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電子地図

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記事数=24件/登録日:2012年7月17日

広い宇宙空間の中で、私達が居住することができる貴重な領域、それが地表です。
地表を測り、それを「地図」という形で表すことにより、地理情報は豊かなものになっています。

落書き帳アーカイブズには、既に 測地に関する記事集 地球計測の歴史 〜地球を測った人々〜 があります。
アーカイブズカテゴリー 地図の不思議を見つけよう には、「地形図」に親しもう!なぜ地図は「北が上」なのか? などがあります。

今回のマガジンでは、電子地図を取り上げました。

電子地図は、落書き帳の初期から登場しています。例えば[851]。地形図閲覧システムは[9285]などで紹介されています。
しかし、初期の電子地図には いろいろと欠点もあり、紙媒体の地図に親しんだ方にとっては 好まれていなかったようです[4503]

電子地図と言っても、初期のものは本質的には紙媒体を電子化したもので、1枚でカバーする範囲は限られていました。
例えば、最初はモノクロ[12741] でしか閲覧できなかった国土地理院の25000分の1地形図も、2004年にはカラー化[29464]されましたが、これは元の地形図を4分割した画像ファイルでした[80755]

現在のシームレス電子地図が登場したのは Google Mapsでした。
米国のサイトに掲載された 「衛星画像」[42524]が先行しまたのですが、2005年7月から 日本語の地図も登場しました[43058]

2011年に 電子国土基本図[77603] が正式運用され、その翌年、今年の春には 「使いづらいよデジタル地図」という 東京新聞特集記事をきっかけとする 落書き帳のスレッド[80531]〜 がありました。

この中で、電子地図の投影図法や縮尺についての議論があったので、hmtは それを主題とするシリーズ[80547]〜 を書き、シームレスの電子地図が、地図を「紙媒体の限界」から開放した功績を讃えました[80800]

図法について言うと、方位の正しさから 航海用に重用されたメルカトル図法と 本質的に同じ 「円筒図法」が、大縮尺図を主な用途とする 電子地図でも 使われている という現状を認識しました。
メルカトル図法の欠点とされる 縮尺の緯度依存性は、電子地図でも確かに存在します[80822]
しかし、それは 日本国内程度の緯度範囲に限れば さほど気にならない程度です。
電子地図の特徴である容易な縮尺変更も利用し、標尺に注意しながら使えば、この欠点は許容することができそうです。

グリグリさんから、自治体など 地名の範囲表示機能[81096] が紹介された機会に、この特集をまとめました。

★推奨します★(元祖いいね)

記事番号記事日付記事タイトル・発言者
[9285]2003年2月15日
てへへ
[12741]2003年4月9日
KMKZ
[18339]2003年7月15日
かつ
[29464]2004年6月19日
らるふ
[42524]2005年6月22日
hmt
[43058]2005年7月16日
ゆう
[77603]2011年2月5日
hmt
[77607]2011年2月6日
oki
[77608]2011年2月6日
千本桜
[80531]2012年4月17日
グリグリ
[80533]2012年4月17日
Issie
[80536]2012年4月18日
グリグリ
[80538]2012年4月19日
Issie
[80540]2012年4月19日
futsunoおじ
[80544]2012年4月20日
グリグリ
[80545]2012年4月21日
Issie
[80547]2012年4月21日
hmt
[80548]2012年4月21日
hmt
[80554]2012年4月23日
hmt
[80556]2012年4月25日
hmt
[80755]2012年5月3日
hmt
[80800]2012年5月8日
hmt
[80822]2012年5月11日
hmt
[81096]2012年7月14日
グリグリ

[9285] 2003年 2月 15日(土)22:05:59てへへ さん
旧国鉄以外で最東端の駅候補の僅差について
[9233]まがみ さん
※旧国鉄以外で最東端の駅ですが、新さっぽろ か 三沢(十和田観光電鉄)か微妙なところでしたが、僅差で 新さっぽろ の方が東にあります。
僅差がどのくらいなのか気になり概算してみました。大体の距離を知りたいだけなので、地球を赤道半径の球(実際は歪んでいます)と見なし、緯線に沿った経度の差に相当する弧の長さを比較してみました。弧の長さなので直線距離より少し長くなりますが。
緯度経度経度1度の距離東経141度線との経度差に相当する弧の距離
新さっぽろ駅北緯43度2分20秒東経141度28分26秒108.1551.25
三沢駅北緯40度40分5秒東経141度21分13秒108.0538.21
13.04
ということで、新さっぽろ駅の方が三沢駅よりも約13Km東にあります。

参考)
・緯度と経度:国土地理院「地形図閲覧システム検索インデックス」 http://mapbrowse.gsi.go.jp/mapsearch.html
「地名・公共施設名による検索」にて、新さっぽろで検索して25000分の1地形図を表示し駅の場所を探してクリックし緯度と経度を取得。クリック地点により多少、値が異なります。
・赤道半径[km]:6378。岡山県小田郡美星町 http://www.town.bisei.okayama.jp/stardb/sol/data/sol0070.html
・経度1度の弧の距離[km]:2π(r・cosθ)/360(但し、赤道半径r[km]、緯度θ[rad])
 ※[度]から[rad]への変換例。43度2分20秒は、{43+(2/60)+(20/3600)}/180=0.2391[rad]

まがみさんは日本一の駅という話題の本筋から外れるために、この僅差についてあえて触れていないと思われますが、横槍レスをお許しください。
[12741] 2003年 4月 9日(水)08:58:17KMKZ さん
日比谷入江、指ヶ谷、国土地理院のHP
[12735]YSK さん
江戸が都市として町割を進める際に、まず入り江だった日比谷を埋め立てたという話をきいたことがある
[12725]でもリンクを張った以下のページには、
http://homepage1.nifty.com/yanaken/kandagawa/history/histmapview.htm 神田川下流の流路の変遷
日比谷入江は、のちに徳川幕府によって大半が埋め立てられて大名屋敷の敷地となり、一部が江戸城の内堀となって現在に至っている。
 つまり、現在の皇居内堀の東側部分は、「海のなごり」だということになる。
とあります。

[12729]TKS-H さん
私はつい数か月前まで指ヶ谷小学校が投票所になる地域に住んでいた
KMKZの勤務先の近くです。

[12710]三丁目 さん
国土地理院の航空写真紹介でした。(中略)よくよく見ると、このHPは、このサイトの皆さんにとって、宝の山のようですね。
本当に宝の山ですね。航空写真以外にも2万5千分1地形図(但し、単色)や数値地図も試験公開ですが閲覧できます。
[18339] 2003年 7月 15日(火)08:41:21【1】かつ さん
ネットで地図を無料公開
国土地理院は15日午前9時から,インターネット上に「電子国土」ポータルサイト
( http://cyberjapan.jp/)を開設するそうです。
「2万5000分の1地形図など5種類の縮尺による全国各地の地図を無料で閲覧できる。これらの地図を基盤に,地方自治体などがさまざまな地理情報を重ね合わせて表示し,発信することも可能になる。」毎日新聞より抜粋
[29464] 2004年 6月 19日(土)11:32:04らるふ さん
川辺盆地
[28895] 作々 さん
川辺盆地というものが存在するらしい。とはいってもまだ地図上での確認は取れていないんですけど。辞典によると、その名の通り川辺町の万之瀬川とかが流れているあたりみたいなんですけど。というわけでこちらはまだちょっと微妙。
私の地名事典にも万之瀬川のところに「中流域に川辺盆地」と記載されていました。
広域の地図で見ると、川辺町の平野部は加世田平野とつながっているような感じがしますが、1/25000地形図をみると川辺町と加世田市の境界あたりは台地状の丘陵で、平地としては区切られているのが判ります。シラス台地を万之瀬川が浸食してできた盆地なのかも知れません。
(国土地理院の地形図閲覧がカラーになって見やすくなりましたが、データが大きくて開くのに少々時間がかかります)

ということで、盆地コレクションの追加を実際にやってみました。

愛比売命さん、「えーと、あのあたりは加世田平野でよかったっけ?」と平野コレクションを参照させていただきました。
[42524] 2005年 6月 22日(水)16:38:25【1】hmt さん
衛星画像で地球散歩
[42523]で記したように、東京の北東部は、大縮尺衛星画像が得られます。
ここで、大落古利根川が中川と合流するあたりの画像を見たら、大落古利根川の黒い流れが、合流点から1kmぐらい下流まで、中川から来た水とは色の濃さが違う流れとなっていることに気が付きました。

そこで思い出したのがアマゾン川。
早速manaus brazilで衛星画像を出し、少しズームアウトすると、文字通り黒いネグロ川の流れが、ソリモンエス川(褐色の泥水と言われているが画像では青く見える)と合流し、アマゾン川の下流数10kmにわたり色の違う二筋の流れとなっている様子を見ることができました。

