電子地図については、昨年2月の電子国土正式運用と、最近の新聞記事とが契機となった
一連の記事 が、落書き帳にあります。
その実態や仕組みに注意を払わないまま、便利に利用していた電子地図ですが、上記一連の落書き帳記事に触発され、少し調査してみようとて書き始めたのが、
シリーズ電子地図 で、今回は その第6回です。
電子化によって、地図は 「紙の限界」 から解放されました。
例えばスバールバル諸島のロングイヤービエンという町。「地球でイチバン北の町」
[80241]です。
Googleマップで「Longyearbyen」【注】を検索したら、入江の南岸にピンクの領域が出ました。札幌市の事例
[80548]と同様に、この町の行政区画の範囲を示した図であると理解できます。
ここで、Googleマップ画面左下に出ている標尺に記された距離と、縮尺の概略値との関係を記しておきます。
標尺長さ【私のPC画面上での値、以下同じ】は 実際には 13~28mmと区々なのですが、これを 約20mmつまり 1mの50分の1前後であると考えて縮尺の概略値を求めます。
上記の事例では、標尺に「5km」と記されていますから、この5000(m)という距離を 50倍した「25万」に近い値が、実距離と地図上の長さの比【縮尺】になります。
つまり、「5km標尺図」は「20万分の1クラスの中縮尺図」であると判断されます。
Googleマップは、1段階拡大する毎に2倍になりますから、3段階の拡大により 25000分の1クラスの地図【500m標尺図】になります。上記の事例では、北西の空港から通じる道路と 入江奥の市街地とが見えてきました。空中写真に切り替えると、見るからに寒々とした風景が展開しています。
更に2段階拡大した200m標尺図(7000分の1)では、行政府・郵便局・南端の学校などを確認することができました。
なお、地図の拡大操作自体は更に3段階先の5m標尺図まで可能でしたが、これは実用の域を越えています。
紙の地図帳では、25000分の1(1kmが40mm)クラスの大縮尺都市図が掲載されているのは、世界的に有名な大都市の中心部に限られていました。これは、地図帳に許される紙面の面積という制約から、当然のこととして受け止められていたことです。
ところが、電子地図では 文字通り「地の果て」にあるスバールバル諸島の町でさえ、個々の建物がわかる詳細さの地図と空中写真とを示してくれました。
一度に見ることができる画面の大きさは限られているが、ジャンプやスクロールにより画面を転換できる電子地図。
電子化により、物理的な画面の広さは限られていても、潜在的には、紙の地図では考えられなかった広さの画面を作り出すことができました。
画面の向う側に潜在している巨大な地図を実感するために、赤道の長さを計算してみました。
Googleマップは、全部で 18段階の縮尺があり、1段階毎に2倍の割合で変化します。
私達が慣れ親しんでいる 25000分の1地形図(1kmが 40mm)に近いものは、大きい方から6番目の縮尺で、東京付近の緯度では 500m標尺が 17.5mmの長さで画面上に示されています。
「1kmが 35mm」、つまり「縮尺 28600分の1」ということになります。
赤道では、少し小さい「1kmが 28.5mm」つまり「縮尺 35100分の1」になり、赤道 40000kmは 地図上で 1140m。
横幅1000m以上もある世界地図! まさに「紙の限界」から解放された電子地図ならではの大きさです。
大きい方から6番目の縮尺でこのサイズです。最大縮尺では、計算上この値の32倍となります。
「紙の限界からの解放」の成果は、もちろん「大縮尺世界図を可能にした巨大画面」だけではありません。
特筆に値するのが、自由自在な縮尺変更です。
大縮尺図で詳細を調べることができる一方、縮小して広域の全体像を把握するのも容易。その恩恵は多大です。
その他、地図を入手する手間やコスト、保管場所、取扱いなど「紙の限界」からの解放は、多くの利益を利用者にもたらし、地図の世界に新風を吹き込んだと言えるでしょう。
【注】
Googleマップ日本語版には、ロングイェールビーンと記されていました。
紙の壁(紙の限界)から解放されても、言葉の壁が存在するので、日本語による外国地名検索は要注意。