飛地・入会地等の表記方法について
[73436]拙稿に関して
[73447] okiさんからご意見をいただいていましたが、
[73497]拙稿を受けてさらに
[73753] むっくんさんでご意見をいただきました。
okiさん、むっくんさんに共通するのは、
★「従前の村の本体(主たる地域)の異動をわかりやすくする。表記上は、『本体』と『一部』とは明確に区別する」
ということに尽きるようです。これには、
[73497]拙稿でも述べたように、私自身も基本的には異論はありません。
[73497]拙稿で触れた、
将来の市区町村変遷情報の検索等のプログラム化・データベースとしての機能の活用
については、今後の
市区町村変遷情報の発展方向として重視しているのですが、具体化した際の微調整で済むと推測されることから、その時点での対応とし、現在の
市区町村変遷情報の充実及びそれに付随しての検討課題の洗い出しとの観点で、まずは実行してみようと思います。懸念は当面ないものと思います。
>グリグリさん、でるでるさん、こう判断して試行してみます。将来のデータベース構想と整合しない面があれば、調整したいと思います。
お二方から、いろんな提言をいただきました。それを受けて、まずは見本として、香川県の
市区町村変遷情報の編集作業を行ってみました(
市制町村制施行時、
市制町村制施行時以降)。市制町村制施行時の廃置分合の根拠は、
M22.12.12.28付け(香川)県令第84号です。それ以降の廃置分合も、昭和20年までは香川県立図書館で香川県報(公報)の香川県告示のマイクロフィルムを閲覧しコピーして持ち帰り、S22.5.3以降の官報に搭載されているものは
官報情報検索サービスにより自治省告示等を確認しています。その他にも、適宜資料を参考としています。
以下にこれまで議論されてきた内容を反映してみた例を示します。
○市制町村制施行時(M23.2.15)の異動
(1)「飛地」と県令に明記されている例
・・・なし
(2)一部が他の市町村に含まれることになる例
・香川郡東浜村(本体は
香川郡東浜村へ、一部は
高松市へ)
・香川郡中村(本体は
香川郡栗林村へ、一部は
高松市へ)
・香川郡出作村(本体は
香川郡多肥村へ、一部は
香川郡百相村へ)
・山田郡高野村(本体は
山田郡坂ノ上村へ、一部は
山田郡三谷村へ)
・大内郡湊村(本体は
大内郡白鳥村へ、一部は
大内郡松原村へ)
・那珂郡津森村(本体は
那珂郡六郷村へ、一部は
那珂郡丸亀町へ)
(3)二分割される例
・三野郡本大村(川西と川東に二分割)
(川西は
豊田郡一ノ谷村大字本大を経て
観音寺市本大町(
地図)
(川東は
三野郡本山村大字本大、
三豊郡豊中村大字本山(地番に乙を付す)、
三豊郡豊中町(同)を経て
三豊市豊中町本山(地番に乙を付す)(
地図)
○市制町村制施行時以降の異動
(1)「飛地」と県告示等に明記されている例
・・・なし
(2)一部が他の市町村に含まれることになる例
・S30.1.1付けで綾歌郡川津村の本体が
坂出市へ、一部が
綾歌郡飯野村へ(川津村消滅)
・S30.4.10付けで三豊郡紀伊村の本体(大字丸井,大字福田原及び大字青岡)が
三豊郡大野原町へ、一部(大字木之郷)が
観音寺市へ
・S30.5.3付けで綾歌郡飯野村(本体)が
丸亀市へ、綾歌郡飯野村(一部)が
綾歌郡宇多津町へ(飯野村消滅)
・S33.3.31付けで仲多度郡象郷村(大字上櫛梨の一部、大字下櫛梨の一部)が
善通寺市へ、仲多度郡象郷村(大字苗田の全部、大字上櫛梨の大半、大字下櫛梨の大半)が
仲多度郡琴平町へ(象郷村消滅)
(3)二分割される例
・・・なし
(4)その他の例
・S24.1.1付け三豊郡観音寺町の一部(大字伊吹)が分立して
三豊郡伊吹村発足
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市制町村制施行時以降の異動で、(2)の(3)の違いは微妙ですが、香川県では(3)は該当なしと判断しました。
三豊郡紀伊村は、M23.2.15に三野郡 丸井村, 福田原村, 青岡村, 木之郷村 の4村の合併。S30.4.10付けの廃置分合で、大字数では「三豊郡大野原町:観音寺市=3:1」なので、「紀伊村の本体は大野原町へ」「紀伊村の一部は観音寺市へ」という「判断」。現在はすべて観音寺市で、観音寺市大野原町丸井、観音寺市大野原町福田原、観音寺市大野原町青岡及び観音寺市木之郷町
(参考地図)。