東京散歩に出て、気が向けば、同じ気軽さで地球散歩に移ることができるのがGoogle Mapsです。

[42439]で話題にしたので、イェテボリ(Goeteborg、ゴート人の砦)の画像も見てみました。この画像は、ずいぶん斜めからになっています。赤道上空に視点を置いた画像だから、高緯度地域はこのようになるのですね。
もっと北、スバールバル諸島[40347]に行ってみたら、さすがに地の果てという感じで、何があるのか判別もできません。

ところで、イェテボリ市街は中縮尺画像ですが、その東の郊外に大縮尺画像の地域があります。何か重要な施設があるのかな?
そう言えば、北朝鮮の平壌(Pyongyang)は中縮尺画像なのに、寧辺(Yongbyon)付近は大縮尺画像でした。この荒涼とした禿山の風景の中に、問題になる施設が点在しているのでしょう。
日本では、名古屋が中縮尺画像なのに、四日市が大縮尺画像。

Google Maps本来の地図が整備されていて、衛星画像との切り替えができ地域としては、現在のところ、アメリカ合衆国の他に、カナダの一部やイギリスの大部分があるようです。
[43058] 2005年 7月 16日(土)10:31:23ゆう さん
AjaxなGoogleマップ
残念ながらkenさんが[43031]を削除されたようですが、
http://maps.google.co.jp ( http://maps.google.com ではないのがミソ)
が先日からでアクセスできるようになってます。

以前は衛星画像だけだった日本国内が、ゼンリンの地図が表示されるようになってます。
これまでの地図サイトとは違う、軽快な図郭の移動が日本の大縮尺地図でもできるようになりました。
それから、地図や衛星画像の左下に縮尺目盛がつきました。

いったいどこまで進化するんでしょう。とてもたのしみです。
[77603] 2011年 2月 5日(土)19:37:31hmt さん
電子国土基本図
国土地理院の発表 によると、2月1日から、「電子国土基本図(地図情報)」が正式公開の運びになったとのことです。
これまでの2万5千分1地形図に替わる新たな基本図と位置づけられるもので
と書いてあり、地理に関心をもつ者としては見逃せないニュースと思われるので、少しフォローしてみます。

落書き帳を検索すると「電子国土」は18件、「国土基本図」は2件の記事がヒットしますが、「国土基本図」とは如何なるものなのかについては、言及されていないようです。

国土地理院時報(2003,100集)目次 には、次のように記されています。
第二次基本測量長期計画に基づき始まった2万5千分の1地形図の全国整備は 一部離島を除き 1983年に完了し,以後この地形図が 5万分の1地形図に代わる 新たな基本図となった。

国土地理院のサイト内における「基本図」の使用例は、大部分が「電子国土基本図」と「火山基本図」であり、電子化以前の「国土基本図」に関する記事は殆んどみつかりません。上記2003年の時報でも、最近の発表でも、2万5千分の1地形図は単に「基本図」と記されています。

では、「国土基本図」という言葉を使われていなかったのかというと、そうでもないようです。
日本地図センターのサイトに 国土基本図作成区域図 というものがあり、右端に次の説明がありました。
国土基本図は,国土地理院が統一した規格で作成している大縮尺の地図です。
国土基本図の種類は1/5000地形図,1/2500地形図及び1/5000写真図の3種があります。

前置きが長くなりましたが、紙媒体時代の整備状況は、次のようであったと理解することができます。
全国をカバーする基本図は2万5千分の1地形図であった(北方四島のような例外あり)。都市部など国土の一部については、「国土基本図」という名称が使われた 大縮尺(2500分の1又は5千分の1)の地形図や写真図が整備されていた。この他に、地方公共団体が国土基本図と同じ規格で作成した地図もあった。

最初に挙げたプレスリリースの冒頭に、基本図体系のデジタル化(電子化)は、測量法及び地理空間情報活用推進基本法 の趣旨を踏まえたものである と記されています。
後者は、1995年の阪神・淡路大震災の反省等をきっかけに 政府が本格的に取り組み始めた 地理情報システム(GIS:Geographic Information System) の中核となる 国土空間データ基盤(NSDI:National Spatial Data Infrastructure)を整備し、その活用を推進する法律で、2007年に制定施行されました。

地域における自然、災害、社会経済活動などの情報は、土地利用図、地質図、ハザードマップ、都市計画図、地形図、地名情報、台帳情報、統計情報、空中写真、衛星画像等の多様な表現を通じて利用されています。
従来バラバラに整備されてきた各種の情報ですが、電子化された共通白地図(国土空間データ基盤NSDI)に、これも電子化された種々な情報を重ね合わせれば、各システムを連携させ、統合・強化することができます。これが地理情報システムGISの考え方であると思います。

電子国土基本図 は、いわばGISに使われる共通白地図で、下記3種類の情報で構成されます。
1 電子国土基本図(地図情報) 国土全域をカバーするデジタル地図で、道路・建物・構造物・植生等を含む。
 従来基本図として利用されてきた 縮尺レベル 25000の精度に限定することなく、より精度の高いものを含んだ我が国全域を覆うベクトル形式の基盤データです。縮尺レベル2500の基盤地図情報が提供されている地域(2011/2/1現在)
2 電子国土基本図(オルソ画像) 空中写真の歪を補正して、地図と同様に真上から見た写真画像。
3 電子国土基本図(地名情報) 標準地名や通称・位置・範囲の情報に地理識別子を付与した地名情報。

電子国土基本図(地図情報)は、電子国土ポータル から閲覧することができます。2009年12月から試験公開されていますから、既にご利用の方も多いと思います。

現在のトップページには神奈川県庁を中心とする1/18000図が示されています。
横浜の地図が選ばれた理由は、上記のように、横浜市全域が縮尺レベル2500になったためでしょうか。
ウオッちず も、2月から電子国土の地図になり、拡大が2段になったのですね。
7月末までは、従来の地形図の画像も表示できると書いてありますから、見比べるなら今のうち。
電子国土ポータルトップから「空中写真を見る」に行くこともできます。
電子国土基本図(オルソ画像)のラジオボタンが選択されている状態で神奈川県庁を検索すれば、先の地図と同じ場所になります。オルソ画像も 1/2500まで拡大可能。
[77607] 2011年 2月 6日(日)15:29:03oki さん
電子国土基本図(は使えない)
今日は、休日だというのに朝からお仕事。少し飽きてきたので、軽く書き込みを。

[77603] hmt さん
国土地理院の発表 によると、2月1日から、「電子国土基本図(地図情報)」が正式公開の運びになったとのことです。

「電子国土」や「基盤地図情報」は、提供された当初から興味を持って見てきましたが、現時点での評価は「使えない」の一言です。

「電子国土」の利用法には、「基盤地図情報」をGISのデータとして使用する場合と、「電子国土ポータル」を「紙の1/25000地形図」の代替となる閲覧可能地図として利用する場合の二つが考えられます。
まずデータとしての「基盤地図情報」ですが、その大半はGISデータとしては使えません。大きな理由は、そのフォーマットと仕様にあります。「基盤地図情報」のファイルフォーマットは「JPGIS」と呼ばれるXMLファイルですが、極端に冗長な構成を取っており、ファイルサイズが巨大になります。たとえば、地図上の3点を結ぶ線分を示すのに、20行もの記述が必要になります。1つの点(経緯度)を示すのに、次のような5行を費やし、その他ヘッダを入れると3点で20行が必要です。
<jps:column>
<jps:direct>
<jps:coordinate>36.40388495 139.610253106</jps:coordinate>
</jps:direct>
</jps:column>
行政区域、鉄道、道路など、あらゆる地物についてこれをやるのですから、ファイルサイズは馬鹿馬鹿しいほど大きくなります。
しかも、ArcGISやGRASSなど通常のGISソフトは、このフォーマットのファイルを読めません。JPGISファイルを読めるのは国土地理院が提供する「基盤地図情報閲覧コンバートソフト」だけで、このソフトを使ってGISで一般的な「シェープファイル」に変換する必要があります。この変換の過程で、JPGISが持つ属性情報は失われます。つまり、これだけ冗長な構成を取りながら、変換後に得られるのは、ただの経緯度の連なりだけなのです。
さらに、道路に関しては、基盤地図情報が提供するのは「道路縁」の情報で、「道路中心線」ではありません。もちろん、交差点(他の道路との接続)に関する情報もありません。鉄道の方は、線路の本数だけ情報があります。つまり、複線なら2本、複々線の場合は4本の線路に関する情報です。代わりに、線路と駅との関係に関する情報は得られません。
このような状況なので、基盤地図情報のデータを用いて、GISで重要なネットワーク分析を行うことはできません。特定道路の周辺100mに住んでいる人口を求めるようなバッファ分析もできません。
要は、基盤地図情報はただの白地図、つまり白紙の上の線分情報に過ぎないのです。今までの紙の地図上に描かれていた線分に、経緯度情報を与え、経緯度の連なりとして示したもの、それが基盤地図情報です。それ自体としては必要なものでしょうが、少なくとも、私が期待していたような、GISでの分析に利用できるデータではありません。これなら、以前に提供されていた「数値地図(25000および2500)」の方がよほどマシです。

