ホントは金沢市の河岸段丘の話の続きを書きたいのですが、なかなかまとまらないのでいつかの機会に書きたいと思います。
と言いつつ、別の気になった書き込みにレスをつけている私(・・;
しかも書いていたら弾みで一回消えてしまったので、書き直してます(TxT)
[22645] 太白 さん
もし、『旧字体は別の字ではないが、異字体は別の字である』というのであれば、それを合理的に説明できる理由を教えていただければ幸いです。
昭和21年に内閣訓令・内閣告示で示された「当用漢字表」、昭和24年に内閣訓令・内閣告示で示された「当用漢字字体表」、昭和56年に内閣告示で示された「常用漢字表」の中で字体が新たなもの変更・統一された漢字の、旧来使われていた字体が「旧字体」、漢字表に載った字体が「新字体」になります。
字体の変更に当たって、払いかたや点の方向、はねの有る無しなどの簡単な変更については総合的な説明で終わっていますが、字体の省略や大幅な変形、俗字への統一など、字体が大きく変わったものについては漢字表の中にわざわざ新字体に対応する旧字体がかかれています。
「豫→予」は昭和21年の当用漢字表ですでに字体が変更されています。
この旧字体と新字体については、同じ漢字であるという国のお墨付きがある、と言って良いと言うことになるでしょうか。
(と言うよりも、国がムリヤリ字の形を変えた、と言う方が適当かもしれませんが)
一方、異字体は「本来起源が同じなのに途中で字の形が変わったもので、同じ意味で使用される字」や「本来の起源は異なるものの、読みや意味が同じため、混同して使われる漢字」を総称したものになります。
現在の常用漢字表に記載されている漢字の中で、異字体が存在するものは数多くあるはずです。
かつては、同じものを漢字で書くときに、異字体が入り乱れて使われていたと考えられます。
しかし、一部は当用漢字の新字体として採用されたり、一部は当用漢字表(現・常用漢字表)と人名漢字表に「別の字」として採用されていたりしていますが、ほとんどの異字体は当用漢字の字体が定められる課程の中で完全に「通常の使用は認めない別の字」扱いされてしまっています。
悪い見方をすれば「無かったこと」になっていると言えるかもしれません。
「嶋」は「島」と起源が同じなのですが、当用漢字表や常用漢字表の中には旧字体としても出てこないので、国サイドでは「別の字」扱いされてしまうと思います。
なお、当用漢字字体表以降に字体が改正された漢字の旧字体については、多くが暫定的に(と言ってもずっと続いていますが)人名に使っても良いことになっており、戸籍法の規則で「人名用漢字許容字体表」としてまとめられています。
戸籍法は昭和23年にできており、それ以降に変更になった字体はとりあえず古いものも使える形にしておこう、と言うことだそうです。
しかし、「豫」は21年の当用漢字表で「予」に帰られてしまったので、「人名用漢字許容字体表」に入れてもらえませんでした。
そのため、現在ではほとんど使われない字になってしまっています。
戦前から苗字や地名などの固有名詞として使われていたものであれば、当用漢字に無い字でもそのまま使い続けられているので、伊予市も「かつて伊豫の国」であったことを盾にがんばっていたのでしょうが、いかんせん世の中で「豫」の字が使われなくなり、表記に混乱を来してきたか何かの理由で、
[577]のIssieさんの書き込みにもあるように、「こっそり」表記を「伊予市」に統一してしまったのではないでしょうか?
この場合、当用漢字表の内閣訓令なり内閣告示なりを根拠として行ったと言うことにしたので、自治体名変更の官報告示はいらない、と言うことになっているのでしょう。
鹿嶋市の場合も、異字体の表記揺れの範囲で古文書の中に「鹿嶋」という名称が出てくる可能性は大いにあると思うので、そういうものを根拠として「常用漢字表では同じ漢字と言うことになっていない」「鹿島町」から「鹿嶋市」に漢字を変更した可能性もあるのでは、と考えてみたりします。
これはあくまで私の想像ですが。
もし、完全に新しい名称をひねり出して、そこに常用漢字表(大目に見ても人名漢字表まで)に含まれない漢字を使っていたとしたら、許してもらえるのでしょうか?
ただ、鹿嶋市の場合は「とにかく市町村合併させることが目的の」合併特例法が絡んでくるので、運用上でとんでもないウルトラCがあったかもしれませんが。
長々と書きましたが、要点だけ書いてしまえば、伊予市の漢字の変更と、鹿嶋市ができるときの「嶋」の字が採用された事例は、背景や根拠となっている法律・法令が違ったから、と言うことなのではないでしょうか。
…と、ここまで書いてから、当用漢字の件に関しては、落書き帳アーカイブスの「愛ヒメと書く訳 ―地名は当用漢字を超える―」に同じような記載がいくつかあるのを見つけてしまいました。