[11821]TACO さん
実際は政令指定都市の条件はどのようなものなんですか?
[11822]夜鳴き寿司屋 さん
実際には80万人以上の都市にならないと政令指定都市になった実績しかなく(中略)
現在では合併した場合には特例として70万人以上でも政令指定都市になれる
少し、補足させてください。以前
[11799]でも書いたとおり、中核市の場合とは異なり、
法律上、政令指定都市の要件を明確に規定している条文はありません。
政令指定都市の権能について定めている条文である地方自治法第252条の19に、
「政令で指定する人口五十万以上の市‥」とあるのが、唯一要件っぽいのですが、
実際に人口50万以上のどの市を指定するかは、政令に委ねられているため、
中核市などの場合とは異なり、人口50万人を超えていても当然に指定されるわけではないのです。
では、実際には政府は、どのような判断基準で、指定するかどうかを判断しているのでしょうか。
広島市の政令指定都市移行の担当職員が、1972年6月に、当時の自治省行政課長から聞いた説明では、
(1)国勢調査人口100万人を一応の目安としていること。
(2)都市の規模、機能等が大きく、他の都市との区別が判然とすること。
(3)関係団体(特に県関係)の意見が賛成であること。
の3点が基準として示されていたとのことです。
(広島市総務局市史編纂室編『政令指定都市への歩み』(1983年)による)
政令指定都市=大都市=100万都市 なのだと、私は子供の頃、思い込んでいたのですが、
政府の基準も、こうした感覚に近かったのですね。
もっとも、福岡市の人口は、
政令指定都市移行直後の国勢調査(1975年)では100万人を超えていましたが、
指定直前の国勢調査(1970年)では85万人程度でしたので、
「人口100万人」は、あくまでも目安ということなのでしょう。
ところが、この判断基準は、千葉市が政令指定移行を目指して調査した際には、もっと細かくなっています。
(1)人口はおおむね100万程度であること。
(2)人口密度は2000人/k㎡はあること。
(3)第1次産業就業人口が全就業人口の10%以下であること。
(4)都市的形態・機能を備えていること。
(5)行財政能力を備えていること。
(6)その都市の希望があり、所在府県の意思と合致すること。
(7)その他地域的一体性があること等。
といった基準が挙げられていたようです。
(千葉市企画調整局・(財)地方自治協会『大都市における都市機能に関する調査研究』(1983年)による)
広島市が、指定を受けようとする際に、人口が思うように増えないという状況の中で、
ブロックの中心都市として既存の政令指定都市に見劣りしない中枢管理機能が集積している都市は、
人口が100万に多少足りなくても、指定されていいのではないか という都市機能を重視した主張をし
これに対応して、実際に、人口規模としては80万人台での指定がなされることとなったために、
都市機能を重視した形で、基準が精緻化されたのでしょう。
けれども、都市機能はともかくとして、福岡市・広島市と、人口80万人台での指定が続いたことが、
結果として人口のハードルを80万人程度にまで引き下げる圧力となり、
千葉市も、指定直前の国勢調査人口83万人程度で、指定を受けています。
このため、一般に、人口80万人というのが要件とみなされるようになったのでしょうね。
でも、たとえ一時期80万を超えていても堺市のように人口が伸びず、都市機能も乏しいとなると、
やはり、上記のような基準に照らして、指定を受けるのは難しかったわけです。
ところが、一昨年夏、静岡市・清水市の合併への動きを後押しする目的もあって、
内閣の市町村合併支援本部が決定した「市町村支援プラン」のなかで
大規模な市町村合併が行われ、かつ、合併関係市町村及び関係都道府県の要望がある場合には、
政令指定都市の弾力的な指定を検討する
こととされました(70万とは明記されていないのがミソです!)。
これによって、新しい静岡市は人口70万人強でも政令指定都市になることが、ほぼ確実となったわけです。
また、この「市町村支援プラン」によって、堺市や岡山市など、他の地区でも
政令指定都市への移行の可能性が現実味を帯びてきたために、
合併の検討が進み始めたといえましょう。
以上、私が少し専門的に勉強した内容のため、長々と補足させていただいちゃいました。
なお、これも以前
[11799]で書いたことで蛇足ですが、私は、このように時々の政府の解釈で
要件がなし崩し的に変えられていくことについては、行政手続の公平性・透明性などの観点から
問題があると考えています。法に明示されている「人口五十万以上」を唯一の要件として
指定の判断はなされるべきと考えますが、これを基準と出来ないのであれば、せめて、
要件を明記する形での法律改正が、図られてしかるべきなのではないかと思っています。