ただ一つ、基盤地図情報で使えるのは「DEM(標高)データ」です。現在、1/25000地図の等高線を元に作成された全国の「10mメッシュDEM」と、航空レーザスキャナ測量で取得された、都市部を中心とした「5mメッシュDEM」があります。私は、「10mメッシュDEM」をすべてDLし、全国の「赤色立体地図」を作成しました。「赤色立体地図」はこういうもので、従来の段彩図に比べ、地形の凹凸が格段に立体的に把握できます。通常はリンク地図のような赤色の地図なのですが、これに彩色し、「彩色立体地図」と名付けました。この「彩色立体地図」をGoogle Earthに貼付け、その上に「ウォッちず」の地形図を被せて全国の地形を観察するのが、現在の私の大きな楽しみなっています。この点については、「基盤地図情報」とそれを提供する国土地理院に感謝しています。

次に、閲覧できる地図としての「電子国土ポータル」ですが、私にとっては、これも従来の「ウォッちず」の方が上です。
一つの問題は、「電子国土ポータル」の地図表示面があまりに狭いこと。「電子国土ポータル」では、地図の表示枠は画面全体の7~8割程度の面積しかありません。そして私の環境では、地図表示枠のうち右側および下側の1/5の範囲がグレーの空白部分になっています。地図が表示されるのは残りの4/5の範囲です。したがって、地図表示面積は画面の半分にも足りません。何度もプラグインをインストールし直していますが、まったく修正されません。ですので、「電子国土ポータル」は使いません(不思議なことに、「オルソ画像」だと表示枠の全体に地図が表示されるのですけどね)。
で、今回「ウォッちず」の「電子国土基本図」を見てみたのですが、重大な難点があります。1/25000地形図では、大字と小字は文字の大きさで判別可能でしたが、「電子国土基本図」では両者とも同じ大きさで、まったく判別できません。これでは非常に困る。
また、「樹木に囲まれた居住地」の記号がなくなっています。「建物」の記号が従来より淡彩で表示されていることもあり、地方(田園地帯)での集落の状況が非常に分かりにくくなった、というのが正直な感想です。
「ウォッちず」では、1/25000地形図は7月末まで閲覧可能と注記していますが、つまり8月以降は閲覧できなくなると言うことでしょう。そうなるととても困ります。今のうちに、国土地理院から「ウォッちず」のすべての地図画像をDLしローカルで使えるようにしようと、本気で考えているところです。
[77608] 2011年 2月 6日(日)20:46:43千本桜 さん
ウォッちずの1/25000地形図と電子国土基本図
[77607] oki さん
今回「ウォッちず」の「電子国土基本図」を見てみたのですが、重大な難点があります。1/25000地形図では、大字と小字は文字の大きさで判別可能でしたが、「電子国土基本図」では両者とも同じ大きさで、まったく判別できません。これでは非常に困る。
同感です。しかし、これはどうも居住地名だけでなく、島や山の自然地名にも及んでいるようです。松島湾に浮かぶ個々の島々の名称と、それらを総称する松島群島という文字が同じ大きさで表されています。個々名の茶臼岳と総称の那須岳も同じ大きさで表されているところをみると、最初から「個々の名称」と「総称」の区別は考慮していないようです。
また、「樹木に囲まれた居住地」の記号がなくなっています。「建物」の記号が従来より淡彩で表示されていることもあり、地方(田園地帯)での集落の状況が非常に分かりにくくなった、というのが正直な感想です。
これも同感です。植生界や送電線や橋の表示もなくなりましたね。時代とともに地図に求められる物が変わってきたと受け止めるべきなのでしょうか。それにしても建物の色は淡すぎますね。文字情報が見やすくなる利点はありますが、少し淡すぎたようです。そのため、相対的に水部の藍色が強くなりすぎたようです。水田地帯では一条河川と水田記号がうるさく感じるでしょう。ちょっと目が疲れます。でも、電子国土基本図に踏切が表示されるようになったのは良案ですね。
[80531] 2012年 4月 17日(火)05:56:54【1】オーナー グリグリ
使いづらいよデジタル地図
昨日の東京新聞朝刊のこちら情報部の特集記事のタイトルです。国土地理院の電子国土の国土基本図が使いづらい点を取材したものです。落書き帳でも、電子国土の議論として書き込みがありますが、東京新聞の記事では、除外された地図記号など情報減で使えないという利用者の声が掲載されています。具体的事例として、二万五千分の一「浦賀」の例を挙げて、ペリー記念碑の記号がなくなっていたり、横須賀火力発電所の記号と送電線がなくなっていることを指摘しています。火力発電所の件は、東京電力が協力してくれなかったとの地理院のコメントもあります。私はほとんど利用しないのでよくわからないのですが、デジタル化への過程として捉えて、利用者の声を大きくすることによって、改善されていくようにすべきなのでしょうね。実際そう言う動きもあるようですが、このサイトでもそのような声を集めておいてもよいかなと。
[80533] 2012年 4月 17日(火)21:56:48Issie さん
Re:使いづらいよデジタル地図
[80531] グリグリ さん
昨日の東京新聞朝刊のこちら情報部の特集記事のタイトルです。国土地理院の電子国土の国土基本図が使いづらい点を取材したものです。

この東京新聞の記事は“周回遅れ”でしょうかね。
3月28日の朝日新聞(東京本社版夕刊)には,この「使いづらい」という声を受けて問題の送電線や記念碑などの掲載を“復活”させることにした,という記事が載っていました。こちらのブログ では当該記事とそれに関するイギリスやドイツの例について述べてられています。
批判の声の中には「戦時改描」なんて物騒な言葉も出てきているようです。
現に見えているものを載せるのは当然だというのは至極もっともで私も同意見なのですが,東電が協力しない理由が「テロ対策」というのが御時勢ではあるのでしょうね。前シリーズから「ブラタモリ」もモザイク画面が増えました。現地を知っている人にはバレバレのような気もしないでもありませんが。
この話,「軍事情報としての地図」という地図の本質の1つにかかわる話題なのかもしれません。

私はほとんど利用しないのでよくわからないのですが

私もほとんど利用していません。「電子国土」に限らず,googleマップのような民間のものも含めて。
理由はやはり,「使いづらい」からです。
紙の地図とは違って“シームレス”であるというのは,何より電子地図の優れたところです。
けれども如何せん,ディスプレイ画面は狭い。紙地図は多くの場合,折りたたむか丸めなければ持ち歩けない大きさで,にもかかわらず“紙の大きさ”という描写範囲の限界があるのですが,その範囲内において“一覧性”という点で狭いディスプレイ画面に勝ります。
縮尺を小さくすれば狭い画面でも広い範囲が描写できるわけですが,その分,情報が減ってしまいます。
そして,この縮尺が自由に変更できるという点。これも紙地図にはない電子地図の極めて優れた特長ですが,使う場面によってはむしろ致命的な欠陥になる。
つまり,たとえば「4cmで1km」という“縮尺の概念”が通用しないわけで,地図の上で距離や面積を把握することが非常に困難です。
実際の使用場面において,私は「地図は消耗品」と割り切って使用しています。必要のある都度,同じ地図を購入してたくさんの線を描き込み,色を塗りたくり,ハサミで切り刻む。
このような使い方も電子地図では難しそうです。いや,そういう使い方のできるソフトがないわけではないのかもしれませんが,私には紙地図の方が使いやすい。

というわけで,何か「電子国土」じゃなくて電子地図そのものに対する愚痴になってしまいました。
当たり前のことですが,紙地図にも電子地図にもそれぞれ優れた点とそうでない点があって,それが向いている場面と不向きな場面とがあるわけで,要は必要に応じて使い分ければ良い話です。特にほかの電子情報と関連付けて利用する,つまりGISの基盤として電子地図は不可欠なものです。が,とりあえず私の使い方では紙地図の方が使いやすいことが多い…という,それだけのことです。
[80536] 2012年 4月 18日(水)21:18:24【1】オーナー グリグリ
地図の縮尺スケールについて
[80533] Issieさん
そして,この縮尺が自由に変更できるという点。これも紙地図にはない電子地図の極めて優れた特長ですが,使う場面によってはむしろ致命的な欠陥になる。
つまり,たとえば「4cmで1km」という“縮尺の概念”が通用しないわけで,地図の上で距離や面積を把握することが非常に困難です。
これは同感です。Google Mapなどのネット地図を使っていて不便を感じるのは、直接的な距離感がつかみづらいところです。紙の地図では必ず縮尺表示とともに距離スケールが付いているので距離感がつかめるのですが、ネットマップではスケール表示がありません。