綾歌郡飯野村は、M23.2.15に鵜足郡 東分村, 西分村, 東二村 の3村の合併。S30.5.3付けの廃置分合で、大字西分及び大字東二はすべて丸亀市へ。大字東分は「丸亀市:綾歌郡宇多津町=6:4」くらいの面積比で2市町に分かれ、大字数も鑑みてあわせて「丸亀市:綾歌郡宇多津町=2.6:0.4」くらいなので、「飯野村の本体は丸亀市へ」「飯野村の一部は宇多津町へ」という「判断」。現在は丸亀市飯野町東分、丸亀市飯野町西分、丸亀市飯野町東二及び綾歌郡宇多津町大字東分
(参考地図。
象郷村の例は、さらに複雑な例です。
(
那珂郡象郷村は、M23.2.15に従前の苗田村,下櫛梨村,上櫛梨村が合併して発足し、それぞれ旧村名が象郷村の大字となりました。そして、S33.3.31付けの廃置分合です。
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● 総理府告示 第七十一号
市町村の廃置分合
地方自治法第七条第一項の規定により、香川県仲多度郡象郷村を廃し、その区域のうち次の区域を琴平町に、その他の区域を善通寺市に編入する旨、香川県知事から届出があつた。
右の廃置分合は、昭和三十三年三月三十一日からその効力を生ずるものとする。
昭和三十三年三月三十一日
内閣総理大臣 岸 信介
仲多度郡琴平町に編入する区域
仲多度郡象郷村
大字苗田、
上櫛梨字上村、久保、木ノ股、楠、塞、土福、小路、大歳、薬師、
川西 1453甲の1から1454まで、1455の4、1455の6から1455の10まで、1459の2、1463の1から1463の6まで、1463の90、1463の17、1463の18、1463の21、1463の22、1463の25、1463の26、1464、
下櫛梨字北川、堀池、山南、山根、元日、馬場西、
船磐 277から345まで、351、352の1、353、355から363まで、365の1、366の1、367の1、1,490の2、1,490の5から1,490の19まで、1490の22から1490の25まで、
松ノ内 758の2から758の5まで、775の1から779の3まで、781から784まで、795、797から840まで、
川原 841の1から845の3まで、907から908の3まで、910から922の2まで、
平石 923甲から927の1まで、927の3から930まで、952から1040の2まで、
泉田 1291から1295まで、1308の1から1321まで、1325から1339の3まで、
上新田 1340の1から1340の7まで
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原文縦書きですが、適宜改行を補ったり、「一、四五三」との表記の地番を「1453」とする等見やすく補正しました。
#地番区域が小字単位ではなく大字単位であることもよくわかります。
さすがに
市区町村変遷情報でこの地番を列挙することは適切ではないので、
仲多度郡琴平町の詳細情報では、これを簡略化して、
象郷村の一部:大字苗田、大字上櫛梨字上村、久保、木ノ股、楠、塞、土福、小路、大歳、薬師、川西の一部、大字下櫛梨字北川、堀池、山南、山根、元日、馬場西、船磐の一部、川原の一部、平石の一部、泉田の一部、上新田の一部
としていました。
つまり、再度整理すると、・・・
・大字苗田はすべて琴平町へ(琴平町大字苗田)。
・大字上櫛梨の大半は琴平町へ(琴平町大字上櫛梨)、一部は善通寺市へ(善通寺市櫛梨町)。
・大字下櫛梨の大半は琴平町へ(琴平町大字下櫛梨)、一部は善通寺市へ(善通寺市櫛梨町)。
参考地図は
こちら。
総理府告示だけを見ると、大字上櫛梨と大字下櫛梨は、本体(大半)が善通寺市となったようにも解釈できますが、実態は上記地図のとおりで、琴平町が主です。
象郷村は、大字単位で見ると異動先は「善通寺市:琴平町=0.2:2.8」くらいであり、象郷村の本体は琴平町へ編入されたと判断します。
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三豊郡紀伊村、綾歌郡東分村、仲多度郡象郷村はすべて「本体」「一部」パターンと判断しましたが、象郷村の例では、総理府告示で地番を表示して例示した方が「本体」で、残余が「一部」に相当するものでした。こういう調査をするのは、全国的にはなかなか大変です。しかし、どこかで線を引かねばなりません。役場の所在地で判断するのも一つの方法ですが、判断材料としては弱いですし、調査自体が困難です。
上記に述べたような手法で、
市区町村変遷情報の編集作業を全国展開をしてよいものかどうか。しばし、他府県への反映は保留し、皆様のご意見・ご感想をお伺いしたいと思います。
市区町村変遷情報の編集作業については、自明・唯一の「正しい」方針というものは存在せず、正確で、わかりやすく、利用しやすいものを追求して試行錯誤しているのが現実です。今後とも、皆様のご意見をお待ちしております。