89 |
20位 | 新居浜 12 | 三条 10 | 上田 4 | 大牟田 -4.8 | 北見 15 | 桐生 5 | 三条 10 | 桐生 84 |
石巻は都市圏人口9位、市域人口5位、DID人口2位、製造品出荷額6位、卸売販売額10位、小売販売額4位、人口比小売額6位ですから、都市景観の貧弱さとは裏腹に結構高い位置に付けています。しかし、人口増加率は17位と低迷。さらに、1平米当りの最高路線価は鳥取185千円、岩国185千円、伊勢170千円、米子145千円、上田140千円、今治140千円、宇部115千円、新居浜97千円、三条92千円、延岡91千円、都城90千円、飯塚82千円、会津若松81千円、大牟田73千円、桐生69千円、北見67千円、八代62千円、酒田61千円、石巻54千円、鶴岡53千円の順で、石巻は19番目に低落しています。最高路線価が低いのは人口減少が原因かというと、そうでもなさそうです。もっと大きな要因は商業の郊外立地による中心街の空洞化のようです。石巻は商業の郊外立地が著しい都市で、昭和の終わりごろには中心街の
橋通り・
アイトピア・
立町大通りが寂びれはじめ、郊外の
中里地区が活発な商業地になっていたと記憶しています。あれから20年以上を経た今では、中里地区がさらに郊外の蛇田地区にその座を奪われています。現在、商圏人口36万をかかえる宮城県第2の商都石巻の商業活動は、郊外の
蛇田地区に完全移転してしまったようです。蛇田地区は、店鋪面積33,000平米を超すイオンSCや11,000平米超のイトーヨーカドーをはじめ、大型のホームセンター、家電店、ドラッグストア、ファッションショップ、さらには銀行、ホテルなども進出して急激な変ぼうを遂げています。その小売店の合計店鋪面積は十日町、大和高田、日南など人口6万人クラスの1市まるごと分の店鋪面積に匹敵し、愛媛県内子町の小売店全部を束ねて4倍してもまだ足りない面積に達しているだろうと推測されます。これほどの店鋪面積が半径わずか500mの区域に集積しているのですから、さぞ地価は熱く跳ね上がるだろうと思うのですが、なぜか路線価の評価額は冷めていて、内子町の国道から1本裏に入った
用水堀とおぼしき水路に沿った小道よりも1,000円安い1平米49,000円ですから驚きです。こんなことを書いてると、路線価図の使用目的を間違えてるぞと叱られそうですが、都市規模を念頭において路線価図を眺めると新鮮な驚きが沢山あって面白いものです。