スケール表示がない理由としては、ネット地図は正距図法ではないからなんですかね。ネット地図は縦スクロールや横スクロールで経緯度が変わらないようにメルカトル図法になっているように思うのですが(確認はしていません)、そのため、緯度の違いによる距離差が比較的大きくなると思います。見た目では同程度の距離でもMapionの距離測で計ってみると大きな差を感じることがあります。このためスケール表示がないのかなと思ってしまいます。スケールをフローティング表示にして緯度によってダイナミックにスケールを調整することも出来ると思うのですが。

ところで、一般の道路地図などは正距図法なんですよね。スケールを出していることからの類推ですが。

と思って軽く調べてみたのですが、一般の地図帳は国土地理院の地形図や国土基本図を利用しているんですね(常識ですか?)。で、国土地理院の地図は縮尺によって図法が違うみたいですね。大きな縮尺は距離誤差が目立たないので(?)横メルカトル図法で、小さな縮尺では距離誤差を押さえるために(?)正角割円錐図法なのですか? 地図センターのこんなページがありました。専門ではないのでよくわかりません。
[80538] 2012年 4月 19日(木)00:17:12【4】Issie さん
ややこしい図法の話
[80536] グリグリ さん
スケール表示がない理由としては、ネット地図は正距図法ではないからなんですかね。

「縮小された“ものさし”そのもの」という意味での“スケール”は,電子国土基本図でも,たとえば Googleマップ でも画面上に表示はされていますね。けれども,「縮小率」という意味での“スケール”は表示されていません。
これは,使う側の環境によってディスプレー画面やプリンタの解像度が違えば“同じ範囲”を表示したり印刷したりしてもその大きさが違うわけで,「結果物の縮小率=縮尺」を指定することができないせいではないか,と考えているのですが,…違うかな?

以下,たぶん地図投影法に関しては専門の方もいるのではないかと思うし,たとえば「正角割円錐図法」なんて言葉が出てくると私も正直ついていけないのですが,とりあえず高校の「地理」の時間で扱うような範囲内で…。

まず,メルカトル図法は「正距図法」ではありません。
たとえば,メルカトル図法で描かれた長方形の古典的な世界地図を考えましょう。
この地図にも普通,“ものさし”“縮小率”双方の意味での「縮尺」が両方とも記載されています。けれども通常,そのものさしと縮小率の数字が表しているのは“赤道上”のそれです。つまり,長さ4万キロの赤道をどれだけ縮小しているかを表しています。
しかし,地球上にひかれている緯線のうちで長さが4万キロもあるのは赤道=緯度0度線だけです。たとえば,北緯60度線の長さは2万キロしかありません(cos60度 は 0.5 ですね)。けれども地図上の緯線の長さは赤道と同じです。ということは,実際の緯線の長さの2倍に引き伸ばされているわけで,距離が「正しく」表されていません。通常,普通のメルカトル図法の地図で距離が正しく表されているのは赤道上の任意の2地点間だけで,ほかの2地点間の距離を正しく表すことができず,したがって,メルカトル図法は「正距図法」ではないのです。
ではメルカトル図法で何が「正しい」かというと,「角度が正しい“正角図法”」に分類されます。この「角度が正しい」というのをすぐに頭に入るように説明するのはとても難しいので省略して結果だけ言えば,「地球上に同じ大きさの小さな円がたくさんあると仮定した場合、正角図法で投影された地図上でも全ての円がほぼ真円で表される」という地図です。つまり,狭い範囲であれば「形が正しく」描かれる,という性質を持っています。
ところが,普通のメルカトル図法では「赤道上の距離が正しく表される」ように描かれていますから,たとえば日本のように赤道から緯度にして30度も40度も離れている場所では距離や面積の歪(ひず)みが大きくなって正しく表示することができません(上の説明で言えば,“真円”が赤道付近よりも大きくなっている)。
そこで発想を変えて,地球を“横”にして赤道ではなく“特定の経線”上の距離が正しく表されるように描くようにした地図の作り方を「横メルカトル図法」と言います。基準の経線から離れて歪みが大きくなりそうになったら,別の経線を基準にすればいい。そうすれば,全体として歪みの小さい地図を広い範囲にわたって作ることができます。
繰り返しますが,メルカトル図法も横メルカトル図法も「正距図法」ではありませんから,距離も,したがって面積も正しく表すことができません(つまり,「正積図法」でもない)。でも,5万分の1,あるいは20万分の1くらいの縮尺で実際に刊行されている大きさの紙に収められる範囲内なら気になるほどの誤差は生じないので,「形が正しく」表示される(横)メルカトル図法がこの縮尺の地図には採用されています。

ところで,縮尺2万5千分の1でも5万分の1でも「地形図」の四辺のラインは緯線および経線です。作図の便宜上,この線は直線で引かれているようです。この5万分の1地形図を16枚貼り合せて4分の1に縮めたものが「20万分の1地勢図」ですが,この地図では元になった16枚の地形図の境目に黒い細実線が引かれています。そこで地図上の“東西方向”に引かれている線にものさしを当ててみてください。実はこの線が“直線”ではなく,少し湾曲した大きい半径の円周に近い線であることが分かります。
この大きさ(縮尺)になると,(横)メルカトル図法での歪みがそろそろ気になりだすのですね。つまり,メルカトル図法では無理が生じ始める。ついでに言えば,国土地理院が刊行している50万分の1“以下”の縮尺の地図は,使用している紙のサイズ自体がずっと大きいから,なおさら歪みの大きさが気になる。そこで,これらの縮尺の“小さい”地図はメルカトル図法よりも歪みが小さく広い範囲を表すことができる「正角円錐図法」の1つである「正角割円錐図法」が採用されています。
「円錐図法」というのは,“丸い地球”上の情報を紙に写し取るに当たって,その紙を円錐状に丸めてそれを地球にかぶせ,たとえば地球の中心に光源を置いてそれで紙に映った影をなぞって写し取った,と仮定して地図を描く方法です。
ちなみに,メルカトル図法は「円筒図法」。紙を筒状に丸めてそれで地球に巻き,紙に映る影をなぞって地図を描いています。古典的なメルカトル図法の世界地図は,この紙を赤道で地球に接するようにして巻いたもので,だから赤道上の距離(だけ)が正しい。横メルカトル図法は,それが赤道ではなくて“特定の経線”で,というわけです。
円筒図法であるメルカトル図法では,紙が地球表面に接している赤道または特定経線から離れるにしたがってその“紙面”が地球表面から急速に離れていきますから,歪みがだんだん大きくなります。
一方,地球(半面)にすっぽりとかぶさる“円錐”なら,円筒よりは広い範囲で地球表面に密着させることができます。つまり,それだけ歪みが小さい。北極または南極を上にして円錐をかぶせた場合,特に中緯度で円錐面が地球表面に近接するので,中緯度地方について歪みを小さく写し取ることができる。だから日本のような中緯度地域を広く描く場合に,この「円錐図法」が好んで用いられます(たとえば,新聞やテレビの天気図でも使われています)。そのうち,「角度が正しく」表されるように調整したものが「正角円錐図法」です。
この時,円錐を地球表面に密着させて特定の緯線(または地球を周回する線)で接するようにしたものを「接円錐図法」,円錐を地球表面に食い込ませて2本の線で地球表面と交わるようにしたものを「割円錐図法」と呼びます。円錐面と地球表面が近接する範囲が広い「割円錐図法」の方が歪みの小さくなる範囲が広いので,こちらを国土地理院が採用しているのでしょうね。円錐図法について詳しくは こちら をどうぞ。地図投影法一般については こちら地図投影法 のページで詳しく説明されています。

ところでこれは“紙の地図”の話。
ディスプレイ上の電子地図はまた少し違った投影のしかたをしているような気もするのですが,どうなんでしょうね。
[80540] 2012年 4月 19日(木)20:39:02futsunoおじ さん
電子地図の縮尺と図法
[80536] オーナー グリグリ さん
[80538] Issie さん

電子地図の縮尺は「ウォッちず」を例にするとの2万5千分1図というのは紙の2万5千分1図をシームレスでディスプレーに表示したものですが、このディスプレーの解像度(dpi)はどこでも同一ではないことから、目安として図の隅に「ものさし」があるのでしょう。

