姫路市飾磨区、広畑区、網干区…。
政令指定都市の行政区でなく、もちろん特別区でもないのに、住所に使われている姫路市の6区は奇妙な存在でした。
姫路市の「区」とは何か? の最後に紹介されている姫路市HPへのリンクは切れていますが、
姫路の雑学 と思われます。
市の公式見解によると、「姫路市飾磨区…」などの「区」は独立の存在ではなく、「地名の一部」です。
…○○区○○で一つの地名となります。
現在の位置付けはその通りとしても、戦後間もないラモート合併
[21922]の当初からそうであったとは限りません。当時存在した市制第82条第1項に基づく区であった可能性があります
[74958]。
宇部市にあった「区」とは何か? も話題になり、
[8885]は9区の名を挙げています。現在は正式の住所から消えたものの、日常生活では使用中
[18901]とか。
「区」のつく住所表記については、僅か50日間
[2536]ですが、北九州市に姫路市と同様の事例がありました。
[20976] ゆう さん
5市合併前--- ○○市【△△町】
5市合併後--- 北九州市【○○区△△町】
政令指定後--- 北九州市○○区【△△町】
ゆう さん が引用した
[20959]には、“現在では下記の行政実例に抵触”とありますが、元の記事が削除されているため、行政指導の詳細は不明です。(当時は)東京都と政令指定都市以外の「区」は、公式の住所表記には使えなかったということでしょうか。
さて現在は…
2005年に、住所に使われる「新種の区」が登場して、状況が変りました。
ニジェガロージェッツさんによる
「区」コレクション の冒頭には、「合併に際し、旧市町村を区としたもの」という項目があります。
この中には1946年の姫路市6区も含まれていますが、その他の 13市町44区 すべては、2005~2006年の合併又は編入による地域自治区又は合併特例区であり、これがタイトルにも書いた「新種の区」です。
住所に使われる「新種の区」が、具体的な名と共に落書き帳の記事に現れたのは
[33723]の上越市でしたが、2006年1月になると、現在のコレクション 44区の大部分 37区がまとめて紹介されています。
[48751] 今川焼 さん
東京特別区と政令指定都市は別にして、合併に当たって「区」を設ける市や町がこのところいくつか誕生しているようです。姫路市の区については以前から話題になっていますが、最近誕生した「区」は、合併前の町村の名を残すという意味合いがあるのでしょう。
どれくらいの導入例があるのか調べてみました。【10市町、37区】
専門家でないので合併用語に戸惑いますが、
市町村合併資料集 の中にある
地域自治区等の設置状況一覧(2007/10/1現在) の11-14コマに掲載されたリストによると、3種類の「区」があります。
合併特例区(F1) 6市町、16特例区【北海道せたな町の3つの合併特例区が○○区を名乗る
[48758]】
旧合併特例法に基く地域自治区(F2) 38市町、104自治区【内、12市町、41自治区が○○区を名乗る】
地方自治法に基く地域自治区(F3) 17市町、123自治区【香取市は○○区を名乗るが、住所には使わず】
上記のリストと、「区」コレクションのリストとの対比でもわかるように、住所に「区」が付くのは、地域自治区・合併特例区のすべてではありません。
さて、住居表示に関しては 地域自治区の名称を冠する規定(
[41724] 百折不撓 さん)がありますが、合併関連の地名における住居表示の実施地域は少なく、実務上の影響が大きいのは、
[48804]で suikotei さんが紹介された 2004/10/19総務省自治行政局長通知 により改正された「住民基本台帳事務処理要領」でしょう。
その結果、国(総務省)の通知に従うならば、各市町村は住居表示未実施区域であっても、住民票の住所に「合併特例法による地域自治区」(F2)と「合併特例区」(F1)の名称を記載することになりました。
もっとも、地域自治区や合併特例区の名称に「区」を使わなければならない決まりは無いので
神奈川県津久井郡津久井町(つくいまち)が相模原市への編入に際して設置した地域自治区の名称は「津久井町」(つくいちょう)でした。
この4月に緑区になるまで「相模原市津久井町青山」という住所だったのは、こういう仕組みでした。
ところが、新潟県中頸城郡柿崎町の上越市への編入により できた地域自治区の名称は「柿崎区」。
だから柿崎区総合事務所の場合は 上越市柿崎区柿崎6405番地と、自動的に「区」のついた住所になります
[33723]。
地域自治区の名称が「○○区」であっても、これが住所に使われるとは限りません。
それは、前記総務省通知の対象が 合併特例法関連 であり、地方自治法に基く一般制度としての地域自治区(F3)に及んでいないからです。従って、香取市の4地域自治区(設置状況一覧11コマ)の一つである小見川区事務所は 香取市羽根川38で、所在地に「小見川区」が入っていません。
横手市横手区については、「横手市横手区横手町」になる煩雑を避けて、F2でなくF3にしたとか
[48804]。
合併特例法については
アーカイブズ がありますが、地域自治区とその住所表記に及ぼす影響に関する記事をまとめてみました。併せて、地域自治区の事務所などに関する記事も集録しました。
地域自治区
おまけ
[1346] Issie さん
長野県の生坂村に「区」という行政単位があります。
これは、地方自治法等に定められた行政区(E5)・特別区(E6)・地域自治区等(F1~F3)とは別であり、
[74958]で少し触れた財産区とも違う「区」です。従来からの慣習として存在するのでしょうね。宇部市の同類かもしれません。
長野県東筑摩郡生坂村の
広報いくさか
2/14には、10区の村政懇談会が記され、小立野区、下生野区、大日向区…などの名があります。住所には使われていません。
これで、同じ名で呼ばれても、中身は 区区(まちまち)であり、誤解されやすい「区」の態様と変遷を綴る
シリーズ を終ります。