真の縮尺が言えない一番の理由は電子地図の図法の多くが円筒図法であることでしょう。これが国土全体をシームレスで、かつ画面の枠に沿って東西南北方向を表示できる図法になりますから。「ウォッちず」で見ると北の「宗谷岬」は南の「石垣島」より長さで30%大きく表示されており、計算上もこれに近い値になります。

電子地図には2点間の距離測定などの機能が備わっていたりするので正確な縮尺は必要でないともいえます。ただ北と南で表示サイズがあまりに異なると感覚的な違和感が生じますから、ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。
[80544] 2012年 4月 20日(金)09:39:40オーナー グリグリ
思い違い
[80536]
紙の地図では必ず縮尺表示とともに距離スケールが付いているので距離感がつかめるのですが、ネットマップではスケール表示がありません。
と書いたのですが、これは完全な思い違いでした。[80538] Issieさん、[80540] futsunoおじさんが指摘されているように、どのネット地図にも「スケール・ものさし」は付いていますね。第7回公式オフ会の[「3県境探訪ルート写真集」をMapion地図をベースに作った際に、しっかりスケールを貼付けていたりしたのに、何を思い違いしたのか。

[80538]のIssie さんの丁寧な説明はとても良く分りました。ありがとうございました。地図投影法はずいぶん昔に教えられた記憶はありますが、等距、正距、等角、円筒、円錐なんてあまり好きじゃない言葉が並ぶと、どうも苦手です。[80540]でfutsunoおじさんが書かれているように、ネット地図は円筒図法で、経度と緯度が垂直・水平になっていると考えて良いようですね。実際にGoogle Mapの最小縮尺の世界図はメルカトル図法に見えます。南極大陸が巨大です。

[80540] futsunoおじさん
電子地図には2点間の距離測定などの機能が備わっていたりするので正確な縮尺は必要でないともいえます。
2点間やルートの距離測定の機能は進化していて、確かに使いやすくなりつつあります。Yahoo!地図はほとんど使っていなかったのですが、リニューアルしてずいぶん使いやすくなったようですね。
ただ北と南で表示サイズがあまりに異なると感覚的な違和感が生じますから、ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。
この点についても、「スケール・ものさし」は、地図を垂直方向にスクロールすると連動して変化していますね。今まで気付いていませんでした。よく見て使っていない証拠です。となると、あとは物差しを画面上で当てるような機能と言うことになるのですが、これは2点間の距離測定の機能そのものですから、結局、私が[80536]で問題提起したスケール機能は単なる認識不足と言うことでした。お粗末。

#このあと所用があり本日休暇
[80545] 2012年 4月 21日(土)13:12:24【2】Issie さん
電子地図の図法
[80540] futsunoおじ さん
「ウォッちず」で見ると北の「宗谷岬」は南の「石垣島」より長さで30%大きく表示されており、計算上もこれに近い値になります。

[80544] グリグリ さん
「スケール・ものさし」は、地図を垂直方向にスクロールすると連動して変化していますね。今まで気付いていませんでした。

なるほど,これは私も気づいていませんでした。
参考までに,今では“旧版”になってしまった「2万5千分1地図情報」を見てみたら,こちらも「100m」スケールの長さが違いますね。つまり,これは“紙の2万5千図”をそのままスキャンして電子化したものではないということです。紙の地形図なら緯度によって100mの長さが違うはずがありません(ここが違ったら,紙地図のお約束の大前提が崩れ去ってしまいます)。
少し意外に感じましたが,考えてみれば当然で,今は地図の作成作業はかなり初めの方から電子化されているでしょうから,電子データ化された地理情報を紙地図の投影法に合わせて出力したものを製版・印刷しているのでしょう。

で,つまり,「ウォッちず」(電子国土基本図)の投影法(図法)は,紙の地形図のそれ(ユニバーサル横メルカトル図法)とは違うということです。
ご承知のように,紙の地形図の場合,どの地図も南北方向の緯度幅,東西方向の経度幅はすべて同じです(例外的に,はみ出るものもある)。だから,緯度が高い「宗谷岬」と緯度が低い「石垣島」とでは地図の“正味部分”の面積が違います。欄外の凡例とともに掲載されている“図の寸法”も,よく見れば上辺と下辺では長さが違う。つまり,地形図の図郭は“長方形”ではなくて“台形”。だから狭い範囲ならともかく,広い範囲にわたって地形図を隙間なく“同一平面”上に敷き詰めることはできないはずです(たぶん)。
それを電子画面上ではやっちゃっているのだから,同じ国土地理院の地図でも電子地図の図法は紙の地図のそれとは違うのでしょうね。

地図の上に緯線・経線が引かれていれば,それを頼りにどのような図法が採用されているかがある程度推測できるのですが,残念ながらそれが記載されていません。でも,恐らくはみなさんがおっしゃる通り,正軸の円筒図法(円筒の中心軸と地球の自転軸の方向が同じ)で投影されているのでしょう。たぶん,地図上すべての位置で緯線と経線が直交している。
けれどもそうすると,長方形に切り取った地図画面の上辺と下辺は緯線,左辺と右辺は経線となり,左辺と右辺の間の経度差は上辺でも下辺でも同じとなる。
しかし,実際は紙の地形図がそうであるように,上辺と下辺の長さ(距離)は違います。それが画面上では同じ長さで表示されているのだから,ここに既に「歪み」が現れています。逆に紙の地図の場合は,上辺・下辺の長さは実際と同じかもしれないけれど,そもそも図郭が“台形”であるということが,「歪み」そのものです。実際の地球上では緯線と経線は必ず直交しますから,図郭は“長方形”でなければなりません。でも,それを実現するのは不可能です。
つまりは,曲面上の情報を平面上に写そうとすれば必ずどこかに歪みが生じるわけで,わずか1枚の地形図や何平方ピクセル(?)かの電子画面上でもそれが既に始まっているのです。

とりあえず,北緯20度から45度の中緯度帯に位置する日本の地図であるなら,まだ我慢できる歪みかもしれません。けれども,高緯度地帯ではどうなんでしょうね。
最初の索引図として世界全体の小縮尺図を使うのならメルカトル図法のような円筒図法でも,とりあえずは構わない。
けれども,大縮尺で各地域の詳細な地図を描くのに,あるいはそれ以上に中程度の縮尺である程度広い範囲の情報を,あくまでも赤道上“だけ”が「正しい」正軸の接円筒図法を高緯度地方に適用し続けるのは,やはり不適切です。Google マップで北極“点”や南極“点”は記載できるのでしょうか。

[80540] futsunoおじ さん
ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。

だから本当は,縮尺の補正だけでなく,緯度帯や縮尺に応じて「適切な」投影法が選ばれる(あるいは“選べる”)システムがあってもいいかなと思います。実際のところ,コンピュータの中では緯度・経度の座標データを一定の計算に従って変換されたディスプレイ画面上の座標にプロットするという作業をしているのでしょうから。

…既に,そういうシステムになっているのかもしれませんが。
[80547] 2012年 4月 21日(土)20:16:43hmt さん
よく知らないまま利用していた電子地図 (1)序論
デジタル地図論議を興味深く拝見しております。今回の 電子地図スレッド を読んで 私が改めて関心を寄せたのは、電子地図の投影図法です。

実は、私も Issie さん[80538]
ディスプレイ上の電子地図はまた少し違った投影のしかたをしているような気もするのですが,どうなんでしょうね。
と同程度の認識を抱いていました。

この認識を、もう少し詳しく説明すると、次のようになります。
「紙の地図」では、用紙サイズ・表示すべき地域・事象に応じて適切な「図法」が選択される。
「電子地図」の本質は経緯度で蓄積されたデータだから、これを画面に示して我々の視覚に訴えるようにする手続(ソフトウェア)の中に「図法」が含まれているはずである。

電子地図が便利に使われるのは、多くの場合 狭い範囲の詳細な情報、つまり 紙の地図の世界で言えば「大縮尺図」なので、1枚の画面の中で地球の曲面による歪が問題になる程度は無視できるだろう。
しかし、電子地図はスクロールによって広範囲をカバーしている。一度に表示する画面内では問題にならなくても、シームレスを売り物にしている電子地図で、「図法」が問題にならぬ筈はない。

だいたいこの辺で思考が停止して、それ以上を深く考えることはしていませんでした。

[80540] futsunoおじ さん
真の縮尺が言えない一番の理由は電子地図の図法の多くが円筒図法であることでしょう。これが国土全体をシームレスで、かつ画面の枠に沿って東西南北方向を表示できる図法になりますから。

この記事で「円筒図法」というキーワードが出てきたので、これを「電子地図」と組み合わせて検索してみたら、日本デジタル道路地図協会(DRM)という団体による 地域メッシュコードに関する解説3 に行き当たりました。
ここには なかなか有用な説明があったので、これを紹介しながら、「よく知らないまま利用していた電子地図」に関連したコメントを綴ってみます。
[80548] 2012年 4月 21日(土)20:30:54【1】hmt さん
よく知らないまま利用していた電子地図 (2)円筒図法 つまり 等間隔の経線だが…
測量の基準を現在の「世界測地系」に変更した 測量法改正が施行されたのは 2002年4月1日でした。
満10年を経過したところだったのですね。

地図の規格に関連して「地域メッシュコード」がJIS X0410として定められていますが、これも自動的に世界測地系によるものに移行しました。ところが過去に販売された地図製品のサービスなどのために、日本測地系に準拠したデータの更新が必要なケースがあり、10年間限定の追補規格が設けられましたが、これも先日失効しました。
前回言及したサイトは、実はこの追補規格失効にあたり日本デジタル道路地図協会(DRM)が、そのHP上に公開した 解説 の一部でした。

「地域メッシュコード」は、[78328][78644]などで言及した 『地名集日本2007』 にも使われています。
メッシュ・コードは、行政管理庁告示第143号(1973年7月12日)に基づいた標準地域メッシュ(第一次地域区画)で、20万分1地勢図の区画に相当する。
具体的に説明すると、20万分1地勢図「東京」に相当する区画のメッシュコードは「5339」です。
「53」は赤道から40分刻みで北に数えて【0から数える】53、つまり北緯35度20分~36度を意味します。
「39」は東経100度から1度刻みで東に【0から】数えて39、つまり東経139度から140度の意味です。

このような地域メッシュは、緯度で40分・経度で1度というような一定間隔の経緯度(2次メッシュは緯度5分・経度7.5分で、25000分の1地形図の区画)で区画されているので、北に行くほど東西の実距離は短くなっています。

このことは、地球が丸いことから誰でも理解しているし、多円錐図法などで描かれた紙の日本全図が北の方では経線の間隔が狭まっていることでも実感されます。
では、電子地図はどうなっているのか? その答えが「円筒図法」です。

地軸と一致する中心を持つ円筒に投影して切り開いて平面にする。経線は等間隔の縦線で並ぶ。これが基本。説明図
[80544]にリンクされた Google Mapの最小縮尺の世界図、巨大なグリーンランドと無限の拡がりを持つ南極大陸。
まさにメルカトル図法は円筒図法の代表です。

ところが、Google Mapをこんな広範囲の地図として利用することは、まずありません。
1000km2もある大きな市の全域を示す機会も殆んどないのですが、試みに 札幌市 1121km2と 田辺市 1027km2とを比較してみました(市名で検索すると、その領域がピンクで示されます)。
スケールが違っていたら、例えば左下に出る標尺が「10km/5マイル」を示すように調節してください。

経線が等間隔の円筒図法ならば、2つの市の緯度の違いは地図面積で約 29%になります。実面積の違い 9%との相乗で札幌市の地図は田辺市より4割以上大きな姿で画面に現われる…という予想は、見事に外れました。
地図上の 10km標尺の長さを同じに揃えることはできず、市の面積も違うので概略の比較になりますが、札幌市は田辺市とはほぼ同じ面積の市であることが実感されました。

なぜ、こうなったのか?
それは「1枚の紙」に書いたメルカトル図法と、シームレスにつながっているが、実際に目にする画面はその一部分であるという違いが 巧みに利用されているからだと思われます。

つまり、スクロールによって南北移動する場合には、地球上の位置(緯度)に応じて地域メッシュの横幅(つまり経線間隔)が自動的に調節されるという仕組みをプログラムに組み込み、本来は「等間隔の経線」、従って「正積」という望ましい性質から 大きく外れてしまう 「円筒図法の欠点」を 事実上克服していると思われます。

[80540] futsunoおじ さん
北と南で表示サイズがあまりに異なると感覚的な違和感が生じますから、ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。
が、既に実現しているということではないでしょうか。

DRMの「解説3 地域メッシュコードの特徴」にも、以上のことに対応する記載がありました。
要点だけ引用
------------------
ガイド2 電子国土は、ヨコ(東西)の間隔は一定で、タテ(南北)の間隔が北へ行くほど大きくなる円筒図法という地図投影法が用いられています。(中略)北へ行くほどタテ(南北)の間隔が長くなる円筒図法の特徴が表れています。
ガイド4A グーグル地図は、電子国土と同じく、円筒図法という地図投影法が用いられています。
ただし、(中略)電子国土と違い、右上【左下】に表示されている標尺が、襟裳岬も足摺岬も同じ表示縮尺になっているからです。次のヤフー地図も同様です。
------------------
[80554] 2012年 4月 23日(月)16:49:45hmt さん
よく知らないまま利用していた電子地図 (3)縮尺問題 Mapionの事例で検討
[80533] Issie さん
たとえば「4cmで1km」という“縮尺の概念”が通用しないわけで,地図の上で距離や面積を把握することが非常に困難
[80540] futsunoおじ さん
「ウォッちず」で見ると北の「宗谷岬」は南の「石垣島」より長さで30%大きく表示されており、計算上もこれに近い値になります。

“縮尺変更自由自在”は、地図利用者にとり恩恵大。“縮尺の概念”が薄れるという副作用?には目をつむりましょう。
それにしても、円筒図法そのままの「ウォッちず」では、長さで 30%も大きく表示されるというご指摘。
地図面積にすれば69%です。シベリアほど極端ではないにしても、わが日本も 南アジアから見れば「北の大国」に見える?

円筒図法を用いる電子地図では、縮尺が緯度の影響を受けるが、ソフトウエアによる画面上での補正が可能です。
しかし、[80548]で紹介した Google Mapでの事例は、札幌市と田辺市の地図を「同じ縮尺」で比較することができず、縮尺問題解決に着手していることは評価できるものの、まだ不完全な状態と思われました。

その点、Mapionは 縮尺問題を もっと上手に解決したように見えたので、少し検討してみます。

Mapionで特筆しておきたいのは、画面左下の標尺の長さが、10段階ある縮尺レベルのすべてに共通する長さ【PCの設定で異なりますが、私の画面では約27mm】になっていることです。

標尺の長さが、宗谷岬でも石垣島でも一定に保たれている ということは、Mapionにおいては 緯度に対応する縮尺調節が 完全にできている証拠であるように思われます。
Google Mapの場合は、同じ 10km標尺でも 札幌が 24mm、田辺が 22mmというように違う長さになっていました。

このように 縮尺問題を解決したかに見える Mapionの地図では、例えば「縮尺スケール 1/21000」というように、紙の地図で使い慣れた「縮尺表示」がなされています。
縮尺表示のレベルは、最大縮尺の 「1500分の1」から始まり、およそ3倍刻みで小縮尺の 「90万分の1」まで8段階。
それに加えて 150万分の1相当の「広域」、780万分の1相当の「全国」を加えた10段階です。
「2万1000分の1」は、地形図の「2万5000分の1」に近い縮尺として、紙の地図で把握していた距離・面積の感覚をそのまま活かして使えると言えるでしょう。

ここまではよいのですが、更に検討していたら Mapionの縮尺に 怪しい箇所があることに気がついてしまいました。
上記の “ Mapionは 縮尺問題を もっと上手に解決した” は買いかぶりだったかもしれないので、その事実を記して、皆さんの注意を喚起しておきます。

最初の疑点は、画面の左下に表示されている標尺の長さです。
縮尺にかかわらず標尺長さが統一されているのはよいことなのですが、画面上の長さは過小の疑いがあります。

私のPC画面上の標尺「27mm/700m」は 約25900分の1ですが、700mの 21000分の1ならば 33mmになるはずです。
そこで、「2万1000分の1」地図画面上で、ふじみ野市役所と同大井支所との実長を測ったら 116mm でした。地図
両者の距離は2574m【注】ですから、700mの標尺の長さは 約 31.5mmが正当で、やはり 27mmは過小でした。
【注】
[70290]でも紹介した国土地理院HPの 計算プログラム を使用。入力する経緯度はウオッちずで市役所と支所それぞれの主建物をダブルクリックして求めた。

2574mの距離が 私のPC画面上で その約2万2000分の1の 116mm に表示されたことにより、Mapionが公称する「2万1000分の1」という縮尺は、(この緯度では)ほぼ正しい縮尺であったことが確認されたとも言えます。
[80556] 2012年 4月 25日(水)16:05:45hmt さん
よく知らないまま利用していた電子地図 (4)縮尺に及ぼす緯度の影響
シリーズ電子地図 の第4回です。

仕組みがよくわからないまま便利に利用していた電子地図ですが、皆さんの論議 からの刺激を受けて、調べたり考えたりしたことを綴っています。

わかったのは 東西南北が正しく画面に表される 「正軸円筒図法」 に基づいているということ。
何故か 電子地図の画面には現れていませんが、経線は等間隔の平行直線に、緯線は経線に直交する平行直線になります。

丸い地面を無理やり円筒表面(切り開けば平面)に写すのが地図投影。無理を通せば どこかで 道理が引っ込む 結果になります。つまり、距離・面積・形・方位など地理要素のどこかに「歪み」が出るということです。

正軸円筒図法の場合、等間隔の経線と直交する緯線の間隔の取り方で、いろいろなしわ寄せの仕方ができます。

例えば北緯60度の緯線。その実際の長さは赤道の半分ですが、円筒図法の地図では 赤道と同じ長さに表されます。
経線間隔が2倍に広がっている北緯60度では、緯線の間隔も2倍に広げてしまえば、その地点での方位角や地物の形は正しく表示されます。
もちろん距離は2倍、面積は4倍になってしまいますが、世界の大部分は低緯度・中緯度ですから、高緯度における距離・面積の歪みには我慢しましょう。

メルカトル図法は、こんな考え方で成立しています。もちろん、16世紀以来の「海図」に広く使われたのは、これが角度の正しい図法であり、羅針盤を頼りにする時代の「等角航路」に利用できたためです。

[80538] Issie さんは、メルカトル図法を次のように説明しています。
「地球上に同じ大きさの小さな円がたくさんあると仮定した場合、…地図上でも全ての円がほぼ真円で表される」

“小さな円”だから“ほぼ真円”になるので、北緯約60度から83度以上にも及ぶ 巨大なグリーンランドの 形 ともなると、頭でっかちになってしまう メルカトル図法では正しい形になりません。

緯線間隔を調節すれば、円筒図法で面積を正しく表すもことも可能ですが、高緯度の形が極端に平べったくなってしまうので、普通に目にすることはありません。
地図帳などでよく見るミラー図法は、メルカトル図法に修正を加え 極までをカバーした円筒図法で、北極・南極はメルカトル図法の72度の1.25倍の位置に線で描かれています。

電子地図に戻ると、その真価が発揮される大縮尺図~中縮尺図では、画面内における縮尺の違いは無視できる程度になりますから、「形が正しく」表現されるメルカトル図法が適していることになります。

しかし、もちろん縮尺に及ぼす緯度の影響を無視してよいわけではありません。
[80540] futsunoおじ さん
「ウォッちず」で見ると北の「宗谷岬」は南の「石垣島」より長さで30%大きく表示されており、計算上もこれに近い値になります。
北と南で表示サイズがあまりに異なると感覚的な違和感が生じますから、ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。

これは、まことに電子地図のポイントを突いた発言だと思います。

縮尺は、「地図上の経線間隔:地球上の経線間隔」ですから、円筒図法地図上の経線間隔が一定であるメルカトル地図では、地球上の経線間隔の緯度変化に対応して縮尺が変ります。緯度φにおける経線間隔は赤道のそれの secφ倍(cosφ分の1)になります。

石垣島の緯度約24度20分、φ=0.4247ラジアン、 cosφ=0.9112
宗谷岬の緯度約45度30分、φ=0.7941ラジアン、 cosφ=0.7009

両地点のcosφの比は1.300で、電子国土化されたウオッちずにおいて見られた 30%の違いは、メルカトル地図の影響がそのまま現れているものと理解できます。
[80755] 2012年 5月 3日(木)18:03:33hmt さん
よく知らないまま利用していた電子地図 (5)「紙の地図の電子画像化」から「スクロール電子地図」へ
広い意味での電子地図は、電子化よりも前の時代に作られた「紙の地図」を、そのまま電子画像化 することによって、ネット上での利用を可能にする仕事 から始まったものと思われます。
文書に譬えるならば、電子化と言っても、テキストコード情報ではなく、画像情報として提供された地図です。

このような電子地図の一例を挙げると、[63890]で紹介された 『横浜市三千分一地形図』 があります。

1945年の日本占領に際して米軍が持ち込んだ1万2500分の1都市地図(1946)[58792]、少し後の25万分の1米軍地図(1954)[63024] なども落書き帳の話題になりました。
テキサス大学のサイト では、これらを含めて電子化された過去の日本地図画像を見ることができます。

土地条件図 は、伊勢湾台風(1959)による災害をきっかけに国土地理院で作成が始まり、現在は電子国土の一環として情報が蓄積され、ハザードマップ作成の基礎になっています。
現在の電子国土になる前に「紙の地図」として刊行された『土地条件図』は、在庫品の市販と並行してネットでも公開されています[73207]作成区域
後者も「紙の地図の電子画像化」作品です。

明治初期に作られた地形図の前身である『迅速測図』。これを利用した 関東地方の 「歴史的農業環境閲覧システム」(HABS) が開発され、当時の土地利用状況をネット閲覧することができます。[65091][65097]

これは、紙ベースの『迅速測図』をそのまま電子画像化したものでなく、GIS(地理情報システム)によって位置情報を介して現代の白地図に昔の情報を盛り込んだものです。従って、昔の地図を利用したものではありますが、「紙地図の限界」に制約されない、新しいスクロール地図に変身している点、特筆に値する存在です。

せっかく電子地図のことを語り始めた機会なので、限られた地域を紙の上に表現した昔の地図の電子版について、少し言及しました。

さて、今回のシリーズが対象にしている「Mapion」や「ウオッちず」など、現在利用されている電子地図サービス。
実は、その初期段階がどのようなものであったかについて、私も正確なことは書けないのですが、基本的には「紙の地図の電子画像化」という状態から出発したものであったと思います。
従って、1枚の地図がカバーする範囲には自ずから限りがありました。「ウオッちず」の場合、およそ2万5000分の1地形図を4分割した範囲毎のpngファイルが存在しており、隣接領域に移る時には別ファイルが呼び出されたように記憶します。

日本全土とか、極端な場合は外国までとか 広範囲に及ぶ移動を、スクロールなど「地図の境界」を感じさせないやり方で可能とするシステムが実現したのは、2005年にデビューした Google Mapsであったと思います。

Google Mapsについて言うと、2005年6月当時に地図が整備されていたのは、アメリカ・カナダなど一部の地域だけでした[72524]。地図との切替ができない日本において、この落書き帳で話題になったのは、空中写真画像(衛星画像と呼んでいました)でした。[42658]にリンクした Google Mapsを楽しむ

落書き帳は、翌月(2005年7月)になると 日本国内の地図が使えるようになったことを記録しています。
[43058] ゆう さん
以前は衛星画像だけだった日本国内が、ゼンリンの地図が表示されるようになってます。
これまでの地図サイトとは違う、軽快な図郭の移動が日本の大縮尺地図でもできるようになりました。
それから、地図や衛星画像の左下に縮尺目盛がつきました。

先にリンクした記事集にも、ドラッグ操作やスクロールという言葉が使われていました。
従来のファイル切替方式と違って、継ぎ目を感じさせない軽快な図郭移動で全国・全地球の中から望みの地域を画面に表示することができる「スクロール電子地図」が、この時に登場したものと思われます。

今回の電子地図論議の初期から問題になった「スケール」表示も、この時に登場しています。
しかし、南北方向へのスクロール移動に連動して「物差しが変る」という点については、[80540][80544]より前には 発言がなかったように思われます。

2005年11月の Yahoo!のスクロール地図登場を報じる記事[46695]に示されているように、Google以外の電子地図サービスるも次々に「紙の制約」から脱し、それは同時に空中写真画像その他の情報が利用可能な「GIS体制」に移行したことを示しているようです。

使いづらいよデジタル地図[80531]というように 現実には改善すべき問題点も存在すると思われます。
2011年7月末で終了が予定されていた「2万5千分1地図情報の閲覧」[77607]も、閲覧継続の御要望多数を理由として、「当面の間」のサービスが継続されています。
しかし、電子地図の大きな流れとしては、GIS体制への移行で進んでいるのが現実であることが感じられます。
基盤地図情報サイト  地理空間情報活用推進基本計画
[80800] 2012年 5月 8日(火)22:57:24【1】hmt さん
よく知らないまま利用していた電子地図 (6)「紙の限界」から地図を解放した電子化
電子地図については、昨年2月の電子国土正式運用と、最近の新聞記事とが契機となった 一連の記事 が、落書き帳にあります。

その実態や仕組みに注意を払わないまま、便利に利用していた電子地図ですが、上記一連の落書き帳記事に触発され、少し調査してみようとて書き始めたのが、シリーズ電子地図 で、今回は その第6回です。

電子化によって、地図は 「紙の限界」 から解放されました。

例えばスバールバル諸島のロングイヤービエンという町。「地球でイチバン北の町」[80241]です。
Googleマップで「Longyearbyen」【注】を検索したら、入江の南岸にピンクの領域が出ました。札幌市の事例[80548]と同様に、この町の行政区画の範囲を示した図であると理解できます。

ここで、Googleマップ画面左下に出ている標尺に記された距離と、縮尺の概略値との関係を記しておきます。

標尺長さ【私のPC画面上での値、以下同じ】は 実際には 13~28mmと区々なのですが、これを 約20mmつまり 1mの50分の1前後であると考えて縮尺の概略値を求めます。
上記の事例では、標尺に「5km」と記されていますから、この5000(m)という距離を 50倍した「25万」に近い値が、実距離と地図上の長さの比【縮尺】になります。
つまり、「5km標尺図」は「20万分の1クラスの中縮尺図」であると判断されます。

Googleマップは、1段階拡大する毎に2倍になりますから、3段階の拡大により 25000分の1クラスの地図【500m標尺図】になります。上記の事例では、北西の空港から通じる道路と 入江奥の市街地とが見えてきました。空中写真に切り替えると、見るからに寒々とした風景が展開しています。

更に2段階拡大した200m標尺図(7000分の1)では、行政府・郵便局・南端の学校などを確認することができました。
なお、地図の拡大操作自体は更に3段階先の5m標尺図まで可能でしたが、これは実用の域を越えています。

紙の地図帳では、25000分の1(1kmが40mm)クラスの大縮尺都市図が掲載されているのは、世界的に有名な大都市の中心部に限られていました。これは、地図帳に許される紙面の面積という制約から、当然のこととして受け止められていたことです。
ところが、電子地図では 文字通り「地の果て」にあるスバールバル諸島の町でさえ、個々の建物がわかる詳細さの地図と空中写真とを示してくれました。

一度に見ることができる画面の大きさは限られているが、ジャンプやスクロールにより画面を転換できる電子地図。
電子化により、物理的な画面の広さは限られていても、潜在的には、紙の地図では考えられなかった広さの画面を作り出すことができました。
画面の向う側に潜在している巨大な地図を実感するために、赤道の長さを計算してみました。

Googleマップは、全部で 18段階の縮尺があり、1段階毎に2倍の割合で変化します。
私達が慣れ親しんでいる 25000分の1地形図(1kmが 40mm)に近いものは、大きい方から6番目の縮尺で、東京付近の緯度では 500m標尺が 17.5mmの長さで画面上に示されています。
「1kmが 35mm」、つまり「縮尺 28600分の1」ということになります。
赤道では、少し小さい「1kmが 28.5mm」つまり「縮尺 35100分の1」になり、赤道 40000kmは 地図上で 1140m。

横幅1000m以上もある世界地図! まさに「紙の限界」から解放された電子地図ならではの大きさです。
大きい方から6番目の縮尺でこのサイズです。最大縮尺では、計算上この値の32倍となります。

「紙の限界からの解放」の成果は、もちろん「大縮尺世界図を可能にした巨大画面」だけではありません。
特筆に値するのが、自由自在な縮尺変更です。
大縮尺図で詳細を調べることができる一方、縮小して広域の全体像を把握するのも容易。その恩恵は多大です。

その他、地図を入手する手間やコスト、保管場所、取扱いなど「紙の限界」からの解放は、多くの利益を利用者にもたらし、地図の世界に新風を吹き込んだと言えるでしょう。

【注】
Googleマップ日本語版には、ロングイェールビーンと記されていました。
紙の壁(紙の限界)から解放されても、言葉の壁が存在するので、日本語による外国地名検索は要注意。
[80822] 2012年 5月 11日(金)22:03:11hmt さん
よく知らないまま利用していた電子地図 (7)高緯度での表示拡大を再検証
[80800]では Googleマップを検索して、北極海にある炭鉱町「ロングイェールビーン」の中縮尺図を得、こんな「地の果て」でも拡大して大縮尺図の情報を得ることができる様子を確認しました。

最初の中縮尺図から、逆に3段階縮小した「50km標尺図」にすると、スバールバル諸島の主島である スピッツベルゲン島の全体図 が見えます。形も面積も九州島を思わせる島ですが、人口は僅かに2000人台[80241]。落書き帳でこの島が最初に登場した話題は、インターネットドメイン「.sj」の存在[40317] でしたが、実際にはスバールバル独自ドメインは 不使用の方針 となっています。

この島はおよそ北緯76~80度にあり、「50km標尺図」の長さ 27.2mmから縮尺を計算すると 184万分の1です。
この図を南東にズズーとスクロールすると、ノバヤゼムリャ、バイカル湖を経て 日本 が現れます。
ところがこのスクロール操作の結果、日本付近では「200km標尺図」に変っています。標尺の長さは 27.3mmと、殆んど変わらないのに、それが表す距離は約4倍になったわけです。縮尺に換算すると 733万分の1で、スピッツベルゲン島とほぼ同じ面積の九州は、ずっと小さな姿になっています。

この試みによりはっきりと示された緯度による縮尺の違い。
高緯度で拡大表示される程度を定量的に確認する目的で、赤道付近から北極圏までいくつかの地点を選び、 Googleマップの標尺データから 赤道での値に対する伸びを求めて比較しました。

地名緯度cosφ----G標尺(mm)Gmm/100kmG伸び secφ対比地物
(赤道)0度1.000200km(22.3mm)11.151.001.00ニューブリテン島3.65
東京35度40分0.812200km(27.3mm)13.651.221.23九州3.67
バイカル湖53度0.602100km(18.5mm)18.501.661.66バイカル湖3.15
ノバヤゼムリャ72度0.30950km(18mm)36.003.233.24南島3.33
スバールバル78度13分0.20450km(27.2mm)54.404.884.90スピッツベルゲン島3.90

表で示したように、100kmに相当する画面上の長さ【Gmm/100km】の相対値【G伸び】は、メルカトル図法の理論値である緯度の正割(余弦cosφの逆数)【secφ】と一致することが確認できました。

参考までに、それぞれの地点付近にある同程度の面積(万km2)の地物を、表の最後の列に記しておきました。スクロールと同時に、緯度による大きさの違いを実感することができればと思います。

実は、今回と同じような高緯度における拡大表示の検証は、[80548]で試みていました。
その際は、面積(約100km2)が近い札幌市と田辺市とを同じ 10km標尺図で比較し、次のように記しています。
“地図上の 10km標尺の長さを同じに揃えることはできず、市の面積も違うので概略の比較になりますが、札幌市は田辺市とはほぼ同じ面積の市であることが実感されました。”

赤道から北極圏までを定量的に再検証した今回の結果から反省すると、前回の試みは緯度の選択や画面上の大きさの評価に甘いところがあり、誤った結論を導いてしまったようです。
従って、[80540] futsunoおじ さんに対するレスの部分
>ソフトウエア上で表示する緯度に連動した縮尺補正機能があってもいいと思います。
が、既に実現しているということではないでしょうか。
も、誤っていました。お詫びして、このレスは撤回いたします。

[80548]の最後に書いた部分も、DRMの解説3ガイド4Aの記載を誤解したためと思われます。
[81096] 2012年 7月 14日(土)09:55:48オーナー グリグリ
Google Mapの自治体範囲表示
すでに気づいておられた方もいらっしゃると思いますが、グーグルマップの検索で自治体名を指定すると、その自治体の領域が薄赤色で囲まれた状態で表示されます。例えばこんな感じです。この表示は、自治体のさらに下位レベルでも行われます。

石川県加賀市吉崎町
福井県あわら市吉崎

上記は自治体越えの地名からの事例ですが、地名コレクションの地図データリンクに有効に使えるかもしれません。なお、範囲表示が行われるのは、地名検索結果だけでなく、左メニューの住所リンク(例:日本 > 石川県 > 加賀市)から表示する場合にも表示することができます。表示を消したい場合は、右上のプルダウンメニューの住所ラベルを非表示(チェックを外す)にします。もっと言えば、この住所ラベルを追加してチェックを入れれば、何個でも同時表示もできるようになります。

このサービスですが、ネットで調べてみると、今年の1月20日には開始していたようです。

ところで、この範囲表示ですが、左メニューの住所をどんどんドリルダウン(階層を下げていくこと)していくと、最後には番地範囲まで明示してくれます。住所データによってはうまく表示されない場合もあるようですが、私の場合は、丁目、号、番地まできちんと表示され、最後にはしっかりストリートビューまでサイドメニュー欄に表示されました。これはちょっと怖いかもしれません。

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